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「生活感」を大切にする、『ゆいにしお』のリアル。

「生活感」を大切にする、『ゆいにしお』のリアル。

May 15, 2019 12:30

ゆいにしお

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2018年に日本コロムビア主催「半熟オーディション2018」でグランプリを獲得したシンガーソングライターのゆいにしお。2016年には「SONG’S NAGOYA 2016」最終審査出場。2017年「ソニーキミウタオーディション ファイナル」出場。 同年「未確認フェスティバル」名古屋地区出場など、それまでも地元愛知を中心に注目を集めてきた。

「半熟オーディション2018」でのグランプリ獲得の手応えを伺うと「 正直、最終審査はまったく手応えがなく、“落ちたかも…”という思いでいっぱいでした。でも、合格の連絡をいただいた時は本当に嬉しくて、”私最強では!!?”と1週間は浮かれました。周りがたくさんお祝いの言葉をくれて、がんばろうとも思った。どんどん大きくなって大事な人たちを幸せにするぞ!!というマインドが生まれました。」と答えてくれた。

高校の軽音楽部でギターを始めたゆいにしおだが、当時は流行りのアニメ主題歌をバンド演奏するくらいだったと言う。オリジナル曲を作り始めたのは大学に入学してから。入部した他大学の軽音楽サークルはオリジナル楽曲のバンドが多く、そこで刺激を受け、シンガーソングライターとして活動をスタート。同時にバンドを結成。今回彼女には、このコラム・インタビューの他にプレイリストも作ってもらった。その中に入っている「ein fiance」「Y」「道草」は、彼女が大学のサークルで組んだもの。「どれも最高なので是非聞いて欲しいです。」とコメントを残してくれた。

そんなゆいにしおが、5月15日に1st Mini Album『角部屋シティ』をリリース。彼女がルーツとなった渋谷系とシティポップの要素を感じられる作品。ゆいにしおが目指すのは<生活感のある音楽>。「帰路」のミュージックビデオ(以下:MV)や、アーティスト写真を撮影したビルの屋上から見える景色をモチーフにした今作のジャケットデザインは、まさにそんな彼女の音楽を視覚的に表現している。ゆいにしおはこのジャケットに対して「 山下達郎や大瀧詠一のアルバムジャケットを連想させる目をひく青色に、帰路のMVにも出てくる阿佐ヶ谷のマンションからの風景がうまくハマっていますよね!」と、かなりのお気に入りな様子。

実際、 カネコ氏が描くアートワークにインスパイアされて作った楽曲もある。それが「小夜なら花折り」だ。「カネコさんの作品はどれもポップさを忘れない部分があって、そこからいつもインスパイアを受けています。『小夜なら花折り』を初めて見たとき、とても退廃的な印象を受けました。でも、かわいいピンクの花束を持って沈んでいる女の子は、ジャージに近い格好で金髪、というカジュアルな雰囲気。ポップな要素がいくつもあるのに、画面全体が退廃的な雰囲気を出せるのは素晴らしいな、と感じました。たぶん、女の子の伏し目とかまつげの感じが、それを大きく出してるんだと思います。」と、イラストレーションの持つ魅力を語ってくれた。また、そのイメージをメロディに踏襲した楽曲については「ラスサビ後にラップ調のパートを入れることによって、全体的に退廃的な歌詞を少しポップに崩しました。」と聴きどころを教えてくれた。

今作でプロデュースを担当したのは、YUIのプロデューサーでも有名な近藤ひさし氏。レコーディングを意識しすぎ、型にはまった歌い方になってしまった彼女に「綺麗に歌うだけじゃなくて、ライブ感を意識した歌い方もしてほしい。」とアドバイス。それに対し、ゆいにしおも「 音源も生きてるんだな…!と気持ちを入れ替えて歌うことができたと思います。」と振り返る。更に言葉遊びがユニークなリード曲「DAITAI」はアレンジが決め手だったと言う。曲としての方向性やアレンジに悩み、近藤氏に岡村靖幸氏の音源を聴いてもらいながら色々アイデアを考え、近藤氏から届いたデモを聴いた瞬間「これだーーー!」と思ったらしい。 自分の歌うイメージも湧いたこの曲について「実際の弾き語りよりもアップテンポで、ノリのいい曲と思いきや、結構切ない歌詞なんだ、と歌詞を見ながら聞いてもらえたら嬉しいです。」とコメント。

先程触れたジャケットデザインのモチーフでもある「帰路」のMV。このMVを観るたびに極寒だったことを思い出すと言う。「 新宿で歩いているシーンがあるのですが、夜行バスから降りてそのまま撮影現場に来たので、目が腫れぼったいまま写ってしまい、恥ずかしい。朝の7時から撮影が始まって、終わったのは夜の22:00ごろ。寒い中長時間、お疲れ様でした。今でも撮影班の苦労が身にしみます…その日はお風呂に2時間くらい入りました(笑)」と撮影エピソードを語ってくれた。更に『角部屋シティ』というタイトルを象徴するような楽曲への想いについて。

「私たちは、帰路を歩いてそれぞれの家に帰りますが、家に帰らず好きな人の家に帰る夜もあります。そんな夜があるといつもの自分の帰路は少し切ない気持ちで歩いてしまうけれど、自分の部屋に帰ればレコードを聞いたりコーヒーを飲んだり自分を楽しませる方法がいくつもある。だから大丈夫だよ!安心して部屋に帰ろうね!ということを伝えたかった曲です。でも、それぞれの帰路に聞いてくれたらこんな嬉しいことはないな、と思ってます!」

これまで一人でレコーディングや流通を行ってきたゆいにしお。「日本コロムビアの厚いサポートで、チームで音楽を作ることの楽しさを実感した作品にもなりました。」一人は苦労も多いが自由も多い。そんな中でチームの楽しさを語れるのは、良い作品に仕上がった証拠ではないだろうか。新作『角部屋シティ』は、チームで音楽を作る楽しさまでが音に反映されている、実に心地よい作品であり、生活の傍らに置きたい一枚となった。


■ ゆいにしお OFFICIAL SITE
https://www.yuinishio.com/

Information

Release

ゆいにしお 1st Mini Album
「角部屋シティ」

2019年5月15日発売

-収録曲-

1. スピーチレス
2. DAITAI
3. パワーワーズ
4. マスカラ
5. 小夜なら花折り
6. 帰路

角部屋シティ

CD

GUPC-0001 / ¥1,836(税込)

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