POPSCENE - ポップシーン
POPSCENE - ポップシーン
高橋優が描く未来とは?「Piece」インタビュー!

高橋優が描く未来とは?「Piece」インタビュー!

September 22, 2021 18:00

高橋優

0
シェア LINE

今年8月24日、高橋優が主催の【秋田CARAVAN MUSIC FES 2021】開催中止のお知らせが高橋の公式サイトに掲載された。“落胆”と“英断”、その2つの言葉が頭をよぎったが、決して高橋は歩みを止めなかった。ha-j氏をアレンジャーに迎えたJICA海外協力隊CMソング「Piece」(9月17日配信リリース)では、今まで高橋自身が避けてきたことに挑戦している。その避けてきたこととは?今の時代だからこそ高橋が考える大切なこととは?


ー 【SUPER特番!! LIVE福島 風とロック芋煮会】、お疲れ様でした!

ありがとうございます!観られました?


ー 残念ながら観られなかったんですよ!でもSNSで盛り上がっているのは目にしていて。

Twitterの福島のトレンド1位にもなって、みんなで喜んでいました。めちゃくちゃ楽しかったですよ。もしかしたら僕が一番楽しませてもらったんじゃないかな(笑)。


ー そういう中、残念ながら【秋田CARAVAN MUSIC FES 2021】(以下:CARAVAN FES)を二年連続で中止せざるを得ない状況となりましたが、この中止は英断というか、ファンや地元を大切にする優くんらしい決断だと思いました。

CARAVAN FESの中止は悔しいですけど、開催する方が沢山の人を傷つけて恐ろしい状況を助長してしまうと思ったんです。それは僕の本意とはあまりにも違うから。風とロックに出演した時、2011年福島での風とロックの時と、今回のコロナ禍での状況ってちょっと似てるという話をしたんですよ。2011年に箭内(道彦)さんは6日間【LIVE福島 風とロックSUPER野馬追】を開催して、僕はあれはそれこそ英断だったと思うし、音楽はいつだってどこでだって奏でられるべきなのは今も変わらないと思ってるんです。でもあの時と明らかに違うのが、“未知”という言葉をみんなすごく使うようになったことかな。どういう状況下で人から人へ感染するのか2年経ってもまだみんな口にするじゃないですか。


ー ええ。

だからどれだけ感染対策をきちんとしても、やっぱり「でも感染るかもしれない」と言う人たちの言葉の方が今はまだ断然、人を恐怖や不安にさせる力が強いんですよね。勿論その人たちだって本当に不安だからそう言っているんだけど、でもそうやって恐怖に駆られている状況の中でフェスを開催して、色々な人たちをもっと不安な気持ちにさせてしまうのは全くもって本意ではなかったし、秋田県の皆さんと一緒に作り上げることが僕にとって一番大切なことなんです。だから北秋田市からの自粛要請が来た時に、やっぱり開催する選択肢を今はまだ取らない方が良いと思ったんです。秋田の人達と一緒に「また一緒に開催しよう!」って前向きにCARAVAN FESのことを考えられる日は必ず来ると信じて、中止することにしました。


ー その気持を持って、少しでも早く開催出来ることを祈っています!

ありがとうございます!


ー 以前、配信シングル「ever since」リリース時に少しだけJICA海外協力隊CMソング「Piece」のお話を伺いましたが、今回やっと全貌について語って頂ける時がきました。めちゃくちゃ良い曲じゃないですか!

ありがとうございます!


ー サウンドも今までとはかなり違う作り方だし、イントロの一番冒頭が特に珍しいというか。全体的にもダイナミックかつ繊細だし。

今回サウンドメイキングを一緒にやってくれたのがha-jさんという、嵐とかKinKiKidsなどのジャニーズ楽曲を多く手がけられている方なんですが、それ以外にも本当に多岐にわたって色々なアーティストの編曲をされているんです。多分ha-jさんにお願いしたら、ロックサウンドだろうがポップサウンドだろうが、いかようにも作っていただけると思います。本当に魔法使いみたいな方なんですよ。僕が考えていたこの曲の良さやそのイメージって、今までの高橋優ではあまりやってこなかったポップ中のポップというか、何なら夢いっぱい希望いっぱいのメルヘンチックと言って良いぐらいの音。何だろうな…ちょっとおとぎ話が始まるぐらいの感じ?さっき言われていた、ど頭の感じとかまさにそうだし。


ー ディズニーじゃないけれど、そういうファンタジーさを感じました。

今まではちょっとそれを避けてきてたというか、アルバム『PERSONALITY』を作るまでは、やっぱりどこか骨太なロックサウンドにこだわってた部分があって、バンドの音をライヴでそのまま表現できるサウンドメイキングを心がけていたんですけど、この「Piece」に関しては、エレキギターの音やベースの音にはさほどこだわらなくても良いということを、ha-jさんには伝えました。勿論そういう音は鳴っているし、最終的にはバンドサウンドになっているんですが、大きい音像としてはディズニーだったりアニメに描かれるおとぎ話的なサウンドですね。


ー ha-jさんとは初めてでしたっけ?

そうです。レーベルスタッフからの紹介なんですが『PERSONALITY』で色々な編曲家の人と曲作りをしようというのもその人の提案だったです。


ー そうだったんですか。

ええ。僕一人だったらやっぱり人見知りなので、あまり色々な方と曲作りする発想にはならないんですが、今回は自分で作っていたそういう垣根をどんどん越えていきたいなと思ったんです。出会いを進められたらどんどん出会っていって、新しいものを作っていって……。この曲のテーマもまさにそこ!出会うべくして出会っているけど、出会う前って“あの人と気が合うかな?”とか、会ったことのない人と会うって一瞬ドキドキしたりするじゃないですか。


ー ええ。人見知りしちゃうかもとか?

そうそう(笑)。僕はそこで割と心を閉ざしちゃう方なんですが、今回そのスタッフの繋がりの中で紹介していただき、「ha-jさんも秋田出身なんだよ。」とか、共通話題とかもいっぱい振っていただいたりして楽しく作業させてもらいました。多分どんな人とやってもha-jさんはきっと楽しい気持ちにさせてくれる人なんじゃないかな。人間が出来ている人というか、僕と正反対だと思いますね。


ー いや、そんなことはないでしょう(笑)。その他、聴きどころについても教えてください。

初の試みとして今回コーラスが僕ではなくてha-jさんのお知り合いのヴォーカリスト、塚本タカセさんにお願いしたんです。「塚本さんのコーラスはすごく良いよ。」ってオススメされて、かなり何テイクもコーラスを録っていただきました。だから僕としては歌に集中出来たし……楽というか(笑)良かったんですが、ただその中で僕も欲が出てきて。折角そういうコーラスの方に歌っていただけるのであれば、コーラスがよく聴こえる部分もあったら良いなと思って、歌詞の中には入ってない言葉をコーラスで作りました。そこでは「Half of It.Love&Peace.Half of It」と歌ってるんですが「Half of It」って“面白いのはこれから”という意味なんですよ。“半分までも来てないよ”っていう意味でね。


ー なるほど!

その部分は是非注目して聴いて欲しいですね。あと余談ですが、同名の映画があるんですよ。『ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから』って。Netflixで観れますが、めちゃくちゃいい映画ですよ!


ー じゃあ観てみます!

是非是非!


ー 「ピース」は、<平和>を意味する言葉であり、パズルのピースであり。そういうダブル・ミーニングの面白さも感じました。

表記としては今回パズルの“Piece”の綴りで発表させていただきましたが、パズルって誰かが描いた景色や誰かが撮った写真など、あらかじめ決められた景色に向かって組み立てていくじゃないですか。そのパズルでやる作業と今の僕らの日々を何となくなぞらえて考えた時に、僕らの日々はパズルのようであってはいけないんじゃないかなと思って……。誰かが作った景色に向かって歩いていかなきゃいけないとか、誰かが思い描いた未来の欠片になるべきなのか考えた時に、ちょっと違うのかなって。それによって綺麗なパズルは完成しないかもしれないけど、自分の意思で、でたらめに組み立てたり自分の感覚で自分の日々を構築していったら楽しい未来が意外と待ってるんじゃないかな。僕らは今、そういう局面に立たされてるんじゃないかなと思ったんですよね。SNSでもテレビでも、“先の見えない未来”だって口を揃えてみんなが言っている感じで、ある種それが合言葉みたいに聞こえる時があって……。でも先が見えないんじゃなくて僕らはその先を、一人一人が自分の意志で組み立てていく日々がこれから始まっていくんじゃないかなって僕は思っています。例えばCARAVAN FESにしても、今年も開催出来なかったし、来年も再来年も開催出来ないかもしれないって嘆いている暇があったら、今組み立てられることを今やっておかなきゃいけないし、それは前例のあるものではないんですよね、常に。


ー そうですよね。

前例に倣うことも大切かもしれないけど、今僕らが必要なのはデタラメでも何でも良いから、自分がこうだって思うものを組み立てていって誰もまだ見たことがない未来を見に行こうよってことなんです。それは人との出会いも結構同じで、JICAさんは海外協力隊なので日本人の方がJICAという意思を持った団体に所属していなければ、なかなか行く機会が少ないであろう国へ行って、協力して人と人が出会ったりする。そこから新たな未来が生まれると僕は認識してるんですが、そうやって出会うはずのなかった人たちが出会うことで新しい未来が出来たりもするし、ひとつ意志がなければ多分出会わなくて良いかもしれない。そこをあえて出会わせたことで面白いことが始まるってあると思うんですよ。そういった部分を今回パズルのピースに見立てて歌ってみたいなと思って書きました。