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斉藤和義、最高の一夜となったツアーファイナルをWOWOWで放送配信!

December 29, 2021 17:30

斉藤和義

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斉藤和義、最高の一夜となったツアーファイナルをWOWOWで放送配信!

ミュージシャン・斉藤和義は今、長いキャリアのなかで最高のコンディションにあるのではないか。円熟した“歌うたい”としても、永遠のロックンロール青年としても──。そう確信させてくれる素晴らしいパフォーマンスだった。コロナ禍を挟んで約2年ぶりに敢行された「KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2021“202020 & 55 STONES”」。そのファイナルを飾る東京国際フォーラムのライブは、待ちわびた観客の想いと骨太でグルーヴィーなバンド演奏が一体となり、忘れがたい一夜になった。『202020』と『55 STONES』という直近2枚のアルバムを中心にした、新曲中心のセットリスト。ステージに登場した斉藤はいつも通り自然体で、気負いは一切感じられない。以前と変わらぬ飄々とした口調で客席に語りかけ、ソリッドで無駄のないサウンドを繰り出していく。だがその端々からは、「やっと客前で演奏できる」という喜びが自然と滲んでいた。過剰な演出もウェットなメッセージもなく、気心の知れたメンバーとひたすらご機嫌な演奏を繰り広げた2時間半。その思いを全身で受け止め、“歓声なき熱狂”で会場を盛り上げたオーディエンスの反応がまた感動的で、強く心に残った。世界中がコロナに翻弄された2021年、“山あり谷あり”のツアーを駆け抜けた斉藤に、久々のライブに込めた想いを振り返ってもらった。


ー 約半年の日程を無事に終えて、率直な感想はいかがですか?

まあ、これまで経験したことのない不思議なツアーでしたね(笑)。2020年は予定していたライブがぜんぶ中止になって。2021年に入ってやっと再開できるかなと思ったら、また緊急事態宣言が出たりして。その都度いろいろ考えたり悩んだりしつつ、何とか走りきった感じです。こういう状況のなか、わざわざ会場まで足を運んでくれたお客さんには本当に感謝していますし。熟考の末に「今回はやめとこう」とチケットを諦めた人の判断も、僕は賢明だったと思う。何が正解だったのかは今でもわかりません。でも、だからこそステージの上は、いつも以上に演奏できる喜びに溢れていたんじゃないかなと。


ー 今回のツアー・コンセプトを改めて教えてください。

きわめてシンプルに、直近のアルバム2枚の楽曲をたっぷり演奏するという。タイトル通りのコンセプトです(笑)。特に2020年に発表した『202020』は、今回のツアー・バンドのメンバーとセッション形式で作った部分が大きくて。ライブ向きのナンバーがけっこう多いんですね。一方の『55 STONES』は逆に、ステイホーム期間中に自分1人チマチマ作ったアルバムなんですけど、今回のツアー再開にあたってアレンジを最初からやり直しました。レコーディングを踏襲するんじゃなく、メンバー各自の解釈やアドリブを自由に入れてもらって。皆さんすご腕のミュージシャンですし、気心の知れた関係なので、ちょうどいい案配に仕上げられたかなって。そこは満足しています。


ー 場末の小さなライブハウスを模した舞台セットも印象的でした。

2019年にアメリカのナッシュビルという都市に行ったんです。カントリー・ミュージックの聖地って言われる場所で。街のライブ・バーなんかにふらっと入っても、地元のバンドが入れ代わり立ち代わり楽しそうに演奏してたりする。そういったカジュアルな雰囲気が何となく伝わればいいなって。ライブの間はコロナ禍の日常から離れて、リラックスして音楽を楽しんでもらいたいという気持ちもあったんですよね。そっちのニュースは日々、嫌でも目に入ってくるじゃないですか。なので、会場で歓声こそ上げられないけれど、心の中で思いきり騒げて憂さを晴らせる選曲は、かなり意識しました。


ー いつもと様子の違うオーディエンスに戸惑いはありませんでしたか?

正直、ツアーが始まる前はけっこう不安でしたね。お客さんが声を出せなくて、本当に盛り上がるのかなって。でも実際やってみると、観客の“気”みたいなものって不思議なほど伝わるんですよ。拍手の大きさ、音圧だけじゃなくて、長さもそう。会場の皆さんがちゃんと楽しんでくれているのが、演奏している僕らにもよくわかった。何ならコロナ禍の前より一体感が増している気配すらあって(笑)。特にツアー前半で、ウルッと来そうになる瞬間が多々ありました。お客さんの拍手に「あ、俺、今ちょっとやばいかも」って。

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ー 今回のツアー・バンドは、斉藤さんを入れて5人編成。それぞれが随所で遊び心を発揮しつつ、余分な要素は削ぎ落とした、ソリッドなロックンロール・サウンドが素晴らしかったです。斉藤さんから見たバンドの持ち味は?

ギターのマカピー(真壁陽平)はもう6〜7年くらいの付き合いになるのかな。ロック、ジャズ、ファンク。とにかくオールマイティーに何でも弾ける人で。しかも、何を演ってもちゃんと真壁君の音になるのがすごい。今回のツアーでもヴァン・ヘイレン風の速弾きを思いきり披露してもらっています。リズム感も素晴らしくて、僕にとっては最高に安心感のあるギタリストですね。ベースのヒロ君(山口寛雄)も今、めちゃめちゃ売れっ子で。彼は自分で作曲もするんです。だから演奏テクニックはもちろんのこと、アレンジを俯瞰で見てくれる。単に低音を支えるだけじゃなく、常に僕の歌の“裏メロ”を弾いてくれている感じがします。その部分は、僕の大好きなポール・マッカートニーにちょっと似ているかもしれません。あとは、頼れるコーラス要員でもありますし。


ー ドラムの平里修一さんとキーボードの松本ジュンさんは、今回のライブが初参加ですね。

平里君はすでに、レコーディングは一緒にしてるんですけどね。彼もあらゆるリズムに対応できる人で、本来はもっとジャズとかファンクとか黒人音楽的なビートが得意なドラマーだと思うんです。でも僕は、彼が叩くエイトビートのロックンロールがめちゃめちゃ好きで。彼の場合、テクニシャンにありがちな「正確だけど味気ない」感じがまったくなく、逆に気持ちのいい揺らぎが出る。平里君自身も明るいキャラクターだしね。ステージでも楽屋でも、いいムードメーカーになってくれました。キーボードの松ジュンはまだ28歳なんですが、いい意味で若者らしからぬ古い音を出す人でね(笑)。今回のツアーの音作りが全体にヴィンテージっぽい仕上がりになったのは、彼がステージに持ち込んだ往年のオルガンとかウーリッツァピアノの効果も大きかった気がします。あと、ステージ中盤で、セカンドアルバムに入っている「彼女」という楽曲を大胆にアレンジして演ったんですね。あのアイデアは、松ジュンがリハ中に何気なく弾いていたピアノから思い付きました。


ー ライブ終盤、メンバーの即興セッションから「万事休す」へとなだれ込む怒濤のファンクパートも圧巻でした。あのアドリブでは斉藤さんが毎回違った“お題”を出していたんですか?

そうなんです。今回WOWOWで放送・配信されるツアーファイナルの日は、たしか“最終乳首”でしたっけ(笑)。僕が適当に言った言葉からみんなでイメージを膨らませてセッションして、よきところで「万事休す」の導入部に入っていく。最終日はわりあいファンク風でしたが、公演日によってはボサノヴァだったりヘヴィメタだったり……。あれは演奏していても楽しかったですね。もともとアドリブ好きなメンバーばかりで、リハーサルでもサウンドチェックがわりによく即興でセッションをしていたので。「万事休す」みたいに毎回違う展開になる曲ほど、メンバーも解き放たれた感じになるんだよね。


ー ツアー最終日となる東京国際フォーラムでのライブが、今回WOWOWで放送されます。あえて見どころを挙げるとするならば?

よく言われることですが、東京国際フォーラムって音響が素晴らしいんですよ。僕は今回、自分のツアーでは初めてライブをさせてもらったんですが、想像をずっと超えていた。それこそ客席のリアクションや空気感を肌で感じながら、過剰なエコーがなく、自分たちの演奏もクリアに聴きとれる。そのバランスがちょうどいいんです。もちろん全力で演るのはどの会場も同じですが、最終日は長いツアーの集大成としてベストコンディションの演奏ができたと思う。とはいえ、収録が入って畏まっちゃうのも嫌だったので。メンバーには舞台袖で「このツアーで一番、適当に演ろうね」と言ってからステージに出ました(笑)。実際、いつも以上にアドリブも多かったですし。気合いが入った部分とリラックスできた部分が、いい感じで混じったライブになっていると思います。そういう部分を何となく感じて楽しんでいただければ、すごく嬉しいなと(笑)。


「こういう綱渡りのツアーはもうこりごりですけど(笑)。でも、本当に貴重な経験ができたな、とは思ってますね」。インタビューの最後、あらためて今回のツアーが持つ意味について尋ねると斉藤は、顔をクシャッとさせる独特の笑顔を浮かべて、こう答えた。取材中の彼は、決して饒舌なタイプではない。ライブアレンジのディテールや、仲間のミュージシャンの素晴らしさについては楽しそうに語り続けるが、こと自分については大げさな表現を好まず、言葉を探しながら、とつとつと話す。だからこそ、「貴重な経験」というありがちなフレーズに重みがある。どんな状況でもただ純粋に楽曲と向き合い、シンプルかつ骨太な演奏を通してオーディエンスと共有できたという音楽家としての自信と誇りが、そこには込められている。この感動的なツアーファイナルの模様は、2022年1月10日月・祝)にWOWOWで放送・配信される。ぜひ映像で確かめてほしい。

文:大谷隆之

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