POPSCENE - ポップシーン
POPSCENE - ポップシーン
高橋優がフォーカスをあてる場所とは?新曲「HIGH FIVE」インタビュー

高橋優がフォーカスをあてる場所とは?新曲「HIGH FIVE」インタビュー

March 9, 2022 17:00

高橋優

0
シェア LINE

2020年にデビュー10周年を迎えた高橋優。今年1月にアルバム『PERSONALITY』を携えたツアーのファイナルを迎え、2月8日(火)・9日(水)には10周年イヤーを締めくくるライヴ【高橋優 10th Anniversary Special 2Days「弾き語り武道館~黒橋優と白橋優~」】を日本武道館にて開催。そして2月25日に、侍ジャパン東京五輪ドキュメンタリー「侍たちの栄光 ~ 野球日本代表 金メダルへの8か月~」テーマソング「HIGH FIVE」を配信リリースした。今回は武道館ライヴの感想や、「HIGH FIVE」への想い、自身が死守したい想いについて伺ってみた。


ー まずは【高橋優 10th Anniversary Special 2Days「弾き語り武道館~黒橋優と白橋優~」】お疲れさまでした!2日間ライヴレポートを書かせて頂きましたが「最高」という言葉では足りないくらい最高でした。

いやぁ、勿体ないお言葉です。ありがとうございます。終わってみたら本当に楽しかったんですが、やってる最中は案外普通で。


ー 普通?

普通。普通というか緊張しなかったんです、不思議と。勿論【黒橋優】と【白橋優】のコンセプトは僕が考えたんですが、でもそれも元々はファンの人たちから言われていたことをネタにしたというか(笑)ヒントにした感じだから、僕自身で「今日は黒橋優の日だから黒く行くぞ!」みたいなテンションは特になかったんです。


ー 自然に出来たんですね。

そうなんです。最近僕、日々の中で音楽以外でも色々なルーティンワークをやってるんです。まぁ何時に起きるとかの地味なものですけど(笑)、そのルーティンの中の1つみたいな気持ちで武道館のステージに立てました。


ー ルーティーンワークのひとつ。それって良いですね。でも2日続けてのMCはちょっと面白かったです(笑)。

あ、いちご大福?


ー そう。ファンの人たちも結構あの九段下駅に出ていた移動販売店でいちご大福や他の和菓子を買っていったとSNSで呟いていたりしましたよね。

そうでしたよね。2日目に友人がライヴを観に来てくれたんですが、そのお店の画像を送ってくれました。本番が始まる前だから……17時頃だったかな。それぐらいの時間にはイチゴ大福がもう売り切れていたみたいで、嬉しいですよね。そういうところにフォーカスを当ててくれて(笑)。だって今回は喋ることもあまり考えていなかったから。武道館だから鉄板のMCを用意してきましたみたいな感じだとバレるだろうなと思ったんです。「うわ、MC気合い入ってるな」みたいな(笑)。すべらない話……とか言うと芸人さんに失礼ですが、自分の中でのそういうすべらない話的に作り込んだMCを用意していく選択肢もあったんですよ。でも結局その場でパッと思いついて喋る感じにしようかなと思って。


ー それが意外なところで経済効果を生んで(笑)。

経済効果かは分からないけど(笑)。ただ、路上ライブという軸が自分の中ではずっとあるのし、弾き語りってその言葉通り“弾いて語る”に尽きると思ったんです。路上ライブをしていた時も、きっちりMCを考えていくこともあれば、流れを把握しながら喋ったこともありました。今回は、照明やステージが回るなどの演出面についてもパソコン上で見せてもらいましたが、演出的なものはそれでもう十分だなと思えて。その中で僕までキメキメで演ったら逆にすごく一生懸命な人に観られるんじゃないかなって。それはあまりポジティブな意味合いじゃなくてね。


ー 確かに分かります。

僕のお客さんだったら絶対そう思うし(笑)。だから僕自体は自然な感じにしたかったと武道館決まった時から思っていたんです。何なら曲を間違えたら途中で止めて、「もう1回最初から演るわ」くらいのテンションもありかなって。いや、それはそれですごく失礼な話なんですけどね(笑)。ただそれぐらいのユルさというか、今こうやってインタビューで話している感じのままステージに立ちたかったんです。でもそれって言うほど容易くなくて。やっぱりどうしても自分1人の部屋にいる時と、誰かと会う時ってテンションもちょっと違うじゃないですか。


ー 違いますね。

それが1人でリハしてる時と武道館ですから、どうしたって勝手に自分の中でグッと上がるものがあるし、上がりすぎるといわゆる緊張でアガっているようにも見えるから、それはあまり良くないなと思って。2日間あるし、一日一日演る曲が全部違うから。


ー 全部で44曲!

そう、44曲。だから武道館公演が決まった半年前から自分の中で日常生活のルーティーンにしたかったんです。僕、ファンクラブの投稿では結構アップしまくっているんですよ。「今日米炊いたよ。」とか「何時に走ったよとか」ってどうでも良いことまで(笑)。そうやって自分の日常が全部ステージ上と同じ状態にしたかったし、そういうことをやったのは多分無駄じゃなかったんだろうとは思っています。


ー 自然さはそういうストイックな部分から生まれたというのが凄いですよね。今回は360度回転するステージでしたが、優くんから見えた景色はどんな景色でしたか?

武道館って分かりやすくて、ちゃんと壁に「北」とか「西」とか書いてあるんですよね。だから2日間、何となく東西南北の表情の違いを感じていました。“あ、東の人たち西の人たちとはテンション感が微妙に違うのかもな”とか。気のせいかもしれないけど、自分の中ではそんな気がしていました。あと景色とは違うけど、回ることでちょっとだけ三半規管に訴えかけるものはありました。あれがもう少し早く回ってたら酔ってたかも(笑)。


ー それはキツいなぁ(笑)。それと【白橋優の日】の最後、新曲「HIGH FIVE」のミュージックビデオ(以下:MV)を初披露しましたが、優くんがただただ河原を歩く。最初は正直シンプルすぎとも思いましたが、あの曲には本当にピッタリで、ライヴの後からずっとまた観たい、また観たいと思っていました。

嬉しいな。あのMVはドローンも駆使しながらカットのない一発撮りだったんですが、曲が約5分。その5分間ずっと歩きっぱなしで、ドローンが上から撮ったり横から撮ったり正面から撮ったりするあれって、全部タイミングが決まってたんですよ。たしか7、8回撮ったんだけど、最初の1、2回ぐらいで僕がドローンの動きを把握するんです。ちょっとこれだと歩き方が速いとか、ワンコーラス目でこれぐらいまでは進んでいたいとか、あそこまで行っちゃ駄目だとか。


ー 地味に大変そう。

ええ。結構決まりがありましたね。でも普段ジョギングしていて良かったと思いました。これぐらいのペースだと、ワンコーラス目でこの辺まで行くことが出来るとか体感的に分かるから。今回は歌詞の中でも“前に進む”とか“歩きだそう”というワードが出てくるので、そういう意味であのMVはしっくりきました。衣装もチェスターコートみたいなものとかもあったんですが、結果的に普段ジョギングする格好と同じようなものだったし、日常生活でもそういう格好でいることが多いので僕からすると“いつも通り過ぎるけれど、良いの?”っていう気持ちでした(笑)。それこそルーティーンの中の一部を見てもらってるみたいで。だから「もっとステップとか踏んだ方が良いですかね?」って聞いたんですけど「いやいや、普通通り歩いてて」って言われて(笑)。


ー そうなんだ(笑)。でもあの距離を7回も8回も歩いたら自分ならバテてるな。

いや、案外歩けますよ。ただ思いの外ゆっくり歩かなきゃいけなかったのは最初苦労しました。どうやら普段の僕は歩くのが早いらしくて、友人とかと歩いているとよく言われます(笑)。だから余計にそう感じたのかもしれないけど、結構気が付くと「優さん、ちょっと早くなってます。もっとゆっくり歩いてください。」みたいなことがあって、とにかくゆっくり歩いていたから、あまり有酸素運動にもなってなかったかな。リハビリみたい(笑)。


ー リハビリって(笑)。この「HIGH FIVE」は、侍ジャパン東京五輪ドキュメンタリー「侍たちの栄光 ~ 野球日本代表 金メダルへの8か月~」テーマソングでしたが、こういうワードを入れて欲しいなど要望などはあったんですか?

いや、なかったんですよね。侍ジャパンの番組を作っている制作スタッフの方々からこういうお仕事いただくのは今回が初めてではなくて、「プライド」という曲も起用して頂いたんです。(映画「侍の名のもとに~野球日本代表 侍ジャパンの800日~ 」主題歌)基本的に「高橋優さんの曲でいきましょう」みたいな感じで言ってくれてくださるんですよね、すごくありがたいことに。だから思うがままに作って良いと言われたのかなと……いや、本当は違うのかもしれないけど、僕はそう言ってくれている気がして。僕、実はあまり野球詳しくないですが、僕でも予習なしでわかる選手ってマー君(田中将大)とかなんですよ。でも今回の侍ジャパンの中だとマー君は殆ど試合に出なくてベンチだったんです。でもチームの中ではリーダーみたいな立ち位置じゃないですか。


ー ええ。

でも確か、試合に出た選手たちから試合の前に「ナイスベンチ!」とか言われて茶化されて笑っているシーンがあったんですよね。あのマー君がですよ!まぁマー君に限らずですが、自分の腕っぷしや練習してきたことでプロにはなっているけど、やっぱりそこでの悔しさとか苦悩が色々あるんじゃないかと勝手に想像したんですよね。勿論選ばれなかった人たちだっているわけですし、選ばれるかどうかの瀬戸際で怪我したシーンもあったと思うんです。金メダルを獲ったことは勿論素晴らしいんだけど、僕が割とフォーカスを当てる場所って、そこに向かうまでの一人一人の闘志の燃やし方や苦悩なんですよね。モチベーションの保ち方とかにもすごく興味があって。もしかしたら野球に限らず、そこから生まれてくる言葉が色々な世界に共通していることかもしれないと思いながら書き始めました。


ー 「すぐ叶うこと じゃない方がビューティフル」という歌詞にそういう部分を感じましたし、「羨望の眼はここに向かずとも 一人で信じた夢じゃないもの」。この「一人で信じた夢じゃないもの」は胸にぐっときました。

それは色々な意味合いで言えるかな。皮肉を言ってくる人もいるわけじゃないですか。それもまたひとりじゃない。一人だったらよかったのにと思うけど。


ー ああ、そうか!逆にね。

そう、逆に。何かを成し遂げようと思った時って、そうそう一人じゃ叶えられないことが多いから、助けられて繋がりがあって素晴らしい方向に歩んでいけるんだけど、そこには一人の方がどれだけ楽だったろうと思うぐらい、「もう勘弁してよ!」って言いたくなる関係もあったりして。そのどちらも「一人じゃない」という言葉は存在してくるんです。


ー なるほど。例えば優くんが何かを成し遂げようと思った時に、反対したり悪いことを言ってくる人がいたらどういう対応をします?

あからさまに邪魔をしてくるような感じの人だったら、逆に僕はありがたいと思うかも。それくらいの人なら誰がどう見たって反対勢力だし、そういう人がいることで僕に加勢する人も出てくるかもしれないじゃないですか。例えるならば悪い宇宙人みたいなもので、その悪い宇宙人が「人間を支配するぞ!」と言ってきたら、今いがみ合っている国同士もみんなで協力してその悪い宇宙人を倒そうとするんじゃないかな。でも一番厄介なのは、見方を変えればその反対勢力も良い人になることなんですよね。