POPSCENE - ポップシーン
POPSCENE - ポップシーン
「Augusta Camp 2022 ~Office Augusta 30th Anniversary~」ライヴレポート

「Augusta Camp 2022 ~Office Augusta 30th Anniversary~」ライヴレポート

October 13, 2022 17:00

オフィスオーガスタ

0
シェア LINE

9月25日(日)横浜赤レンガパーク 野外特設ステージにて「Augusta Camp 2022 ~Office Augusta 30th Anniversary~」。(以下:AC2022)が開催された。タイトルにある通り、今年はオフィスオーガスタ設立30周年の節目。更に元ちとせがデビュー20周年、杏子がソロデビュー30周年とお祝いムードが高まる。今回は配信に加え3年ぶりの有観客公演。心配された台風が過ぎ去り、会場には秋らしい青空が広がっていた。

「オープニングからボルテージ上げていきましょう!」

オープニングアクトのReiRayが元気に登場すると、9月23日(金)に配信リリースされたばかりの新曲「Skate Girl」でスタート。グローバルポップバンド“FAITH”としてオーガスタキャンプのオープニングアクトを務めてから2年、残念ながらバンドは解散したものの、メンバーだったヤジマレイとレイ キャスナーがツインボーカルユニット“ReiRay”としてオーガスタキャンプのステージに戻ってきた。解散後の心情を綴った「Typhoon」はまさにこの日の青空のように澄み渡り、心地よいリズムで本編へと繋げた。

1992年、1993年、1994年……スクリーンにはアーティスト写真の共にオフィスオーガスタの歴史がカウントアップされ2022年へ。大きな拍手を受けメンバーが登場。Augusta Camp 2022Nice Bandのメンバーは、福田真一朗(G)、Bass・種子田健(Ba)、浦清英(Key)、高橋結子(Per)、あらきゆうこ(Dr)、小笠原拓海(Dr)。

「ようこそー!」山崎まさよしの掛け声の後、「DANCE BABY DANCE」の歪むギターで本編がいよいよスタート。パートごとに変わるALL STARSの歌声。心が踊る!寸前まで台風の影響が心配された分、この青空はまるでみんなで勝ち取った勝利のようにさえ感じられ、「晴れさしときました!」という山崎の言葉にも大きな拍手が響き渡る。今回はファン参加型の楽曲リクエストの他、出演アーティストがそれぞれのデビュー曲を演奏。


ソロパフォーマンスの先陣を切ったのは杏子。ソロデビュー曲「DISTANCIA~この胸の約束~」を杏子20周年の際、山崎が新たにアレンジしたヴァージョンで演奏。全員ギターの中、元ちとせは三味線なのも彼女らしい。杏子が歌いだすと楽曲の世界へ引き込まれ、原曲のスパニッシュテイストを更に色濃くしたアレンジは憂いと情熱を併せ持ち、色気を感じさせる杏子のハスキーな歌声が強調された。秦 基博のコーラスや大橋卓弥(スキマスイッチ)のブルースハープも楽曲に色を添える。曲が終わると全員がステージを後にし、杏子の30th Anniversary映像が流れた。その後先程までとは違う黒い衣装をまとった杏子が再び登場。ボトムの効いたロックサウンドの「30minutes」は、ソロデビュー30周年記念シングルとして8月に配信リリースされた新曲。BARBEE BOYS解散後、ソロとしてスタートする決意を込めた楽曲で、流石といわんばかりの圧巻のステージをみせてくれた。


続いて登場したのは長澤知之。
長澤のアシッドボイスは沢山の表情を持っているが、デビュー曲「僕らの輝き」を歌う時はいつも少し姿勢を正すような、真っ直ぐな声の表情を感じた。「僕らの姫をお呼びしましょう。杏子!」長澤の「植木鉢」という楽曲が好きな杏子が、その曲のような“純愛”をテーマに長澤に制作を依頼したのが「ねぇ、もっと」。杏子はアコギ、長澤はエレキでアンビエントな雰囲気さえかもし出す1番、バンドサウンドを生かした2番でヒリつくような“純愛”をコラボした。長澤のステージはAC2022会場と通信販売で数量限定販売された最新曲「知らないことはこわいかい」で終了。

次に登場した岡本定義(COIL)は、これから歌おうというタイミングで船の汽笛が鳴るというハプニングもありつつ、デビュー曲「天才ヴァガボンド」からスタート。曲が終わりピンク色のタイトドレス姿の杏子が登場。名曲「BIRDS」をコラボした。「今までドラムを叩いておりました、あらきゆうこと申します。」と、あらきが登場。デビュー曲を持たぬあらきは、ファンからのリクエストNo.1楽曲「Train run」を披露。杏子はなんとドラマーとしてコラボした。楽しげに叩く姿はこちらまで笑顔になる。

「お久しぶりです!オーガスタキャンプー!!」笑顔で登場したのは松室政哉。デビュー曲「毎秒、君に恋してる」で軽快な風を会場へ届けるとオーディエンスのクラップも弾む。続く「大人の階段 駆けおりない?」では60’sテイストの黒ボブウィッグ&黒のタイトワンピ姿で登場した杏子に、松室は度胆を抜かれて思わず冒頭を歌い損ねそうになっていた。この曲で杏子が出ることは知っていたものの、衣装についてはサプライズだったようだ。久しぶりに大勢のオーディエンスを前に開催出来たオーガスタキャンプ。「皆さんの顔を観ただけでちょっとウルっとするような、そんな気持ちでございます。」そう言うと、最後はドラマ『六本木クラス』の挿入歌「ゆけ。」。深い愛情をエモーショナルに、しかし丁寧に歌い上げた歌声は横浜の空に響き渡った。ここで第一部は終了。

第二部は、元ちとせ 20th Anniversary Special Stage。まずは元の故郷の奄美シマ唄「ヨイスラ節」を三味線と歌で届けると、奄美の言葉で「ありがとう」を静かに伝えた。バンドが加わりデビュー曲「ワダツミの木」へ。ダブアレンジの心地よいリズムに合わせ、デイゴのような真っ赤な花の髪飾りも揺れる。「夏の島から再びこの場所に夏を届けにやってまいりましたー!元ちとせです。」いつも思う。歌っている時は近寄りがたいくらいのオーラを放つのに、MCになると途端に可愛らしく親しみやすい“ちーちゃん”になる。デビュー20周年記念のアルバム『虹の麓』を7月にリリースしたばかりの元は、改めて平和に対する想いをアルバムに込めたと語りながら「コロナの間、皆さんにお会い出来なかった時間、本当にすごくすごく辛かった。皆さんも同じだったと思いますけど、こうしてまた皆さんの顔を観ながら大好きなオーガスタのみんなとオーガスタキャンプを迎えられることが出来て本当に心から嬉しく思っています。」と、この日を迎えられた喜びもを語った。アルバムでは様々なアーティストやクリエイターが参加。その中からさかいゆう作詞作曲の「KAMA KULA」と長澤知之作詞作曲の「虹の麓」を本人たちとコラボ。民謡ともJ-POPとも違う「KAMA KULA」は、元だからこその面白さが出る楽曲。元とさかいで作った“ラーレンハイヤー ヤーレンサイヤー”というお噺囃子のようなフレーズも耳に残る。一方、崇高なメッセージ性さえ感じられる「虹の麓」は、そのメッセージを決して重いものにしないスティールパンの音色とレゲエサウンドが心地よかった。

「20周年だから贅沢にいっぱいゲストに来てもらおうと思います。」そう言うと山崎まさよし、岡本定義(COIL)、杏子をステージへ呼び入れ、さだまさよし(山崎・岡本)プロデュース楽曲「やわらかなサイクル」を披露。楽曲のエンディングでは全出演者がサプライズで登場し、オーディエンスからのあたたかな拍手とともに元ちとせのデビュー20周年を祝福した。


いよいよ第三部。最初のステージは竹原ピストル。「DJあらき」が繰り出す打ち込みのトラックにのせた「ぼくは限りない~one for the show~」の後、杏子を呼び入れ「ドサ回り数え歌」の話に。実は、竹原自身が歌う前に杏子が歌った音源を竹原ライヴの登場SEにしていた時期があるという、竹原にとっても杏子にとっても思い出深い曲だという。なのであえて二人で歌うのではなく杏子に歌ってもらいたいという竹原のリクエストに会場からも大きな拍手が沸いた。杏子は丁寧に歌いながらも途中声を震わせ、目を潤ませ歌い上げた。竹原は「曲順間違ったすね。今のが最後だったら良かったっすね(笑)。」と笑顔を見せた。最後に歌うのは竹原ピストルとしてのデビュー曲「俺のアディダス~人としての志~」。そしてポツリと言った。「余談といえば余談ですけれども録音機材車にいる佐藤洋介兄さん、聞こえていますか?これから洋介兄さんが作ってくれたトラックが大音量で流れますんで、しっかりと録音しておけ!」そんな一言を残し、気迫あふれる「俺のアディダス~人としての志~」で会場を圧倒した。


気がつけば先程までオーディエンスを照りつけていた日差しは穏やかな表情に変わっていた。山崎まさよしとデビュー曲「結 -yui-」を歌う浜端ヨウヘイの襟を涼しげな風が揺らす。杏子とのコラボで披露された「Peace」では、オーディエンス、そして配信のチャットでもピースサインマークが並んだ。この曲は9月21日にリリースされたばかりのメジャー1stフルアルバム『Things Change』に収録されている。コロナ禍以降、我々の日常は変わった。変わりながらも変わらずにいることがいかに大切か身に沁みた数年間だと浜端は語り、変化を受け止めつつ変わらずにいようという想いを込めた「変わらないもの」でステージを締めくくった。


「高知県土佐清水市からやってまいりましたオフィスオーガスタ14年生、さかいゆうです!」そう挨拶し、デビュー曲「ストーリー」の頃は赤い帽子がイメージカラーだったことを話していると、当時のさかいを模したような赤い帽子と眼鏡、ネクタイ姿の杏子が登場。インパクトあるキラキラしたイントロが懐かしい。続く「故郷」はまさにさかいの故郷への想いを歌った楽曲。郷愁溢れるメロディと美しい歌声は夜の闇に優しく響いた。更にこのオーガスタキャンプで聴く「君と僕の挽歌」は自分が生きて今、頑張れていることを気づかせてくれると、今年も胸の奥で友を想いながら聴いていた。