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高橋優、「また会えた時に届けたい」笑顔と涙の【白橋優の日 ライヴレポート】

高橋優、「また会えた時に届けたい」笑顔と涙の【白橋優の日 ライヴレポート】

February 17, 2022 18:00

高橋優

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2010年7月に「素晴らしき日常」でメジャーデビューした高橋優が、10周年イヤーの締めくくりとして2月8日(火)・9日(水)【高橋優 10th Anniversary Special 2Days「弾き語り武道館~黒橋優と白橋優」】を日本武道館にて開催した。
ヒリヒリとした剥き出しの感情を表現した楽曲を集めた1日目【黒橋優の日】と、笑顔や希望へのメッセージを感じる楽曲の2日目【白橋優の日】。テーマを分けた弾き語りスタイルの2日間。前日の【黒橋優の日】はライヴでの高橋の言葉どおり、黒い闇にあるエモーショナルな感情と、暗いからこそ感じる光をたっぷりと味わえた。そしてこの日【白橋優の日】は………。前日の模様については【黒橋優の日】のライヴレポートを是非読んでもらいたい。

前日同様、開演アナウンス直後から起こるクラップ。それは実際開演するまでの5分間にも及んだ。オープニングの高橋優ヒストリー映像が、ステージ裏のリアルタイムな高橋の笑顔に重なると、北エリアから伸びる花道からセンターステージに向かって登場。オーディエンス一人ひとりに語りかけるような表情で歌う「ありがとう」。イントロのギターカッティングから少しおどけた口調でタイトルを言う「現実という名の怪物と戦う者たち」。サビになるとオーディエンスは指を高くかざしリズムに乗る。高橋だけでなくオーディエンスの想いの強さが伝わってくる、そんな空気感が会場いっぱいに広がる序盤。


「ここまでいらっしゃるまで色んな想いとか、色んな状況があったと思います。そんな中で来てくれて本当にどうもありがとう!」こういうご時世。チケットを買ったが来るのをやめた人も多い。それでも「今日は【白橋優】ということで、僕の中にある希望、僕の中の光、そういったものを皆さんに感じていただけるよう精一杯歌わせて頂ければなと思います。」噛みしめるように真摯な表情でそう言うと、360度回転するステージで回りながら全方位へ手を振り、いつも通りの笑顔で挨拶。カントリーのリズムが心地よい「life song」ではリズミカルなクラップが広がり、高橋も「ナイス手拍子!」と讃えた。曲が終わった後も「Bメロ、むずかったっしょ。」と、リズムが変わるBメロでのクラップについて、まるで友人に話すかのような懐っこい口調でオーディエンスへ話しかけた。やはり【白橋優の日】のせいだろうか。光に満ち溢れ、会場が穏やかで楽しく居心地が良い。「花のように」が終わると、明るいリズムや曲の世界観をリセットするように少し間を開け、「産まれた理由」へ。日本武道館に響く家族の愛の歌に、高橋の愛の歌に、会場は聴き入っていた。


MCでは前日の差し入れ話の続きに。スタッフへの差し入れとして九段下駅に出店している移動販売の和菓子屋で50個もの和菓子を購入。一番乗りで商品を大量に買っていった高橋に対してお店の人が「明日はきっといい日になる」と言ったらしい。ここまでが前日の話。その和菓子がスタッフから評判も良く、この日も買いに行ったが商品が並んでおらず「これからですか?」と聞いたところ、前日の高橋のMCを受けファンの人たちがすでに買っていったらしく、これから届いたばかりの2陣を出そうとしていた。前日に高橋が大量購入したことも覚えていたお店の人がこの日も“明日はきっといい日になるよ”っと言ってくれ「できすぎたお話みたいでしょ。これ言われたら武道館で喋るしかないでしょ!」と高橋も興奮気味。「でも僕のことを知ってて言ってたらおじさん、かなりのやり手だよね(笑)。」と笑うが、どうやら高橋のことは知らなかったようだ。しかし2日続けて買ってくれたので「食べてね!」と少しおまけしてくれ、高橋も「あぁ僕、3つも4つも食べます!」と言った。だが高橋は現在炭水化物抜きをしているので、結果的に嘘をつくことになったが「僕はまたあのおじさんに会いにいくっていうことが大事なんじゃないかと思ったの。」そこまで言えばファンの中には次の曲が「今、君に会いにいく」ということに気づいている人もいるだろう。くだけた雰囲気のまま軽快なリズムは次曲「蓋」まで続き、楽しげな拍手が湧き上がる。


チューニングをすると大きく息を吸い「8月6日」へ。告白から付き合い、すれ違いなどを経た二人の恋の記念日を日記のように綴った曲。世の中で悲しいことがあっても、別の人にとっては何でもない日でも、その人たちにとっては大切な日であることを歌ったこの曲はファンからも人気が高い。続く「友へ」。高橋の、友を想う歌詞のひとつひとつが武道館に強く響き、筆者のいた1階席からも涙を拭うアリーナ席の人たちの姿が見える。

高橋の歌は言葉にフォーカスされることも多く、デビュー当時からのマネージャーがストイックな部分もあったことから、高橋は略語を使わないキャンペーンを勝手にやっていたらしい。(今思い返すと確かにインタビュー中もそういう部分を感じた時はあった)つまりプリクラをプリントクラブ、リモコンをリモートコントローラーなど。しかしあまりにそれは不自然で、そのマネージャーからもツッコミが都度った話から「サンドイッチ」へ。コンビニをわざわざコンビニエンスストアと言ってツッコまれたから出来た曲かは定かでないが、やはりこの曲も人気曲だ。うまくいかない日も含め、何ということのない日常こそ幸せと感じられる温かい歌にカズーのユニークな音色が楽しげに鳴る。


前日に続きループステーションを使い、ギターのボディを叩きリズムを作るとエモーショナルに歪むエレキで弾く「虹」のイントロ。ステージライトは虹色に輝く。この曲がリリースされた2017年からは随分世の中の在り方が変わってしまったが、だからこそ高校球児でなくとも“また立ち上がろう”の歌詞が、より胸に刺さる。がむしゃらに歌う高橋の姿が心を熱くする。筆者自身は高橋のヒリついた楽曲が好きなので【黒橋優の日】は言わずもがな最高だったが、完全にこの【白橋優の日】のステージにも心奪われていた。

「見渡す限り、来てくれてる人たちの表情。本当に嬉しくて幸せな気持ちに今もなります。で、同じくらい……空いてる席。皆さんの隣とか隣の隣とか。空いてる席あるでしょ。」きっとチケットを買ったが来ることを諦めた人たちのSNSを見たり、幕が開いた瞬間、そんなものをみながら感じていただろう。「まぁ…難しい世の中だけど、次歌わせて頂くような曲をいつでも用意して、また会えた時に届けたいなと思って書いた曲です。今日は皆さんに届けさせてください。」そう言う高橋の目は赤かった。また会えた時に届けたいという「おかえり」を、想いを届けるように丁寧に伸びやかに一生懸命歌う。しかし涙が頬をつたい、高橋はとうとう泣き出してしまった。その姿に贈られた、そっと背中をさするような温かい拍手たちの力を借り、それでも歌うことはやめない。歌い終わると大きな拍手を受け「ありがとう。」と、少し照れたような顔をみせながら眼鏡を外してタオルで涙を拭う。その間も拍手は鳴り止まない。ここに来なかったことを選択した人を誰も責めることは出来ないし、高橋だって無論そのつもりはない。ただ一日も早く、みんな揃って高橋の歌を聴きたい。今はそう願う。

ゆっくりステージを炎が囲む。前日はいじめにあった高橋の物語「CANDY」で炎の演出がなされたが、この日「少年であれ」でみせた炎の表情は少し違ってみえた。存在を否定された孤独感を優しく強く包んでくれるこの歌詞と歌声のように、温かく灯る。「さぁ武道館。しっとりした曲が続きました。ねー、しっとりしちゃったね、なんか(笑)。」エレキのボディでリズムを刻むと、高橋自身気持ちを切り替えるようにテンションを上げ、オーディエンスも立ち上がる。清々しい疾走感の「one stroke」。コロナになり【高橋優 LIVE TOUR 2019-2020『free style stroke』】で行けなかった会場の上も飛ぶ未完成版のMVを思い出す。2022年になっても“空席”という形で厳しい現実が目の当たりにある。しかしそれでも高橋は歌う。笑顔で、伸びやかに。「心の中で歌ってくれ!Say!」コロナ前はジャンプしオーディエンスが声を上げる「BE RIGHT」。今は声が出せないし、ジャンプだって遠慮気味。でも高橋は知ってる。みんなの歌声を。みんなのエネルギーを。「聴こえるぞー、武道館!」そう言ってギターを掻き鳴らす。

黒・白合わせてやっとこの曲が聴けると思った人も少なくないはず。そう、MCで言ってきた「明日はきっといい日になる」。勿論照明の演出は素晴らしい。しかしそれとは違う光をぱぁっと感じた。この曲だっていつもならサビで大合唱になるがそれが出来ない分、クラップが大きく響き、いつもと何ら変わることのない愛情に会場は満ち溢れていた。

「まだまだいけるっしょ!」少し煽り気味にそう言うと、ループステーションで刻んだリズムは「Piece」へ。懇親の歌声で気持ちを届けようとする高橋。それを受け取り自分の想いを伝えようとするオーディエンス。そう、希望を胸に私たちはまだ見ぬ風景を目指すんだ。
高橋はこの日のセットリストをリハーサルなどで歌う中、自分にとっての光や希望は何なのかずっと考えていたと言う。そしてそれは“会う”ということだと気づいた。「曲の中でも歌ってるんだけど、“会う”っていうこと。会えるっていうこと。それって結構大切なことだなって思うんですよ。」現在38歳の高橋。たとえ80歳まで生きたとしてもツアーなどでみんなと会えるのは50回もないということを少しだけ声を震わせ語る。「会うことだけが正しくない世の中になっちゃったけど、僕は馬鹿って言われてもみんなに会えること、会ってるからこそ感じられる気持ちっていうのをずっと大事に思っています。」そういうと「僕の中の愛を込めて。そしてまた会いたいっていう想いと、今日会えてとっても嬉しかったっていう想い。全部ひっくるめて色々な人に出会わせてもらった大切な曲を今日最後に歌わせて頂きたいと思います。」多くの感謝と愛の言葉を述べ、本編最後に選んだ曲は「福笑い」。“武道館でこの歌を歌う”歌詞を変え、高橋は目を涙で濡らしながらキラキラとした笑顔で歌いあげた。

「アンコールありがとう、武道館!」アンコール、再び登場した高橋は軽く深呼吸すると静かに「BEAUTIFUL」のイントロを弾き始めた。“隣にも前にも後ろの方にも 微笑みながら君を見守ってる人がいて そんな中に僕もいる”この歌詞。今は“君”が高橋であり、“僕”がオーディエンスのような気もするし、その逆とも取れる。照明は武道館に満天の星を降らせ、大切な人を想うこの歌にオーディエンスはただじっと耳を傾け、宝物のように大切に胸に閉まっている。そんな風に見えた。

「10周年の最後。そしてこれから15周年、20周年ってやっていく上での始まりの曲に。昨日からの2日間で44曲目。」そう言って歌うのは「リーマンズロック」。ボロボロの主人公はそれでも生きていくために明日も会社に行こうと言う。しかしそれは仕方なくやお金のためではない。一種の人生讃歌だ。高橋は“これくらいがどうした”と、力の限りに歌う。無論この曲で締めくくるライヴも観てきたし、自分を鼓舞する為に何度聴いたかしれない。しかし【白橋優の日】 のラストにこの曲はずるい!いや、ずるくはないし高橋の言葉通りこれからの始まりの曲にはふさわしい。だがあまりに秀逸な選曲すぎて泣くしかない!近くにいた関係者も涙を拭っている。規制退場中に聴こえてきたファンの人たちの「あれは号泣だよ!」の声にも心の中で首を縦に振りまくった。

「いやぁ、今日来てくれた皆さん。本当にありがとうございました!また会えるのを楽しみにしてます。」エンディング、ギターを弾いたままそう言うと大きな大きな拍手が高橋に贈られた。会場の照明が付き、拍手がクラップに変わると「高橋優、ここからまだまだ歩みを止めるわけない。歩いていくんで、皆さんに会いに行くんで、またライヴで会いましょう!次会える時までお互い頑張ろうね。何があっても負けないでいこう。ね!負けないでいこう。俺も頑張るから。また必ず会いましょう。その時まで明日からまた頑張ろう、武道館!」力いっぱい最後の挨拶をし、ステージを降りた。

高橋の退場後、2月25日(金)に配信リリースとなる新曲「HIGH FIVE」のMusic Videoがいち早く流され、2日間に及ぶ、そして10周年イヤーの締めくくりとなる【高橋優 10th Anniversary Special 2Days「弾き語り武道館~黒橋優と白橋優」】は幕を閉じた。

Photo:新保勇樹
Text:秋山雅美(@ps_masayan



□ 2月9日(水)【白橋優の日】 セットリスト

M1.ありがとう
M2.現実という名の怪物と戦う者たち
M3.靴紐
M4.life song
M5.花のように
M6.産まれた理由
M7.今、君に会いにいく
M8.蓋
M9.8月6日
M10.友へ
M11.サンドイッチ
M12.微笑みのリズム
M13. 虹
M14.おかえり
M15.少年であれ
M16.one stroke
M17. BE RIGHT
M18.明日はきっといい日になる
M19.Piece
M20.福笑い

アンコール
En1.BEAUTIFUL
En2.リーマンズロック


■ 高橋 優 オフィシャルサイト
https://www.takahashiyu.com/

■ 高橋優 10周年初の弾き語りツアー「ONE STROKE SHOW 2021~NICE TO MEET U~」特設サイト
https://fc.takahashiyu.com/feature/tour2021_nicetomeetu

■ ワーナーミュージック・ジャパン HP
https://wmg.jp/artist/takahashiyu/

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