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『堂珍嘉邦 LIVE in the DARK tour 2024 -AMANOGAWA-』東京公演ライブレポート

『堂珍嘉邦 LIVE in the DARK tour 2024 -AMANOGAWA-』東京公演ライブレポート

July 17, 2024 17:00

堂珍嘉邦

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『堂珍嘉邦 LIVE in the DARK tour 2024 -AMANOGAWA-』東京公演ライブレポート

「今回は詳細なレポではなく、筆者目線の感想が欲しいんです」
毎年恒例となった、堂珍嘉邦による七夕シーズンのプラネタリウムライブ『LIVE in the DARK』。堂珍のマネージャーから今回のライブレポートの話をいただいた時、そう言われて少し驚いた。10年以上ライターを続けているがそんなことを言われたのは初めてだったからだ。ともあれ『LIVE in the DARK』初体験の筆者は驚きを抱えたまま、7月11日(木)コニカミノルタプラネタリウム天空へ向かった。

『堂珍嘉邦 LIVE in the DARK tour 2024 -AMANOGAWA-』と銘打たれた今回は、7月7日(日)の七夕当日に兵庫・バンドー神戸青少年科学館、7月11日(木)に東京・コニカミノルタプラネタリウム天空で開催され、共に1st stageと2nd stageの二部構成。(両公演ともにSOLD OUT!)

会場に足を踏み入れるとドーム型の天井一面に美しい夕暮れ空が広がっていた。今回はオリジナルに加え、Spilal Lifeやスピッツ、山下達郎などのカヴァーを中心に11曲で構成。開演時間程なくしてサポートメンバーの、井上薫(Key/ Band Master)、柴田敏孝(Key)、真城めぐみ(Cho / Per)が登場。そのすぐ後から手を挙げ堂珍も登場。ライブは、CHEMISTRYの「Life goes on side D」でスタートした。

相変わらず、堂珍と真城のハーモニーは心地よい。「それではグッドナイト~」MCの締めくくりでそう言うと続く「朝のテーブルに足りないもの」へ。リクライニングシートを倒している人もいる。下手すると本当に夢の世界に引き込まれるのでは?そう思いつつ空にひとつ星を発見。プラネタリウムなのだから当たり前だが妙にテンションがあがる。徐々に空は暗くなり、気づけば満天の星々が堂珍やメンバーの姿を覆い隠してしまった。そうか……会場入りした時にプロデューサーが「本当に真っ暗になります」と言っていたのはこのことか。ステージはおろか、レポを書くペン先すら全く見えない。ここに在るのは歌声と演奏と星空のみ。ライブ演出のそれとは全く違う。
スピッツの「流れ星」はオリジナルよりBPMが高いが、澄み渡るピアノの音色と堂珍&真城のハーモニー、アレンジ、それら全てがゆったりとリラックスさせてくれる。歌の世界に酔いしれていると突如流れ星が頭上に降り注ぎ、プラネタリウムに慣れていない筆者は思わず声を上げそうになってしまった。

今シーズンから新しい映像が導入されたり、『LIVE in the DARK』で初歌唱の楽曲が6曲も用意されていたりと、この時期に堂珍と過ごすファンにとっては嬉しい内容となっている。久保田利伸の「Missing」もその1曲。この曲は歌のバラエティ番組『ハマダ歌謡祭★オオカミ少年』で歌ったことをきっかけに『LIVE in the DARK』でも歌ってみようと思ったらしい。囁くように告げるタイトル。だが相変わらず姿は見えない。アーティストの表情……いや、有り体に言えば「顔」そのものが見えないことをオーディエンスはどう感じているんだろう。普段であれば絶対に見つめていたいのだから。不覚にも一瞬そんなことを考えてしまったが、星空の中で歌声に身を委ねるうちに思考は自分のプライベートな感覚へ変わっていた。例えば大切な人のことや、この曲のオリジナルを死ぬほど聴いていた学生時代のことなど。演出的な意味ではなく、感じ方そのものが変わる……そう、これが没入感だ。切なさや甘さ、艷やかさ、フェイク、そういった堂珍の<声の表情>がより立体的で、ほんの小さな声でメロディをなぞる声や、アウトロの1音まで大切に捉えようとしている。


ここからは映像も駆使したセクションへ。ファンクラブツアーではお馴染みだが『LIVE in the DARK』では初披露の「Flame」、そして映像も新たになった「HEAVENLY」へ。広がる雲海に、降り注ぐオーロラ、朝日、そのどれもが美しい。

オリジナルの新曲「BETWEEN SLEEP AND AWAKE」は、まずはファンの人たちに生で聴いてもらいたいという堂珍の想いもあり、リリース時期は未定でありながらライブではすでに何度も耳にしている。Jazzyなピアノとミニマルなビートは、歌声のエモーショナルさを際立たせた。曲が「曇り夜空」に変わると、現れたのは大きな月と湖。木々に囲まれた湖面を月が青鈍色に照らす。繰り返される黒鍵の響きと言葉数の多いAメロ。“死”を綴ったこの曲を凛と歌う堂珍の声は、月の静寂に生命力を与えているように響き渡っていた。

20240711_1207.jpgエンディングに近づくにつれ、花火のように降り注ぐ圧巻の星たち。山下達郎のカヴァー「FUTARI」は『LIVE in the DARK』では久々だが、筆者は堂珍の他のライブでは何度か耳にしていた。しかし星と暗闇のせいで聴覚が研ぎ澄まされたのだろうか。端的に言ってしまえば歌声に溺れた。色気さえ放つ堂珍の艶やかな声と真城のハーモニーは今までのそれと違って聴こえた。声を含む音そのものがより立体的なのだ。

「夜が明けてきました。おはようございます」星空が明るくなりふと我に帰った。堂珍やメンバーの顔も見え、それまでの没入感やプラネタリウムという会場だからこその少しの緊張感がほぐれたのが、会場の空気から感じ取れた。そして更に和ませたのはやはり(笑)真城。堂珍の「おはようございます」の言い方に「ビジネス的」「ホテルのフロントマンみたい」とダメ出しをし、会場からも笑いがこぼれた。

20240711_0540.jpg二人の和むやり取りの後、改めて「皆さん、本当に最後までお付き合いいただきありがとうございました」とお礼を言うと、最後の「Mr. Bojangles」ではクラップが広がり、大きな拍手を持って『堂珍嘉邦 LIVE in the DARK tour 2024 -AMANOGAWA-』東京公演 1st stageは終了した。

20240711_1435.jpg通常のライブとは全く違うこの感覚。引き算の美学だからこそ、考えるのではなく感じるレポートを求められたことを実感し、会場を後にした。


Photo:冨田味我
Text:秋山雅美(@ps_masayan


□ Setlist
M1. Life goes on side D(CHEMISTRY)
M2. 朝のテーブルに足りないもの(SPANOVA)
M3. STEP TO FAR(Spiral Life)
M4. 流れ星(Spitz)
M5. Missing(久保田利伸)
M6. Flame(Sing Like Talking)
M7. HEAVENLY(Ohana)
M8. BETWEEN SLEEP AND AWAKE
M9. 曇り夜空(AKEBOSHI)
M10. FUTARI(山下達郎)
M11. Mr. Bojangles(Sammy Davis Jr)


■ 堂珍嘉邦 オフィシャルサイト
https://dohchin.com/

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