【レビュー】黒沢 薫『All U Need Is Luv』

ゴスペラーズの黒沢 薫がソロ作『All U Need Is Luv』を8月12日に配信リリース。黒沢といえば先日東京ドームで開催された『野球伝来150年セレモニー』に国歌独唱アーティストとして登場し、初の“国歌独唱”で観客に圧巻の歌声を披露したばかり。

そんな話題の黒沢がソロ作をリリースするのはなんと7年ぶり！それまでのソロ作も、ゴスペラーズスピリッツを持ちながらソロならではのキラメキをリズムやサウンドで感じさせてくれていたが、今作は更に濃厚だ。特にShin Sakiuraプロデュースの「Honey」は、黒沢の持つグルーヴを活かしつつ時代を捉えた抜け感あるトラックに仕上がっており、ダンサブルなビートが何とも心地よい。チェストボイスの伸びやファルセットの開放感、声の艶、微細なしゃくりから感じる色気など黒沢の声の魅力が満載だが、サウンドと声が絶妙なバランスで張り付きミックスされている。今でこそ引く手数多なShin Sakiuraだが、昔からの音楽仲間だからこそ成し得たサウンドの妙だろう。（すでに筆者もヘビロテ中！）

そしてラッパーのSKY-HIをフィーチャリングに迎えた「Wake Up feat. SKY-HI」はまた趣が変わる。曲のベースは2018年の年末に仕上がっていたらしいが、社会情勢が変わったことや黒沢の若い頃とも違う＜今＞を見据えた時、若い世代に届かせたいと感じSKY-HIにオファー。SKY-HIがその想いを受け取り今回のフィーチャリングが実現した。ちなみにタイトルの『All U Need Is Luv』は「Wake Up feat. SKY-HI」の一節。オープニング、ラジカセのカセットテープを再生させるボタン音からスタート。SKY-HIのラップ、黒沢のファルセット、そこからAメロへ繋がる。現代社会の現実に目をつぶり黙って受け入れるのではなく、目を覚まして自分の人生をサバイブしろと言わんばかりの熱量高めの歌詞は、若くない筆者でさえ（苦笑）血が沸騰する。しかしそこには愛がある。
切ない恋に胸をざわつかせる「薫風」。愛するからこそ別れを選び、ありがとうと言う主人公。美しいバラードにのる松尾 潔の詞世界と黒沢のミドルボイス、感情を揺り動かすマサ小浜のギター。これはもう涙腺崩壊間違いない！冒頭でも触れたが、今作は3曲にして濃密なシングルとなっている。