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【レビュー】緑黄色社会『ブレス』

July 7, 2022 22:00

緑黄色社会

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【レビュー】緑黄色社会『ブレス』

今年7月4日(月)でバンド結成10周年を迎えた緑黄色社会が同日、新曲「ブレス」を配信リリースした。長屋晴子(Vo./Gt.)が作詞、peppe(Key.)が作曲を担当。筆者は最初、ジャケットの花を“シキミ”だと思っていたが、花びらをよく見ると手ではないか。葉は枯れかかっているのに太陽を求め咲き続けようと広げる、まさに楽曲の世界そのもの。あえてブレスを意識し、緊張感に満ちたAメロの歌声。序盤から長屋のポテンシャルを感じる。時に自嘲するように、時に執着するように出てくる<人>というワード。生きることへの葛藤や苦しみに嘆くだけでなく、藻掻きながらも光を目指そうとする主人公の心情をバスドラが力強く後押しし、曲全体をポジティブにしてくれる。美しいピアノの音色は優しく響き、レコーディングに参加したJuny-a氏のソプラノサックスも存在感を放っている。バンドサウンドの魅力と、歌モノとしての魅力の両方がきちんと共存。これぞ緑黄色社会の世界観だが、リリースするごとに可能性の広がりを感じずにはいられない。アニメ映画『クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』の主題歌として書き下ろされた前作「陽はまた昇るから」とは全く違う魅力をこの壮大なミディアムバラードで示してくれた。名曲がいつもそうであるように、この「ブレス」を聴き終わった後、筆者は感嘆のため息をついた。誰もがきっと光を求めている。その光は届きそうなのに届かないかもしれない、もう駄目かもしれないと諦めかけることもあるだろう。そんな時は是非この曲をあなたの傍らに置いて欲しい。

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