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「CANVAS Extra in Augusta Camp 2022」オフィシャルライブレポート

September 28, 2022 15:30

オフィスオーガスタ

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「CANVAS Extra in Augusta Camp 2022」オフィシャルライブレポート

音楽プロダクション・オフィスオーガスタが運営する新人発掘・開発プロジェクト「Canvas」 のニューカマー・ピックアップ・イベント『CANVAS』が、“CANVAS Extra in Augusta Camp 2022”として、いつもの新代田FEVERを飛び出して、横浜赤レンガ倉庫前広場の特設ステージで実施された。

さらに、Vol.3でも話題となった、シューズブランドKEENが展開するYouTube音楽番組「Festival TV on KEENSTREAM」とのジョイトが今回も実現(後日、同YouTubeチャンネルでライブの模様をOA)。出演アーティスト全員の足元をKEENのシューズでサポートして、万全の体勢で臨んだ。ということでMCにはもちろんこの人、「Festival TV on KEENSTREAM」からジョージ・ウィリアムズが参戦。若いアーティストたちとの垣根のない普段着トークがステージとオーディエンスとの距離をグッと近づけた。

最初に登場したのは、レイラ。地元横浜出身で現在は有明(Vo&Gt)とみうらたいき(Gt)の2人体制で活動している注目のバンドだ。この『CANVAS』にはVol.4に出演している。まず1曲目に披露したのが『アパートの中で』。轟音ギターのイントロから一転、静寂な音世界のなか有明の切ないボーカルが入る。オルタナ〜エモあたりを通過し、そこに日本的叙情感をふんだんに盛り込んだようなサウンドは、音が鳴り始めて間も無く、フリーエリアとなっているステージ前に人の輪が幾重にもできるほど心を掴むものだった。ポップなイントロが印象的な『ふたりのせかい』はサビが秀逸。ねばっこいリズムに有明のボーカルが絡みつき、手をとってメロディに乗せられるような感覚がある。ラストは10/19にリリースされる新曲『話をしよう』。レイラの楽曲のアドバンテージは、歌詞はもちろんサウンド、アレンジも含めて全体でストーリー性があること。そこに大きな可能性を感じる。

「これを無料で見られるなんて!」とライブ終わりのフラッシュインタビューでMCのジョージが思わず本音を漏らすほど素晴らしいステージだった。ジョージがルーツを尋ねると、有明がゆらゆら帝国、みうらがBUMP OF CHICKENと言った。そこから派生していろいろな音楽を吸収してレイラのサウンドになっているということだ。始まりに邦ロックがあるというのが日本のロックシーンの成熟を思わせた。最後に今後の目標を訊くと有明からこんな答えが返ってきた。「夢は果てしないです。武道館も目標だけど、そこで終わらせたくない」

kento20220928.jpg次に登場したのはスズキケント。前回のVol.5に出演し、弾き語りながらその声と歌詞世界で圧倒した逸材だ。今回もアコギ1本の弾き語りで3曲をやり切った。1曲目に披露した『もしも星が降るのなら』は、フィッシュマンズ以降のフォークとでも形容したくなるような曲で、いわゆる70年代の日本で盛り上がった“フォークミュージック”とは一線を画するものだ。原石さながらの鈍い輝きを放つ楽曲は、これから磨き上げられれば一体どんな眩い輝きになるのか非常に興味深い。何より彼の資質として優れているのは、まずは声だ。透明感の中に危うさやアンニュイ、さらには狂気までを含んだその声は、歌の世界観に奥行きを与える魔法のようなものだ。そして言葉。奇を衒っているわけではなく、ナチュラルにそういう言葉になっているのだろうなと、音との関係性からストンとこちらの胸に響く手腕は天性のものだ。この2つがある限り、彼はどこでも歌っていけるだろう。『エキストラ』『いつものように』と続く。〈宇宙人がさらっていった子猫を取り返しに行こう〉(『いつものように』)から始まるのは物語ではなく日常だ。彼の目に見えているものが愛おしい。

「いい声してるね!」とジョージも絶賛だ。今後の目標は?という質問にはこう答えた。「去年から活動を始めて、まだ世に出ている楽曲も少ないので、これからどんどん出していきたい」。ストックはあるそうで、今後どんな楽曲がリリースされるのか楽しみだ。

tinyyawn20220928.jpg“小さなあくび”という意味のバンド名を持つtiny yawn。シティポップにポストロックをハイブリッドした一筋縄ではいかない音楽が特徴の4ピースバンドだ。1曲目『夜明けの星』は疾走感がありながらも美しいサウンドプロダクトの上を綱渡りするようなMegumi Takahashi(Vo&Key)のボーカルがはかなく揺れる。後奏の流麗なギターフレーズとキーボードとの交わるようで交わらないアンサンブルが楽曲の世界の解像度を上げて聴く者の前にグッと立ち上がってくる。2曲目『Somewhere』はスラップも入るなど、R&B〜ジャズなどの要素も巧みに盛り込んだ楽曲で、間奏で雰囲気をガラリと変えてしまえるアレンジなど、バンドの可能性を感じさせる。あまりライブはやらないという彼らだが、もっと観たいと素直に思わせる完成度だ。ラストは『yawn』。浮遊感漂う曲にボーカルのナチュラルなビブラートが絶妙な味付けとなって引き込まれる。後半に向けて盛り上がるアンサンブルも素晴らしい。おそらく楽曲をクリエイトしアレンジする能力に疑いの余地はない。あとはこれからライブを重ねて行くことで楽曲を自分たちの血肉とし、多くのオーディエンスの共感を得たときにどのような変化がバンドに訪れるか――その時は意外に近いかもしれない。

ジョージとのトークセッションでは、「音源のリリースが決まっていて、その後はどこでPVを撮ろうかとか、リリースパーティをどこでやろうかとかあれこれ考えています」とKoji Yasuda(Ba)が近い未来の話をしてくれた。

さて。この『CANVAS』のステージが終わって間もなく『Augusta Camp 2022』が開演する。オープニングアクトには、Vol.3に出演していたReiRayがその時を待っている。1万2000人のオーディエンスを前にどんなパフォーマンスを見せてくれるのか本当に楽しみだ。そして、『CANVAS』からの夢の道のりが“あそこ”へつながっていることが目に見えるという事実が、新人開発プロジェクトとして何より尊いものだと感じさせた。

Text:谷岡正浩
Photo:永田拓也



■ Canvas
https://www.office-augusta.com/canvas/


※Augusta Camp 2022のライヴレポートは近日公開予定です。