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つるうちはな、メジャーデビューアルバム『サルベージ』インタビュー

つるうちはな、メジャーデビューアルバム『サルベージ』インタビュー

October 22, 2019 11:00

つるうちはな

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“存在そのものが愛”と表現される、爆発的エネルギーを放つシンガーソングライター、つるうちはな。オフィシャルのニュース原稿などに記されるキャッチコピーとも言えるこの言葉が真実だと知ったのは10月の初め。パワフルでありながら繊細さも感じられる口調からは人に対しての想いが溢れ出す。<海難救助><ダイバーによる沈没船の引揚げ作業>などを意味する『サルベージ』が、つるうちのメジャーデビューアルバム。まさに彼女にぴったりのタイトルだ。今回はメジャーデビューへの想いやアルバムについてだけでなく、女性シンガーソングライターを多く集めた、つるうちが代表を務めるインディーズレーベル「花とポップス」についてや自身の女性崇拝について訊いてみた。

ー 10月23日にアルバム『サルベージ』でメジャーデビュー。おめでとうございます!

ありがとうございます。


ー 活動して約20年ですが、そもそもメジャーというフィールドは意識していたんですか?

すごく意識していました。16歳くらいでオーディションに合格して、一度メジャーデビューの話も出たんですが結果的になくなってしまい…。その後もずっと色々なオーディションに応募はし続けていました。


ー こう言ってはなんですが、意外でした。

それはよく言われます(笑)。でも特に20代の頃に強く意識していたメジャーデビューが出来て、嬉しいです。


ー 改めて日本コロムビアからデビューするきっかけを教えていただけますか。

「花とポップス」がちょっと話題になり始めていて、ちょうど新人発掘をしていたコロムビアさんもライヴを観に来てくださったんです。それが私が今いるチームの人たちなんですが、終演後にその時来ていたスタッフが泣きながら(笑)CDを買いに来て「一緒にやろう!」って言ってくれたんです。それから少し時間は経ちましたが、その間何度もライヴに来てくれて。 信じられないです、本当に。長い期間音楽をやってきましたが、こんなにシンプルに「やりたいからやる!」って言ってくれるって、“なんて会社だ!”ってビックリしましたもん(笑)。


ー アハハ!でも本当は一番大切なことかもしれませんね。ただメジャーになると、様々なジャッジをご自身で下していた今までと違ってくると思うんです。そこに対しての抵抗はなかったですか?

なかったですね。実際やってみたら、私に関わってくれている全スタッフがありえないくらいこちらの意見を尊重してくれたんです。むしろ私が萎縮したり構えたり自分をより良く見せようとしすぎている時に「そのままのはなちゃんで良いから、肩の力を抜いてやりなさいよ。」って言ってくれて。もし自分の意と違うことを言われてもやるつもりだったんです。逆に言うと、全部自分で決めてきた20年売れていないんだから(笑)。勿論、沢山お任せした部分もありました。でもそれはこのスタッフたちの判断を信じられるから出来たこと。この人たちが決めたことなら私が判断するより絶対に良いだろうと思える人しか周りにいなかったので、もう迷いなく任せようと思えたんです!


ー 今もお話に出た「花とポップス」ですが、レーベルを作るきっかけを教えて下さい。

先程のお話と繋がりますが、メジャーデビューを目指して売れたいと突っ走ってきた20代は結果がでなくて、これはもう、自分が音楽を長く続けていく大義名分や理由や土俵を自分で作るしかないなと思ったんです。ちょうどその頃、女性アーティストへの楽曲提供やプロデュースを始めていた時期で、周りに女の子が集まっていたんです。でもそういう女の子たちって<流通を通すには?>、<プロモーションを自分でする方法は?>、<そもそもアルバムってどうやって作るの?><予算ってどれくらいかかるの?>など、色々音楽に関することに悩んでいて…。だから権利は本人持ちで私はちょっと手伝う形にして、そういうノウハウはないけど才能がある子たちが目的を達成するために「花とポップス」を立ち上げました。


ー 女性が多かったのは、偶然のタイミングだったんですね。

そうなんです。別に選り好みもしていないし、男性女性問わず好きな人は好き。ただ、幼少期から女性に対して強いリスペクトがあって、そういう意味ではあきらかに分けていたんですよね、男の子と女の子を。自分も女性なのに、崇拝の対象に近いというか。だって私、女性が好き過ぎて一緒に温泉入れないですもん(笑)。


ー それって凄いですね(笑)。

自分でもなんでこういうマインドになったのか解らないんですけど。…あ、ただ恋愛対象は男性です。


ー 旦那さんもいらっしゃいますしね。

ええ。だから”恋愛対象”ではなく、リスペクトなんでしょうね。今回『サルベージ』にも収録した「あの子の裸を見たくない」も、実は私の女性崇拝の行き着いた先なんです。昔から自分の女友達は、すごく頭が良かったり美人だったりして逆にハブられる子も多くて、そんな突出した子を私が好きになって口説くパターンだったんです(笑)。そうやって学校や社会の中で、みんなと同じに出来ない女性がいつも私にとっての興味の対象だったし、いつかこの人たちと会社を作りたいって若い頃から思っていたんです。実際、中学時代の親友が今「花とポップス」でアクセサリー作家として参加しているんです。


ー そういう想いを現実にされるって凄いですよね。そう言えば「あの子の裸を見たくない」は女性崇拝の行き着いた先と言われましたが、この曲の主人公にとってスターであり天使だと思っていた女の子が裸になると分かったサビ部分、どちらかというとネガティブな衝撃だと思うんですが、あえてポジティブにも感じるメロディ…特にホーンが印象的でした。

アレンジを担当してくれたのが「無重力バンド」という私のバンド編成時のベーシストで坪光成樹さんという方なんですが、変質的ですごく才能がある人で!私がこの曲でどんなことを表現したいか物凄く汲んでくれたと思っています。特にそのホーン部分は。この話って半分滑稽だなと思っていて。私が女性が好き過ぎて一緒に温泉に入れないっていうのも滑稽だし、好きなアイドルが脱ぐことになって、見たくないって言いながらも見てみたい…から、見てしまうに変わる。“結局見るんかい!”っていうツッコミ待ちみたいなところも滑稽だし(笑)。でもこういう歌詞を重く演っちゃうと本当に重いから、こういうトーンが良いんだろうと思いました。


ー メジャー・デビューアルバム『サルベージ』は、オリジナルアルバムとしては、『LOVE』(2016年)以来。勿論レコーディング環境やミキシングの違いはあるでしょうが、『LOVE』では絵本のような温かみを感じたのに対して、『サルベージ』はより音の粒が立ち、全体的にメリハリとキラキラ感が増しているように感じました。

『LOVE』 は、初めて恋愛をコンセプトに作ったアルバムで、「恋が愛に変わるまでのお話」というキャッチコピーをつけていたんです。キラキラしていて温かくて可愛くて、どこかほわほわしていてファンタジックで…。『LOVE』 は自分の恋や愛を一回消化するアルバムでしたが、自分の消化作業って実はだいぶ前に終わっていて、”あと何をしたいのかな?“と自身に問うた時、単純に、“人のためになることがしたい”と思ったんです。だから今回の『サルベージ』は、自分の消化や内部の話ではなく、明確に誰かに対して捧げたいとか、誰かの心を拾い上げたいって、目的がはっきりしていて。だから一曲一曲の輪郭もはっきりしている。コンセプトアルバムというより、曲ごとの意思が強いんです。かつ『LOVE』ではお一人にお願いした編曲も、今回は湯浅篤さん、タカユキカトーさん、坪光成樹さん、タカタタイスケさんの四組にお願いしました。それぞれ編曲の特色が全然違うので、色々なカラーが出たと思います。


ー そうですね。リードトラックの「おまじないを君に」は、伝える人や伝え方によっては綺麗ごとになってしまいそうなところを、つるうちさんが歌うと素直にそうだと思える魅力を感じました。

嬉しい!一番嬉しい!もしこれが嘘くさく聴こえない理由があるとしたら、本当に目の前の友人を助けたい想いから一瞬で…と言っては大げさだけど、1〜2時間で書いてその子に送った曲だからかもしれません。友人が大ピンチに陥っていたんだけど、私が出来ることは何もないしどうしようと思って、電話を受けて考えていた時に突然フワーっと曲が降りて来てイントロからエンディングまで出来たんです。そこからすぐに録音して、その友人に送りました。


ー そのご友人の反応は?

まず「はやっ!」って(笑)。


ー アハハ!

でも「本当にありがとう!」って泣きながら電話してきてくれました。その時、“あ、この子はもう大丈夫だ”って思えたんです。声にエネルギーが戻っていたし。人を助けるとか救うって大層なことに聞こえるけど、もう駄目だと思った友達に「私はあなたのことが物凄く大好きだから、大丈夫!」って言うだけでも良いと思っていて。ただ、宗教的な意味合いの<救い>だとそれこそ大層なことだし仰々しいから<サルベージ>なんです。<救う>と言うより<掬う>。 音楽をやっている中で、“あなたのことをちゃんと愛している人がいる”という愛情のエネルギーをどうやったら一対一の関係だけでなく、より多くの人に伝えることが出来るんだろうという旅をずっとしてる感じがしていて。“届かないなぁ…苦しいなぁ。どうしたら届けられるんだろう”って思っていたけど、それがこの「おまじないを君に」でやっと、“これなら届くかも”と感じられました。


ー 歌詞では「おまじないを君に」と言いながらも、自分にもちゃんとおまじないが欲しいと言っているところが良いなと思って。

そこに気づいてもらえて嬉しいです。誰かの為にやっていることって、結局自分の為だと思っているので。それがもし本当に誰かの為だけになると自己犠牲になっちゃうじゃないですか。


ー なりますね。

自己犠牲になると、今度は相手に期待し始めたり「これだけしてあげたんだから、何か下さい。」って見返りを求めるようになってしまう。必要なことって、相手に何かをしてあげられると同時に自分も救ってあげることだと思うんです。“これをすることによって私が救われている。私が嬉しい。だからそれ以上でもそれ以下でもない”。そういう潔さを私自身は求めていて、そうなりたいって思うしそういう音楽でありたいとも思うんです。


ー でもそれって正直難しいですよね。

そうですね。世の中には色々な宗教があって昔から多くの人が愛情についてそう言っているし、考えているし、追い求めている。でも簡単に出来ないからこそ経典や教えが伝わったり、ジョン・レノンの「Imagine」が沢山の人に聴かれていたりしていると思うんです。私だってそう簡単には出来ないけど、そういう気持ちに働きかける音楽でありたいです。