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関取花、メジャー2ndミニアルバム『きっと私を待っている』インタビュー

関取花、メジャー2ndミニアルバム『きっと私を待っている』インタビュー

March 3, 2020 19:30

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筆者が関取花をはじめて観たのは「行列のできる法律相談所」。ユニークな歌詞はまた聴いてみたいと思えたし、物怖じしない、でもどこかシニカルなキャラクターは好感さえ持てた。関取はその後「ニノさん」、「今夜くらべてみました」など、いわゆる “人気お茶の間番組”への出演によって、更に注目を集めた。また「リポビタンD」WEBCMや、赤城乳業「イベールアイスデザート」TVCMなど、多くのCMソングを手がけ、時には本人も出演した。RISING SUN ROCK FESTIVAL、ARABAKI ROCK FESTIVAL、FUJI ROCK FESTIVALの大舞台に上ったのもインディーズ時代だ。そして2019年5月に ミニアルバム『逆上がりの向こうがわ』でメジャーデビュー。更に今年3月4日にミニアルバム『きっと私を待っている』をリリース。インディーズ時代からタッグを組んできた野村陽一郎氏に加え、ヒット曲の立役者のトオミヨウ氏、會田茂一氏をプロデューサーに迎え、関取の魅力が詰まった音楽を届けてくれた。今回はそんなアルバムへの想いとプロデューサーについて語ってもらった。


ー メジャーデビューしたのは昨年5月ですが、インディーズ時代からCMソングの制作やTV出演だけでなく、大規模なフェスへの出演など目覚ましい活躍でしたね。

ありがとうございます。


ー デビュー時にもインタビューで訊かれたと思いますが、メジャーになって変わったことってありますか?

人がどうこうと言うより、一番大きかったのは自分の意識ですね。インディーズ時代に様々なお仕事させて頂いた中で、ご家族連れや友達同士など色々な層のお客さんがライヴに来てくれる機会が増えたんです。そうすると更に幅広い年齢層の方に聴いてもらいたいと思うようになり、そのタイミングとメジャーデビューのお話のタイミングが重なったので、今ならメジャーにいっても大丈夫かなと思ったんです。そこからですね、意識が変わってきたのは。


ー 今作『きっと私を待っている』を作る上で、前作のデビューミニアルバム『逆上がりの向こうがわ』を意識した点はありますか?

『逆上がりの向こうがわ』を作った時は、今までコツコツ積み上げてきたものをここで花咲かせねば後がない……とまでは言いませんが(笑)、やっぱり売れたいと思ったし、20代後半なので、ここから新たにコツコツ積み上げるというよりは、ひとつひとつをものにしていかないといけないって、力が入りすぎちゃった部分もあったんです。でもそれを前作で学び、今作は良い意味で力を抜いて作れたと思います。


ー 世間では「ひがみソングの女王」なんて言われますが、実はそれって本当に関取さんの楽曲のひとつでしかないというか、決してメインではないんですよね。

そうですね(笑)。ただ入り口は何でもありがたいと思っているんです。メジャーデビューさせて頂いて、逆の導線も面白いかなって。例えばラジオでパァっと明るい曲がかかって、「誰だろう、この人?」って気になり他の曲を聴いた時に、“ずっと楽しくて明るい曲を歌っているだけじゃないんだ、この人は”と思ってもらえた方が楽しいかなって。現在から昔へ逆の導線で知ってもらい、曲だけでなく私自身にも興味を持って頂けたら嬉しいです。その方が規模が広がった時にみんなが同じ温度で楽しんでくれるかなと思うので。


ー ライヴでは特にそうですよね。

まさにそうです。曲を聴きに来てもらうのは勿論嬉しいけど「何となく花ちゃんに会いに行こう。」みたいな感覚で、フィールドは大きく、距離感は近く居られれば良いです。


ー そのワード良いですね!今作『きっと私を待っている』は、インディーズからの世界観と、メジャーだからこその音の広がりの両方を感じられて、耳に残っていつの間にか部屋で口ずさんでいました(笑)

ああ、それが一番嬉しいです!


ー『きっと私を待っている』というアルバムタイトルですが、最初は「家路」と繋がっているのかと思いました。

曲で言えばどちらかというと「はじまりの時」がアルバムタイトルへ繋がっている気がします。帰る場所で誰かが待っているというよりは、この先にある、色々な景色が私を待っているという意味で。


ー ああ、なるほど。

知らない場所に向かっていくような、そういうワクワクする気持ちを込めました。


ー 関取さんはインディーズ時代から歌詞の一人称が<僕>など、男性目線歌詞が結構ありますよね。しかも今作は「家路」を含め、全部<僕>なんですよね。

(紙資料をめくりながら)あぁ…本当だ。<私>はないですね(笑)。私の中で<僕>って、あまり男性という意識がなくて、イメージとしては中姓なんです。あくまで自分の意識の問題ですが。多分ミュージシャンをやっている時点で、好奇心や衝動が強いんでしょうね。例えば人のライヴを観に行くと、他の場所ではありえない涙の流し方をしたり、意味も分からず足先から身体中に感動が伝わったり思いっきり笑ったり出来るんです。だから音楽が好きだし、音楽の道に進んだんですが、多分その感覚が自分が描いている<少年像>とリンクするんだと思います。その根本のピュアな部分はどんなに歳をとっても変わらないかもしれません。もし結婚して子供が出来たら母性が生まれて、もっと視点が<私>に寄ってくるのかもしれないですが。でも現状、何かが自分を待っていると思った時に、自然と曲では<僕>という一人称になりますね。書いた時のテンションで決まることも多いですが。


ー 少年像と中性って、何となく分かる気がします。

私自身、今でこそ反抗期も終わり(笑)フラットな気持ちで実家に帰りますが、夢を抱いて自分で一人暮らしを決めた時はどちらかというと、少年が冒険に行くイメージなんです。だから「家路」に関しても、自然と<僕>という言葉が出てきました。ただアルバムタイトルとなった時は自分の顔がジャケットにバーンっと来るので、<私>の方がしっくりきたんです。


ー 確かにそのバランスは大切かもしれませんね。リード曲「逃避行」は関取さんの曲としてはイントロがまず新鮮でした。ドラマチックというか…。

この曲は、インディーズ時代からお世話になっている野村陽一郎さんにプロデュースして頂いたんですが、今までもちゃんとメロディも残るし私の顔も浮かぶようなイントロをつけてくれることが多かったんです。ただ作品をご一緒する中で、この曲のような明るいだけではないトーンの曲は初めてです。結構パッと開けた曲が多かったので。野村さんと事前にお会いした時、一本細い緊張の糸が張っているような…というか、洞窟の中で真ん中を冷たい風が通り抜けていく、そんな緊張感あるイントロにしたいとお話しました。すごく感覚的で抽象的だったんですが、汲み取ってくださって。なのでイントロからパッと開く今までの感じとは違うかもしれません。


ー 今、緊張感というお話もありましたが、この主人公たちの逃避行の行方がすごく気になって、色々考えてしまいました(笑)。

ああ(笑)。でも色々考えて欲しくてこういう歌詞にしたので、すごく嬉しいです。今いる場所から逃げ出そうと思った時って、その先に絶対的な着地点や安心があって逃げ出すわけじゃないじゃないですか。


ー ええ、確かにそうですね。

でも兎に角ここから逃げ出したいとか、兎に角ここじゃないどこかに行きたいと思うその瞬間って、決して絶望ではないんですよね。それはアルバムタイトルへも繋がるんですが、ここじゃないどこかに行けば何かが僕らを、私たちを待っていると信じて、何か分からないものに向かい続ける。そこに美しさがあると思うんです。今作では全曲、答えや終着点、オチをあえてあまり提示していません。この先どうなったんだろうと余白を残したくて。この「逃避行」はその中でも一番象徴的かもしれません。


ー なるほど。そういえば関取さんは詞先でしたっけ、曲先でしたっけ?

最近はメロディから作ることが多いですね。ただ今作はメロディが出来た時点で、歌詞の世界観や景色が何となく浮かんでいる作品が多かった気がします。例えば「逃避行」であれば雨の夜空を2つの影が飛んで横切っていくような感じとか。


ー 物語自体がということではなく、質感として宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を想像しました。

ああ、なるほど!


ー 関取さんの曲…例えば「逃避行」のサビや「はじまりの時」のメロディにはJ-POPの王道的要素を感じるし、「家路」はジェーム・テイラーのような70年代フォークやポップスの要素を強く感じました。関取さんの音楽的ルーツってどういうところにあるんですか?

影響を一番受けているのは、それこそ70年代のシンガーソングライターですね。ジェームス・テイラーは勿論だし、キャロル・キング、ジョニ・ミッチェルなどの歌い方も含め、サウンドや世界観が大好きです。ただそういうシーンが好きで、そういう音楽をオリジナルでも表現したいと気付いたのはミュージシャンになってからなんです。


ー そうなんですか?

ええ。だからギターを握り人前で歌う前の、本当の意味でのルーツはJ-POPかもしれません。それこそ中学生の頃は自分でトップ10のCDをレンタルショップで借りてきて、浜崎あゆみさんやKinKi Kids、w-inds. などMDに焼いて。


ー MD!懐かしい!

ですよね(笑)。それをみんなと貸し借りするような子でした。


ー お小遣いで一番最初に買ったCDとか覚えていますか?

「だんご3兄弟」です。短冊型のCDで(笑)。


ー 短冊型のCDも懐かしい(笑)。でも関取さんの年代のミュージシャンに話を伺うと結構いますね。「だんご3兄弟」を最初に買った人。

いや、多いと思いますよ!うちは親が無類の音楽好きで、レコードが常に流れている家庭というわけではなかったんですが、母はスピッツが好きだったので私も影響を受けていると思います。でも自分は本当に何でも聴いていました。基本的にはわかりやすいメロディが今でも好きです。

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