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スピッツの映像作品「劇場版 優しいスピッツ」ティーチインイベントレポート

June 10, 2023 01:00

スピッツ

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スピッツの映像作品「劇場版 優しいスピッツ」ティーチインイベントレポート

スピッツのデビュー30 周年を機に、北海道・帯広で収録され、2022年1月にWOWOWで放送・配信されたオリジナルライブ番組、「優しいスピッツ a secret session in Obihiro」。帯広は彼らの楽曲「優しいあの子」が主題歌を務めた人気連続ドラマの舞台にもなった場所。スピッツがかねてより想いを馳せていた大地に、100年を超え佇む旧双葉幼稚園園舎を舞台に、ライブイベントでもドキュメンタリーでもない、見たことない“映像作品”が誕生した。監督は『バイプレイヤーズ』シリーズや『くれなずめ』『ちょっと思い出しただけ』など、次々と秀作を生み続けている松居大悟が担当。歴史ある建物の中で、松居監督が切り取ったスピッツの素顔と、帯広の自然の美しさが、そして何よりも彼らの暖かく透き通るようなバンドサウンドが広がる、今までに無い“スピッツ体験”。スピッツの帯広での貴重な演奏に、1年ぶりに集結したスピッツ×松居大悟監督の新撮アフタートーク映像とメイキング映像も加わり、6月2日に全国劇場公開となった。

そして、本作の公開を記念して、6月9日(金)にTOHOシネマズ新宿で『松居大悟監督 ティーチイン付き上映回』が行われ、松居大悟監督と、プロデューサーの内野敦史氏が登壇した。

スピッツによる帯広を舞台としたオリジナルライブ番組に特別アフタートーク&メイキングを加えた WOWOW 配給『劇場版 優しいスピッツ a secret session in Obihiro』が6月2日から全国公開中。6月9日には都内映画館で監督を務めた松居大悟とプロデューサーの内野敦史がティーチインイベントを行った。

金曜夜の遅い時間帯での開催にも関わらず、満員御礼でスタートしたイベント。内野Pからの「スピッツの無観客ライブを映画のように撮ることに興味はあるか?」とのオファーでメガフォンを取ることになったという松居監督。「自分の監督作や舞台でもスピッツに言及するくらいスピッツが好きなので、やらない理由はなかった。ライブ作品は撮ったことがなくスピッツの作品という重大さもあって怖かったけれど、自分がやらずにほかの誰かがやったときの眠れなさの方が凄いだろうと思った」と多忙ながらも即答で引き受けた。

一方、松居監督と初タッグの内野Pは「松居監督の映画には音楽に対する愛が溢れている作品が多いので、この人ならば面白いものを撮ってくれるという確信があった」と全幅の信頼を寄せていた。

学生時代からスピッツの楽曲に魅了されてきたという松居監督。本作の撮影を通してスピッツに対する印象も変化したそうで「スピッツの音楽はまるで魔法のように出来上がるイメージがあったけれど、実際はそれぞれが対等にそれぞれの役割の中で意見を出し合いながら作っていた。スピッツはファンタジーではなくバンドだったと思わされた」と実感。撮影に当たってはその感覚を大事にしたそうで「演奏後に喋ったりするメンバーの佇まいが見えることで、曲の感じ方が変わればいいと思った」と狙いを明かした。

無観客ライブを一般的なライブ映像作品として撮るのではなく、松居監督ならではの演出を施した点も見どころ。そのスタイルについて松居監督は当初不安を抱いていたそうだが、スピッツ側からは「松居監督の好きなようにやって欲しい!」というエールがあった。松居監督は「スピッツの演奏を見せたい、でも自分の作家性も出したいという葛藤の狭間にいたときに背中を押してもらえた」と感謝し、内野Pも「特に『Holiday』は窓の外からひたすらスピッツの演奏を覗くという、ライブ映像ではありえない演出だった。しかし彼ら(スピッツ)はそのセンスを面白いと言ってくれて、僕らのチャレンジ精神に作品をゆだねてくれた」と懐の広さに感激していた。

躍動するスピッツの姿を余すところなく捉えるべく、撮影では14台ものカメラを投入。もちろんライブなので一発撮りだ。松居監督は「現場
では 14台ものカメラの映像を僕が俯瞰するかのようにチェックしながら、セッションのように撮影。カメラマンは全員映画畑の人なので、ライブを撮るカメラマンとは違う切り取り方をしています。撮影環境は音楽ライブのやり方だけれど、スタッフは映画の人たちという現場でした」とハイブリットな舞台裏を解説した。

ラストを飾るのは名曲『運命の人』。松居監督は自身の監督作「くれなずめ」の中で『運命の人』の歌詞の一部を登場人物の劇中セリフとして引用したことがあった為、「セットリストをもらったときに『運命の人』が最後の曲だと知って、これは私信なのではないかとさえ思った。ライブの一日の流れとして昼があり夕方があり、夜があり、その最後に『運命の人』が来る。スピッツというバンドは時間の概念すら凌駕している存在なので、照明技師と作戦を練って建物の外は夜だけれど照明を当てて日が昇ってきているかのような見せ方にしました」とこだわりを振り返った。

題名の『優しいスピッツ』は仮題として付けていたものが、そのまま正式タイトルになったという。松居監督が「スピッツの歌詞にある言葉は時には額面通りの言葉じゃないときもあると思っているので、シンプルなキーワードの方が奥行きも出るだろうし、見る人によって解釈も違ってくる。それもあって直感で“優しいスピッツ”にしました」と打ち明けると、内野  P も「『優しいあの子』という曲がベースにある一方で、監督が台本に仮タイトルとして付けた段階で、これで決まりだと確信。スピッツの皆さんもそれをすんなりと受け入れてくれました」と誕生秘話も。

ライブ映像の後には、スピッツのメンバーと松居監督との鼎談の様子が収録されている。松居監督はメンバーたちの本作への好リアクションに触れて「いわゆるライブ収録映像ではないものを目指していたので、メンバーの皆さんにそれを感じてもらえたのは嬉しかった」とホッと一安心。最後に松居監督は「この作品をまだ観ていないお友達がいたら伝えてほしい。スピッツファンで普段映画を観ないという人でも映画館で映画を観る楽しみが感じられると思うので、それも広めていただけたら嬉しいです」とアピールしていた。

イベント名:「劇場版 優しいスピッツ a secret session in Obihiro」 松居大悟監督 ティーチイン付き上映回
© 2023 WOWOW

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