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高橋優がフォーカスをあてる場所とは?新曲「HIGH FIVE」インタビュー

高橋優がフォーカスをあてる場所とは?新曲「HIGH FIVE」インタビュー

March 9, 2022 17:00

高橋優

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ー 物事は一面だけではないからね。

そうなんです。僕の場合は、自分が変わり者だっていうことも分かっています。周りからも変わってると思われているだろうし。


ー え、そうなの?

ええ(笑)。でもそういうキャラクターでいた方が意外と円滑だったりして。歌詞の内容も全部自分でプレゼン出来る人だとしたら逆に面白くないと思うんですよね。だから自分でも説明のつかない部分があるぐらいの方がこの世界でこういう仕事をやっていける気がしていて。だから僕を嫌いな人の大体は真っ当な人なのかもしれません。嫌いな人って言ったら角が立ちますけど、僕を苦手だと思う人には、「あなたみたいな人が世の中を回しているんでしょう。頑張れ!ただ僕と関わらないでくれ。」と言ってしまうかも(笑)。必要最低限のこと以外で近づかないようにします。どうせこっちが変なんだからと思って。


ー でも逆にそのぐらいに思っている方が良いのかな。人と対立するって心身共に体力を消費するし悩んだりするし、自分を信じられなくなる場合もあるから。

そこはすごく大切なとこだと思ってます。守らなきゃいけない最後の砦というか。そこまでビジネスマンになっちゃったら、多分僕の書く曲なんて終わっていると思いますよ。マニュアルというか定型文を読むのと同じような歌詞しか書かなくなる気がしますし。そこで「高橋さんは何を考えているか分からないけど、本人なりに一生懸命やってるみたいですよ。馬鹿ですけど(笑)。」とか言われながらでもやれることが大切かなって。そこにあるワクワクをどう保つかが僕のミュージシャン人生に直結してる気がするんです。とは言っても僕も、真っ当になろう、真っ当になろうと思った時期はあるんです。でもそういう時に出来る曲って本当にどうしようもなくつまらなくて(笑)。


ー じゃあボツも多かった?(笑)

いや、誰も聴かせないです(笑)。僕は自分自身のペースというか自分の心の潤いが、おそらく最終的には僕と仕事してくれる人たちの収入にまで関わるわけだから、それを侵害して「いやいや、足並みをそろえて真っ当な人でいてくださいよ、高橋さん。」と言うようなスタッフが現れたら、結果的にその人は自分の首を絞めることにもなる。だから僕は僕のペースを死守しなきゃいけないんです。なにがなんでもね。だからこそ、ある程度のことは引き下がります。卑屈に見えるかもしれないけど「変なのは僕だから、僕が間違ってるんです、すみません。」って言いながら。スタッフにはウザいと思われてるかもしれないけど(笑)、でもそうやってでも死守しなきゃいけないんですよ。


ー 優くんの楽曲には少し変わった曲やタイトルの作品もあるけど(笑)、勇気を与えてくれる曲も多くて、それは決して定型文ではないけどみんなが共感するものなので、そういう作品作りの裏を少し垣間見た気がしました。そういえば「HIGH FIVE」のリリックビデオでは長尾光選手(埼玉武蔵ヒートベアーズ)が出演されていますね。

僕の周りのスタッフが全員野球好きで、野球の話ばかりしていますよ(笑)。でもだからこそ、長尾選手に出演してもらうリリックビデオのアイデアも出してくれたと思います。


ー 実は私も野球は詳しくないのでスポーツライターの知人に少し聞きました。秋田の明桜高校時代出身で卒業後にBCリーグの埼玉武蔵ヒートベアーズに入団。今は頑張ってNPBを目指していると。

そうですね。勿論全員が全員じゃないけど、スポーツ好きな人の中には選手のことをゲームのキャラクターみたいに「あいつ今、ダメだからな!」と簡単に言ったり、良くないプレイをすると卵を投げたりしたこともあったじゃないですか。


ー あぁ、ありましたね。

同じ人間だと思って僕は歌を歌っているつもりなので、一生懸命やって結果を出していない人に対して「あいつ、使えねえからな」とか言ってるような人の気持ちを正直理解したくもないんですよ。ただその人たちはそうやって文句言うこともひとつの希望なのかなとは想像出来ます。スポーツ好きな人然り、アイドル好きな人然り。そうやって何かを語らせてるところがエンターテインメントなのかなと。必ずしも脚光を浴びて、世界でナンバーワンになってる人だけがエンターテインメントなわけではなくて、むしろそういう人もいればなかなか花が咲かないように見える人もいて、その花の咲かなさについて酒の肴に語らう人たちもいる。もしかするとそういうことがサラリーマンが朝起きるモチベーションになっているかもしれない。


ー 良いか悪いかは別としても、そういう一種の憂さ晴らしは存在するかも。

何の気持ちも知らないで指差して馬鹿したり「これが応援なんですよ」と言いながら、その人の人生を物みたいに扱ったりする人たちの言葉なんて意識しなくて良いと思んです。彼らは毎朝早く起きて練習してるんですよ。早起きして練習していない人たちに何を言われても。それでも自分のモチベーションを保つって凄いことだと思うし、華やいだ世界の中で活躍してる人も凄いけど、そういう人はある意味もっと凄い。あのマー君が「ナイス、ベンチ!」と言われてイジられていることにも思うところがあったし、長尾選手の人生にも通ずるものがあるし。でもそういうエンターテイメントを発信しながら、毎日努力して骨身を削っているところが僕は「HIGH FIVE」という曲と共鳴する部分があるんだろうなっていう気がしましたし、そういう部分を意識して書きました。野球の話で言えば、ヤクルト(東京ヤクルトスワローズ)の今野龍太選手は「プライド」を登板の登場曲にしてくれているんですよね。


ー あ、そうだったんですね。

はい。今野選手はヤクルトに来て、中継ぎの選手としてめちゃくちゃ活躍したんです。それで「プライド」の歌詞に励まされたとおっしゃってくださって、まだお会い出来ていないんですが、ユニフォームにサインを書いて送ってくださったんですよ。


ー 凄いじゃないですか。じゃあ今度は優くんのサインを送ってあげないと。

え?いらないでしょ、僕のサインなんて(笑)。


ー いやいや、そんなことは絶対ないでしょう(笑)。

僕だってこうやってお話しを聞いてくる人には話すけど(笑)、そこに興味を持ってくれてる人なんて実は本当にちょっとしかいなくて、殆どの人からは少しの部分だけで判断されちゃうんですよね。でも歌いながら、生きながら想うところがあって書いた「HIGH FIVE」を、同じように歩みながら思うところがある人が共感してくれる。そういうところで何か交わったような感じがするんです。僕は野球のことを100%理解して書いているわけではないので本当に交わっているかは分からないけど、でも今野選手のように「励まされた」と言ってくれる人がいたり、侍ジャパンのドキュメンタリー番組を観て「HIGH FIVE」はすごく合っていると感じてくれる人たちがいる。そういうのって嬉しいし面白い部分なんですよね。


ー この「HIGH FIVE」はコーラスや、足踏みのリズムが壮大で力強く印象的でした。

あのコーラスはスタッフも一緒に歌ってくれたんですよ。スタッフ3人と、「Piece」の時からコーラスで参加してくださってる塚本タカセさんと僕がプリプロの時に入れた歌声を何重にも重ねました。だからスタッフにも何回も歌ってもらって。ちょっと高いバージョンとか、ちょっと低いバージョン、元気のないバージョンや元気なバージョンって何パターンも録ってもらって。だから実はそんなに人数はいないんですよ。でもあのバランスは難しかったな。僕自身はあまり群衆のように聴こえなくても良かったし。ああいうコーラスってそれ自体が曲の色になっちゃうんですよね。だから本当は「ここまでかもな〜♬」という僕の歌い出しから始まれば、もっと曲の色は濃くなると思ったんですが、ああいう象徴的なイントロが入ることで、それこそ野球とかスポーティーな感じ、それからみんなで力を合わせる感じが出て、それが今回の曲は良いんじゃないかみたいなアイディアをha-jさんやスタッフが提案してくれたんです。


ー 優くんが妥協した感じにはなっていない?(笑)

大丈夫です(笑)。これも10年やってきたからと思うけど、色々な人のアイデアを聞かずしてやってしまうのもどうかなと思って。あ、勿論僕も相手を選びますよ。誰かれ構わずアイデアを聞いていたら、僕じゃなくても良くなっちゃうと思うし。でもスタッフだってそこに答えがあるように言わなきゃいけない時もあるのを知っているから「絶対こうした方が良い」って言うんですよね。たまにわざと意地悪で「その方が10万枚売れるってご存知なんだったら、そっちにしましょう。」とか言ったりするんですけど(笑)。


ー こわっ(笑)。

アハハ!勿論それはわざとだし、そういうことを言えるスタッフだから言うんですけどね。ただこっちも命かけて書いてるんだから、そこにそれに変化を及ぼす意見を言うということは単なる思いつきで言っているわけじゃないよねっていう確認でもあるんです。だってファンの人たちは僕が作ったと思って聴いてるわけだから。それが悪戯に色々な人の手が加わっていると思ったら悲しいじゃないですか。


ー それはあるね。

だからそのリスクというか、そこを踏まえて言ってくれていると信じているスタッフの言葉だけは意外と軽く聞きますね。ただこのコーラスと足踏みに関しては「その曲の色が付くということはみんなで把握はしたいよね。」とは言いました。僕が何を歌っていても、下手したらあのコーラスしか印象に残っていないリスクがある。でもそこもプロとして音楽をやっていく上で面白いところというか、芸術性と商売性の両立というか狭間というか。


ー なるほど。それはすごく分かる気がします。「HIGH FIVE」って、いわゆる日本で言うハイタッチのことですよね。ハイタッチは和製英語だけど。

そうです。今回はハイタッチしそうにない感じの人が歌ってるイメージなんです。ハイタッチって割とパリピがやっているイメージがあるじゃないですか。「イエーイ!」って言いながら(笑)。そういうハイタッチとは違うというか。僕自身もライブの後にバンドメンバーとちょっとしたりはするけど、日常生活の中でハイタッチをすることがないので、それぐらい特別なことなんですよね。だからハイタッチに行き着くまでの歌詞の流れに注目して聴いてもらえたら嬉しいです。ハイタッチ……HIGH FIVEに行き着くまでのドキュメントを歌詞にしたいと思っていたので、このタイトルも先に考えていました。


ー 早くこの曲を生で聴きたいし、オーディエンスのシンガロングも聴きたいです。

そうですよね。それはイメージとしてずっとあります。コール&レスポンスやシンガロングが早くやりたいですね。


ー ありがとうございました。


インタビュアー:秋山雅美(@ps_masayan


■ 高橋優オフィサルサイト
https://www.takahashiyu.com/

■ ワーナーミュージック・ジャパン HP
https://wmg.jp/artist/takahashiyu/

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