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【スキマスイッチ インタビュー!Part.1】求められるものと作りたいもの。その両方を形にしたアルバム『Hot Milk』&『Bitter Coffee』とは?

【スキマスイッチ インタビュー!Part.1】求められるものと作りたいもの。その両方を形にしたアルバム『Hot Milk』&『Bitter Coffee』とは?

November 30, 2021 18:00

スキマスイッチ

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ー それは以前からずっと言われていましたもんね。

常田:そうですね。それは「奏(かなで)」に対してもそうですが、誰しもがきっと、今一番ホットなものに対して一番熱量が高くあって欲しいと思っているはずなんです。まぁそこはうまくいく部分といかない部分があるけど、ただ「全力少年」は完全肯定出来たのかなという気もしますし、我々として“あの時は良く出来たよね”という意味も込めて、今回「OverDriver」で「全力少年」を彷彿とする歌詞を入れるアイデアになりました。そういう意味ではやはり作って15年経って……完全肯定なんでしょうね。何よりこの年齢で、このキャリアで、こういう曲が出来たことは嬉しかったですし。


ー スキマスイッチさんにはこんな引き出しがあるんだって、曲を聴いていてすごく興奮しました。

常田:それはすごく嬉しいですね。例えば童謡をモチーフにするアイデアもやはりスタッフから出たんです。だからそれこそスタッフに引き出してもらった感覚ですね。


ー 今までのスキマスイッチさんの歌詞もカタカナ表記は多いですが、今回も“イッサイガッサイ”や、“ココロ”など、結構カタカナで表現されているところもありますね。<じぶん>に関しては漢字とカタカナの両方とか。

常田:やはりサウンドとして捉えてもらいたいときはカタカナになることが多いです。勿論歌詞で読んだ時に漢字だとダイレクトに意味は入ってきますが、カタカナだとまず注目度は上がるし意味を考えるじゃないですか。「どういう思惑なんだろう?」って。


ー ええ。

常田:なので秋山さんに今そうやって注目してもらったように、聴いてくださった方それぞれの感覚で捉えてもらうと歌詞の読み方も変わってくると思うんです。1番と2番で同じ歌詞でも意味合いが違ったりとか。僕らが目指しているのは、サビなどで同じ言葉を使っていても1番と2番3番で意味が変わってくることです。勿論そうならない曲も沢山ありますが、そこはかなりポイントに置いている部分だし、段落についても“何故ここで段落を変えているんだろう?”とか、色々と皆さんに想像してもらうアイデアをいつも2人で話し合っています。だから、そこも含めてCDなんですよね、目指すところ。何となく手にとって歌詞をあーだこーだ言いながら読んだり考えたり。僕はページをめくって読むのが個人的にも好きなので。あ、だからってデジタル配信を否定するつもりは全くないですよ。自分たちだって配信リリースさせてもらっているし。ただ僕は小学校や中学校の頃に姉とそういう話をずっとしてきたんですよね。たまに歌詞カードを破っちゃって怒られていましたが(笑)。


ー あぁ、それは怒られますね(笑)。でもよくあります。

常田:ありますよね(笑)。でもそれがCDの良さだったりもするんで、今作も歌詞カードを読みながら話の種として友達と盛り上がってくれたら嬉しいですね。


ー 「Ordinary」のイントロは古い映画のような雰囲気で、メロディもjazzyというか、カントリーというか。決して曲調が似ているわけではないですが、松田聖子さんの「SWEET MEMORIES」みたいな懐かしさを感じるテイストだと思いました。

大橋:そうですね。ジャズスタンダードで少しオールディーズっぽい雰囲気もあったり。出来上がったものを聴いた時、僕はちょっとディズニーっぽいなと思いました。こういうテイストにチャレンジしてみたかったんですよね。曲調もそうだけど、ヴォーカリストとしても。声を張り上げるばかりじゃなくて、メロウに歌う感じ。海外では今も主流というか、新曲でこういう楽曲を歌うアーティストは沢山いるけど、日本だとあまり聴かないですね。でもこの独特の懐かしさとか……作っている本人が言うのも変だけど、何て言うんですかね、この雰囲気って。

常田:ちょっと歌謡曲っぽかったりね。

大橋:そうだね。歌謡曲っぽさもあるし、カントリーっぽさもあるし。


ー 今、大橋さんが言われたように、J-POPだとこういう世界観は少ないですよね。

常田:マーチンさん(鈴木雅之)とかくらいかな……。

大橋:マーチンさんもやってないじゃない。どちらかというとマーチンさんはR&BとかSOULとか。

常田:あ、SOULか!そうだね、確かに。

大橋:でも確かに昭和の歌謡曲の人たちの目指していたところに近いのかもしれないですね。


ー 当時の歌謡曲って色々なジャンルを取り込んでいましたよね。

大橋:そうそう、そこなんですよ!この曲で目指したかったものは。


ー なるほど。そして「スイッチ!」は東海テレビ「スイッチ!」テーマソングですが、清々しいサウンドと「顔晴って(がんばって)」という言葉遊びがワクワクしました。

大橋:この曲は番組の企画として作った作品なんです。テーマは、歌詞を視聴者の方から募集して、その言葉を僕らが紡ぐこと。そうやって視聴者の方と一緒に作る企画だったので、「「顔晴って(がんばって)」も視聴者の方がくれた言葉なんです。ただ、送って頂いた言葉だけを繋ぐとやはり歌詞として成立しないので、自分たちがそこに何か言葉を足したり接続する言葉を考えて曲にしました。

常田:当然ですが、自分たちから出る言葉とは全然違うので面白かったです。ワンワードが条件でしたが1番の歌詞を丸ごと書いてくださる方もいたし。ただコロナ禍なので、もしかしたら後ろ向きでネガティブな言葉も多いのかと思ったんです。でも意外と前向きの言葉が多くて、そこは汲み取りたいなという気持ちになりました。


ー 先ほど常田さんが「されど愛しき人生」は応援歌だと仰っていましたが、いわゆる分かりやすい応援歌ともニュアンスが違うように感じました。曲の中では希望が見いだせないままというか……。だからこそタイトルの意味する部分をずっと考えていました。

大橋:「OverDriver」は正面から頑張れという曲で良いと思っていますが、「されど愛しき人生」は、そこをあえて言いたくなかったんです。


ー というと?

大橋:それこそコロナが始まってから特にそうですが、みんなが頑張り過ぎているというか……。だからもう“頑張れ”という言葉さえも逆効果に感じて、“頑張れ”とは言わない曲にしたいなと思っていたんです。最初から最後までとにかく救いのない歌。でもやはり音楽として何の救いもない歌を歌うのは違うとも感じたので、それならタイトルだけで全部を回収しようということで、このタイトルになりました。聴いてもらった人が、“こんなに辛いよ、こんなに辛いよ”と僕らが歌っていることで、例えば同じ境遇や心境にいる人が、“自分だけじゃないんだ…”と感じて、それが応援歌になってくれたら良いなという、そういうタイプの応援歌です。


ー まさに今の時代の新しい応援歌ですね。

大橋・常田:ありがとうございます!


ー ありがとうございました。


インタビュアー:秋山雅美(@ps_masayan


■ 「Hot Milk & Bitter Coffee」特設サイト
https://sp.universal-music.co.jp/sukimaswitch/hotmilk_bittercoffee/

■ スキマスイッチ HP
https://www.office-augusta.com/sukimaswitch/

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