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「Nulbarich ONE MAN LIVE  -IN THE NEW GRAVITY-」ライブレポート

「Nulbarich ONE MAN LIVE -IN THE NEW GRAVITY-」ライブレポート

June 17, 2021 19:00

Nulbarich

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ピアノの音色、登場するバンドメンバー。響くギターリフ。「Welcome〜!」拍手を受け登場したJQの軽快な挨拶に、声は出せずとも伝わるオーディエンスの熱量。


「やっぱ生っすわ!」4月にリリースの最新アルバム『NEW GRAVITY』を携え、6月13日(日)東京・東京ガーデンシアターでの有観客ライブ【Nulbarich ONE MAN LIVE  -IN THE NEW GRAVITY-】を開催したNulbarich。

この日を何より望んでいたであろうJQは「緊張しちゃうな。お手柔らかに。」と言いながら「TOKYO」でライヴをスタート。Nulbarich結成前、様々な葛藤を抱えるJQが自分自身に向けて書いたこの曲は、パンデミックな状況下に生きる今、共感と煌めきを与えてくれる。

「Twilight」で歪むエモーショナルなギターソロと開放的なサウンド。隣に座っていた女性はすでにスタンディングでノリノリだ。リズムを取る足がたまに当たる。“うん、分かるよ。私も本当はそうやって踊りながら楽しみたい!” 気持ちよさそうにNulbarichの音楽へ身を委ねる女性へ心の中で語りかけながらも、「Super Sonic」で見せつける演奏力の高さと格好良さを噛みしめる。最近でこそ英詞も増えたしブラックミュージックやヒップホップから影響を受けたアーティストも多い。しかしこういう音楽が現在アンダーグラウンドでないのは、Nulbarichの存在が大きいと思う。
中村倫也主演のテレビ東京系ドラマ『珈琲いかがでしょう』の為に書き下ろされた「CHAIN」ではドラマを思い出す人も多いだろう。

「ちょっとお楽しみタイム。」とメドレーへ。「Mumble Cast #000」から始まり、普段はあまりやらない「Kiss Me」「Handcuffed」。最後は「Mumble Cast #000」で締めくくる。レイドバックに包まれた心地よい揺らぎから、今度はクールな鍵盤とヒリつくギターのダウンビート「Lonely」へ色を変えオーディエンスの胸を熱くさせる。こういうご時世でなければ、間違いなく揺れる程の歓声が会場に響き渡っている。

「タイに届くと良いな。」タイのアーティストPhum Viphuritとのコラボ曲「A New Day」を皮切りに、ここからはフィーチャリングゲストが登場。最初は、Nulbarichのステージではお馴染みと言ってもよいだろうVaundy。自身初の5大都市Zeppツアーの開催を発表し、7月スタートのドラマ主題歌を担当するなど、その勢いはとどまることを知らない。コンビネーションもバッチリな二人の「ASH feat. Vaundy」はハイにしてくれる。

「何となく勘の良いやつは分かってるよな。」そう言うとJQは続いて「It’s Who We Are」でフィーチャリングした唾奇を呼び入れた。彼のラップは壮絶な生き様そのものだ。だからこそこの曲で唾奇をフィーチャリングに迎えたのには正直驚いたが、面白い化学反応を起こしている気がした。

「分かるよね。もう付き合いは長いんだよ。先に呼びます。喋りたいから。」
JQの言葉とピアノの音色に導かれ、AKLOが登場。互いのライヴを行き来する二人だが、JQがAKLOと出会ったのは10年近く前。JQはトラックメーカーをしながらクラブに入り浸り泥酔していた日々だったらしい。そんな話から思い出話に笑顔を見せる二人。最高に心地よいチルホップ「Sweet and Sour feat. AKLO」に時間を忘れる。

「な、ちゃんと歌わねーと怒られんだよ。」ぼそっとJQが言う。オーディエンスは笑いたいのを堪え、拍手でリアクションを取る。ハモンドとJQのファルセット!!!この「!!!」でそれがどれほど堪らないものか理解してもらいたい。
「ちゃんと歌いました(JQ)」「ちゃんと歌いましたね(Mummy-D)」この他愛ない会話だけでも興奮してしまう。

「party people!楽しんでますかー!」会場がMummy-Dの色に染まる。コロナ禍でストレスを溜めているみんなへMummy-Dは「大丈夫、きっとうまくいくさ、 Be Alright!」と言い、そのまま「Be Alright feat. Mummy-D」へ。サビ以外の3ヴァースをMummy-Dが書いているこの曲は、良い意味でJQが先輩の手のひらで自由に踊っている気がした。緩く温かく愛情に満ち溢れたコラボはまさにこの状況でのストレスを吹っ飛ばしてくれる。

「Break Free」のベースラインは中毒性がある。「Clap Your Hands!心の中で……もうみんなの心の中、uh uh言ってるでしょ。出ちゃってるから。大丈夫、出ちゃってるよ!」本来なら“uh uh〜♪”と歌いたいオーディエンスの胸の内を察知して…いや、実際JQの言う通り、その想いが溢れ出ていたのかもしれない。その溢れ出た想いとボルテージは80’sサウンドを取り込んだ「LUCK」で更に加速する。

「やっと会えたね。」JQの言葉に拍手で応える。「会えるチャンスがある限り、こういう機会作ってくから、もし時間あったら来てくれたらすこぶる喜ぶんだ。最低週4で会いたいよね……殴られんな(笑)。」 「もう少しで何か光を見つけるから。あとはゆっくり進んでいくだけだね。」
冗談めかしのJQの言葉。優しく温かいJQの言葉。そうだ。これが聴きたかったのだ。


ラストの「In My Hand」でオーディエンスは手をあげ、リズムに身を委ね、またこうやって会える日を望みながら、惜しむようにJQの歌声に耳を傾けた。
JQの言葉ではないが、やっと会えたこの【Nulbarich ONE MAN LIVE -IN THE NEW GRAVITY-】は満ち足りた雰囲気のまま幕を閉じた。


なお、このライヴをリアレンジしたディレイ配信も決定しており、6月19日(土)19:30から6月27日(日)23:59まで視聴可能。当日の客席視点からでは見えなかった“もう一つの世界”が描かれるらしく、配信映像のための演出も見逃せない。

PHOTO:岸田哲平 Victor Nomoto
TEXT:秋山雅美(@ps_masayan



□ SET LIST
1. IN THE NEW GRAVITY
2. TOKYO
3. Twilight
4. VOICE
5. Super Sonic
6. CHAIN
7. Mumble Cast #000~Kiss Me~Handcuffed~Mumble Cast #000 
8. Lonely
9. A New Day
10. ASH feat. Vaundy
11. It’s Who We Are  feat. 唾奇
12. Sweet and Sour feat. AKLO
13. Be Alright feat. Mummy-D
14. Kiss You Back
15. Break Free
16. LUCK
17. Almost There
18. In My Hand

□ Spotifyにてセットリストを再現したプレイリストを配信中。
https://open.spotify.com/playlist/5fQLpNsgLCGP0azLqq10DD

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