POPSCENE - ポップシーン
POPSCENE - ポップシーン

TM NETWORK、40周年ツアーファイナルに訪れたビッグサプライズ!

May 20, 2024 18:00

TM NETWORK

0
シェア LINE
TM NETWORK、40周年ツアーファイナルに訪れたビッグサプライズ!

Photo:Kayo Sekiguchi

音楽シーンに革命的進化を生み出した3人組ユニットTM NETWORK(宇都宮隆、小室哲哉、木根尚登)が、2024年4月21日にデビュー40周年を迎えた。アニバーサリーとなる39、40本目となったツアーファイナル『TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days ~YONMARU~』公演を、5月18日、19日にKアリーナ横浜にて開催した。

実は、5月19日とは、TMNが終了した1994年の東京ドーム公演『TMN 4001 DAYS GROOVE』からちょうど30年目となる。もしかしたら今回初めて、生TM NETWORKのライブを観たオーディエンスは大勢いたかもしれない。ここ最近のツアーでは敢えてホールツアーを巡るなど、ファンダム=コアなFANKS(TMファンの意)によるチケット即完状態が続いていた。若き平成FANKSも増え、開演前から、待望感という名の熱量が凄まじかったのだ。

ファンネームである“FANKS”と、この2年間の活動のキーワードと言える“intelligence Days”を冠した本ツアー。開演前、会場にはTMデビューと時代をともにした80‘s洋楽ポップスが流れ、期待感が高まる。

TM NETWORKのライブといえば映像演出などオープニングに凝ったイメージがあった。しかし定刻過ぎ、暗転直後。なんの前触れもなく、代表曲「Self Control」のイントロダクションが2万人キャパシティーの会場に鳴り響いたのである。

驚きだった。宇都宮が右手をまっすぐ天へ掲げる名シーン。鳥肌ものの光景だ。オープニングからフルスロットルに盛り上がるオーディエンス。

場面は一転し、可変式ドットミラーによって宙に浮かぶUFOを表現。サーチライトの如く周囲を赤く照らすライティングが幻想的だ。続いて繰り広げられたのは1987年2月26日リリース、アルバム『Self Control』収録の「Maria Club」。これまでライブで披露された機会も多くないレアなナンバーだ。しかし、歌詞フレーズにある“同じ仲間の集まる場所さ”など、ライブ導入部にぴったりなダンサブルチューン。さらに、TM NETWORKはじまりの曲である「1974」を披露。LEDスクリーンには円盤が飛び交い、ネオンの星の瞬きとともに1984年、デビュー当時のミュージックビデオとシンクロするパフォーマンス。“Sixteen あの頃の気持ち”という大切なフレーズを、オーディエンスに委ねたシーンにも心動かされた。煌びやかな音像に、会場の空気が一気にリラックスしたムードへと変わっていく。

HajimeKamiiisaka_1_20240520.jpegPhoto:Hajime Kamiiisaka

TM NETWORKのライブにはMCとアンコールが存在しない。

そんなこともあってか、近年のツアーでは1曲、リハ中に小室が詞曲を書いたフォーキーなナンバーを小室と木根によるデュオで届けることが定番となった。タイトルは「Carry on the Memories」。TM NETWORKメンバーが、如何にしてアマチュア時代から、前身バンド、メジャーデビュー、そして紆余曲折あったかの想いが伝わるヒストリー。そんな長い長い物語において、今もなお好きな音楽を生業としていることへの感謝を歌にした人間らしいナンバーだ。

それをMCではなく、歌で届けるというのが奥ゆかしいTMらしい表現である。

HajimeKamiiisaka_2_20240520.jpegPhoto:Hajime Kamiiisaka

会場中、せつなさでいっぱいにしっとりとした空気感のまま、キネバラ名曲「Confession」へ。そう、木根作曲によるバラードは定評があり、それは通称“キネバラ”と呼ばれている。坂本美雨、くるりのメンバーもよくその魅力を語ってくれていた。そして、サポートギタリストの北島健二によるギターソロが熱かった。名演である。

ここで、TM NETWORKの歴史を代表する、1988年12月9日リリースの伝説的アルバム作品『CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991』から、7曲から連なる通称“CALOR組曲”と呼ばれるナンバーを披露。しかも、映像に生成AIを活用することで、舞台であるロンドンの街並みや登場人物を、歌詞や音楽。物語、写真などを用いてプロンプトしていく。こうして生まれたサウンドと溶けあった映像は、ツアー中も常に微調整され毎回進化が止まらなかった。TM NETWORKが80年台から構想していた夢に、ようやくテクノロジーが追いついてきたことで実現できることになったのだ。

KayoSekiguchi_2_20240520.jpegPhoto:Kayo Sekiguchi

そして新曲となるインタールード的なインストチューン「Coexistence」では、映像とシンクロするパーカッシブなサウンドと共に、日本を代表するミュージシャンであるサポートメンバーのドラマー阿部薫と、ギタリスト北島健二(FENCE OF DEFENSE)によるソロプレイが重ね合わされていく。

MakikoTakada20240520.jpegPhoto:Makiko Takada

ここから後半戦がスタート。映画『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』オープニングテーマ「Whatever Comes」におけるギターサウンドが冴え渡り、よりダンサブルに踊れるビートセンスが絶妙な「RAINBOW RAINBOW」では、プログラミングによって可変するドットミラーを活用したライティングによって宙に虹を描いた。そして、神秘的な神々しいサウンドをデジタルオーケストラのごとくひとりで繰り広げる「TK Solo」パートを挟み、待ちに待った最新曲「Get Wild Continual」の登場だ。Netflix映画『シティーハンター』のエンディングテーマ曲として、世界でも聴かれている最新バージョンの“Get Wild”。Continualとは“継続的”を意味する。

KayoSekiguchi_4_20240520.jpegPhoto:Kayo Sekiguchi

KayoSekiguchi_5_20240520.jpegPhoto:Kayo Sekiguchi

勢いそのままに、1985年5月22日にリリースした3枚目のシングル「ACCIDENT」を、踊れるビートへ大胆にリプロダクション。メロディーの美しさを際立たせた2024年バージョンとして意気揚々とプレイ。人気曲「Get Wild Continual」後に、本作を演奏することは、まだTMが無名時代、当時ヒットに至らなかったことへのリベンジのようにも感じた。そして、狙い通り最高潮の盛り上がりを迎えたのであった。

KayoSekiguchi_3_20240520.jpegPhoto:Kayo Sekiguchi

ここで空気が一変して、TM NETWORK最重要ソング「Electric Prophet」へ。“電気じかけの予言者”という意味を持つ本作は、TM NETWORKが歩んできたシアトリカルなアーティスト性のすべて凝縮した作品だ。

宇都宮が大切に言葉のひとつひとつを紡いでいく。

今回のツアーのステージは俯瞰してみると、額縁のようにライティングが設計されている。光の渦がうねり、オーディエンスを没入させていく。その枠のような存在は、まさにワームホールのようにも見え、実は演奏されてきた楽曲はTM風に言えば時空を超えて別次元から届けられたオーパーツのような宝物に感じたのだ。「Electric Prophet」という名曲は、そんな夢心地な思いを肯定し、僕らを音楽という魔法へと誘ってくれる。そんな大切な楽曲である。

KayoSekiguchi_7_20240520.jpegPhoto:Kayo Sekiguchi

そして、ラストシーンへ向かって短めのカットされた金テープが客席へ向けて解き放たれた。これは初期ライブでお馴染みの“金色の夢”演出だったが、最終日の本日のみ復活された。
 
40周年ツアーながら、ヒットシングルの羅列という懐古主義に終わらず、自らやりたいことを意義ある実験性を持って挑戦していくTM NETWORKの凄み。彼らのライブにはMCもアンコールもないが、それはすべて作品性や世界観を第一に“TMらしさ”とはなんなのか? そんな自問自答してきた答えが本ツアーにあった。それは決してマニアックではなく、誰もに開かれたポップミュージックという入口を持つ最高峰のエンタテインメントだったのである。
 
本編終了後、いつも通りインストチューン「intelligence Days」とともに映画のようなエンドロールが流れ、……本来ならばこのまま終わるはずだった。
 
だがしかし、いつもラストに驚かされるエンディングを告げる異常に音のデカい爆発音が鳴らない。

実はライブ直前、小室はSNS、Threadsに下記情報を投稿していた。


2022〜2024.519で 長かったintelligence Days Tourが 終わります。 世界情勢、国内の不思議な平和、そして これから。 CRASH DEVOTION COEXISTENCE と 僕たちなりに表現してきました。 COEXISTENCE という曲は新曲ですが 音の紡ぎ方がとてもタイトルを表していると 思います。 そして、ラスト、 COEXISTENCE を実感してみてください。

 
耳慣れない言葉、COEXISTENCEとは“共存”を意味する。2021年からのTM NETWORKが提唱してきたキーワード“CRASH〜DEVOTION〜COEXISTENCE”を日本語訳すると、“破壊〜献身〜共存”となる。それは、揺れ動く世界情勢ともシンクロするワードだ。

このメッセージが意図することとは? 

その答えが、天の声のように聞こえたマシンボイスによる“one more song”という声で告げられた。

c_TAK20240520.jpeg3人のメンバーが再びステージに舞い戻り、ここでスペシャルゲストとして松本孝弘(B’z)が登場した。実は、B’z結成前にTM NETWORKのサポートギタリストを担当していた縁もあり、20年ぶりにTM NETWORKとの共演となった。FANKSはみんな“まっちゃん(愛称)”が大好きなのだ。

楽曲は「Be Together」。まさに、小室が投稿したCOEXISTENCE=共存ともつながるワードだ。問いかけの回答とは、松本孝弘との共演を示唆していたことがわかる。

KayoSekiguchi_6_20240520.jpegPhoto:Kayo Sekiguchi

そして、最終日、ツアーファイナルということもあり、宇都宮が人差し指で1を表した。松本孝弘も人差し指で1を表し、もう1曲演奏がプレゼントされることになった。しかも、オリジナル版「Get Wild」だ。爆音と言っても過言ではない、分厚いサウンドでグルーヴする夢のような展開。そう、TM NETWORKとは鉄壁のライブバンドでもあるのだ。まさに、目の前で繰り広げられていく“金色の夢”。最上級の盛り上がりのなか、電気じかけの予言者たち=TM NETWORK、記念すべき40周年ツアーは華々しくエンディングを迎えた。

テキスト:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)


【メンバー】
□ TM NETWORK
小室哲哉
宇都宮隆
木根尚登

□ BAND MEMBER
北島健二
阿部薫

□ GUEST GUITARIST
松本孝弘(B’z)

【セットリスト】
Self Control
Maria Club
1974
Carry on the Memories
Confession
A Day In The Girl’s Life
Carol’s Theme Ⅰ
Chase In Labyrinth
Gia Corm Fillippo Dia
In The Forest
Carol’s Theme Ⅱ
Just One Victory
Coexistence
Whatever Comes
RAINBOW RAINBOW
TK Solo
Get Wild Continual
ACCIDENT
Electric Prophet
intelligence Days
 
アンコール
Be Together
Get Wild


■ TM NETWORK オフィシャル
https://fanksintelligence.com/