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Augusta Camp 2021 ライブレポート

Augusta Camp 2021 ライブレポート

October 1, 2021 12:00

オフィスオーガスタ

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9月25日(土)、横浜赤レンガパーク特設ステージでの有観客とオンラインのハイブリット開催を予定していた【Augusta Camp 2021】は、現在の新型コロナウィルス感染拡大状況や緊急事態宣言の延長を受け、屋内会場からの無観客生配信ライブとなった。横浜の風を感じることも花火を観ることも出来なかったが、それでも「来年は…」という想いを胸に、今年も熱いステージに胸を焦がし、ほのぼのとしたMCに笑うことが出来た。

オープニングアクトはブルース・ブラザースを彷彿とさせる衣装で登場した浜端ヨウヘイと松室政哉。昨年末のコラボレーション企画『Augusta HAND × HAND』から生まれた「Rewrite」でオープニングを飾った。

「おいでよ。」笑顔の秦 基博に導かれるように、福耳メンバーが登場。福耳の為に秦が2017年に書き下ろした「Swing Swing Sing」と、Augusta Campになくてはならない「夏はこれからだ!」で本編はスタート。Augusta Camp 2021 Nice Bandは、福田真一朗(G)、種子田健(Ba)、浦清英(Key)、高橋結子(Per)、あらきゆうこ(Dr)、山木秀夫(Dr)。
「オーガスタキャンプ、始まりました!」配信でのカメラ目線が苦手なのか、メンバーに向かって話す山崎へ杏子は「みんなに向かって喋って!」と一喝(笑)。配信だろうが有観客だろうが変わらないアットホームなオープニングは妙にホッとする。
次のステージはさかいゆう。ロマンチックなメロディが心に溶けだすミディアム・バラードの「愛の出番」。こういう状況下だからこそ必要なのは愛。そう歌うさかいは、曲が終わるとピアノを奏でながら「コロナむかつきますねー!」と一言。しかし聴いている人が少しでも気晴らしになっていれば嬉しいと語り、売野雅勇氏作詞の「崇高な果実」で序盤からダイナミックな歌声を響かせた。

続いて登場したのは岡本定義(COIL)。Augusta Campで岡本がアコギを弾いているのは久しぶりだ。常に癒やしを与えてくれる岡本の「ラヴィン・フルーツフル~恋する果実~」は時間を忘れてしまいそうになる。「一緒に歌いたい人を呼びたいと思います。」とあらきゆうこを呼び入れ、オフィスオーガスタのオルタナティブコンビ(らしい)は『Augusta HAND × HAND』でコラボした「かなしいアイシテル」に続き、9月24日に配信がスタートした新曲「Run Train Run」を初披露。
そのままあらきはドラム、岡本はベースとして残り、登場した浜端ヨウヘイは山崎まさよしも引き入れ、この日配信シングルとしてリリースされた「祝辞」を初披露。オフィスオーガスタの最高顧問・森川欣信氏と一緒に作ったというこの曲。コロナ禍で結婚式もままならない昨今だが「祝辞代わりにそれぞれのエピソードで替え歌にしてくれたら良いと思います。」と語った。更に長い間ライブで弾き語ってきた「ただそれだけのうた」(「祝辞」収録)をこの日はバンドサウンドで歌い上げた。浜端は10月29日(金)から、あやめ十八番「音楽劇 百夜車」で3年ぶりに舞台出演。そして自身初となる主演を務める。

サングラスに黒いコートで登場した杏子。8年ぶりにリリースしたアルバム『VIOLET』のタイトルナンバー「VIOLET」はダークなムードで杏子の歌声や存在感を際立たせた。「この曲の間は怒っちゃってください!癒やしだけでなく、怒りやどうしようもない閉塞感から開放してくれるのも音楽だと思います。」杏子はそう言うと「だって本当はさ、今日は私、みんなに会いたかったもん。直接目の前で歌いたかった!」そう続けて、エレキを轟かせながら自らの怒りも吐き出すように「Heaven’s Door」を熱唱し、コロナ禍で覚えるやり場のない怒りをシャウトした。しかし歌の後は笑顔になって欲しいとも言っていた杏子は「さぁその笑顔で、長澤知之、秦 基博、15周年のおめでとうを言いましょう!」と長女らしい優しさをみせステージを後にした。

第2部は今年デビュー15周年を迎えた長澤知之と秦 基博の15th Anniversary Act。

長澤の「左巻きのゼンマイ」、秦の「キミ、メグル、ボク」を二人で歌う。時にはソロで、時には二人声を重ねて。これがどんなに珍しく、筆者も興奮しているか想像してもらいたい。もし有観客なら間違いなく割れんばかりの拍手と歓声が巻き起こっているだろう。秦が水を飲んでいる間に長澤が「長澤知之です。…秦 基博です」と二人分自己紹介。これに秦が「同期、優しいな。」と笑顔を見せると、長澤は「いやいや、優しくはないよ。ちょっとテンパってただけ。」と照れ隠しをするような笑顔を見せた。更に互いが歌って欲しい自分の楽曲をリクエストしたコーナーでは、秦は「虹が消えた日」、長澤は「三月の風」を選んだ。秦は長澤のリズムや呼吸を感じ取ろうと時折長澤をそっと観る。「三月の風」は長澤の新曲のため、秦は自分が歌って良いのか躊躇していたが、長澤は「普通にリスナーとしても聴きたいなと思って。」と長澤らしい優しい表情を浮かべた。当たり前だが、歌表現の違う二人が歌う互いの曲には新たな魅力を感じる。更に長澤の提案で、この日の為に二人で楽曲を共同制作。互いが思いついたサウンドや歌詞の断片をメール。キャッチボールしながら作ったらしいが、秦は長澤からメールが届かないことや、目が笑っていない絵文字を送ってくることを冗談めかしてツッコみ、長澤は笑いながら少しの言い訳をする。以前、ポップシーンで長澤の15周年記念企画を組んだ際、長澤は同期の秦について「気持ちをオフにして楽に話させてもらってます。」と語っていたが、それを垣間見るような柔らかな空気が漂っている。ファンも待望だった新曲「CHERISH」は長澤らしさと秦らしさがとても…本当にとても自然な形で入り混じっていた。

第2部の最後、福耳メンバーが登場するといきなり先輩たちによる秦イジりが始まる。しかし秦もうまいものでその矛先をパッと長澤へ向けた。そんな様子を大橋卓弥(スキマスイッチ)は「リハーサルの和気あいあいとした雰囲気が残るね。」と笑うが、まさにそういう部分を観られるのがこのAugusta Campの面白さだろう。そして福耳と共に歌う秦の「泣き笑いのエピソード」で第2部のステージは終了。

第3部は竹原ピストルでスタート。竹原は「はったんと長澤くんにおめでとうの気持ちを込めて。」と一言添えて「Forever Young」を弾き語る。続く「Amazing Grace」は自身の経験をもとに、同名のトラディショナルナンバーに日本詞をつけたものだが、それはいつ聴いても圧倒的なパワーで、もしこれが有観客だとしても、きっと静まり返りその歌声に耳を傾けるであろう。最後は中島みゆきの「ファイト!」をカヴァー。“ファイトーーー!”、孤高の歌声はしんとした空間へ、そして聴いている人たちの胸へ響きわたった。

「どうも松室政哉です!よろしくお願いしまーす!」と勢いよく登場したのは松室政哉。軽くステップを踏み、ハンドマイクでアッパーなロックチューン「踊ろよ、アイロニー」を歌う。画面の向こうのオーディエンスに熱気を届けると、続いて「海月」を披露。10代の頃に作ったというこの至極のバラードは、今や松室を代表する曲のひとつと言っても良いだろう。「折角なので…」と呼び込んだ山崎まさよしと披露されたのはコラボ曲「2人のコンプライアンス」。アーティスト同士、堂々と自身の音楽をぶつけてくる後輩の松室に、先輩の山崎も頼もしそうな表情を浮かべた。松室は10月1日(金)から「Matsumuro Seiya Acoustic Tour 2021 “Touch”」を全国7カ所で開催する。

荘厳な雰囲気で登場したのは元ちとせ。インディーズデビュー20周年を記念し、今年8月に『トコトワ 〜奄美セレクションアルバム〜』をリリース。配信という形にはなったが、大好きなオーガスタのメンバーとAugusta Campに立てることが嬉しいと語る。Augusta Campのステージに立って20年。その想い出の中で大切な曲を一緒に届けたいと山崎まさよしを呼び入れた。この曲のギターを弾いてもらいたいとニューヨークにいた山崎のもとへ元が訪ねてきた当時の思い出話をしつつ、しっとりしたムードで「名前のない鳥」を届けた。今年は元の故郷、奄美大島が世界自然遺産に登録されたが、コロナの影響もあり奄美大島でこの時期行われる豊年祭は昨年同様中止だという。しかし「皆さんの心がコロナに負けずに、いつまでも豊かでいて頂けるように願いを込めて。」と奄美のシマ唄「豊年節」を熱唱し、ステージを後にした。

続いて登場したのはスキマスイッチ。しみじみと、しかし確実に気持ちを熱くしてくれる「吠えろ!」から、「雫」へ。2009年にリリースされたこの曲のレコーディングでドラムを担当したのはこの日あらきと共にドラムを担当した山木氏で、ライブで一緒にこの曲を演奏するのは初めて。鍵盤の常田真太郎も「(12年越しに)まさか叶うとは!」と感慨深げな表情を浮かべた。更に話題は秦と長澤の15周年に。改めて考えると15周年という月日は長く「それを秦と長澤は頑張ってきたんだなと思うとすごく感動する(大橋)」、「身近にいるからこその重さってあるよね(常田)」と二人はしみじみ言う。楽屋では長澤より秦の方が静かなことや二人のイメージの違いに触れながら、オフィスオーガスタにはカラーの違うアーティストが揃っていることを改めて面白いと語った。一気にボルテージを上げてくれる「Ah Yeah!! 」、そして「全力少年」では画面の向こうにいるオーディエンスにコール&レスポンスを求め、大橋はカメラ目線でいたずらっぽい笑顔を見せたり、わざとカメラに寄ってみたりとオンラインならではのパフォーマンスを届けてくれた。スキマスイッチは11月24日(水)にオリジナルアルバム『Hot Milk』と『Bitter Coffee』を2枚同時リリースする。

3部のトリは、9月22日(水)にメモリアルアルバム『STEREO 3』をリリースしたばかりの山崎まさよし。「Fat Mama」のソウルフルな歌声、エネルギッシュなバンドサウンドでヒートアップ!会場からも拍手が聴こえてきた。続く新曲「サイドストーリー」 はEneKey2周年キャンペーンソング。この2年間、山崎もオンラインライブは経験したが、やはり初めは戸惑ったと言い真面目な口調で話すも、気づけば「僕は打ち上げが大好きなんだよ。打ち上げやるために音楽やってるんだよ!」と力説。(スタッフの「そうだ!」という声も漏れ伝わってきた)しかし「大丈夫。絆を持って勇気を持って、今、打ち上げてると思って。打ち上がりましょう!」少しの笑みを浮かべ、軽快に「セロリ」を歌う。そこから福耳を呼び入れると、杏子は山崎がカメラ目線したことを早速問うた。山崎は「いや、卓弥のを観てて勉強になったんで(笑)。」と言い、そこから話題は大橋のカメラ目線に。杏子も「あれはキュンキュンだよ!」と感心し、MCでは始終笑いが絶えなかった。福耳をコーラスに引き連れた「Updraft」。清々しいメロディに心が踊る。コーラス以外も小さく口ずさむ長澤。わざと山崎のマネをしてカメラに目線を向ける杏子。松室にちょっかいを出すように歌うさかい。歌声以外でもそれぞれの個性を感じられるコラボだった。

「アンコール!」と書かれた旗をもっている山崎プラモデル。今回、次のセッティング中に画面に映し出されていたこのプラモデルは『STEREO 3』の完全生産限定盤に付属されているもの。

程なくして福耳が登場。秦と長澤がお揃いで着たTシャツのスヌーピーは誰がモデルかという話でひとしきり笑い合うと、長澤が2017年に福耳のために書き下ろした「ブライト」で皆が声をあわせる。曲が終わり、杏子の「周年男のお祝いをしたいと思います。観ているみんなも一緒にお祝いしてくださいね!」という掛け声に合わせ、「山崎まさよし26周年おめでとう!」「中途半端やな!…そうじゃなくて!スキマスイッチ18周年おめでとう!」「いやいやそれも中途半端でしょ!」という二段階のボケが繰り広げられ、祝われるはずの秦が「なかなか祝ってもらえずソワソワしちゃったじゃないですか!」と苦笑いする一幕も。改めて長澤・秦の二人へおめでとうの言葉と花束を贈り、最後はやはり「星のかけらを探しに行こう  Again」で締めくくられた。オンラインだろうが、Augusta Campでこの曲を聴くとライブの終わりが近づいている淋しさや、暗闇に光るライト、肌にあたる風が少し肌寒いこと、オーディエンスの歌声など様々な記憶が呼び起こされる。来年はオフィスオーガスタ30周年。来年こそ会場で会えることを願いつつ、【Augusta Camp 2021】は幕を閉じた。

アーカイブ公開は10月1日(金)12:00~10月3日(日)23:59まで。


■ Augusta Camp 2021 公式サイト
https://www.office-augusta.com/ac2021/


text:秋山雅美(@ps_masayan
Photo:岩佐篤樹



■ セットリスト

□ Opening Act
OA.Rewrite/浜端ヨウヘイ×松室政哉

□ 1部
M1.Swing Swing Sing/福耳
M2.夏はこれからだ!/福耳
M3.まなざし☆デイドリーム/さかいゆう
M4.愛の出番/さかいゆう
M5.崇高な果実/さかいゆう
M6.永遠の午後/岡本定義(COIL)
M7.ラヴィン・フルーツフル~恋する果実~/岡本定義(COIL)
M8.かなしいアイシテル/あらきゆうこ (MI-GU)× 岡本定義(COIL)
M9.Run Train Run/あらきゆうこ (MI-GU)× 岡本定義(COIL)
M10.祝辞/浜端ヨウヘイwith 山崎まさよし・岡本定義(COIL)・あらきゆうこ
M11.世界にひとつの僕のカレー/浜端ヨウヘイ
M12.ただそれだけのうた/浜端ヨウヘイ
M13.VIOLET/杏子
M14.The Black Knight/杏子
M15.Heaven’s Door/杏子

□ 2部 15th Anniversary Act
M16.左巻きのゼンマイ/長澤知之&秦 基博
M17.キミ、メグル、ボク/長澤知之&秦 基博
M18.明日のラストナイト/長澤知之&秦 基博
M19.虹が消えた日/長澤知之&秦 基博
M20.三月の風/長澤知之&秦 基博
M21.ひまわりの約束/長澤知之&秦 基博
M22.CHERISH/長澤知之&秦 基博
M23.泣き笑いのエピソード/秦 基博 with 福耳

□ 3部
M24.Forever Young/竹原ピストル
M25.Amazing Grace/竹原ピストル
M26.ファイト!<オリジナル:中島みゆき>/竹原ピストル
M27.踊ろよ、アイロニー/松室政哉
M28.海月/松室政哉
M29.2人のコンプライアンス/松室政哉 × 山崎まさよし
M30.コトノハ/元ちとせ
M31.名前のない鳥/元ちとせ with 山崎まさよし
M32.豊年節/元ちとせ
M33.吠えろ!/スキマスイッチ
M34.雫/スキマスイッチ
M35.Ah Yeah!!/スキマスイッチ
M36.全力少年/スキマスイッチ
M37.Fat Mama/山崎まさよし
M38.サイドストーリー/山崎まさよし
M39.セロリ/山崎まさよし
M40.Updraft/山崎まさよし with 福耳

□ Encore
En1.ブライト/福耳
En2.星のかけらを探しに行こう  Again/福耳


■ イベント公式サイト
https://www.office-augusta.com/ac2021/

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