POPSCENE - ポップシーン
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クリエイター集団 agehaspringsとJ-WAVEとのコラボレーションイベントが4日間に渡り開催!

October 13, 2018 11:00

agehasprings

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日本の音楽シーンの最前線で活躍するトップクラスの音楽プロデューサーが所属し、良質な音楽とコンテンツを創出するクリエイター集団“agehasprings”とJ-WAVEとのコラボレーションイベント『30th J-WAVE×agehasprings Open Lab. SOUND EXPERIMENT』が10月3日(水)~10月6日(土)の4日間に渡り、六本木ヒルズ ヒルズカフェ/スペースにて開催された。

10月3日(水)~5日(金)は「J-WAVE発 洋楽ヒット曲」を題材に、音楽プロデューサー・玉井健二(agehasprings CEO)のもと、百田留衣、バンドマスターとしても多くのLIVEで活躍する野間康介に大西省吾、レコーディングエンジニアの森真樹といったagehaspringsの錚々たるクリエイター陣が集結。これからの活躍が期待されるLeola、the engy、Puskás、この3組の気鋭の若手ミュージシャン達と共に公開レコーディングを3日間に渡って実施。司会進行は、J-WAVE「STEP ONE」(月〜木 9:00〜13:00 / ナビゲーター:サッシャ)でアシスタントを務める寺岡歩美(sugar me)。

最終日の6日(土)は、田中隼人による公開アレンジワークショップと、蔦谷好位置によるスペシャルトーク、そして玉井健二によるスペシャルトークセッション。第一部は田中隼人。実際に自身がアレンジを手掛け、リリースされたDAOKO×米津玄師の「打上花火」を題材に、アレンジ過程を再現しながら楽曲解説。

agehasprings_OpenLab_20181006_258.jpg20歳前半でアレンジの仕事を始めた田中は、音楽制作で多忙を極めながら自身の仕事へ自信を感じつつ「先輩方を見ると、本当に天才が努力している世界」と当時を振り返る。20代中盤までは、楽曲に注ぎ込む情熱が多すぎ、精神状態もギリギリに。このままではまずいと思い一年休業。休んだことで音楽をあくまで自分の仕事として捉えられるようになったと言う。田中はアレンジをする上で「音楽の言語化と数値化」が重要であり「自分がアレンジした作品に対しての商品説明をどれくらい出来るかが必要」と続ける。「打上花火」は 映画『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』の主題歌だったことから、きちんと説明、つまり言語化出来る要素をきちんと音に取り入れたと言う。更に、聴く人が曲に対して持つ「切ない」「明るい」などの印象について「作る側は聴き手の感情を機能的に変化させて考えないといけない。それが数値化」だと説明。 要素を詰め込みすぎない為にも音楽を俯瞰で感じることも作り手には必要な要素だと付け加えた。実際に制作したCubaseの波形をスクリーンに写し、サビで生ドラムを使用したことや、より映画のワンシーンに映えるようにする為に6422(1stヴァイオリン6人・2ndヴァイオリン4人ビオラ2人・チェロ2人)で構成されたストリングスはサビでスタッカートしか弾いていないことなど、各音について説明すると、客席からも時折驚きの声があがった。斜陽産業と言われがちな音楽業界だが、「僕はあんまりそうは思っていなくて。」と語る。「作る人は常に必要。音楽を作る技術だったり感性があるということに自信を持って、人と違うことをどれくらい出来るか、自分の武器をどれくらい作れるか考えながら日々音楽と向き合って頂けたら良いと思います。」と来場者へメッセージを残し、田中のワークショップは終了。

第二部は蔦谷好位置。自身がサウンドプロデュースを手がけたKICK THE CAN CREW「住所 feat. 岡村靖幸」から話はスタートした。岡村のライヴをきっかけに今作のサウンドプロデュースを担当。プロデュースの方法はアーティストによって違うも、今回はHIPHOPのマインドを持つKREVAの作ったシンプルなトラックを華やかにしたい岡村の要望を汲んで、いくつか提案したと説明。またゆずの場合は、アコースティックギターと歌だけのデモをもらうこともあれば、共作の場合は北川氏がサビ、蔦谷がABメロを作るなど、その工程に話は及んだ。次に、映像に収めた実際の作業風景も公開。(これはCalvin HarrisがFrank OceanとMigosをゲストに迎えた最新シングル「Slide」の作業工程をTwitterで公開したものにインスパイアされて撮影したらしい)

ここ20年で変わったと言えるサイドチェインの用い方については、1930年代、映画の台詞のノイズ部分のみにコンプが入る手法として使われた歴史から紐解き、90年代後半にフレンチ・ハウス勢がビートのキックに合わせて使ったことが流行のきっかけになったことへ話を続けた。その中で最も影響が大きかったといえるDaft Punkの「One More Time」を聴きながら、「ハットの重要性がなくなり、今までグルーヴを作っていたのはリズムマシンだけだったけど、サイドチェインによってリズムのグルーヴを作れるようになったのが、この20年の歴史で一番の発明かなと思っています。」と語った。更にその他でサイドチェインを用いた楽曲をいくつか解説しながら、蔦谷がリバーブにサイドチェインをかける技を用いた、堀込泰行氏のニューシングルのタイトルナンバー「WHAT A BEAUTIFUL NIGHT」を紹介。CANNABISというバンドで2000年にデビューした蔦谷。同年リリースされたキリンジの「エイリアンズ」に衝撃にを受け「なんとか自分が作ったことにならないかなと思ったくらいです。」と会場を笑わせた。音楽についてかなり勉強を重ね「音楽をやる上で出来ないことを減らしたい」と語るそんな蔦谷も「このコードや和声をまったく思いつかない」と「エイリアンズ」のコードやメロディを弾きながら、歌詞についても解説。

agehasprings_OpenLab_20181006_576.jpg普通ではあまりないコード展開に思わず興奮の声を上げ、「エイリアンズ」愛を見せる一幕も。この後、来場者からの質問にもひとつひとつ真剣に答え、第二部は終了。

最後となる第三部は玉井健二が登場。J-WAVEが30周年を迎え、何か貢献出来ないかというところで実現した今回のスペシャルコラボレーションイベント。まずはJ-WAVE、スタッフ、来場者へ挨拶とお礼を述べた。
現在、玉井は作曲が出来るAIを開発している。「作曲が出来るというのは、別に既得権益ではない」そう語ると、誰でも本気で1000曲コピーすれば作曲は出来るようになるが、1000曲コピーしている時間と労力と思いをもう少し大事なところに使ってもらいたいと続けた。最初は編曲のAIを考えていたが、それ以前に作曲で時間がかかってしまうことに着目。現在の開発に至ると言う。だがAIに対してネガティブな意見があるのも事実。その点については「人間が作っている作品だから素晴らしいし尊いんですけど、それはそれで、それが決してなくなるものではない。僕たち…蔦谷好位置、田中隼人を含め、 AIが出てきて負けちゃったら、それはそれで結果だと思うんです。シビアなことを言うと。」と言うも、AIと人間は競い合うのではなく共存するものだとも考えているようで、今後agehaspringsとしては、海外も見据えたツールとしてAIの活用を視野にいれているらしい。

agehasprings_OpenLab_20181006_713.jpg「何故その曲を作ろうと思ったかという原点が一番大事。」 音楽に携わる人がこだわるべきはそこにあると語る。2004年にagehaspringsを立ち上げた玉井はバンドデビューするも、セールス的ヒットには恵まれず、当時Mr.Childrenの桜井和寿氏やつんく♂氏と話していても、売れる才能が違うと実感したらしく、一念発起し、レコード会社の制作部に就職。新人として雑用もこなし、屈辱的なことも経験しながら独立。配信やサブスクリプションなどの登場で音楽の在り方も変わり、「音楽を作ることに対して必然性を感じている人しか一生懸命やらないし、やれない」と、音楽の現状に触れた。自身も様々な経験からプロモーションやブランディングなどを覚えたが「自分がやるべきことは、やっぱり日本人が出来る音楽のクリエイティブの一番凄いところを、日本の皆さんと海外の皆さんに分かってもらうのが至上命題」そしてそれが独立の理由だと語った。

ここで蔦谷と田中が再び登場。話は二人との出会いについて。レコード会社時代、蔦谷のバンドをスカウトしようと狙っていたらしいが夢叶わなかった苦い想い出や、知り合いからの紹介で会った田中はあまりにキラキラしていた為「王子様か!ってツッコんだことを覚えています(笑)。」と笑い話も交え、当時を振り返った。

agehasprings_OpenLab_20181006_782.jpg更に二人から見た玉井について田中は「金髪のイケイケの人」と笑いを取るも、初顔合わせはやはり緊張したと語り、蔦谷は「一言で言うと親父ですね!」と、迷惑もかけてきたであろう自分にとっては大きなボスと告げた。

今回のワークショップ4日間通して大きなテーマだと言える「音楽とテクノロジー」について三人は、テクノロジーは音楽史の中で繰り返されたことなので歓迎。技術はどんどん使っていきたいと前向きな姿勢を見せた。また玉井から二人に「60歳になったらどうなっている予定か?」と質問されると、蔦谷は「60歳になっても多分勉強していると思うんです。出来ないことだらけなんで。」と日々の進化を見据え、勉強しながら生涯現役でいたいと語った。一方田中は「出来るだけ違う仕事がしたいです。ゴルフ場で仕事の話が出来る立場に上り詰めたい(笑)」と、突然笑いを誘うような衝撃発言を。そこには、蔦谷のストイックな姿への恐怖心があるようだが、玉井は「面白いですね、二人二様で。ゴルフ場を紹介したいと思います。」と笑いでまとめた。最後に玉井は二人を指さしながら「色々言ってますが、音楽が好きで、とにかく自分が音楽で出来ることを一生懸命やってここまで実現してきた人間が今ここに並んでおります。僕はこういう人たちを見てもらって、もっと音楽を好きになってもらったり、音楽を好きな人が夢を実現するきっかけになってもらえればといつも思っています。そういうイベントを今後もやり続けていきたいと思うので、是非参加してください。今後共よろしくお願いいたします。」と挨拶。4日間に及んだ『30th J-WAVE×agehasprings Open Lab. SOUND EXPERIMENT』は大成功で幕を閉じた。

撮影:樋口隆宏(TOKYO TRAIN)
Text:秋山雅美(@ps_masayan


■ agehasprings Open Lab. Official Site
http://ageha.net/lab/

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