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【スキマスイッチ インタビュー!Part.2】今を意識すること、そして音楽で表現してみたかったこととは?

【スキマスイッチ インタビュー!Part.2】今を意識すること、そして音楽で表現してみたかったこととは?

December 1, 2021 18:00

スキマスイッチ

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11月24日(水)にスキマスイッチがキャリア初のアルバム2枚同時リリース。“今、求められているもの” をテーマに、スキマスイッチのPOP サイドを凝縮した『Hot Milk』と、“今、メンバーが作りたいもの” をテーマに、今までにない挑戦的な楽曲をドリップした『Bitter Coffee』。このアルバム2枚には様々なスキマスイッチワールドが詰め込まれている。前半は『Hot Milk』について伺ったが、今回の後半ではよりディープなスキマスイッチを感じられるであろう『Bitter Coffee』について伺ってみた。


ー では『Bitter Coffee』について伺いたいのですが、個人的には『Hot Milk』と『Bitter Coffee』の中で「I-T-A-Z-U-R-A」が一番ライヴで聴きたいと思った曲でした。ちょっとFUNK要素がありつつ、お洒落で格好良くて大好きな曲です。

常田:僕も大好きです。この曲はツアーメンバー(Dr・村石雅行、B・種子田健、G・石成正人、Key・浦清英、Per・松本智也、Sax・本間将人、Tp・田中充)で録っているので、そういう意味ではライブを意識していますし、こういうタイプの曲をあのバンドメンバーで演ってみたいというイメージはレコーディング中からありましたね。


ー なるほど!

常田:それに僕も卓弥もこういう、例えばFUNKだったりSOULが好きでよく聴いていたんです。あまりスキマスイッチの表舞台っていうのかな、タイアップ的なところでは出せていない部分ではあるけれど、ライヴではそういったアレンジを結構やってきているので。


ー そうですよね。だから余計にこの曲ではライヴを感じたのかもしれません。

常田:それに加えて80、90’sのようなサウンド感や歌詞の言葉選びはちょっとテーマを持って作りました。


ー エロティシズムに寄り過ぎない大人の雰囲気の歌詞は、ともすると謎解きみたいな難解さもあって面白いですし、あえてその時代の言葉で表現するならトレンディさみたいな時代要素は感じました。

大橋:まさにトレンディドラマを書こうというと思ったんです(笑)。

常田:そうえいばこの間若い子にトレンディって言ったら、意味を知らなかったんですよ。


ー え!!

大橋:トレンディエンジェルさんいるじゃないですか。


ー ええ。

大橋:コンビ名の意味が全く分からないって言われました(笑)。

常田:何のエンジェルか分からないってね(笑)。


ー ジェネレーションギャップの話をたまにインタビューでも聞きますが、やはりびっくりしますね(笑)。

常田:いやぁ、当たり前のように使ってますよね、トレンディ。

大橋:(笑)。


ー それと「G.A.M.E.」の歌詞に、“twenty-one of dream”とありますが、まさに今のこの状況下を歌っているようにも感じました。

大橋:実は僕ら、全くそんなつもりで書いていなかったんですよ。でも「これコロナの曲ですよね?」って、“決まった上限 超えぬように”という歌詞は「ライブのことですよね?」って他のインタビューでも言われたりしました。確かに曲を書いたのはコロナ禍でしたが、まったく意識せずに書いていて……。

常田:そう読めるよな。“数列のウェーブ”とか。

大橋:そうそう。


ー “敵は無表情”も、目には見えないウイルスなのかなとか思ってました(笑)。

大橋:そうですよね。それがびっくりしたんですが、これからはそう言っていく方が良いかな(笑)。

常田:だとしたら「G.A.M.E.」っていうタイトルは付けないでしょ(笑)。

大橋:いや、皮肉を込めているかもしれないし(笑)。


ー では元々はどういう意味を込めて?

大橋:これはまさに『Twenty one』というゲームのことを歌ったんです。


ー そうなんですか!ごめんなさい。私、全然そのゲームを知らなくて。では逆にそのゲームをやっている人からすると、“あぁ、あのことね”みたいな感じなんでしょうかね。

大橋:いや、どうですかね。多分そこにすぐ結びつかないんじゃないかな。

常田:ただリアリティーは追求しました。元々卓弥がやっているゲームで、僕はそんなに詳しくないので経験させてもらって共有して歌詞を紡いでいく感じでした。


ー そういうところから歌詞が出来ちゃうって面白いですよね。

大橋:そうですね。本当に2人で他愛のない話をしながら「あ、それって曲になるな。」とか、そういうちょっとしたところから書き始めることも結構あります。


ー 『Hot Milk』のインタビュー冒頭で、今作は色々なタイプの楽曲があるとお話されていましたが、それが分かるのが「G.A.M.E.」からの「風がめくるページ」。雰囲気がガラリと変わって、とても優しいのに気持ちが真っ直ぐになれる力強さもある曲ですね。歌詞には愛しい人を想像させる“君”の存在もありますが、“記憶は歌になっていく”という歌詞は、まさにお二人が紡いできたページのことかなと勝手に解釈したのですが。

大橋:そうですね。曲って自分を記録しておくもののひとつでもあるし、<アルバム>って、音楽のアルバムでもありつつ写真を収めるアルバムでもあって、曲を後から振り返って聴いてみたら、その当時を振り返られるっていうか。この時はこういうサウンドにハマってたなとか。なのでそれがそのまま歌になったような曲ですね。

常田:やはり今しか出来ないこと、例えば今でいうとコロナは外せないところだと思いますし、そこを意識していないで曲を作ろうという感覚はないですね。震災の時もそうでしたし……。


ー あぁ、そうでしたよね。

常田:あの時は制作が途中で止まった曲もありましたし、そういう経験は反映されて「晴ときどき曇」みたいな曲が生まれました。だから無視は出来ない。ただ、意識しすぎてもいけないとは感じます。そういう曲で埋め尽くされると聴かなくなるというか、淋しくなったりもするので、その辺のバランスは意識しないといけないとは思います。今回で言うと、コロナがあったからこそ昨年の後半はデモ作りをする期間に当てられたし、こんな風に2枚同時リリースも出来なかったかもしれません。そういう意味ではリアルタイムなものが反映されるべきだと僕は思っています。勿論全て架空で今の世相は意識しないという人もいても良いんですが、僕らはその方が曲として残しやすいというか、意味があるんじゃないかなと思っています。


ー 「いろは」は切ないラブバラードですね。特に”未来を失ったカレンダー”という歌詞はなんて切ないんだと思いました。ちなみに「いろは」というタイトルの意味は?

大橋:元々この曲の仮タイトルが「落ち葉拾い」だったんです。落ち葉を拾い集めているというのは比喩表現というか、色々な意味を含んでいたんですけど、制作が進むにつれ「何か名前みたいに聞こえるタイトルが良いよね。」という話になって「いろは」が候補に上がったんです。何となく名前っぽくも聞こえるし、<いろはにほへと>を連想させるような響きもあるし、色づいた葉っぱという意味合いもあるし。

常田:イロハモミジという紅葉の種類もありますからね。

大橋:そういうところからそのまま最後まで残ったのが「いろは」でした。

常田:着想はミレーの「落穂拾い」だったんです。


ー また意外なところから。

常田:ええ(笑)。でもさすがに“穂を拾う”って、言葉をパッと聞いただけじゃ意味が分からないじゃないですか。それなら落ち葉が良いだろうとなって。落ち葉は未練的なところを意味する部分でもありますが、書いているうちにそこだけにフォーカスしなくなったというか、共作しているとやはりどんどん新しいアイデアが出てくるので曲の世界観としての広がりは出たかなと思います。