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スキマスイッチ、ファンと作った盛々の武道館!【スキマスイッチ "Live Full Course 2022" 〜 20年分のライブヒストリー 〜】ライブレポート

スキマスイッチ、ファンと作った盛々の武道館!【スキマスイッチ "Live Full Course 2022" 〜 20年分のライブヒストリー 〜】ライブレポート

December 26, 2022 19:00

スキマスイッチ

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2003年7月に1stシングル『view』でデビューし、デビュー20周年イヤーに突入したスキマスイッチ。昨年11月に2枚同時リリースしたオリジナルアルバム『Hot Milk』『Bitter Coffee』をひっさげ、今年2月からスキマスイッチ史上最多の全56公演全都道府県ツアーを大団円で終え、その熱も冷めやらぬ12月14日には初期のプレミアムライブ映像を4タイトル同時にリリース。

更に12月22日(木)の日本武道館は熱狂と愛情に包まれていた。【スキマスイッチ “Live Full Course 2022” 〜 20年分のライブヒストリー 〜】と題した今ライヴ、実は昨年開催された【スキマスイッチ “Soundtrack”】のVol.2となる予定だったものの、漫画と音楽の融合という初めての試みということもあり、更なるブラッシュアップが必要と考え、タイトルや企画意図を変更している。スキマスイッチの公式You Tubeでもその件を話しているが、正直に話すあたりは彼ららしい。しかし変えるからには決してファンをがっかりさせないのも彼ららしい。原点回帰を思わせるスキマスイッチ2人だけのアコースティックステージと、映画音楽から提供曲まで様々な楽曲のカヴァー、ファンからのリクエストをもとに「奏(かなで)」や「全力少年」などの人気曲のオンパレードなど、コンセプチャルな三部構成となっており、まさにフルコース!

会場を警備するスタッフの姿もギャルソンのように白シャツと黒いエプロン姿。そういう演出にさえワクワクする。バンドメンバーはツアー同様、村石雅行(Dr)、種子田健(B)、石成正人(G)、浦清英(Key)、松本智也(Per)、本間将人(Sax)、田中充(Tp)。
客電が消えると静かに大橋卓弥と常田真太郎が登場。第一部は二人だけのステージ。SEや映像による華やかな演出はない。全都道府県二人ツアー【スキマスイッチTOUR2012-2013“DOUBLES ALL JAPAN”】を思い出す。大橋のアコギが掻き鳴らしたのはデビュー曲「view」。筆者の胸はBメロですでに高鳴っている。ピアノだけでなく常田のコーラスが際立つのも二人ならでは。
二人だけで演奏する「view」に常田が「懐かしいね。色々ショッピングモール巡りをしてね。各地をね。」とデビュー時を振り返りつつ、コンセプチャルライヴならではの緊張感を会場の静けさに感じたのか「ちょっと緊張してるのかな?厳かな感じになってる……」そう言うと大橋がすぐさま「そんな二人ではないんですけど(笑)」とリラックスムードに変えた。空気を読みそれを軽い笑いにする。こんな短いキャッチボールだが、オーディエンスからは安堵にも似た笑いが起きた。
感情を揺さぶるピアノの音色と歌声の表現力は、離れてしまった恋人への後悔と愛情が入り混じった切ないストーリーの「いろは」をまるで映画のように彩り、あちらこちらで涙を拭うオーディエンスの姿を見た。

「ほんと、何て言うんでしょう……無茶なことを沢山言う!」
第一部が終わり、お色直しと言いながら常田が一旦退場している間、大橋は今ライヴの趣旨が当初と変わったことを説明しながら、ファンから送られてきたリクエストに対して本音混じりにそう言った。見に覚えがある(笑)オーディエンスも多いだろう。笑いが起こる会場につられ大橋も笑う。来年でデビュー20周年のスキマスイッチは今まで数え切れないほどのライヴやツアーを重ねてきた。大橋はサブタイトルの<〜 20年分のライブヒストリー 〜>にも触れながら、20年の集大成みたいなものを届けられればと、それまでのライヴを感じさせる今回の演出について話していると、衣装替えを終えた常田が再び登場。これまでのツアーの色々な部分を衣装にも織り込んでいるという、まさにタイムリーな話で繋げ、今度は大橋がお色直しタイム。ここからはバンドも登場。常田がバンドを呼び込むと同タイミングで大橋も登場し、カヴァーコーナーの第二部へ突入。

やはり盛り上がったのは映画『SING/シング: ネクストステージ』で大橋が声優を務めたジョニーのメイン曲「ア・スカイ・フル・オブ・スターズ」。高らかな歌声と爽快でありながらアグレッシブなリズムに大きな拍手が湧き上がった。話は若干逸れるが、12月4日にファイナルを迎えたツアー【スキマスイッチ TOUR 2022 "cafe au lait”】の東京公演で、『SING/シング』の続編でジョニー役を自分がやっていたらという常田の冗談に、元カノを取られるような悔しさと話していた大橋を思い出してしまった。
大先輩でスキマスイッチにも縁が深い⼩⽥和正氏の「東京の空」を歌い終わると、この日はクリスマスが近いこともあり、スキマスイッチの「クリスマスがやってくる」のラスサビからDonny Hathawayの「This Christmas」へ。シャンシャンシャンというスレイベルの音色やクリスマスツリーなどの映像も含め、会場に少し早いクリスマスを届けてくれた。

折角なので二人のルーツとなったアーティストの楽曲カヴァーも。常田が選んだのは槇原敬之氏の「素直」。常田はCMで流れていたピアノ1本の弾き語り曲を最初、アルバム曲だと思っていたそうだが実はシングル曲と知り、その潔さに驚き、いつか自分たちでもそういう曲を作りたいと考えて後に形にしたのがピアノ弾き語り曲「未来花(ミライカ)」だったというエピソードを語った。「素直」の演奏は当然常田のピアノ1本。大橋は何て優しい笑顔で歌うのだろう。オリジナルよりしっとりとしたムードだが、同じように心に温かく響いた。そして大橋が選んだのはMr.Childrenの「タガタメ」。「色々な想いを込めて」と言う大橋と「その曲を選ぶなんてちょっとビックリした!」という常田。実際の事件が歌詞を書くきっかけになっているこの曲がリリースされたのは2004年だが、今の時代にも通じるメッセージ性がある。大橋の言う“色々な想い”をドンピシャで感じ取れているかは分からないが「素直」の時とは違い、バンドサウンドで熱唱する大橋の魂の叫びは圧巻だった。「ありがとうございます。」大橋は鳴り止まぬ拍手をかき分けるように挨拶。全身全霊を傾けたのが分かる表情で「感無量です!」と言うと、常田は「でしょうね!自分の歌かと思った(笑)。」と笑う。しかしそれは決して茶化しているわけではない。二人の仕事を超えた音楽愛を見た気がした。

ここからは、ファンの要望を汲んだスキマスイッチの楽曲で構成された第三部。
「きよしこの夜」を弾く石成のアコギは「ジングルベル」も取り入れつつ「星のうつわ」へ。星空を彷彿とさせるようなライトが会場を照らす。続けてシンセや大橋のフェイク、アドリブのような演奏。その時点ですぐさま「ゴールデンタイムラバー」と気づいたオーディエンスたちは立ち始めた。ホーンの響きやベースの畝り、手数の多いドラム、Bメロのコーラスからサビへの盛り上がり。こんなにアグレッシブでボルテージが上がるのにミディアムテンポなのは何度聴いても驚くが、2009年にリリースされた当時から今も変わらず筆者が愛する曲のひとつ。「君の話」の乾いたアコギの音色とパーカッション、フルートにクラップは広がり、グリッチエフェクトやアメコミのようなドットエフェクトを用いた映像もクールでありながらテンションを上げる。続く「奏(かなで)」はやはり何十回、いや何百回聴いても名曲だ。「君の話」とは違うエモーションを持ち、サックスの響きは更にその感情を掻き立て、長いアウトロに秘めたストーリーにさえ釘付けになっていた。

「なに、それ(笑)」曲が終わり、オーディエンスが前後に腕を振るのを見て、先程とは違う表情で笑いながら聞く大橋。首謀者(笑)は浦。どうやら熱気を冷ましているらしく理由が分かった大橋は「僕がアツ過ぎると!」と更に笑った。
「僕ら武道館、似合ってますか?」武道館でのライヴ経験は数えるほどないせいかそんな話から、武道館での大橋のソロを常田が観に来ていた話や、インスタライブ、「スキマスイッチのこのヘンまでやってみよう」(YouTube)の宣伝、更にはこの日TBS(チャンネル1)にてライヴ本編の生中継をしていることをいいことに「TBSさん番組くれないかな?」と言い出した!「スキマスイッチ、20年目にして必死!」という常田のツッコミに会場も思わず爆笑。キャリアが浅いにも関わらずポーカーフェイスを気取るアーティスト(決して特定の誰かを指しているわけではない)より、こういうがむしゃらでひたむきなアーティストの方が、ライターとしても応援したくなるし個人的にも好きだ。

現在オンエア中のボートレース2022年CMシリーズ『アイ アム ア ボートレ―サー』のイメージソング「up!!!!!!」。大橋は心からの笑顔で楽しげに歌い、突き抜ける程爽快なサウンドにオーディエンスの腕も左右にリズムをとる。コロナ後に生まれたこの曲、ライヴでオーディエンスの掛け声を聴くことはまだもう少し先かもしれないが、みんなの声が加わったこの曲を早く聴きたいと心から願った。「OverDriver」の特徴的なAメロや童謡「かごめかごめ」をモチーフに広げた世界観は実に秀逸で、『Hot Milk』のインタビューで大橋の言った「“全力少年2”かもしれません。」という言葉は納得しかない。しかしそのインタビュー時、二人に対してこの曲への愛情をアツく語ってしまったことを思い出し、筆者はひとり赤面した。だがやはり名曲だ。続く「S L 9」ので映し出される少年の映像、2013年開催の【SUKIMASWITCH 10th Anniversary Arena Tour2013"POPMAN'S WORLD”】で観たものか?!楽曲の壮大な世界観と共に懐かしい映像に再び吸い込まれた。

「武道館ー!」バスドラのリズムで次の曲が「全力少年」なのが分かった。コール&レスポンスの代わりにクラップでコミュニケーションをとる。映像に登場した若き日の大橋や常田にオーディエンスも思わず声を漏らし、映像を観る常田の口が「おー!」と動いているのも分かった。アフロ姿の常田を指差す大橋。時が過ぎ、音楽を聴く環境が変わっても、決して変わらぬ名曲と繋がりが此処にある。
「スキマスイッチ、来年デビューして20年が経ちます。みんなに支えられて20年も音楽やれると思ってなかったよ!本当に本当に感謝してます。こうやって貰ったものを感謝として来年、そしてそれ以降もみんなに返していきたいと思います。」曲中、そう言いながら大橋は「いつかみんなで歌って騒いで踊って……出来る日を楽しみにしています。来年もスキマスイッチ、どうぞよろしくお願い致します!」そう続け、最近では久しぶりとなっていたピアノから飛び降りるパフォーマンスで熱狂のまま本編を終了させた。

アンコール、炎が描かれた常田の帽子は【スキマスイッチTOUR 2016“POPMAN’S CARNIVAL”】の時のものだ。軽いトークの後、バスドラに誘われたクラップに「もうちょっとやりますか!」と大橋。声は出せなくとも「Ah Yeah!!」で空中に舞い飛ぶタオルは健在だ。オーディエンスが心で歌う声だって聴こえる。この一体感は誰にも邪魔出来ない!
【スキマスイッチ TOUR 2022 "cafe au lait”】では全都道府県を回ったが「たまにはこうやって大きなところでみんなで集まってお祭り騒ぎするのも良いですね。だからこういうのも、たまにはこれからもやっていこうかなと。」その言葉に常田も大きく頷き、改めて感謝を述べると最後の曲「ボクノート」へ。“その声の先に君がいるんだ”。大橋は歌詞に溢れるメッセージを届けるように手を伸ばす。その先にいるのはオーディエンスたち。
温かい空気に包まれ【スキマスイッチ “Live Full Course 2022” 〜 20年分のライブヒストリー 〜】は幕を閉じた。バンドメンバーに続き、大橋と常田が退場する際、ステージ端にいるスタッフとハグをしライブの成功を称え合っていた。こういうシーンは胸を熱くする。2023年、20周年のスキマスイッチを更に楽しみにしたい。

Photo:岩佐篤樹
Text:秋山雅美(@ps_masayan


<セットリスト>
M1.view
M2.雫
M3.いろは
M4.Revival
M5.この闇を照らす光のむこうに [Anly]
M6.ア・スカイ・フル・オブ・スターズ 映画『SING/シング:ネクストステージ』より
M7.東京の空 [⼩⽥和正]
M8.クリスマスがやってくる [スキマスイッチ]〜This Christmas [Donny Hathaway]
M9.素直 [槇原敬之]
M10.タガタメ [Mr.Children]
M11.星のうつわ
M12.ゴールデンタイムラバー
M13.君の話
M14.奏(かなで)
M15.ふれて未来を
M16.up!!!!!!
M17.OverDriver
M18.S L 9
M19.全力少年

・ENCORE
EN1.Ah Yeah!!
EN2.ボクノート


■ スキマスイッチ HP
https://www.office-augusta.com/sukimaswitch/

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