POPSCENE - ポップシーン
POPSCENE - ポップシーン

J-WAVE TOKYO GUITAR JAMBOREE 2023 supported by 奥村組 3月4日ライヴレポート

March 7, 2023 20:00

イベント

0
シェア LINE
J-WAVE TOKYO GUITAR JAMBOREE 2023 supported by 奥村組 3月4日ライヴレポート

豪華アーティストがギターの弾き語りで共演する、FMラジオ局J-WAVE(81.3FM)主催のライブイベント【J-WAVE TOKYO GUITAR JAMBOREE 2023 supported by 奥村組】(以下、ギタージャンボリー)が3月4日(土)・5日(日)の2日間、両国国技館で開催された。ギタージャンボリーは2013年にスタートし、今年で8回目の開催となる。近年は新型コロナウイルス感染症対策のため、収容人数を減らし場内での飲食を禁止するなどの制限を設けていたが、 今回は3年ぶりの完全復活!場内ではちゃんこや、やきとりといった様々な相撲フードが販売されたり、土俵に見立てた360度回転するセンターステージなど両国国技館の特性を活かしてオーディエンスを楽しませた。ポップシーンでは初日3月4日(土)のライヴレポートをお届け!


出演者は、斉藤和義、岡野昭仁(ポルノグラフィティ)、秦 基博、高橋 優、藤原さくら×Rei、七尾旅人、みゆな、CLOW、特別演目(TOSHI-LOW×高橋 優×岡野昭仁×斉藤和義)の全9組。オープニングアクトとして先陣を切ったのは3ピースバンドfusenの林龍佑。感情の機微を大切にした歌詞と歌声で2曲を披露。その後MCのクリス・ペプラー氏が登場。「どすこい!どすこい!」景気良い声で盛り上げると、藤原さくらとReiが鏡開き。2023年のギタージャンボリーが始まった。

miyuna20230307.jpeg呼出が柝を入れながらトップバッターみゆなの名前を呼び出す。今年20歳を迎えたみゆなは成人式で着たという振袖姿で登場。愛嬌あるMCとクラップのコール&レスポンスなどを交えながら「ガムシャラ」、「缶ビール」など5曲を歌い上げ、力強い歌声でオーディエンスに印象づけた。みゆなは最新曲「夢でも」が直木賞作家・朝井リョウの同名連作短編小説を映画化した『少女は卒業しない』の主題歌となっている。続いて登場したのはCLOW。少しスモーキーさと繊細さを持つ歌声で5曲中、2月にリリースされた新EP『はなむけ』から「駆けてゆく」と「ラ・ラ・バイ」を披露。「さいごの航海」ではギターの音色と共に歌声を会場に響き渡らせた。

clow20230307.jpegこの日が楽しみで前日から両国入りしていた七尾旅人は、ちゃんこを食べた話やこの周辺に住んでいた頃の話などをした後「ストリッパーのおねえさん」でライブスタート。この曲は七尾が上京したての頃、実際隣の部屋に住んでいたストリッパーがモチーフになっている。「蒼い魚」ではマイクを避けて、“泣かないで 泣かないで”と、魂の歌声を聴かせた。波の音や虫の声、ギターの音色の違いなどで楽曲を演出し、七尾旅人の世界観を繰り広げた。

nanao20230307.jpeg呼出が名前を呼ぶ声に拍手と歓声が湧き上がったのは秦 基博。「ひまわりの約束」のイントロを爪弾けば更なる歓声を呼ぶ。「今日は色々な角度からの秦基博を。オススメは右45度。」ステージを回転させながら会場を和ませると懐かしい「トレモロ降る夜」へ。秦は、今をときめく若きアーティストたちにこの曲をよくカヴァーしていたと告げられることも多いらしいが、大抵は楽屋裏などで終わってしまうらしく「なんでオフィシャルで言わないの?なんでアンオフィシャルばっかり?」と愚痴トークで爆笑をさらう。
クラップがより一層響いたのは「キミ、メグル、ボク」。1階の砂かぶり席はすでにスタンディングで楽しんでいる。秦は3月22日(水)に3年3ヶ月ぶりとなるアルバム『Paint Like a Child』をリリースする。「子どもが描く絵のように、自分の心の内にある音楽を思いのままに表現したいなぁと思って作ったアルバムです。」アルバムについてそう触れると、昨年7月にデジタルリリースされアルバムにも収録される「残影」へ。この曲はテレビ朝日系木曜ドラマ「六本木クラス」挿入歌として話題となった。オーディエンスは、胸を打つ切ない歌声とクリアなギターの音色の対比に聴き入っていた。「また皆さんとライブでお会い出来たら嬉しいです。」最後にそう言うと「鱗(うろこ)」で秦はステージを後にした。

hata20230307.jpeg休憩中はオーディション「J-WAVE SONAR MUSIC Road to RYOGOKU」グランプリ受賞者の滝沢ジョーがゲストアクトとしてステージを彩る。滝沢のステージ、そして休憩が終わり再びステージに登場したのは鏡開きをした藤原さくらとRei。ブルーとピンクで衣装を合わせ、Reiはしめ縄ヘア。二人ともギタージャンボリーは2回目の出演。藤原は「こうやって二人で立てるのは嬉しいですね。」と言い、Reiは「このように360度見下されてみていただくというのは特別ですね。」と会場を見渡しながら言う。オリジナルは勿論、はっぴいえんどの「風をあつめて」のカヴァーなど、二人の息のあった歌とギターとコーラスで楽しませると、最後はReiが書き下ろした藤竜也主演の映画『それいけ!ゲートボールさくら組』(5月12日(金)公開)の主題歌「Smile! with 藤原さくら」で二人のステージは終了。

sakura_rei20230307.jpeg
会場を熱くしたのはギタージャンボリー初登場の高橋優。オーディエンスたちが手を振る中「福笑い」からスタート。歌詞に“ギタージャンボリー”という言葉を入れ、盛り上げる。高橋は以前所属していた事務所の株主総会というイレギュラーなシチュエーションで歌った経験を持つ、この両国国技館で。そこで株主のひとりから、デビュー当時はヒリヒリとしたアッパーな曲を歌っていた印象があったのに最近はほんわかした曲ばかりと叱咤激励があり「やっぱりデビュー当時を忘れちゃいけないなと。」と言いながら、ヒリヒリとしたアッパーなナンバーでこの日来たオーディエンスの心をビリっと引き裂くと煽りまくると「というわけで、次はほんわかした曲を聴いてください。」と落とし、会場は大爆笑。しかし「勿忘草」を歌い始めると、そのメロディと歌声に魅了されていた。ブリッジミュートで刻むリズムにクラップが乗り、そのまま「明日はきっといい日になる」へ。クラップもボルテージも上がり、最後は高橋のワンマンライブでも結束力が生まれる「HIGH FIVE」で会場をひとつにした。

takahashiyu20230307.jpeg休憩中、翌日MCを務めるGROVER(グローバー)が登場。ソロでの音楽活動本格再始動として、3月3日に配信リリースされたばかりの「DIVE!」を初披露した。

ここでギタージャンボリーの横綱、斉藤和義の登場。歓声も拍手も横綱に向けられるそれなのに当の本人は相変わらず飄々とした様子で軽く挨拶。「やさしくなりたい」はイントロですでに一体感を感じる盛り上がりをみせ、短い間奏やアウトロのギターリフでも都度歓声が湧き、歌が終わった後にオーディエンスから投げられた「せっちゃん、最高!」の声に同調の歓声と拍手が広がった。その熱気から「歌うたいのバラッド」へ持っていくのは反則だ!関係者席からも「やられたー!」と唸る声が聞こえる。(筆者も強く同意!)そして掻き鳴らされたギターは「明日大好きなロックンロールバンドがこの街にやってくるんだ」へ。ボルテージを上げるカッティングの後、“今夜最高のロックンロールバンドが両国にやってくるんだ”と歌えば会場の熱量も更に高まる。昨年THE FIRST TAKEで公開、リリースされた同曲はアルバムヴァージョンとして今年4月12日にリリースされるニューアルバム『PINEAPPLE』にも収録される。楽曲によってギターも歌も表情を変える斉藤のステージにオーディエンスはすっかり魅了されていた。

saito20230307.jpegギタージャンボリー2度目の出演にしてやはり会場を大きく沸かせたのはポルノグラフィティの岡野昭仁。「アポロ」でこの日一番と言っても過言ではない盛り上がりを我がものにすると「曲の途中ですが……」と突如MCに。初めてギタージャンボリーに登場した三年前は両国国技館での開催が中止となり、J-WAVEのロビーで歌ったため岡野は有観客でのギタージャンボリーは初めて。なのにソロステージのトリ。岡野は「この出順、プレッシャーやばくない?」と笑う。しかも弾き語りを複数曲披露することもこの日が初めてらしく「まぁデビューみたいなもんですから、今日。こんだけ盛り上がってくれとるから頑張って歌いたいと思います。今日も明日も良い日にするために、皆さん、是非チカラを貸して。わざわざ曲の途中止めてそんなことを宣言しました!盛り上がっていきましょう。よろしく!」と力強く言うと再び曲に戻った。曲だけでなく広島弁混じりのMCでオーディエンスを引きつけると、続け様に「メリッサ」へ。そして今回は折角の弾き語り。岡野は「趣向を変えて」と言いながら「サウダージ」の頭サビをゆっくり歌う。ギターは極力抑え、唯一無二の歌声を惜しげもなく会場へ響かせた。岡野には今春、大学生になる娘さんがいる。若さゆえのテンションの高さで岡野は帰宅後すぐに「パパ、この曲でちょっと踊ってみて。」と言われるらしいが(当然踊れずノリが悪いとダメ出しされる)そんな娘さんの話から、新生活や新たな旅立ちを迎える人たちへエールになる曲をと「前夜」、「ギフト」を2曲続けて披露。最後の「ハネウマライダー」ではオーディエンスがタオルを回し、両国国技館を熱くした。

okano20230307.jpeg結びの一番は特別演目としてTOSHI-LOW、高橋 優、岡野昭仁、斉藤和義が登場。年齢や名前、地元話をネタに4人で漫才のような掛け合いが始まる。しかもTOSHI-LOWと岡野はこの日初めて会ったとは思えない打ち解け方を見せあまりにトークが盛り上がるも、とうとうオーディエンスから「歌って!」と歌の催促。これには会場も爆笑するが、やはりどんな取組みを見せてくれるのかは楽しみだ。今回ステージに用意されたのはなんと1本のマイク。そこから感じ取れる4人の生歌とギターの音色を楽しむ趣向らしい。4人が歌うのは「明日なき世界」。この曲を選んだのはTOSHI-LOW。この曲はバリー・マクガイアのオリジナルを高石ともや氏が日本語でカヴァー。それをベースに忌野清志郎氏が自分なりの表現に一部歌詞を書き換え、RCサクセションのアルバムに収録した。世の中が混乱する今、このプロテストソングはオーディエンスの心にどう響いたのだろう。静かに聴き入っていた会場は最後大合唱となった。

main20230307.jpeg最後は東日本大震災を経てTOSHI-LOWが弾き語りを始めるきっかけとなった、“満月の夕”。この曲の作詞はソウル・フラワー・ユニオンの中川敬。作曲は中川氏とヒートウェイヴの山口洋氏が共作。ソウル・フラワー・ユニオン版とヒートウェイヴ版で一部歌詞が違うが、この日歌うのは勿論BRAHMAN版としてカヴァーされたヴァージョン。この曲は阪神・淡路大震災がきっかけで書かれたものだが、TOSHI-LOWが東日本大震災の時にこの曲が頭の中に流れたと言うのも納得出来る。こうして異なる魅力を持つアーティストたちによる【J-WAVE TOKYO GUITAR JAMBOREE 2023 supported by 奥村組】初日は幕を閉じ、翌日のステージへバトンが渡された。

なおギタージャンボリーの模様は、J-WAVEで3月20日(月)22時~26時にオンエア予定なので、是非楽しみにしてもらいたい。


Text:秋山雅美
Photo by 上飯坂一



□ 3月4日セットリスト

【Opening:林龍佑(fusen)】
M1 些細な事
M2 また会いましょう

【みゆな】
M1 ガムシャラ
M2 埋葬(ショート)
M3 缶ビール
M4 願い
M5 my life

【CLOW】
M1 TOTTEOKI
M2 駆けてゆく
M3 ラ・ラ・バイ
M5 さいごの航海

【七尾旅人】
M1 ストリッパーのおねえさん
M2 湘南が遠くなっていく
M3 蒼い魚
M4 この素晴らしき世界(cover)

【秦 基博】
M1 ひまわりの約束
M2 トレモロ降る夜
M3 泣き笑いのエピソード
M4 キミ、メグル、ボク
M5 残影
M6 鱗(うろこ)

【藤原さくら×Rei】
M1 Super good
M2 Categorizing Me
M3 風をあつめて
M4 「かわいい」
M5 Lonely Dance Club
M6 Smile! with 藤原さくら

【高橋 優】
M1 福笑い
M2 微笑みのリズム
M3 勿忘草
M4 明日はきっといい日になる
M5 HIGH FIVE

【斉藤和義】
M1 俺たちのサーカス
M2 アメリカ
M3 シグナル
M4 やさしくなりたい
M5 歌うたいのバラッド
M6 明日大好きなロックンロールバンドがこの街にやってくるんだ

【岡野昭仁(ポルノグラフィティ)】
M1 アポロ
M2 メリッサ
M3 サウダージ
M4 前夜
M5 ギフト
M6 ハネウマライダー

【特別演目:TOSHI-LOW×高橋 優×岡野昭仁×斉藤和義】
M1 明日なき世界
M2 満月の夕