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海蔵亮太、『Communication 2 ~ Covers』インタビュー!デビュー5周年の経験と出会いの先には。

海蔵亮太、『Communication 2 ~ Covers』インタビュー!デビュー5周年の経験と出会いの先には。

February 22, 2023 18:30

海蔵亮太

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2016年、2017年「カラオケ世界大会(KWC)」にて2年連続で世界チャンピオンに輝き、数々のカラオケ歌番組で今も話題を呼んでいる海蔵亮太。昨年は、障害・性・世代・言語・国籍などに関わらず、個性豊かなアーティストが共につくりあげるパフォーミングアーツを楽しむ集大成イベント『True Colors Festival THE CONCERT 2022』にて、ケイティ・ペリーと共演。今年1月には福島三郎氏主宰の劇団『丸福ボンバーズ』の 朗読劇「ツイン・ルームス」にて役者デビュー。2018年6月にシングル「愛のカタチ」でメジャーデビューし、今年デビュー5周年を迎える海蔵は、音楽を軸に表現の枠を広げている。そんな海蔵が2月22日にカバーミニアルバム『Communication 2 ~ Covers』をリリース。平成ソングとオリジナルを中心に構成された第1弾の『Communication』(2019年)にも収録されたデビュー曲「愛のカタチ」のリアレンジに加え、美空ひばりの「愛燦燦」や、昨年11月にカバー企画第1弾としてすでに配信リリースされた、ちあきなおみの「喝采」など昭和の不朽の名曲や、清水翔太の「花束のかわりにメロディーを」など全6曲を収録。今回はカバーする上で大切にしていることや、楽曲について、更に5年の月日で変わったことなど伺ってみた。


ー デビュー5周年おめでとうございます!

ありがとうございます!


ー と言ってもほぼコロナ渦で。

そうなんですよね……。デビューして半分くらいはコロナ渦だったので、個人的にも“もう5年経っちゃったんだ!”という実感は正直そこまでなくて。


ー でも昨年から今年にかけては特に色々な挑戦や経験があったようで。

そうですね。昨年は少しずつ皆さんと直接会える機会を増やしていきたかったんです。僕、デビューしてからはライブハウスでライブをしたことがなかったので、昨年は結構勢力的に色々なライブハウスにおじゃましました。


ー それと役者にも挑戦しましたよね。

あ、あれは、何でしょうかね…そうですね。た、楽しみ…かなと思って…。


ー どうした、どうした?何か動揺してるんですけど(笑)。

いや、難しかった!役者さんって、役がある上で自分の色を出すけど、僕は今までそういうことはあまり考えず、自分の色…というと格好良いけど、自我をガンガン前面に出していたので(笑)、そこを抑えて役になりきるのはまた全然違う表現の仕方だなと思いました。その分めちゃくちゃ勉強にはなりましたけど、歌と演技って<伝える>という共通項はあってもスタンスは少し違うのかなと思って。普通に僕がシンガーとして歌を歌っている時は皆さん<海蔵亮太>の歌を聴きに来る前提ですが、お芝居の時は海蔵亮太そのものに加えて<登場人物>としても観ていると思うんですよ。なのでちょっと受け取り方は変わってくるんだろうなって。それは実際にお芝居を経験してみて思いましたね。


ー それとケイティ・ペリーさんと共演されましたね。

最初全然誰も信じてくれなかったんですよ!

<スタッフ>ケイティー・カリーとかカイティ・ペリーとか(笑)。

誰ですか、そのドラッグクイーンみたいな人!

<一同爆笑>

でも本当です!(笑)それまでのライブハウスと比べれば勿論規模は違いますが、でもやることは変わらないんだなってすごく感じましたし、世界の最先端で音楽を作ってる人たちの中に自分も入れたのは本当に良い経験にもなりました。それによって考え方がちょっと変わったんですよね。自分が今まで伝えたい音楽とかやりたい音楽って島国ならではの思考というか。それだと5年10年先を見据えた時にワクワクしている自分が見えなくて。なので『True Colors Festival THE CONCERT 2022』に出演した経験から言えることは、もっと広い視野で音楽に臨みたいということです。見えなくても色々なところにある可能性を自分自身でも見つけていきたいと思えるようになってからは、すごく楽しくなってきましたね。今まではどちらかというと、自分の音楽にとって必要かどうかを選んでたというか……ワガママかもしれませんがそういう風に考えてた時期もあったんですが、今はとにかくやれるもの楽しんでやってみようって考えられるようになりました。結果的にそういうイベントへの参加やお芝居が人との繋がりにもなったので、本当に良い経験でした。

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ー また更に次のステップを踏み出しそうな予感がしますね。

それこそ日本だけではなく色々な国の人たちと音楽を通して繋がりたいです。僕自身もそうだったけど塞ぎがちだった人も多いと思うので、パーッと心を開いてたらみんなが集まってくるんじゃないかなって思って。


ー 今回のアルバムタイトルではないですが、まさにコミュニケーションですね!

本来自分が一番大切にしている部分って多分そこなんですよね。それはシンガーになる前からそうなんですが、人と交流するのはやはり人生の中で一番大切だと思うし、自分自身も人との繋がりを重んじてきました。ただデビューしてから少しずつ忘れかけていたかもしれないその大切なことを、そういう経験や今回のアルバムで改めて思い出させてくれました。


ー その『Communication2 〜 Covers』はカバーミニアルバム第2弾ですが、選曲するにあたってテーマはあったんでしょうか?

昨今改めてピックアップされつつある日本の歌謡曲を僕の声で歌った時、どんな人に伝わるのかまず気になったんです。僕自身も小さい頃から両親に連れられてカラオケに行っていて。カラオケボックスではなく本当に色々な場所だったので、そこで聴いてきた歌謡曲や自分の親、それから叔父さん世代が歌っていた曲って僕にとっては想い出の曲だし、世の中にとっても名曲だからそういう意味でも自分の人生の1ページとして歌い継いでいきたい想いがあったんです。それが選曲のテーマというか理由です。


ー なるほど。今回、海蔵さんの歌唱力の高さとは違う部分で曲が歌声にとても馴染んでいると感じたのはそういう理由だったのかもしれませんね。

ありがとうございます。でもそれはやはり曲が素晴らしいんだと思います。全ての曲がエネルギーに溢れていているので、負けていられないという気持ちは正直ありましたね。


ー 昨年11月にカバー企画第1弾としてリリースされた「喝采」ですが、あの曲がリリースされたのは1972年。

そうなんです。もう50年以上前なので、自分は生まれてもいない頃の曲ですが、メロディーや歌詞など今の時代に伝わるものは沢山入っている曲だと思うんです。先程の話に戻りますが、コロナ渦で皆さんも気持ちが少し沈んでいる時こそ、こういう曲を聴いて前を向くことも必要かなって。50年前って日本の経済も「頑張れ!行くぞ!」って明るい未来に向けて頑張っていた時期だったと思うので、そういう時代の歌を歌うことは必要なことなんじゃないかなって。


ー その中でも50年前とは違う今の価値観を踏まえて歌われたとのことですが、具体的な歌唱ポイントは。

昔は立場的に女性が一歩下がって……という世の中だったと思うんですが、今は男女平等だし、それこそ男女だけではなく色々な多様性を認めて支え合う時代だと思うので、そこはただただ悲しむだけではなく、自分なりに「こういう風にも聴こえる」という可能性の幅を意識しながら歌いました。


ー オリジナルはイントロが印象的ですが、あえてその部分を変えるアレンジは興味深かったです。アレンジャーは大隅知宇さんでしね。

はい。大隅さんはデビュー当時からアレンジ面などでお世話になっていますが、歌謡曲の良さをすごく知ってらっしゃる方なので今回は原曲へのリスペクトもありつつ、僕の意見も伝えながら令和という時代を意識し、ただ悲しむだけでなく少し明るいというか開けるようなアレンジにしていただきました。


ー 曲の話とはずれますが今回のアートワークでの海蔵さんが、例えばネイルをしていたり薄いメイクをしていたりと、先程お話に出た多様性というワードに繋がるのかなと感じました。

カメラマンさんとは毎回アートワークの方向性を話し合うんですが、今回は全体の雰囲気や衣装など自分の希望は結構言いましたし、スタッフの皆さんがそれを全て受け入れてくださったので自分のやりたいことが出来ました。それはやはり自分の中で『True Colors Festival THE CONCERT 2022』が大きかったかもしれません。あのイベントは、障害のあるなしやセクシャリティーなど多様性を認め合うことがコンセプトでしたが、僕自身も実際に参加して感じたのは、一つの型にはめて音楽を届けるのは違うということです。なので音楽だけではなく、見え方としても多様性を感じさせるような画にしたいと思い、ネイルにも挑戦してみました。僕は生物学的には男性ですが、歌う上では女性的な面も必要なのかなと思って。特に今作ではオリジナルを女性が歌ってらっしゃる曲が多いので、楽曲だけではなくジャケット写真からも色々な捉え方をしていただけたら嬉しいですし、それが僕の一つのテーマとしてはありました。


ー それと美空ひばりさんの名曲「愛燦燦」では、決して美空ひばりさんを真似しているわけではないのに、しなやかな高音があまりにハマっていて……。

「喝采」でも「ご本人のニュアンスも入ってますよね」って言われることがあるんです。そう言っていただけることはすごく嬉しいけど、自分では全然分からなくて。僕、モノマネって出来ないんですよ。もしモノマネが出来ればそれで仕事していきたいと思っちゃうくらいなんですが(笑)。


ー アハハ!でもそれくらい楽曲に合った歌い方をしているということなのでは?

だとしたら光栄ですね。でもこの曲って頑張っていないですよね、美空ひばりさんご本人の歌い方が。人生について何かを言う時に押し付けるのもやはり違うし、“人生ってこういうもんだよね”とか、“何か不思議だよね”って言うくらいのニュアンスで歌おうとすると頑張らないんだと思って。多分それがずっと自分の中で印象に残ってたので、もしかしたらその点でオリジナルに近いイメージを感じられる人もいたのかもしれません。なのでこの曲では歌う時も声を張るのではなく、本当にただ息をしてるような感じというか、そのくらい力を抜くことを意識しました。