大東まみ、「自分の直感を信じたり、主張したりすることがすごく難しくて。でもそんな自分がダサくて嫌だなと思っていて」EP『交差点』インタビュー
October 8, 2026 17:00
大東まみ
2024年、J-WAVE「ギタージャンボリー」の出演オーディションでグランプリを獲得したシンガーソングライター、大東まみ。miwaとの共演や「Augusta Camp 2025〜YAMAZAKI MASAYOSHI 30th Anniversary〜」のオープニングアクト出演を経て、2026年には「リフレイン」が、日本女子サッカーリーグ“なでしこリーグ”の公式テーマソングに。「Augusta Camp 2026 ~HATA MOTOHIRO & NAGASAWA TOMOYUKI 20th Anniversary~」のステージで日本クラウンからのメジャーデビューと、10月7日のEP『交差点』リリースを発表した。大橋ちっぽけとのコライト曲「なんて言うんだろう」を含む全6曲を、トオミヨウがアレンジ。上京から約2年半、取り繕わずに曲を書くことと向き合ってきた彼女の、弱さや怒り、誰かを愛おしく思う気持ちが息づく。誰かの後ろについて歩くだけでは、たどり着けない場所がある。新たな出発点に立つ大東まみに、出会いがもたらした変化と、6曲に込めた思いを訊いた。
─ 今年の「Augusta Camp」で、EP『交差点』のリリースとメジャーデビューを発表されましたね。デビューが決まってから「本当にデビューするんだ」と実感した瞬間はありましたか?
正直、まだあまり実感しきれていないというか(笑)。でも一番実感したのはやっぱりオーキャンで発表したときですね。会場の皆さんがすごく拍手をくださって、“一つ夢を叶えたんだな”という実感が湧きました。
─ 大きな舞台でしたものね。これまでもJ-WAVE主催の「ギタージャンボリー」や、「Augusta Camp」ではオープニングアクトとして出演されていましたが、今年はメインアクトとしての出演。更に、なでしこリーグの公式ソングを担当し、全国12チームのスタジアムで生演奏をされたり、「SUMMER SONIC」に出演されたりと、今まで以上に大きなステージに立つ機会が多かったのではないでしょうか。
そうですね。サマソニも出演の1ヶ月前くらいに本当に急に決まったので、実感が追いつかなくて(笑)。でも、オーキャンもサマソニも、お客さんがすごく温かかったです。特にオーキャンはオフィスオーガスタを昔から応援してくださっている方が多いので、本当にウェルカムなムードで。多分私のライブは初めて観てくださる方が多かったと思うんですが「頑張ってね」と声をかけていただいたりしました。ステージが大きいと距離を感じるものなのかなと思っていたんですけど、意外とそんなこともなくて、皆さんの温かさがダイレクトに伝わってくるようなステージでした。
─ 今回の「Augusta Camp」では、ほかのアーティストの方々と一緒に歌う機会も多かったと思います。先輩方とご一緒して、いかがでしたか?
もうオーガスタの先輩方、ほんまにめちゃくちゃ優しくて!芸能界ってもっとギスギスしていて、新人はいびられるものだと思っていたんですけど(笑)。
─ アハハ!
でも本当に優しくて謙虚な方ばかりで、ビックリしました。楽屋でもリハーサルのときでも、杏子さんをはじめ、すごく気にかけて話しかけてくださって。「あそこのパート難しくない?」と声をかけていただいたり、楽屋が一緒だった元ちとせさんも「昔、私もあの辺りで一人暮らしをしていてね」といったお話をしてくださったり。本当に優しくて驚きでした。コラボステージも、とにかく楽しかったという気持ちが強いです。昨年のオープニングアクトでは、福耳のステージにも1曲だけ参加させてもらったんですが、そのときは、“とにかく自分のパートをしっかりやらなきゃ”と必死でした。山崎まさよしさんにコーラスを合わせるパートがあって、「絶対にミスしちゃいけない!」と緊張でいっぱいだったんです。でも今年は、新人だからといって萎縮しすぎたくないという思いがありました。もちろん大先輩として心から尊敬していますし、皆さんとご一緒できること自体が不思議な感覚ではあるんですが、自分もオーガスタに入ったという事実には変わりありません。先輩方に続いていくポジションをいただいた以上、しっかり自信を持って、自分もオーガスタの一員なんだという誇りを持ってステージに立ちたいと思っていたので、すごく楽しくできたと思います。

─ そして今回のEP『交差点』には、6ヶ月連続配信で先行リリースされた5曲も収録されています。この5曲のジャケットは、大東さんご自身で制作されたんですよね?
そうです。本当にこの部屋(取材ルーム)で作って、そこの壁など背景にしたりして撮影したんですよ。
─ それぞれの楽曲を、どのような発想でビジュアルに落とし込んでいったのでしょうか?
曲を書いたときの根本にある思いを、どう視覚化するかですね。音楽は耳で聴ける形にするものですけど、目で見たらどんな感じだろうという考え方を結構していたかもしれません。自分にとってはすごく自然な感覚でした。毎回、何パターンかざっくりとしたイメージを描いてみてそこから進めるんですが、私自身、美術を専攻していたわけでもなく、こういうものを作る経験が全然なかったので、毎回手探りで。大体こういうのを作ろうかなと決めて、材料をひたすら集めて買ってきて、少しずつ調整していく感じでした。「Candy」のときも、本当は包み紙をもっとぐしゃぐしゃと周りに置くような状態も試してみたんです。でも、ごちゃごちゃして派手すぎると曲のピュアな感じがなくなってしまうなと思って、結局周りの包み紙を全部取っ払って、キャンディーだけにしてみたり。本当にトライ&エラーで、何とか形にした感じです(笑)。
─ キャンディーをいい感じに割るのも難しそうですよね。
マネージャーがひたすら割って、「これ、めっちゃいいんじゃない?」というものを採用しました(笑)。
─ 皆さんの努力と協力があったんですね。
本当にそうなんですよ!マネージャーと毎回ここに集まって、私が形を作ったものの撮影なども全部手伝ってもらいましたし、機材や照明も持ってきてもらって。写真自体は全部iPhoneで撮りました。
─ そうなんですね。どのジャケットもすごく可愛いです。
嬉しいです! ありがとうございます。
─ 大橋ちっぽけさんとコライトされた「なんて言うんだろう」のジャケットには、二人のシルエットに英語が書かれていますよね。これ、何て書いてあるんだろうと思って調べてみたら、「あなたとずっと一緒にいたい」とか「私に嘘つかないで」とか、すごく本音が書かれていて。でも「アイスクリーム」といった、全然関係のない言葉もあったりして。
そうなんです。古い辞書を切り刻んで、コラージュしたんです。
─ 入れる言葉も、イメージに合わせて選んだのですか?
そうです。私がすごく気に入っているのは、ちっぽけくんのラジオ番組の「Tiny Little Small」という言葉をバラバラにして入れたところです。あとは歌詞に沿って、「Sky」や「Blue」といった言葉を入れたりしました。最初から「辞書」というイメージと、「糸」を使ったイメージがあったので、それらを買い揃えて組み立てました。
─ 楽曲についても伺います。大橋ちっぽけさんとコライトするにあたって、まっさらな状態から、どのように組み立てていったのでしょうか?
もともと、ちっぽけくんとはほとんど面識がなかったんですが、私がちっぽけくんの音楽をすごく好きで、以前大阪のライブにチケットを買って見に行った時にご挨拶をさせていただいたくらいで。今回お声がけさせていただいたら快諾してくださって、そこで初めてしっかりお話しする機会をいただきました。ちっぽけくんのラブソングは全部好きなんですけど、共通してどこか憂いのようなものがあるところがすごく好きで。ハッピーなラブソングでも孤独感がずっと付きまとっているような……。こんなに好きなのに、その気持ちを伝えきれないという一人ぼっちな感じがするのがすごく好きなんです。だから、ただハッピーなだけじゃないラブソングを書きたいとお話しして、男女のすれ違いを描くことになりました。ちっぽけくんとは年齢もすごく近いので、キラキラした青春のすれ違いというよりは、等身大の少し複雑なすれ違いを描く曲にしたいというところから始まりました。今年の春くらいにスタジオに来てもらったんですが、その前に自分自身でもっと細かくテーマを掘り下げていきました。私自身、人と付き合う中で、言葉を使って自分の意思を伝えたり、相手の言葉から気持ちを理解したりすることの難しさをすごく感じていて。お互いの気持ちの「翻訳作業」がすごく面倒だし、大変だなと思うという話をちっぽけくんにしてみたら、「その翻訳という考え方が面白いから、そこから広げていこう」と言ってもらいました。その中で、「“何て言うんだろう”というフレーズはシンプルだけどすごくパワーがある」とちっぽけくんが言ってくれて。二人でギターを弾きながら、「こんなコードが良いかな」とか「タイトルは『なんて言うんだろう』にしよう」とか「じゃあこのフレーズはどうかな」というように進めていきました。ギターと声だけで作る、めっちゃアナログな制作でしたね。
─ かなり感覚的な制作だったんですね。
はい。もともとすごく好きなアーティストだったので、出てくるメロディや手癖がめちゃくちゃ好きで、出来上がるのはすごく早かったです。その日のうちにスタジオに入って、1サビが大体できて、宿題として持ち帰って私が1番のAメロ・Bメロを作って送り、ちっぽけくんが2番のAメロ・Bメロを書いて……というように、どんどん進んでいきました。
─ 大橋さんとの制作を経て、一人で曲を書くときの言葉の選び方など、作り方に変化はありましたか?
ありました!コライトを始めるころの私は歌詞にすごく囚われていて、歌詞のことばかり考えて、曲作りに行き詰まっていた時期だったんです。でも、ちっぽけくんはメロディ先行でどんどん作っていくタイプで。音楽の大きな要素としてメロディと歌詞がある中で、歌詞はその半分のはずなのに、何でこんなに歌詞ばかり考えていたんだろうと気づかされました。メロディと歌詞の混ざり合い方も大切だし、もっと気楽に楽しく音楽を作って良いんだなと思えてきたんですよね。それ以降はメロディの楽しさや、韻の踏み方を意識した言葉選びをするようになりました。