The Biscats、ロカビリーの更なる可能性を提示したツアーファイナル
February 4, 2025 00:00
The Biscats

2020年代に新しいロカビリームーヴメントを起こすべく奔走中、渋谷公会堂(LINE CUBE SHIBUYA)でのワンマンライブを大成功させたことでも注目を集めたハイブリッド・ロカビリーバンド、The Biscats。2月1日(土)全国ツアー【The Biscats TOUR 2024~2025「ロカビリーナイト」】ファイナル公演を渋谷CLUB QUATTROにて開催した。
<夢を叶えた戦友同士だからこそ生み出せるグルーヴ>
Suke「ウッドベースを始めてもう10年ぐらい経つんですけど、やり始めたときは誰も仲間なんていなくて、ひとりでひたすらウッドベースを弾いていたんですけど、仲間と出逢えて「日本一のロカビリーバンドになるんだ!」って決めて今まで走ってきたわけですけれども。今晩だけはウチが日本一のロカビリーバンドだと思うんですよ! どうでしょうか!?(大歓声)」
Kenji「The Biscatsの為に何が出来るんだろうと、この渋公が決まってからずっと考えるようになりまして。何の力もない、ただギター好きな少年がそのまま大人になっただけなので、結局僕に出来るのはコツコツやっていくしかないなというところに行きついて、そこから僕が思いつく限りのことはやってきたんですけど──」
Misaki「渋谷のふたつ目の夢だった渋谷公会堂でライブをすることが出来ています! 本当にありがとうございます! そして、もう私は渋谷で叶えたい夢はないです。これから渋谷を飛び出して、どんどんThe Biscatsとみんなで夢を叶えていきたいと思うので、ぜひ皆さんついて来て下さい!」
The Biscatsが昨年の夏、渋公でのワンマンライブ実現という夢を叶えた際の映像が流れていた。そして、あの日の記憶とクロスオーバーする鳴り止まない「ビスキャッツ!」コールを受け、渋公のその先の夢へ向かって今日まで日本中を旅してきた3人(Misaki(vo)、Kenji(g)、Suke(b))がサポートメンバーのドラムス・ショウ&ピアノ・カノリューと共にステージへ現れると、冒頭の「Casino Royale」「ノッてけ!Sunday」「Goody Goody Girl」からクライマックスのような熱量で爆発的な演奏と歌声を轟かせていく。
「パンパンに集まってくれてるね。また1曲目から泣くところでした(笑)。昔、ひとりで活動しているときにここでライブしたことがあるんですよ。10年前ぐらい。そのとき、お客さん、5人しかいなかったのに「今日何倍ですか?」ってぐらい来て頂いて、この景色が見れていることに早速キテます。嬉しい! メンバーもテンション上がりまくって、演奏がいつもより勢いづいてるね?(Misaki)」「勢いづきすぎて一瞬、頭が真っ白になっちゃいました(笑)(Kenji)」「焦ったよ。え、何、この人たち、勢いありすぎなんですけど!って(Misaki)」「ごめんな(Suke)」「はい、私、頑張りました。すごい高速の電車に乗っている気分でした(笑)。でも、良いよね! 最高だよね(Misaki)」
この序盤のやり取りからも分かる通り、渋公を経たThe Biscatsはそれ以前より明らかにバンドとしての結束力を高めていた。演奏はもちろん、こうしたMCでのやり取りもより自由でフレンドリーで、音楽が鳴っているときも止んでいるときも今まで以上に心地好いグルーヴを感じさせる。ひとつの夢を叶えた戦友同士だからこそ生み出せるのであろうソレは、この日もMisakiが掲げていた「誰ひとりとして置いていかないライブ空間」を自然と生み出していた。
<The Biscats 第3章突入で明確に感じた有意義な進化>
なお、今回のツアーは 渋公ワンマン【The Biscats SPECIAL LIVE 「ロカビリーナイト」】をブラッシュアップした形で全国にお届けするべく開催されたもので、続くブロックで披露された9曲はすべて渋公のセットリストにも組まれていたナンバーだったが、その難しいコンセプトすらも純粋に楽しみながら、骨太さも軽快さも、大人の色気も子供のような無邪気さも輪郭ハッキリと表現できるバンドとなっており、それらのバランスの取り方も含めて「今の時代に新しいロカビリームーヴメントを起こしたい」と願うThe Biscatsに必要不可欠であろう、どんな音楽でもポップに楽しませることができるスキルが進化しているように感じられた。
また、それに呼応するようにオーディエンスのノリも渋公以前よりアグレッシヴになっており、Kenjiが「みんなの勢いもいつにも増して凄いことになっている」と語るほど、ひとりひとりがThe Biscatsの一員となってライブを盛り上げている光景が実に印象的だった。それは使命感や責任感によるアクションというよりは、純粋にThe Biscatsのライブが気持ち良くて楽しくて仕方ないから、自然とそのグルーヴの中に飛び込んでしまう。生の音楽コミュニケーションにおける理想的な関係性がそこには築かれていた。
「去年の8月10日に渋谷公会堂でライブをして、第3章が始まるというこのタイミングで皆さんにお届けした楽曲です。私が学生時代に夢を持つことですごく強くなれて、そして、その先で出逢ったたくさんの愛に包まれ、今の人生が「すごく楽しいな」って思わせてもらっています。そんな想いを込めた楽曲です。皆さんの背中を押すことができる、人生の応援歌になったら嬉しいなと思います」──そうMisakiが語って歌い出した最新曲「メッセージ」は、The Biscats史上最も優しく穏やかな曲調ながら、夢をひとつ叶えた彼女だからこそ過去も現在も未来も受け止めて、愛の歌として届けられるようになったであろうナンバーで、この曲の披露もまたThe Biscatsの有意義な進化を顕著に感じさせる一幕であった。
<より音楽を楽しむことでロカビリーの可能性を広げていく>
その後も、高岡早紀出演のテレビCM 株式会社ダリヤ サロン ド プロ オイルリッチ クリームヘアカラー「時の流れに身をまかせ」篇”でおなじみ、テレサ・テン「時の流れに身をまかせ」カバー(オーディエンスとのコール&レスポンスが生まれる「時の流れに身をまかせ」なんて初めて聴いた!)や、渋公でも日本のロカビリー史に刻まれるであろうゴキゲンな愛おしい光景を生み出していたキラーチューン「Teddy boy」「take away」「Hot and Cool」3連発など、あらゆる場面で前述した様々な進化を感じさせながら、会場を熱狂の渦へと巻き込んでいくThe Biscats。ここまでアレコレ書いたが、その様子を見ながら「あ、この人たち、もう単純に音楽が楽しくて仕方ないんだ」と思った。Misakiも「これまでのThe Biscatsを超えなきゃいけない。それがプレッシャーだったけど、そんなことよりみんなを楽しませたい。そっちのほうが大事だと思った」と語っていたが、その結果としてこれまでのThe Biscatsを超えられているんだから、やはり面白いバンドである。
アンコールでは、4月5日に既発アルバムたちのアナログ版リリース、5月24日にウルトラ寿司ふぁいやーとの2マンライブ、6月にニューシングルリリースという3大発表もあり、それに歓喜するファンたちと「あなたへ」「Rockin' Through The Night」で気持ちをひとつにして、最終的には「ファイナルなんで、もう1曲やっていいですか?」と予定していなかった「バンビーナ」まで大はしゃぎしながら歌い奏でていたが、それに会場中が一丸となって満面の笑みで乱舞している光景はやはり美しかった。より音楽を楽しむことでバンドの、もっと言えばロカビリーの可能性を広げていくThe Biscats。気になる方は、2月8日に開催される主催イベント、ロカフェスこと【ROCKABILLY FESTIVAL 2025 supported by 城東フルーツ】が開催されるので、ぜひ足を運んでみてほしい。
取材&テキスト:平賀哲雄
カメラマン:山田久美子
■ The Biscats TOUR 2024~2025「ロカビリーナイト」
2025年2月1日(土)渋谷CLUB QUATTRO セットリスト
01. Casino Royale
02. ノッてけ!Sunday
03. Goody Goody Girl
MC
04. ハートのエース
05. Sweet Jukebox
06. My Hometown
07. ジュリアに傷心
08. Flyin'Saucer Rock and Roll
09. The Train Kept A Rollin
10. 恋はあせらず
11. 純愛クレイジー
12. ラストサマーデイ
MC
13. メッセージ
14. ジレンマ
15. 時の流れに身をまかせ
16. Oneway Generation
MC
17. Teddy boy
18. take away
19. Hot and Cool
En1. あなたへ
En2. Rockin' Through The Night
WEn1. バンビーナ
■ The Biscats オフィシャルHP
https://thebiscats.com/