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高橋優の考える、ほんの少しの想像力と正しい寂しさ。「現下の喝采」インタビュー

高橋優の考える、ほんの少しの想像力と正しい寂しさ。「現下の喝采」インタビュー

September 11, 2024 00:00

高橋優

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ー 以前からそういう部分は懸念していましたよね。

ええ。例えばその人がどういう親に育てられてきたかとか、どういう道のりを経てその言葉を言うに至ったのかとか、そんなことどうでも良くなっているかもしれないというか。でもその状況って自分のことも同じくらい苦しめる気がするんです。自分だって余計なことを言ってしまえば崖っぷちに立たされて、あとひと押しで奈落に落とされる。そんな強迫観念でお互いがお互いを追い込んできてる。ムカつくことを言われた時にムカついたまま返すのではなく、何か別のリアクションを選択出来るのって人間だけなんですよ。人間だけが攻撃されても、“さあ、そこでどうする自分”って、0コンマ何秒かの間でいくつもの選択肢から選べるんです。かと言って決して「なんと◯◯選手、ここでこんなリアクションを取りました!現場がまさかのムードに包まれているーー!」みたいな実況はどこにも流れてはいないけど(笑)僕、たまにそういうのを想像するんですよね。


ー 面白いですね。

例えばみんなで食事している時、その中のひとりが無神経に「ミュージシャンなら何やっても幸せだね、収入もあってもう天国でしょう」なんて言ってきたらカチンと来るけど「そうなんだよー!」とか「ミュージシャン最高よ!」って言ってしまえば盛り上がったり、逆に他の人たちが「でも大変だと思うよ」ってフォローしてくれたりする。つまりこちらのリアクション次第で展開は変わるということなんです。もしそこで僕が「そうでもないんだよ……」なんて暗い顔で言っちゃうとみんなが気を遣って、尊敬しなきゃいけないムードになったりするじゃないですか。


ー 全然変わってきますね。

変わるんですよ!ちょっとでもその場を和ませたり相手を守ったり、後々のことも考えた上でのリアクションを取れるのってすごいじゃないですか。その工夫やリアクションって間違えることも多いけど、想像力があるお陰で、迷惑なことをしないよう配慮したり一生懸命乗り切ったりして、平穏な日常にしている。でも今日も何も起こらず終わったのは、何にも起こらないように自分自身で想像して行動しているからかもしれなくて。


ー そう言われると、そうかもしれないです。

それに対してスタジアムの群衆が「みんなよく耐えたー!」って喝采を送るわけですよ。「5年前の高橋だったらここで怒鳴り散らしていたであろう場面ですが(笑)、成長しています!どうですか?実況席。<実況>いやぁ〜変わりましたね、高橋くんは」みたいなことを想像してこの曲を書きました。それと今回は『Oha!4 NEWS LIVE』のテーマ曲として番組の時間帯にこの曲を耳にして、自分がやっていることは当たり前ではないのかも…と、少しでも思ってもらえたら嬉しいし、当たり前のようにしっかり乗り切っていることに対して惜しみない拍手を送りたいです。あと番組の制作陣の中に、次のテーマソングは高橋優でやりたいと言ってくださった方がいたそうで、観ている方々含め、日本の平日の朝を彩っている方々に聴いていただけることは嬉しいし、本当に感謝しています。


ー 発想の転換で他にしていることはありますか?

結構やるのが、ムカつく人がいる時に頭の中で「サザエさん」のBGMを流すんですよ(笑)。そうすると大抵気持ちが収まるから。嫌な気持ちが侵食して、嫌いな人が中心の世界に感じてしまうことがあって、それって結局不快でしかないんですよね。でも頭の中で「ちゃらららら〜♪」って音楽が流れると、“そんな日常もあるよね”って妙に割り切れちゃうんですよね。しかも「サザエさん」って30分で3話あるから1話が7分以内だと考えれば、我々の日常のちょっとムカついたことなんて7分ぐらいのかもしれない。そう思うと気が楽でしょ(笑)。


ー 確かに!今度やってみます(笑)。編曲は江口亮さんですがきっかけは、LiSAさんの「拝啓、わたしへ」(詞曲:高橋優/編曲:江口亮)ですか?

そうです。LiSAさんの時も感じたんですが、江口さんって作品に落とし込むことへの情熱がすごくある方なんです。僕の場合、常にはみ出しがちというか(笑)、やりたいことがあっちこっちに行ってまとめるのが大変な時もあって。でも江口さんのような方がいるお陰で曲がしっかりときれいに仕上がりました。アレンジに関しては、どう返ってくるか楽しみでめちゃくちゃリクエストさせてもらったんですよ。例えばちょっと頭のおかしいギタリストが一人いて欲しいとか…あ、この発言は問題か?(笑)つまり全員が全員一つの音を奏でようとするより、若干不協和音でも良いから全然違うことをやっている人が一人いて欲しかったんです。あと、ここの部分はブリキのおもちゃみたいな音でとか、ここはレトロにとか、僕のリクエストはかなり漠然としたものでしたが、江口さんのフィルターを通して、こういう形に仕上げていただきました。


ー コーラスも良いですね。

いつか一緒にみんなで歌えたらと思ってサビはあえて少し多めにしたんです。音楽の醍醐味って、口ずさんだり、日常生活に馴染んでいる曲をライブで爆音で聴いた時に自分の日常が爆音になったような痛快さを味わえることだと思うんです。その醍醐味がサビでみんなの共通感覚になれば嬉しくて。“ひとつだけ たったひとつだけ〜♪”のところだけでもみんなで歌えたら嬉しいし、一度聴いただけで覚えてもらえる言葉、歌詞は大切だと思ったので、サビのコーラスは厚く作りました。


ー この曲のshort ver.-のリリックビデオでも、新社会人なりたての方たちからのコメントも多かったですね。そういえば優さんも引っ越しをして新生活を始めたとか。

そうなんです。今まで住んでいた部屋が長かったんですよ。12年くらいかな。だから部屋を明け渡して離れる時はやっぱり名残惜しさがあって思い出に縋ったりはしましたね。でも12年同じ部屋に帰って、同じ寝室で寝て、同じ部屋でご飯を食べて……この部屋で書く曲は書きつくしたんじゃないかな。絞り出せばまだ出来るかもしれませんが、だんだん我慢大会みたいになってきちゃって(笑)。例えばこの部屋(取材場所)の中でずっと原稿を書き続けるとなったら、やっぱり変えたくなるでしょ。


ー この部屋は素敵だけど、絶対になる!

でしょ!それと一緒。壁の色や窓からの景色が少し変わるだけでも気分転換になるから、何なら最初は同じマンションの別の部屋でも良いぐらいのテンションだったんですよ。それで結婚相手でもいればさらに違ったかもしれませんが(笑)、今のところ一人の時間がすごく好きで。


ー その気持ちはちょっと分かるな。どんな部屋になりました?

テーマは物の少ない部屋。


ー ミニマリズム?

そうかな。大まかに言えばテーブルと冷蔵庫ぐらいしかないですよ。大まかすぎだけど(笑)。今って何もしなくても色々な情報がどんどん入ってくるから出来るだけ静かな部屋で、出来るだけ情報が入ってこない環境を自分で作りたくて。


ー 環境って大切ですよね。リリックビデオには新生活への不安や寂しさを綴ったコメントも結構ありましたが。

でも寂しさって感じていた方が良いと思うんですよ。僕は寂しさを感じていない人とあまり気が合わなくて。ずっと楽しいと思える人は幸せだろうし、別に僕も寂しさを見せ合って不幸自慢したいわけではない。でも何にも観ない、何の音も聞こえない環境にいると、だんだん自分の中の<音>が聞こえてくるんですよ。まぁ音と言うか感覚というか。ご飯って誰かと食べた方が美味しさを共有出来るし、会話もあって楽しいじゃないですか。でも僕は一人で食べて物思いにふけっても、誰かとご飯を食べている時と同じぐらい飯もうまいし、ゆっくり味に浸れるんですよね。ただ若干寂しいですよ、やっぱり(笑)。家庭を持つという意味で話し相手がいた方が年齢的にも良い……そんな世間の声が聞こえてくるんですよ!“お前いつまで一人で飯食ってるんだよ”って。でもそれって「現下の喝采」で聞こえてくる想像の声と似てるし、もしかしたら新たな歌詞になるかもしれない。まぁポジティブではないけど(笑)、それを言葉にしたりこうやって話したりすると、クスッと誰かの笑いになったりもするじゃないですか。


ー ごめんね、すでに笑ってます(笑)。

ね!こうやって誰かに会った時のお土産が増えるんですよ。でもずっと誰かといたらお土産がなくなる。そういう意味ではみんな寂しさを避けようとするし、SNSだけ見続けて自分と関係のない情報、自分より不幸な人と自分より幸せな人をただ見るだけの時間で14時間スクリーンタイムなんてこともあるわけですよ。そうやって寂しさから免れた幸せに身を置くのと、部屋の中で何かをしたり外を歩いたりしてまわりの環境をちょっと見直しながら寂しさを我慢する時間を過ごすのでは、果たしてどちらが追々楽しいことが待っているのか。……そんなことを考えてるって僕が言うと、もう面倒くさいおじさんなんですけどね。


ー いやいや(笑)。

でも僕は正しい寂しさって沢山あると思うんです。もちろんメンタルを病むほどの寂しさは駄目だけど、メンタルを大切にしすぎて誰かの些細な言葉全部に傷つくようになるのも良し悪しなんですよね。無菌状態に慣れすぎてちょっとしたウィルスでも重病を患ってしまうのと似てるから。あえて寂しさを紛らわすのではなく、向き合うことで鍛えられるかもしれないから、僕は寂しさを悪いと思っていないんです。というかどんな感情であれ、本当は悪い感情なんてそんなにない気がしていて。一番怖いのは感情がなくても快適だから考えなくても良い状態。そういう状態って厄介な未来が来る気がするんですよね。


ー それは怖いかも。

新入社員であろうが働いて何十年経つ人であろうが、寂しくない人なんていないと思うんです。でもそこから逃げている人と、寂しさを感じつつ一生懸命頑張って泣いたり笑ったりしている人では違う結果がいくつか訪れる、そんな気がしています。


ー 確かに、今の自分のあり方が何年後かの自分を作ると言いますからね。リリックビデオの話に戻りますが、あの写真は優さんが撮ったものですか?

違うんですよ。「現下の喝采」がリリースされる頃には、別の内容のMVも皆さんに観てもらえる予定です。(取材時)僕もまだ完成版を観ていないんですが。


ー 楽しみですね。優さんの出演は?

あー、それは内緒〜〜!


ー 内緒って〜〜!

アハハ!出演しているかもしれないし、出演していないかもしれないし、もしかしたら僕に似た誰かが出演しているかもしれないし(笑)。


ー あ!橋ぐ……

いや、特定の人名出しちゃ駄目でしょ!しかも“その人”は出ていないし(笑)。

<全員爆笑>

今回コンセプト的に言うと、もしかしたら今まで皆さんが観たことあるかもしれない高橋優のMVに通ずる内容になっています。“この人見たことある!”みたいな人が登場するかもしれないし、タッチも“あの時のMVの感じにちょっと似てる”って思うかもしれない、かなり見応えのあるものになる予定です。もしかしたら皆さん、新しいMVを観た後でこの記事を読まれているかもしれませんが、登場人物に是非注目して欲しいですし、どのシーンがあなたにとってグッときたか逆に聞いてみたいです。そのくらい力作のMVが仕上がってくると思いますので、曲と共に是非MVもチェックしてもらいたいです。


ー ありがとうございました。


Interview:秋山雅美(@ps_masayan


■ 高橋優 Official HP
https://www.takahashiyu.com/

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