【レビュー】星野源『Gen』
May 16, 2025 17:00
星野源

星野源、6年半ぶりにニューアルバム『Gen』(5月14日リリース)は、星野のルーツと進化に溢れていた。
全16曲収録の今作は、星野本人が出演の『スーパーマリオブラザーズ』35周年のCMソングとして制作された「創造」、TVアニメ『SPY×FAMILY』のエンディングテーマ「喜劇」その他シングル曲や、2023年に『SUMMER SONIC』内で開催された、星野によるキュレーションイベント「so sad so happy」で初披露された「Memories (feat. UMI, Camilo)」など、フィーチャリングを含む多数の新曲で構成されている。
「創造」では新たにイントロを再構築し、リリース時にはなかったシンセサイザーのメロディが加えられ英語詞も変更されるなど、既発曲とはいえアルバムならではのアプローチで楽しませてくれる。フィーチャリングもアツい!かねてより星野のファンを公言している、韓国人ラッパー、イ・ヨンジをフィーチャーした「2 (feat. Lee Youngji)」は、浮遊感あるオールドスクールなビートの上で日本語、韓国語、英語の3カ国語が軽やかに踊りつつ、祈りとエンパワーメントという現代的なテーマに対する両者の解釈が溶け合っている。
また、Netflixのトークバラエティ『LIGHTHOUSE』(2023年8月配信)のメインテーマとして発表された「Mad Hope (feat. Louis Cole, Sam Gendel, Sam Wilkes)」もクールだ。LAビートミュージックシーンの雄・Louis Coleのボーカルパートや、エクスペリメンタルジャズの鬼才・Sam Gendelのサックスソロ、ジャンルを横断する活躍を続ける気鋭のジャズベーシスト・Sam Wilkesの参加で、星野らしいボーカルラインに多彩なサウンドが繰り広げられ、当初ショートバージョンだったものが完成形で収録。更にこの曲のタイトルは、5月15日(木)よりスタートする全国アリーナツアー『Gen Hoshino presents MAD HOPE』のツアータイトルにもなっており、グッズにはリリックが散りばめられている。
4月23日(水)にアルバムから先行配信された「Star」は、星野本人が出演するアサヒ飲料「ワンダ」のCMソング。タイトルの「Star」=「星」や“好きを源に”というリリックなど、アルバムタイトルの『Gen』と強く共鳴するテーマに、SNSではリリース時から湧いていた。石若駿の存在感あるドラムと美央ストリングスの弾む弦の音色、星野のうねるベースは厚みを持ちながらも軽快に仕上げられ、グルーブ感が心地よい。「Glitch」では曲の冒頭、星野の私物であるヴィンテージパソコンの起動音をサンプリング。
今作は楽曲ごとに違った魅力を持っている為、どの曲が1番好きか選び難いのも事実だが、個人的にはゲームやPC愛溢れる星野のテクノロジーへのリスペクトソングであるこの「Glitch」が大好きだ。「Melody」ではふと、SAKEROCK時代の星野を感じた。ワールドミュージックやブラジリアンミュージック、ダブやダンスホールなど、星野自身のルーツやエッセンスが散りばめられつつ今の星野の技術や引き出しを用いて、軽やかに広がりをみせる。ギターと歌を同時に録音、1トライでOKテイクとなったアコースティックナンバー「暗闇」は音を駆使した今作の中では異色だが、星野らしさに癒やされる。それと共に、楽曲により変化する声の表情も大きな注目ポイントだろう。
今作は、初回限定盤「Box Set “Poetry”」「Box Set “Visual”」、通常盤の3形態での展開となるが「Box Set “Poetry”」は、CDに加え、アルバムブックレット、224ページに及ぶ写真詩集『Mad Hope』、撮り下ろしポスター3種、ライナーノーツ「From 808 Studio」を同梱。メインとなる写真詩集『Mad Hope』は、今回初めて発表する星野源の書き下ろしの詩と散文、写真家・川島小鳥氏の写真で構成。「Box Set “Visual”」には、星野のライブやラジオ番組『星野源のオールナイトニッポン』でお馴染みのキャラクター“ニセ明”が、約6年半ぶりに新曲「Fake」のレコーディングに挑む様子を追った映像作品も収録されるなど、是非フィジカルで楽しんでもらいたい作品だ。
■ 星野源 オフィシャルサイト
https://www.hoshinogen.com/