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【スキマスイッチ インタビュー!Part.1】求められるものと作りたいもの。その両方を形にしたアルバム『Hot Milk』&『Bitter Coffee』とは?

【スキマスイッチ インタビュー!Part.1】求められるものと作りたいもの。その両方を形にしたアルバム『Hot Milk』&『Bitter Coffee』とは?

November 30, 2021 18:00

スキマスイッチ

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スキマスイッチが11月24日(水)にアルバム『Hot Milk』と『Bitter Coffee』を2枚同時リリース。これはキャリア初。しかし常に進み続け、新たな道を模索することに労力を惜しまない二人らしい取り組みだと思えた。“今、求められているもの” をテーマに、スキマスイッチのPOP サイドを凝縮したのが『Hot Milk』。“今、メンバーが作りたいもの” をテーマに、今までにない挑戦的な楽曲をドリップしたのが『Bitter Coffee』。コンセプチュアルなアルバムに詰め込まれた二人の想いや、スキマスイッチらしさ、どこまでもアグレッシブな姿勢に筆者は感動を覚えた。今回はそんなアルバムについて2回にわけてインタビューした。まずは『Hot Milk』。今だからこそ作れた「OverDriver」と「全力少年」の接点とは?更に『Hot Milk』と『Bitter Coffee』の違いとは?


ー 今回、キャリア初の2枚同時リリースですが、『新空間アルゴリズム』(2018年)のリリース後くらいから複数枚リリースのアイデアがあったらしいですね。

大橋:はい。僕たちの楽曲って色々なタイプがあるので、それをジャンル分けしたら面白いかなと思っていたんです。例えばFUNKだけまとめようとか、ちょっとAORっぽいものをまとめてみようとか。僕たちは結構音楽については雑食で、お互いどんなジャンルも聴くんですよね。だから多分色々なタイプの楽曲を作りたがるんだろうけど(笑)。なのでジャンルわけもありだろうし、アップテンポだけまとめるのもあり。バラードでまとめるのもあり。でも「全部バラードやアップテンポだと疲れちゃうかな?」って、よくそんな話をしている中で“複数枚”というキーワードが残って、求められているものと作りたいものを2枚に集約することになったんです。


ー しょっぱなからミーハーなこと言っていいですか?

大橋:どうぞ(笑)。


ー どのジャケットも素敵ですが、『Bitter Coffee』の初回盤、お二人ともめちゃくちゃ格好良くないですか?特に大橋さんの髪型がすごく素敵で。

大橋:いやいや……それはどうもありがとうございます(照)。

常田:マネージャーの策略ですね(笑)。

大橋:でもマネージャーは僕が前髪上げるの嫌がるよな。

常田:前髪上げるのと髭が駄目なんだよな。今回髭つけてるけど(笑)。


ー 髭がひとつのポイントになっているくらいですからね(笑)。

大橋:そうそう(笑)。

<マネージャー:(笑)>


ー 先ほど大橋さんも言われましたが、今作は“今、求められているもの”をテーマにした『Hot Milk』と、“今、メンバーが作りたいもの”をテーマにした『Bitter Coffee』。そのテーマを元に、ご自身たちはどんな仕上がりになったと感じていますか?

常田:やはり分け方については皆さん気にされてるところだと思うんです。『Hot Milk』は明るくて『Bitter Coffee』はマニアックなのかなって。多分コアなファンの中では『Bitter Coffee』を楽しみにしている方も多いんじゃないですかね。ざっくり言うと、最初から最後まで僕たち2人で作ってきたのが『Bitter Coffee』で、僕たち2人以外からの声や、タイアップなどのオファーが入っているのが『Hot Milk』です。ただ曲を完全に分けたわけではないんですよね。両方とも7曲入りという括りで言うと、7曲できちんとアルバムにしたかったし、そうなったと思っていますし。


ー というと?

常田:僕らはやはりCDを作っているというイメージを持ち続けているので、リピートして欲しいという意味も込めて7曲のバランスや曲間も考えています。最初から聴いて最後になってまた1曲目に戻る。


ー 良いですね。

常田:ええ。その上で『Hot Milk』は僕たち以外のところにきっかけがあるというか、引き出してもらっていることが多いです。例えば「OverDriver」(M1)と「されど愛しき人生」(M7)はスタッフの「スキマスイッチならではの応援歌を作ってみないか」というアイデアから生まれたんです。僕たちって実は応援歌を初めから作ったことがなくて。


ー え、そうなんですか?

常田:「全力少年」もそうですが、受け取ってもらった方が応援歌だなと感じてくださったことで、僕たちが改めて“あぁ、なるほど”って感じるというか。なので今回この2曲で1から応援歌を作ったのは、やはりスタッフに引き出してもらったところです。でもそこはスキマスイッチらしいマニアックさも出てくると思うんですよね。言われたまま、「はい、作りました!」で収まらないのがスキマスイッチなので(笑)ちょっとしたエゴも入っています。そのエゴみたいなものが自分たちの中から外にどんどんどんどん突き抜けていくのが『Bitter Coffee』のイメージです。なのでアルバムの雰囲気として実はそんなに離れていない気もしていて。ただ作ったきっかけの違いだけかもしれません。まぁそれでもやはり出してみたかったという気持ちが強いのは『Bitter Coffee』かな。今まで事あるごとにデモとしてスタッフに聴いてもらう中で、入れたかったけどなかなか入らなかった曲があって。例えば「いろは」もそのひとつ。そういう作品を入れることが出来たのは、こういうコンセプトの利点ですね。


ー それは大橋さんも同じですか?

大橋:そうですね。手に取りやすいのは『Hot Milk』だと思います。それは曲調というよりも、どこかで耳にしたことがあるという意味でね。特にスキマスイッチの音楽にあまり触れてない方の入り口としては良いと思います。ただ曲調がとりたてて聴きやすいということでもないんですよね。シンタくんの言った通り、より色濃く自分たちの今の流行りというか、やりたいことを貫き通しているのが『Bitter Coffee』という感じですかね。


ー もう11年インタビューさせて頂いているせいか、入り口の『Hot Milk』も好きですが、やはりお二人の感性が色濃く出ている『Bitter Coffee』の方が好きです……(小声)。

常田:え、何で小声なんですか?(笑)


ー いや、『Bitter Coffee』が好きと言いつつ『Hot Milk』収録の「OverDriver」があまりに好きすぎて(笑)。

大橋:いや、それはそれで勿論嬉しいですよ!


ー じゃあ「OverDriver」への愛を語っていいですか?(笑)

大橋:アハハ!どうぞどうぞ(笑)。


ー 兎に角めちゃくちゃ良い曲だと思いました!勿論スキマスイッチさんの曲には他にもサビから始まるオープニングはありますが、あのキャッチーさや疾走感はやはり真骨頂だし、Aメロのリズムは堪りませんね!それと童謡の「かごめかごめ」をモチーフに広げていった歌詞の世界観は気持ちが奮ちました。あと“躓いて置いてかれた場所で”という歌詞が「全力少年」を彷彿とさせるというか、その後の新たなステージを感じました。

常田:ありがとうございます!本当に全部その通りなんです。

大橋:今の歳になって書く「全力少年」みたいな曲。そうなればと思っていたので、そういう意味では「全力少年2」かもしれません。今言って頂いたAメロのトリッキーな部分は当時では出来なかったちょっとテクニカルな部分でもあるし、時が経って自分たちの音楽経験値が当時よりは増えた状態で作れました。「全力少年」の頃は応援歌と言うには自分たちがまだ若すぎて……。だって25、6歳の人間から“頑張れ!”って言われても、あまり説得力ないでしょ(笑)。だからこちらからは「全力少年」を<応援歌>として発信しなかったんですが、今は二人とも43歳になって、そろそろ“頑張れ!”というメッセージを発信してもそこまで背伸びしている感じはないのかなと思ったので作りました。それにすごくキャッチーな中に、ああいうAメロみたいな、ちょっとした棘を入れたりするのが僕らのスタイルでもあるし、やりたいことでもありますね。

常田:「全力少年」に対して勝たなきゃという気持ちでずっと作ってきて、やっぱり意識はしています。未だに聴いてもらえる嬉しさと、未だに代表曲と言われてしまう悔しさ。