ー カワムラヒロシさんのギターにはいつも独特のグルーブを感じますが、この曲は特にボディの響きも感じるようなグルーブと音が印象的でした。
カワムラさんは本当に不思議な表現力がありますよね。この曲に至ってはバンドメンバーのみんながそれぞれに役割を決めてくれたんです。ベースのSOKUSAIさんはデコボコ道を表現して、カワムラさんとドラマーのtomo(Kanno)さんは高速道路の看板や橋などの規則性を表現。スチールギターの(宮下)こうすけくんは夜空を表現して、マリンバの(加納)りなちゃんは私の心に寄り添う音を表現してくれて。
ー それは演奏チームが自分たちで話し合って役割を決めたということですか?
そうなんです。(スマホを取り出して)今回のアルバムはこうやって全部絵を描いていて。
ー あ、ブログに載っていた絵だ。
そうそう(笑)。最初私は、自分が見えている絵しか描いていなかったんだけど、演奏チームはもっと広い視野の絵を演奏するからって言ってくれて、絵を見ながらその場でセッションしてくれて。今回はどの曲もそうやって作れたので、すごいチームだなと思いました。
ー「いつかお母さんになれたら」は、語りが特徴的ですよね。すごく素敵。
ありがとうございます。
ー 冒頭の歌詞はEmiさんが保育士さんやってた時のこと?
そうなんです。本当にいる子で、発想力がすごく面白いんですよ。そのお母さんも面談の時に色々な話をしてくれて、今でもすごく仲良くしてもらっています。
ー そうなんですか。
歌詞にもしましたが、毎日欠かさず絵本を読むそうで、だからあんなに自由な発想なんだと納得出来ます。すごいお母ちゃんですよね。
ー お母さんってやることが沢山あるから、毎日絵本を読むってなかなか出来なそう。あと、おじいちゃんはハワイアン好き、おばあちゃんはなんでも歌にしちゃうというところも可愛くて。実際そうなの?
そうそう(笑)。この曲は自分にもし子供がいたらと想定した、手紙のような曲なんですけど、おじいちゃんとおばあちゃんにあたる私の親のことも入れてみました。でもこれだけ語り口調を並べるのは勇気がいったし譜割りが難しかったけど、この曲はこれで良いんだろうなって。
ー すごく素敵です。あとパーカッションがまた牧歌的で母なる大地の温かさや愛情の深さを感じました。
すごい、すごい!まさにその通りです。
ー 本当に?良かった(笑)。
うちのチームって男性ばかりなんです。でも私の歌詞は<女性>が強いから、バンドメンバーも戸惑っちゃって。私にとってはこの曲ってすごくハッピーな曲なんですけど。
ー 私もそう受け取ったんだけど。
でも男性は違うみたい。自分が子供を授かれどうかはわからないけど、今、自分のチームの子供や、友達の赤ちゃんがいることをすごく幸せに感じています。というか、幸せすぎて。人の子なのに(笑)。
ー さっきスマホの待受画面にも可愛い子どもたちの写真が見えたけど。
そうなんです(笑)。全部違う子たちなんですけど、本当に可愛くて!この子たちがいることがハッピーだから、自分にはまだ子供はいないけど、チームや友達の子供を可愛がれば良いじゃんって思うし、もし子供が出来たらこうしたいということを歌詞にしたけど、男性からするとすごく繊細なテーマにも聴こえるから、「どうしたら良いか分からない。」という話になって。
ー なるほど。男性と女性ではだいぶ受け取り方が変わってくるんだ。
そうですね。それで、この曲だけエンジニアの兼重哲哉さんが、もっと母なる大地というか、そういう大陸感を音で出して、男性でも<女性>を意識しすぎずホッと聴けるようにしようというアイデアを出してくれて。だからこの曲についての絵を見せた時に、みんなが「こんなに明るい絵なんだ!」ってびっくりしていて。でも男性の戸惑いがあったからこそ、この曲にこういう幅を持たせることが出来たんだなと思っています。
ー そういうケミストリーって面白いですね。そういえばこのアルバムのセルフライナーノーツを読んだんですが、Emiちゃんって、雨女?(笑)
そうなんです(笑)。本当に凄かったんですよ、昨年も!ツアーもほぼほぼ雨で、移動日だけ晴れとか。
ー ガチだね(笑)。
もう嫌になっちゃいます(笑)。ただ、雨の中でも夏フェスとかで私の曲を涙を流しながら聴いてくれるお客さんにパワーをもらって「雨のように泣いてやれ」が出来ました。
ー 大人になると感動で泣くのはアリでも、苦しかったり悔しくて泣くのはちょっと…ってありますからね。
特に男性からすると、“女性のその涙はずるいよね”ってなるし。
ー ええ。
男性にも認めてもらえるように、女性が立ち向かっていったからこそ、そこに責任を持つことはすごく大切だし、私も仕事場で悔し涙を見せるのは違うと思って耐えることもありました。でも職場で泣けない分、ちゃんとどこかで泣くということは大切だと思うんです。