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半崎美子、ニューシングル『母へ』インタビュー

半崎美子、ニューシングル『母へ』インタビュー

May 6, 2019 12:30

半崎美子

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「ショッピングモールの歌姫」と言われ、 どこにも所属することなく個人で東京・赤坂BLITZ(現・マイナビBLITZ赤坂)の単独公演を3年連続開催。しかもソールドアウトとう偉業を成し遂げたシンガーソングライターの半崎美子。2017年、書き下ろしの「お弁当ばこのうた〜あなたへのお手紙〜」がNHK『みんなのうた』で起用されると、同年4月、日本クラウンよりメジャー1stミニアルバム『うた弁』を発売。大学を中退し、北海道から上京。パン屋に住み込みで働きながら、人の心に寄り添う歌で多くの人を魅了した。そんな一風変わった経歴から、数多くのTV番組でも取り上げられたが、現在「お弁当ばこのうた~あなたへのお手紙~」は沢山のリクエストにより、4月からNHK Eテレのリクエスト枠で再放送中。それは経歴の話題性だけでなく、楽曲の力や人間としての魅力が溢れているからこそ、みんなが半崎の音楽を求める証拠ではないだろうか。そんな半崎が5月8日、ニューシングル『母へ』をリリース。今回は母親のこと、楽曲のこと、なぜそこまで音楽に情熱を注げたかなどを語ってもらった。


ー 半崎さんは「ショッピングモールの歌姫」と言われていますが、実は私自身、ショッピングセンターのデベロッパーに勤めていたので、ライヴハウスなどとの違いは肌で分かっていて。

そうでしたか!


ー 色々と集客に対してご自身で考えられたとか。

最初は歌わせて頂けることに舞い上がっていたんですが、基本的には音楽を聴きに来る場所ではないので、そのうちどうやったら足を止めてもらえるだろうと考えるようになりました。歌を届ける30分ならその30分間の時間だけではなく、準備の段階でまず色々な工夫をしましたね。モールの会場それぞれに形状やステージの場所も違いますし、それが都心なのか郊外なのかによってもお客様の層が全然違うから、毎回ステージ後に「これは違ったな」とか「こういう風にやったら良かった」の繰り返しで。そうやって実践を重ねていく中で、お客様の座りやすい椅子の配置だったり、ステージ周りだけでなくステージに誘導するための動線にポスターを置いたりと、足を止めやすい会場づくりをするようになりました。ライヴが始まるまではチラシ配りやアナウンスなど、自分自身で告知したりと、本当に色々やっていましたね。


ー 今はご自身でそこまでされることはないと思いますが、逆に動線やポスターの位置など気になってしまうのでは?

最初は気になっていましたね。メジャーデビューした後も、最初の頃はそれまでと同じように会場づくりをしていたので、さすがに「もう控室に入っていてください。」ってスタッフに言われました(笑)。


ー 半崎さんならではのエピソードですね(笑)。

ええ(笑)。


ー 話は更に遡りますが、大学を中退してお父様の許しを得られぬまま上京。公式サイトを読むと、かなり飽き性だったらしい(笑)半崎さんが「音楽以外の生活はドブに捨ててもいいと思って生きてきた」とありますが、そこまで熱意を持てた理由は?

私自身何故なんだろうって思います。すごく好奇心旺盛なので、子供の頃からすぐ何かに挑戦するけど結局辞めてしまったり、新しいものに目がいってしまったり。だから父が反対するのも頷けます。歌をやりたいと衝動的に言っても、またすぐに辞めるだろうというイメージを持っていたかもしれません。何故歌だけがこんなに信念を持って続けられているのか…。単純に歌が好きということだけではとどまらないものがあるんです、きっと。なので私自身が歌うことによって素晴らしい出会いが沢山あり、その出会いに支えられたり救われたりしてきました。単純にアーティストとして曲を作って届けるという発信だけではなく、それ以上に受けとるものが大きかったんです。勿論、上京した当初はデモテープをレコード会社や事務所に送っても「音楽を辞めた方が良い」「向いてない」など、否定的な声の方が多かったです。ただそこで諦めなかったのは不思議というか…(笑)。何故か、自分の歌や自分自身に対して揺るぎないもの、疑いのないものがあって。きっと一人でも自分の歌に感動したと言ってくれる人がいたことが、自分の支えになったと思いますし、歌が自分の場所になったんだと思います。


ー 現在はお父様も応援されているそうですが、当時お母様は?

母はすごく応援してくれました。それもすごく大きかったですね。パン屋さんに住み込みの仕事を決めて家出同然で上京したんですが、母は一緒にパン屋さんに挨拶も来てくれましたし、フラフラになりながら大荷物で北海道からパン屋さんに訪ねてきたこともあって、何かと思ったらメロン6個とラーメン6箱を持ってきて(笑)。


ー それはフラフラになりますよ(笑)。

重くてバスに登れなかったって言っていました(笑)。

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ー それだけ心配だったんでしょうね。

そうですね。その日は私の部屋に母も泊まって次の日の朝に帰ったので、私がお昼休憩で自分の部屋に戻った時にはもういなかったんですが、置き手紙と一緒に、私が当時大好きだったエビドリアを作ってありました。


ー 聞いているだけで泣けてくるんですけど。

休憩中に泣いたのを覚えていますね。


ー 本当に愛情の深さを感じます。今作のタイトルナンバーの「母へ」はまさにそんなお母様へ、半崎さんから送る手紙のようにも思えたのですが。

まさにそうですね。自分の母を思って書いた歌詞です。優しさに強さを内包しているような、常に子供の為に生きているような母です。母は今も働いているんですが、高校時代から夜学に通いながら働いて、父と結婚してからも父同様、仕事を3つくらい掛け持ちしながら私を含めた三姉妹を育ててくれていたんです。


ー そうだったんですか。

それでも自分のことで泣き言を言ったり弱音を吐いたりするところを見たことがなかったし、常に動いているというか、座っているイメージがなくて。それが小さい頃から持っている母の印象でした。だからそんな母親の生き方を見て私も学びますし、私も母になった時に自分の母親がしてくれたようなことを全部してあげたいと思いますね。


ー「お弁当ばこのうた〜あなたへのお手紙〜」や「生まれる前から」など、今までもお母さんをテーマにした愛情深い楽曲がありましたよね。勿論この「母へ」もすでにお母様は聴かれていますよね。

はい。コンサートに来た時にこの曲を歌ったんですが、母はすごく泣いていて。いつかCDになったら良いと母も思っていたようなので、とても喜んでいました。


ー これこそ素晴らしい母の日のプレゼントになりましたね。

そうですね!


ー この曲は武部聡志さんが編曲ですが、武部さんとはデビュー当時からでしたっけ?

ええ。だからまだ一緒にお仕事させていただくようになってから2年は経ってはいないんです。でもその間、作品やコンサートで色々お世話になっています。


ー ショッピングモールでのライヴでも演奏してくださったとか。

そうなんですよー!武部さんと言ったら普段はコンサートホールで演奏されているイメージなので、大丈夫かなと思って伺ったら「全然いきますよ。」と快諾してくださって。それこそ私の学校や病院を訪ねる活動を応援してくれて「そういう時も是非呼んでください。」と言ってくれる懐の深い方です。


ー ピアノも武部さんが弾かれているんですね。

はい。この「母へ」もライヴでは何度も歌っていたんですが、自分の弾き語りでしか歌ったことがなかったんです。だから初めて別の方に演奏していただく時には、是非武部さんにお願いしたいと思って。やはり素晴らしいピアノでした。


ー 半崎さんから見て、武部さんはどういう方ですか?

アーティストの意思をすごく汲んでくださる方だし、演奏面においても素晴らしいアイデアが瞬発的に出てくるんです。多分、日々音楽のことを考えているんでしょうし、日常生活をしていても頭の中で常に何か音が鳴っているんじゃないかと思うくらい。だから今回ご一緒出来て本当に嬉しかったですね。


ー ミュージックビデオ(以下:MV)も観させて頂きました。今回もジャケットを含め半崎信朗さんご夫妻による作品。半崎さんのTwitterにあった「半崎」さんが3人で、現場が混乱したというお話が面白くて好きです(笑)。

そうそう(笑)。半崎信朗さんとはインディーズの頃から一緒にお仕事させて頂いているんです。


ー そうなんですか。今回は昔話風なアニメーションですが、初めて完成作品を観られた時はどうお感じになられましたか?

元々アイデアの打ち合わせはしていたので、半崎信朗さんが考えていた<昔話風なアニメーション>という着想から色々ディスカッションを重ね、ストーリーやキャラクターは分かっていたんです。でも実際にそのキャラクターが動いているあの完成したMVを観た時は胸に沁み入ったというか、泣けました。母もそうですが、あの世界観の雰囲気から祖母も思い出しました。


ー 半崎信朗さんもそうですが、メイクさんやカメラマンさんなどもずっと同じ方たちとタッグを組まれていますよね。

確かにそうですね。ミュージシャンもそうですが、CDの制作チームも私がインディーズで活動していた頃からずっと携わってくださる方たちなんです。それこそカメラマンの方なんてもう10年以上協力して頂いていますね。


ー ではメジャーデビュー後、その方たちとまたお仕事をしたいと、半崎さんからレコード会社側へお願いをされたんですか?

そうです。そういう私の願いをレーベル側も理解してくれたので、制作においては本当に自分らしくやらせてもらえています。


ー 良いか悪いかは別としても、メジャーになると携わる人が変わることが多いため、イメージも変わって見えることがありますが、メジャーになっても半崎さんが大きく変わって見えることがないのはそういう理由だったんですね。

それは本当にありがたいですね。ある意味、メジャーになって自分の持ち味や見せ方が変わるということが自分の中ではあまりピンとこなくて。自分が今までやってきたことを肯定したまま、その延長線上で更にスケールアップしていきたいという思いがあったので、勿論レーベルの力は必要だったんですが、実際その中で思い描いていることを形にさせてもらえている環境は、すごくありがたいです。それにカメラマンやメイク、その他やはり個人でやっていた頃から皆さんは全部分かってくれているので、話が早いです(笑)。でもきちんと新しいものを取り入れるアンテナは持っているし、それぞれの分野で私以上に活躍されている方々ばかりなので、私自身も刺激を頂いています。


ー そういう関係性って良いですね。

本当にそう思います。インディーズ時代に作った「明日へ向かう人」という曲のMVを初めて半崎信朗さんにお願いしているので、彼も長いです。その時も名字が同じということで「親戚だ!」と言い張って色々やってもらい…(笑)。当時はまだ彼も結婚前でしたが、その後ご結婚し、お子さんも生まれて、それこそ家族が増えていくのを見守る親戚みたいな気持ちです。

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ー 現在、北海道エリアからO.A.されている「ネスカフェ エクセラ 新こまやか焙煎篇」CMにお母さん役として出演されていますね。

『母へ』をリリースすることは決まっていたので、このお話を頂いた時にはすごいタイミングだと思いました。