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けいちゃん、アルバム『円人』インタビュー!無限に進む物語に込めた想いと、レコーディングでmajikoにNGが出た理由とは

けいちゃん、アルバム『円人』インタビュー!無限に進む物語に込めた想いと、レコーディングでmajikoにNGが出た理由とは

December 9, 2023 17:00

けいちゃん

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ー そうなんです。なのに支離滅裂になっていないので、この流れが気になってめちゃくちゃ聴きました。

M4(夜行 feat. majiko)、M5(「MAIHIME」)、M6(「Life Game」)の流れですか?


ー ええ。

先程劇伴と言っていただきましたが、今回はまさに映画に音楽をつけている感覚で作ったんです。なので音楽に共通点がなくても、その音楽から感じ取れる映像に何かしらの共通点があるから違和感なく聴けるのかもしれませんし、今作は全て頭の中に明確な映像が浮かんだ上で作っているので、流れで聴いてもおかしさを感じないのかもしれません。


ー 頭の中に浮かんだ映像はアルバムを作るにあたり、スタッフの方たちにもわかるよう具現化したんですか?例えば絵コンテのような。

絵なんて描かせたら何も伝わらないんですよ……


ー あ、絵コンテって言いましたが、それは『聴十戯画』のインタビューで何となく分かっていました(笑)。

やっぱり(笑)。まぁこれに関しては後々種明かしをしていった感じですね。最初は内緒にしていて、自分の中でチマチマ作っていただけでした。


ー 勿論楽曲は素晴らしいんですが、その物語を映像や何かで観てみたいですね。

まだ具体的な形にはなっていないですが、何かしら考えていますのでもう少しお待ちください。


ー はい、その日を楽しみにしています!それと「Life Game」の声般若心経はインパクトがありますし、拡声器を使ったような声や、“おっと”という部分などユニークさもありますが、死に対して書かれた英詞部分に結構怖さを感じました。

制度とか義務とか。


ー そうそう。あと最終確認とか。それに死を受け入れる準備から般若心経が唱えられて、実際死を迎える……その流れが怖いなと。

考え方としてはおおよそ当たっています。僕は死って、二段階あると思っているんですよ。一段階目は実際に生きている状態から亡くなること。そして二段階目は成仏するにあたり魂すらも死んでいくこと。この曲はその二段階目の死について、和尚さんが成仏しても大丈夫だから御心配なさらずみたいな感じで勇気を与えるというか、もう上に登っても大丈夫だよと言っているような感じで作りました。


ー それが、“N度目のBirthday”。

そう。(優しい言い方で)“あなたは新しい誕生日を授かりますよ”って。


ー けいちゃんは和尚さん?

アハハ!でも友達にも、けいちゃんの作品っていつもどこかしら仏教チックなものを感じるって言われました。確かに「浄土」とか「Edo」とか、宗教的というかスピリチュアルな作品になりがちな節はあるなと……。


ー でも、それがきちんとクリエイティブの中に落とし込まれているし、他にも色々なタイプの楽曲があるから、ある種ひとつのカラーとして感じられますよね。

ありがとうございます!


ー 「愛葬feat. majiko」では、心を掻きむしるような切なさを感じました。

このアルバムはひとつの物語という話をさせていただきましたが、その物語に出てくる男性が、自分が亡くなったことに気づいたのが「千鬼への合流」。続く「夜行 feat. majiko」では、相手から自分の姿が見えない葛藤を描いています。本当はその恋人の目の前に立っているのに。それに対して「愛葬 feat. majiko」は、その男性が亡くなってしまったことを嘆き悲しんで訴えている恋人の話です。なので「夜行 feat. majiko」と「愛葬 feat. majiko」は対になっていて、映像としてはお互い向き合って立っている感覚です。


ー この曲のAメロは三年前に出来ていたとか。

そうです。三年前にAメロが出来た時、何だこのコード進行!スゲーお洒落じゃん。でも女性の声じゃないと合わないなと思ってずっと眠っていましたが、このアルバムを制作するにあたり是非この曲を入れたいと思って、他の部分を作り上げました。今回majikoさんが歌ってくれたことでようやく曲に色が入ったというか、昇華してくれた感じですね。


ー 特に最後の“愛葬”の部分は圧巻のロングブレスですよね。

majikoさんって延々に伸ばせるみたいなんですよ。レコーディングの時、出来るだけ伸ばしてくださいってお願いしたら、ずーーーーっと伸ばして全然止まらなくて、もういい、もういいって。で、結局NGになるというね(笑)。


ー すごいNG理由!

アウトロが終るくらい伸ばしていましたからね(笑)。でも表現力を含め、majikoさんはやっぱりすごいアーティストです。


ー 松村沙友理さんが出演されたこの曲のMVでは、メイクではなく本当に紅潮していく感じなど迫真の演技に引き込まれました。

僕がその場で、こういう感じで演技してみるのはどうでしょうという感じで伝えると、想像を超える演技を即興でやってくれるんです。恋人を亡くしたこの曲の主人公は、我儘で恋人にすごく執着しているメンヘラ的な女性。彼のことが大好きで大好きで仕方がない。いなくなったことへの辛さが怒りに変わるくらいの女性ですと、松村さんに主人公のキャラクターを伝えました。その上で、ひざまずいて泣き叫んで欲しいとお願いしたら、観ているこちらの胸が苦しくなるほどの演技をしてくださって、本当に圧巻でしたね。


ー その一方で撮影中は撮影現場近くのお子さんたちが遊びに来たようで、けいちゃんもピアノを弾いてあげていましたね。

小学生の子たち(笑)が音につられてやってきたので、何曲か弾いてあげました。今の子なのでみんなスマホを持っているんですよね。一斉に撮りだして、(子供の声で)帰ったらママに見せるーって、すごく可愛かったです。


ー けいちゃんの撮影はいかがでしたか?

今回はこういう曲なので楽しそうな表情はせず、しっとり優雅にというか神様の使いのようなポジションでいようと思いました。色々な経験を重ねてあのMVを観てくださる方が沢山いて、楽曲もその想いで聴いてくださっているのはすごくありがたかったです。


ー 愛する人を亡くす経験はしたくありませんが、もしけいちゃんがそういう経験をしてしまったらどうなると思いますか?

どうなっちゃうんだろう……でも永遠の別れみたいなものって、もしかしたら存在しないんじゃないのかな。死後の世界って誰も知らないし誰も見たことがないから、何があるか分からないじゃないですか。


ー 確かに。

もしかしたら今はただの前菜で、その後の方がメインディッシュかもしれない。死んだ後に解放されて、ようやく自分の魂が真の意味で生きることを謳歌するパターンもあるかもしれないし、あるいは違う肉体を手に入れてて、何らかの形で愛していた人と再会するかもしれない。そう考えると永遠の別れみたいなものはないんじゃないかって思うんです。


ー 奇しくも今アルバムの世界に繋がっている気がしました。

確かにそうですね。


ー 今作の初回限定盤にはMVの他に、今年6月に開催されたピアノリサイタル『Rubato Circus』から5曲、更にメイキング映像も収録されるそうですが、『Rubato Circus』って1分で完売したんですって?即完とは聞いていましたが1分って……。

お陰様で。僕も驚いたけど嬉しかったです。こういう機会は結構久しぶりだったので、やっぱりライブって楽しいなと思えたし、お客さんたちと一緒に作品を作っている感覚ていうか、音楽を共有している感覚がすごく尊いものだなと実感しました。


ー そして来年、今アルバムを携えたツアー【けいちゃん LiveTour2024『円人』】も、東京と大阪で開催されますね。

これはね、尊いも尊い!過去最大に尊いライブになると思いますよ。今回は映画を観ているような感覚で『円人』というアルバムを楽しんでもらえるツアーにしたいと思っています。


ー ツアーを楽しみにしています。ありがとうございました!


インタビュアー:秋山雅美(@ps_masayan


■ けいちゃん Official HP
https://keichanpiano.com/s/n146/?ima=0933

Information

Release

NEW ALBUM
「円人」

2023年12月6日発売

-収録曲-

1.→Entrance
2.馬の耳ドロップ feat. majiko
3.千鬼への合流
4.夜行 feat. majiko
5.MAIHIME
6.Life Game
7.Dance of Lake
8.シンフォニア
9.recollection
10.愛葬 feat. majiko
11.Exit→

[DVD]
1.シンフォニア (Music Video)
2.馬の耳ドロップ feat. majiko (Music Video)
3.愛葬 feat. majiko (Music Video)
4.Danny Boy(Live Movie)
5.あの夏へ(Live Movie)
6.Lv.OFF(Live Movie)
7.Freestyle Piano Etude (Live Movie)
8.Zero Rhapsody (Live Movie)
9.ピアノリサイタル『Rubato Circus』Making Movie
 Live at Shinagawa Club eX on 2023.6.11

円人

初回限定盤(CD+DVD)

TKCA-75201 / ¥5,500(税込)

円人

通常盤(CD)

TKCA-75202 / ¥3,000(税込)

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