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【レビュー】米津玄師『M八七』

May 19, 2022 12:30

米津玄師

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5月13日(金)に配信された米津玄師の「M八七」が数多くの音楽配信チャートのデイリーランキング1位を獲得。リアルタイムランキングと合わせて39冠を獲得し、自身が持つ「デジタルシングル(単曲)通算1位獲得作品数」歴代記録を更新した。その「M八七」がタイトルのニューシングルが5月18日(水)にリリース。映画『シン•ウルトラマン』主題歌として書き下ろされた「M八七」だが、ウルトラマンと言えば「胸につけてるマークは流星〜♬」のオープニングテーマがあまりにも有名であり、J−POPアーティストによる主題歌は正直考えられなかった。しかし「M八七」は『シン•ウルトラマン』における制作陣の想いやウルトラマンの世界観をただ踏襲するのではなく、様々な角度からアイデアを切り取り楽曲へ落とし込み、主題歌として完成させたのだ。

“痛みを知る ただ一人であれ”という歌詞をはじめ、随所にウルトラマンファンを唸らせる歌詞を散りばめ、壮大なメロディに凛と響くストリングス、重厚なリズム、アレンジなどタイアップ曲に求められる大衆へのアプローチと、自身のクリエイティビティを巧みに融合。このバランスの良さは米津ならではと言えるだろう。更に、PlayStation®のCMソングとして配信にて既発されている「POP SONG」も収録。ジプシーミュージックのアレンジに埋め込まれた米津らしいヴォーカルラインと矛盾を楽しんでいるかのような対義の歌詞が面白い。そもそもあの米津が「POP SONG」というタイトルをつけるあたりがすでに秀逸なのだが。そして新曲「ETA」。コロナ禍を感じさせる繊細な歌詞と歌声。感情を具現化したような効果音。日本語表記されている歌詞のいち部分を英語で歌うのは「Black Sheep」を思い出させた。タイトルや歌詞の意味(というか読む方向)など含め、米津玄師というアーティストの犀利な技術や感性を改めて感じられる曲といえよう。

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