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奥田民生、地元広島の地で満員御礼のツアーファイナル!

April 10, 2023 12:00

奥田民生

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奥田民生、地元広島の地で満員御礼のツアーファイナル!

奥田民生(以下OT)の全国ツアー『奥田民生2023 ラビットツアー 〜MTR&Y〜』が、3月26日(日)、広島上野学園ホールでファイナルを迎えた。1月28日(土)千葉県・市原市市民会館からスタートした、全国13ヵ所・14公演のツアーの締めであるこの日は、OTの地元ということもあってか、当日販売の立見券売場に長い行列ができる大盛況となった。

BGMが止まり、客電が消えると、ベース小原礼が、片手に紙コップを持って出て来る。その中身を飲み干すと、振って水を切り、伏せた形で手元のテーブルに叩きつけて「♪コッ、コッ、コッ、コッ」とリズムを刻み始める。続いてOTがステージに登場、そのリズムに合わせてギターを弾き始め、「太陽が見ている」を歌い出す。AメロとBメロを一回り歌う間に、キーボード斎藤有太とドラム湊雅史が現れて、2コーラス目に入るところから演奏に加わる──このツアーは全箇所、そのように始まった。曲の最後は、小原礼のコップの音だけに戻って終わるのも、全箇所共通である。
そのコップの音が消えないうちに始まった「無限の風」では、OT、間奏でステージ中央に出て、ギターソロを聴かせる。そして、自身のボーカルから始まる「月を超えろ」へ──と、「太陽」「風」「月」がテーマの3曲を、曲間なしでプレイしていく。

今日、広島東洋カープの連敗が7で止まったことに言及し、「広島のみなさん元気ですか。改めまして、先月もここに来ました吉川晃司です」と挨拶し、今日はWOWOWの映像収録が入っていて春先に放送されることを伝え、メンバーを紹介したMCを経て、「ライオンはトラより美しい」へ。途中で小原礼もリードボーカルをとったこの曲の最後、ベース・ドラム・キーボードの音が止まっても、OTはひとりでギターリフを弾き続ける。
続いては、『29』『30』の後に出たミニアルバム『FAILBOX』(1997年)から「カヌー」。OTの楽曲ではめずらしい、性愛を歌ったこの曲が、ツアーで披露されるのは久々である。
客前ひとり多重録音ツアー「ひとりカンタビレ」の5本目でレコーディングされた曲だが(2010年4月29日・渋谷PARCO劇場)、同年のMTR&Yのツアーからすっかりこのバンドのレパートリーになっている「音のない音」を経てのMCでは、カープの新井貴浩新監督から花が届いていることを伝えるOT。「野球は大変ですよね。サッカーは週末、でも野球は毎日」という振りから、「♪毎日愛のボートで」と、「愛のボート」を歌い始める。全国各地で、何かしら「毎日」に関連したことを言ってからこの曲を歌う、というのも、このツアーのルールになっていた。アウトロでは、各メンバーがインプロを繰り広げる。
次の「マイカントリーロード」で、イントロとアウトロで吹くハーモニカが、OTにとってこのツアー最大の難関だったようで、この日は、ハーモニカホルダーを身につけながら「最後まで慣れなかったやつ」と自白した。


兎年だからつけたツアータイトル『ラビットツアー』にちなんで、ステージは月面で演奏している設定で、背景の遠くに地球が見える。斎藤有太と湊雅史が闘うようなアドリブを聴かせた「白から黒」では、その宇宙が星空になる。
OTがメンバーに「いいよ!」と合図して始まった「明日はどうだ」で、ライブは一度目のピークを迎えた。OT、この曲でもステージ中央に出て、ソロを弾きまくる。次の「KYAISUIYOKUMASTER」では、イントロから最後まで、シンプルで攻撃的なギターリフが続いた。
OTとしてはめずらしく、シングル・リリースされた時(2005年)カップリングにクラブ・ミックス・バージョンが入っていた「トリッパー」と、客席が「明日はどうだ」に匹敵するテンションになった「フリー」と、OTのボトルネック奏法が冴えまくる「まんをじして」の3曲は、曲間なしでたたみかけられる。
ヘリコプターの音のSEから始まる「イナビカリ」で上野学園ホールの温度を上げ、まさに地を這うような「手紙」で一度ドスンと下げ、ユニコーンの「チラーRhythm」と並ぶOT流ダンス・チューン「御免ライダー」でまたグッと上げてからの本編ラストは、「最強のこれから」。2021年のMTR&Yのツアーでは、1曲目に持ってきた曲である。客前ひとり多重録音ツアー「ひとりカンタビレ」の初日(2010年3月15日)に、渋谷DUO MUSIC CHANGEで作られたこの曲が、MTR&Yの強靭なバンドサウンドで生まれ変わるさまを、今年もオーディエンスに、たっぷりと食らわせてくれた。

このツアーはセットリストが2パターンあって、交互にやって来たが、今日は両方をやった、だから普段より2曲多い、ということをOT、アンコールで明かす。普段は13曲目が「フリー」か「まんをじして」のどちらかで、15曲目が「手紙」か「最強のこれから」のどちらかなのだが、今日はどちらもやった、ということだ。やってみての本人の感想は「ものすごい疲れる」とのこと。

ここで、開演前にロビーで愛想を振りまいていたスタンから、ツアーの終了を祝う花束の贈呈あり。スタンとは、広島本通のショッピングビル、サンモールのイメージキャラクターで、サンモールは2022年に50周年を迎えたのを記念して、ユニコーン・OTと、さまざまなコラボを行っている。このライブの時期には「奥田民生×三浦憲治 タイムトラベル写真展」が無料で開催されていた。また、上野学園ホールのロビーには、OT直筆の新井監督率いるカープへの応援メッセージが掲げられた。

そして、アンコールでプレイされたのは、「さすらい」と「快楽ギター」。ツアー途中から、ボーカルの一部をオーディエンスにまかせることが可能になった「さすらい」では、OTの「ひろしまー!」というコールに応えて、見事なシンガロングが起きた。ツアー初日からこの日まで、イントロを特別に長くしたスペシャルバージョンで演奏された「快楽ギター」では、オーディエンス、「それぞれ勝手に歓声を飛ばす」という、熱狂的な空気になった。

en2023041001.jpegOTが、長い長いお辞儀をしてからステージを下り、客電が点いて終演のアナウンスが流れても、ダブルアンコールを求める手拍子は収まらなかった。で、2分ほどそのまま手拍子が続いた後、自然に、大拍手に変わった。

TEXT by 兵庫慎司
Photo by 三浦憲治



■ 奥田民生 オフィシャルサイト
https://okudatamio.jp/

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