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【レビュー】松室政哉『大人の階段 駆けおりない?』

May 5, 2022 13:30

松室政哉

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「アルプスの少女ハイジ」のキャラクターアテレコでお馴染み『家庭教師のトライ』のCMで最近、“おんじ”が歌っているバージョンが話題となったが、あの歌唱を担当したのがシンガーソングライターの松室政哉。BENIやYouTuberの“ばんばんざい”などアーティストへ楽曲提供や、映画やドラマへの劇伴も担当。メロディセンスを活かし多方面に活躍する松室が、ニューシングル「大人の階段 駆けおりない?」をリリース。現在32歳の松室より更におとなのシンデレラは階段上るだろうが、妙にキャッチーなこのタイトルにはやはり目がいく。目がいくといえばピントのボケた都会の夜景写真が無造作に切ったマスキングテープで貼られているジャケット写真。風景写真家、酒井貴弘氏によって撮り下ろされた新たな松室作品のアートワークは、都会的でダンサブルな楽曲と実にマッチしている。SIRUPをはじめ、iriや向井太一など様々なアーティストの楽曲プロデュースやギターアレンジ、プログラミングを手掛けるShin Sakiuraをプロデューサーに、共作詞にシンガーソングライターの金木和也を迎えた今作は、「退屈な日々からトリップして洒落こんだら さあ Dance with me!」という歌詞から始まる。正論や当たり前は脱ぎ捨て心の思うがままに。コンプライアンスやコロナ禍での様々な制限など兎角窮屈な昨今。こんな楽曲に身を委ね体を、心を動かしたくなる。脳内でおんじも踊る。
例えば「今夜もHi-Fi」や「踊ろよ、アイロニー」のようにライヴで確実に盛り上がるナンバーは今までもあったが、イントロのトラックやベースラインはShin Sakiuraのテイストを感じさせる。松室作品によくある80〜90年代の少しの懐かしさを残しつつ、現代的に仕上げられたサウンドアレンジはダンサブルだがアッパーにありすぎずクールさをキープ。前作のConcept mini Album『Touch』から1年以上、今年最初の松室政哉作品で是非鬱屈とした心を解き放って欲しい。

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