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高橋優の考える、ほんの少しの想像力と正しい寂しさ。「現下の喝采」インタビュー

高橋優の考える、ほんの少しの想像力と正しい寂しさ。「現下の喝采」インタビュー

September 11, 2024 00:00

高橋優

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昨年からスタートした『高橋優 初の47都道府県弾き語りツアー 2023-2024「ONE STROKE SHOW〜一顰一笑(いっぴんいっしょう)〜」』(以下:ぴんしょうツアー)も、今年の7月6日(土)沖縄・琉球新報ホールにて大成功を収めた、高橋優。そのツアー中、「現下の喝采」が⽇本テレビ『Oha!4 NEWS LIVE』テーマソングに決定。今年4月より早朝に元気をくれた。その「現下の喝采」が9月11日に配信リリース。今回はぴんしょうツアーの振り返りや、9月21日(土)・22日(日)に秋田県能代市・二ツ井中央公園で開催の『秋田CARAVAN MUSIC FES 2024』への想い、「現下の喝采」を通じて見えてくる高橋優の考えなどを伺ってみた。


ー 改めて、ツアーお疲れさまでした!弾き語りとしては初の47都道府県ツアーでしたが、いかがでしたか?

元々路上ライブをやっていた人間なので、ギターを弾いて歌うだけのシンプルなセットはすごい嬉しかったです。バンドと違って多分ダイレクトに僕の出した声や音が届くだろうし、こちらもお客さんのリアクションがダイレクトに、まるで1対1のような感じで全部伝わってきたからそれが一番楽しかったですね。それに土曜日と日曜日、平日では何となくお客さんのテンション感も違うんですよ。最終的にはみんな盛り上がってくれますが、序盤や中盤までのお互いのそれを肌に感じるのが一番スリリングだし、面白かったです。


ー SNSで紹介していたご当地グッズも楽しかったです。

余興に本気を出すやつ(笑)。


ー アハハ、大切(笑)。私は東京公演しか伺えませんでしたが、それぞれの土地でのMCも面白そうですよね。

MCなしのミュージシャンは沢山いるし、説明なしで音楽を聴いてもらうのって格好良いと思うけど、僕はラジオやVJ(SPACE SHOWER TV/ローカリズム♪)をやらせてもらっているので、もしかしたら喋りを楽しみにしてくれる人もいるかもしれないから、MCに少し重きを置いている部分もあるんですよね。“今日は何を話そうかな”って。まぁバリエーションのひとつとしてゆくゆくは喋る必要がないライブもやってみたいけど、普段のライブはやっぱりMCも楽しみのひとつにしたいですね。今回47都道府県を回らせてもらって良かったのは、みんなの日常の中にあるものを共有出来たこと。例えば「◯◯っていう公園があるよね」とか「あそこの遊園地に行ってきたんだけど」とか。そういうことがあるだけで、同じ曲を演るにしても聴こえ方や意味合いが変わってくるかもしれないじゃないですか。


ー より親近感が生まれたり、単純にテンションが上がったり。

そうそう!以前、ORANGE RANGEが僕の地元秋田県横手市でライブを演った時があったんですが、秋田県に来てもらえるだけで嬉しいのに横手市のホールでワンマンって、地元民からしたらもうめちゃくちゃテンション上がるんですよ!だから僕、その日は東京にいたんですが横手に来てくれるならと思って弾丸で観に行きましたもん。


ー すごい!

MCで僕がめちゃくちゃよく行くラーメン屋の話をしてくれて。もう普通にファンの気持ちで、“え?マジであそこのラーメン屋にORANGE RANGEが来たの?!超嬉しい!”ってなるんですよね(笑)。


ー 確かにそれはテンション上がる!

でしょ!会場もそれで沸くんですよ。観る側として僕もそういう経験が何度かあったから、自分が演る側の時も少しでもそういう気持ちになってもらいたかったんです。コロナ禍を経て配信ライブが定着してきたり、最近はライブのチケット代も上がっているし、ライブに行くことの意義も変わってきている。そういう中でご当地トークは直接そこに行く意味や直接そこでお互いが感じる迫力、そして手応えのひとつになるんじゃないかと思ったんです。でもそういう想いとは別に、今回はぴんしょうツアーだから行った気もします。


ー というと?

旅は好きだけど、そんなに観光地めぐりを率先するタイプではないんですよ。例えばせっかく長崎まで行ったのに話題のちゃんぽん屋さんではなく、自分で見つけた塩ラーメンの店に行くとか(笑)。知名度より僕の中で価値が高いことを求めがちなんですよね。勿論分刻みで色々なところを観光するのも素敵だけど、僕が求める旅とはちょっと違って。僕、仕事では結構せっかちだし、無駄な時間を作ると周りに申し訳ないと思っちゃうから効率よくやりたいんです。だからその分、一人でいる時間は何にも縛られずのんびりしたくて。でも今回は凄かったですよ!前日入りしてご当地の何かを観たり経験させてもらったりしながら、移動して閉店まで15分しかない中でお土産を買って見て、もうバタバタ(笑)。そういう意味では本当に面白かったし思い出にも残りました。あ、今回レンタカーも自分で借りたんですよ。レンタカー屋さんの開店と閉店の時間も全部調べて。


ー え、それはあえてスタッフさんの力を借りずに?

そう。これ言うとスタッフに申し訳ない気持ちにもなるんですが、僕の価値観ですよ。格好悪い、面倒くさいミュージシャンの典型(笑)。


ー 相変わらず自虐的だなぁ(笑)。でも何故?

歌にしろ演奏にしろ言葉にしろ、自分の体の外に出たものを聴いたり感じたりしてくれる人は全員お客様と思っているんですよ。“スタッフは身内なんだから俺の行動を理解して動いてくれよ”っていう感じは逆に僕自身、居心地が悪くて。それでもスタッフは僕側に立ってくれているからありがたいんですが、やっぱり高橋優を体感してくれている人たちだと思っていないと惰性になってしまいそうだから、基本的には今回はスタッフにも本番までどこに行ったか伝えませんでした。


ー それはビックリしたでしょうね。今度こっそりスタッフさんの意見も聞いてみたいな(笑)。

いや、スタッフからすれば迷惑なんですよ(笑)。でもそれはいつか別の現場に立った時に何か感じてもらえれば良いことだし。そりゃ行動を逐一報告すればお利口さんなアーティストになるとは思いますが、僕からするとそれはストレスでしかないし、スタッフは仕事をいくつも抱えているので別に僕のことを逐一報告しなくても良い、でも信頼しあえる、そういうスタンスが良いですね。


ー ライブといえば少し遡りますが『平畑徹也 Billboard Live 2024』で優さんが作った、はっちゃんTシャツや出演者勢揃いの似顔絵。平畑徹也さん…あえて“はっちゃん”と呼ばせていただきますが、相変わらず優さんのはっちゃん愛が炸裂していましたね(笑)。

はっちゃん愛と言ってもらえるのは嬉しいし、やっぱりそういう風にカテゴライズされるんだなと思って作ってみましたが、はっちゃんって自分にフォーカスを当てられすぎるのをあまり好まないから、はっちゃん自身が喜んでいるかは結構微妙な話で(笑)。あれは当日来てくれたお客さんに何を見てもらうか、何を思ってもらうかみたいなところに重きを置いたんです。


ー でも、もしかすると他の出演者で着たいと言う方がいるかもしれないと考えて、枚数が増えたんですよね。

そうそう。僕の性格上、みんなでこれを着てくださいとは言いたくないんですよ。だから盛り上がらなかったら僕だけ着ようと思っていて。ただ万が一、他の出演者がリアクションをしてくれた場合でも大丈夫なようにTシャツを30枚ぐらい作って(笑)。当日僕はほぼ衣装のままで会場入りした上に、ギターなしで歌うから荷物いらないのに一番大きいキャリーバッグを持っていって、その中に大量のはっちゃんプリントのTシャツとマグカップ(笑)。


ー なんで大荷物なんだろうって思われたでしょうね(笑)。でも実際皆さんにも好評で、集合写真にはっちゃんの顔がずらりと……。

そうなんですよ!強制したくないとか言っても結局着なきゃいけない状況を作ったんでしょって言われればそうかもしれないけど(笑)、でもあれは完全に皆さんから着たいって言ってもらえたんです!だってステージに上がらないヘアメイクさんとかも、売ってたら買いたいとか言ってくれましたから。


ー その気持ちはわかります!似顔絵も可愛かったですよね。ただあの中に優さんではなく、出演していないはずのwacciの橋口さんの似顔絵が……。

そうなんですよ。あれは誰も気づかないだろうと思っていましたが(笑)、画像拡大するから意外とXで気づいてくれて。あれはウォーリーを探せではないですが、ちょっとした、それこそ僕の橋口くん愛です(笑)。


ー 確かに愛を感じました(笑)。そして9月21日(土)・22日(日)には秋田県能代市・二ツ井中央公園で『秋田CARAVAN MUSIC FES 2024』を開催。秋田キャラバンガイドムービーも拝見しました。あれはご自身がインタビュアーとして質問を考えて聞いているんですか?

そうなんですがインタビュアーなんて大それたものではなくて(笑)。プロのライターや編集の方々、カメラマンが集っているので、逆にあまり僕に情報をくれないようにしてるというのを聞いたことはあります。一番最初の印象、最初の言葉を文字にする方が新鮮なブックレットになるからって。


ー 確かにそれはありますね。その『秋田CARAVAN MUSIC FES 2024』ですが、今年で7年目。今回の見どころは?

今回は、AIさん、斉藤和義さん、キタニタツヤくんなど結構ソロアーティストが多いのも面白いですし、氣志團のように過去から時代を彩り続けているアーティストや、Saucy Dogのように昨今シーンを牽引しているアーティストなど、バラエティーに富んだラインナップも楽しんで欲しいです。それとライブそのものの見どころとは違うんですが……。


ー 何でしょう?

秋田って夏の豪雨で、一時的に復興困難なぐらいの災害が発生する地域というイメージがこの2年でついていて……。一時的ですし大規模被害ではないのであまり報道されませんが、やはりその土地に行くと住んでいた家が住めない状態になってしまったとか、2階は大丈夫だったけど1階は全滅だとか、復興までに時間がかかるであろう被害が結構出ているんです。<秋田を音楽で盛り上げたい>という想いを掲げてフェスを開催させてもらっていますが、2020年、21年にコロナで中止せざるを得なかったことも踏まえ、その意味合いが時代の流れと共に難しくなっていて……。ポジティブに捉えればやりがいが増しているとも言えますが、やる気に溢れている自分と冷静な自分がどんどん2極化していることは感じます。どちらも大切だなって。ただそういう状況も込みで是非秋田に来て欲しいし、フェスを楽しんでもらいたいです。


ー そして9月11日にはニューシングル「現下の喝采」をリリース。この曲は⽇本テレビ『Oha!4 NEWS LIVE』テーマソングとしてすでに耳にしていますが、今作は「ほんの少しの想像力が日々を彩り豊かに変えてゆく」というテーマがあると伺いました。

ほんの少しの想像力があったら起こらなかったであろう口論ってあると思うんです。日常の中でほんの少し相手の立場に立っていたら言わなかったであろう一言を、感情任せでつい言ってしまったり、防衛本能として反論してしまったり。でもそこをぐっと堪えると何が起こったりあえて笑顔で返したら思いもよらない展開に発展して、自分の不穏な気持ちさえ変わる可能性があると思うんです。ネガティブな言葉もネガティブなまま終わらなくなる術だっていっぱいあるでしょうし。でも最近は、人を傷つけるような行動や発言をした人がいたら、そこだけを切り取ってそこだけで「はい、この人良くない!」みたいなところがある気がしていて。