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スキマスイッチ『Streaming LIVE "a la carte 2020" ~実際にやってみた!~』 ライヴレポート

July 1, 2020 17:30

スキマスイッチ

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スキマスイッチ『Streaming LIVE "a la carte 2020" ~実際にやってみた!~』 ライヴレポート

世界中がその病の猛威に成す術を失い、笑顔を失い、仲間と触れ合う時間を失った。
しかし枯渇した大地から新しい生命が芽吹くように、我々は新しいスタイルで繋がりを探し始める。

スキマスイッチ。彼らはいつもそうだ。<今、自分たちに出来ること>を常に考え、体裁より行動を大切に、想いを届けようとしてくれる。
昨年から開催されていた【SUKIMASWITCH TOUR 2019〜2020 POPMAN’S CARNIVAL Vol.2】も今年に入り一部延期を余儀なくされ、ファイナルを迎えるはずだった2月28(金)の熊本県 市民会館シアーズホーム夢ホールでは、いち早く初の無観客ライブを実施。決して配信準備が整っていたとは言い難い状況は、かえって彼らの「届けたい」想いを色濃く映し出し、チーム・スキマスイッチの一体感に感動を覚えた。その感動から程なくして、スキマスイッチと彼らの公式ファンクラブ「DELUXE」会員が、初めてスキマスイッチを聴く方に聴かせたい楽曲を選び、過去のライブ映像からピックアップし作った【スキマスイッチとファンクラブ会員が選んだ!神セトリの仮想ライブ!『LIVE a la carte 2020』】(以下:『LIVE a la carte 2020』)なるものを企画。
更に、6月27日(土)、東京・豊洲PIT(開催時、会場は非公開)にて、その仮想ライブを実現させた【スキマスイッチ『Streaming LIVE "a la carte 2020" ~実際にやってみた!~』】(以下:『Streaming LIVE "a la carte 2020" 』)を無観客有料配信ライブとして開催した。

拍手や歓声のSEは演者の士気だけでなく、観る側のテンションもあげてくれる。まず『LIVE a la carte 2020』を観た時、自分はこんなにもこの曲が好きだったんだと改めてそう思わせてくれたのが、オープニングの「時間の止め方」。今回の『Streaming LIVE "a la carte 2020" 』では紗幕がないものの、常田真太郎のピアノと彼らのシルエットから始まる2012年のmusiumツアー映像に寄せた演出が心憎い。バンドメンバーは、村石雅行(Dr)、種子田健(Ba)、浦清英(Key)、石成正人(Gt)、松本智也(Per)、宮崎隆睦(Sax)、田中充(Tp)。全員、今回のために用意した揃いのライトグリーンの衣装をまとっている。
「Ah Yeah!!」のイントロに乗せたメンバーのクラップと「どうも、スキマスイッチでーす!みんなで楽しみましょうー!」手を挙げ挨拶する大橋の声、鍵盤を弾きながらフロアに目線を落とす常田の優しい表情は無観客であることを忘れさせる。今までのツアーで目に焼き付いた、サビでタオルが舞い上がる光景を脳内レイヤーに組み込みつつこの曲を聴いていたことは言うまでもない。懐かしい「アーセンの憂鬱」がセットリストに組み込まれているのもこういう企画ならでは。『LIVE a la carte 2020』では2007年のアリーナツアー映像が使われており、アフロ時代の常田が観られる……が、まさかここで常田がアフロになっているではないか!思わず吹き出さずにはいられなかったが、こういう彼らのプロフェッショナルな遊び心が大好きだ。パーカッションとエレキ、ホーンが際立つファンキーなナンバーにテンションが上がる。

「僕と傘と日曜日」のイントロ、常田の手元を上から捉える定点カメラ。サビの盛り上がりを演出するバックライト。ゆっくり移動しながら大橋の切ない表情をアップで写すカメラ。生で観ることは出来ないし我々が観ているのは大抵パソコンやスマートフォンの小さな画面だが、楽曲の魅力を引き出すステージ演出をリアルタイムで観られることはやはり配信ライブの面白さだ。

「無観客という形ではありますが、またこうやってライブが出来るようになって非常に嬉しく思っています。」大橋の本心は、そのまま『LIVE a la carte 2020』の説明に。「ファンクラブの人たちの方が僕らの良い曲を知ってるんですよ(笑)」自分たちとは違うセレクトに驚きもあったようだが、常田もファンクラブメンバーのデータベースの凄さを改めて実感しているよう。様々な年代を繋いだ『LIVE a la carte 2020』と、今回の『Streaming LIVE "a la carte 2020" 』を見比べた時、違う面白みを感じてもらえると嬉しいと語るが、いかんせん無観客。当たり前と思いつつ反応がないことに一瞬戸惑いは見せる。しかし大橋は「ストリーミングライブならではの演出も出来たら良いなと思ったりしていますので。」と、画面の向こうのファンに呼びかけた。石成のアコギは【SUKIMASWITCH 15th Anniversary Special at YOKOHAMA ARENA ~Reversible~】での「藍」のイントロにアレンジを加え、美しく優しく響く。大橋のフェイクにも酔いしれていると、続けざまに「デザイナーズマンション」へ。やはり脳内ではこのイントロでオーディエンスの歓声が聞こえる。各メンバーの見せ場があるのもいつものライブらしい。「ミスターカイト」では繊細なライトの糸がゆっくり旋回しながらAメロの静寂とリンク。そのままアグレッシブなサビへと走り出し、再び繊細な形へと戻り、常田は最後の一音から指を離した。常田の手元を照らす仄暗い明かり。ピアノの音色はやがて「奏(かなで)」へ。スキマスイッチには他にも沢山名曲があるが、やはりこの曲は外せないだろう。エモーショナルなサックスから大橋へとカメラは移動。迷いなく真っ直ぐな目線で大橋は歌う。「君がどこに行ったって僕の声で守るよ」と……。

「画面の向こうで歓声を送ってくれてますかね?」二人は楽曲の世界からパーソナルな笑顔に戻ると、過去のライブ映像で構成された『LIVE a la carte 2020』について話し始めた。常田が「昔の自分たちに勝てるのか?俺たち。」と言えば大橋も間髪入れずに「それはある!」と即答。大橋いわくの無駄に尖っていた、負けたくないという気持ちが強かった昔を振り返った。また、このライブを観ているファンのチャットをリアルタイムで観られることに「これ嬉しいな!」と無邪気に喜ぶ大橋。常田は笑いながら「繋がってますからね。」と優しいツッコミを入れるが、こういう状況だからこそ<繋がる>という言葉の意味を深く感じ取ってしまうのはあまりに感傷的すぎるだろうか?ただ、いつものライブと変わらない楽屋トーク的MCと、常田のピアノに身を委ねながら喋る大橋の姿はやはり安心感を覚えた。

まるでプログレに発展しそうな「ゴールデンタイムラバー」での浦のシンセ。大橋はサンプラーでテルミンを操るように浮遊感を生み出し、そこからアコギに持ち替え一気に厚みのあるファンキーなバンドサウンドへと進む。存在感を貫くホーンの響きをはじめ、すべての音がボルテージを上げてくれた。汗がほとばしる音のエネルギーは「SL9」でガラッと空気を変えた……と思ったが、それは間違いだった。再び大橋を捉えたカメラに対し、声だけでなくジェスチャーでも歌詞を伝え、目線はレンズではなく完全にオーディエンスへ向け、雄叫びをあげる。光の粒を浴びながらひたすら鍵盤を叩く常田。メンバーが作り上げるリズムやメロディ。感情をむき出しに声を枯らし叫ぶ大橋。サウンドは変わっても彼らのエネルギーは何ひとつ変わることなくオーディエンスへぶつかってくる。曲が終わると、SEではなく会場から自然と響く歓声と拍手が聞こえてきた。

「ガラナ」が終わり、ドラムとパーカッションによるイントロがアツい「トラベラーズ・ハイ」へ。大橋が「よっしゃ、まだまだ行くよー!」と叫べば銀テープが飛んでくるのではないかとワクワクしてしまう。(無観客なので無論飛ばないが)常田は【スキマスイッチ TOUR2016“POPMAN’S CARNIVAL”】のハットを被っているし、大橋は溢れる笑顔でオーディエンスへマイクを向ける。間奏になればアグレッシブなピアノを弾く常田の傍で大橋はピアノの屋根を叩きリズムをとる。

「どうもありがとう!楽しんでますかー?」ライブが出来る喜びを全身で受け止めているような満面の笑みで大橋は手を振り「僕らばっかり楽しんでないかな?大丈夫かな?」と笑う。「やっぱりライブ出来るのが本当に嬉しい!そしてみんなに会いたい!今はもうちょっとの辛抱ですが、お家でも楽しみましょう。」そういうと、先程「ゴールデンタイムラバー」でもやった、メンバー各々SNSで生配信も取り入れ「全力少年」の冒頭で恒例のコール&レスポンス。突然大橋、浦の近くにあったカメラを手にし、歌いながら自分や常田、メンバーを撮り始め、やはり恒例のピアノの上からジャンプもやってのけた。2005年にリリースしたこの曲は世代を超え愛され続け、今年8月21日公開予定のディズニ&ピクサー最新作『2分の1の魔法』日本版エンドソングに決定している。

常田のピアノが奏でる「時間の止め方」のメロディをバックに大橋は語る。
「本当に今日は皆さんありがとうございました。一番望んだ形ではないけれど。本当はね、この場で……みんなと一緒に同じ空気を共有したかったんですが、今はもう少しだけ、もう少しだけ我慢してみんなで頑張りましょう。」静かな口調で、またみんなに会える日がくることを信じていると続けた。更に、どういう形になるか分からないがまたライブを演りたいと、様々な想いの詰まった表情を浮かべ、本編エンディングの「時間の止め方」を歌い上げた。

「ありがとう!イエーイ!……やっぱりSEでも歓声、盛り上がるな(笑)。」
全員、POPMAN’S CARNIVALのテントTシャツを着て再び登場。大橋が開口一番そう言うと、再び大きくなった歓声(SE)に笑顔で「本当に大好物ですね、これは(笑)」と笑い、常田も「目覚ましこれにすれば(笑)」と笑う。アンコールのリラックスしたムードは無観客でも変わらない。

鍵盤のリフが清々しい「Revival」は、昨年社会現象を巻き起こした『おっさんずラブ』のドラマ、映画で起用されたこともあり耳にすることが多かった。きっとあの当時の、ドラマや映画に夢中になっていた頃を思い出した人も多いのではないだろうか。メロディの甘酸っぱさに馳せた想いは「未来花(ミライカ) for Anniversary」で心癒されるものに変わった。両の手を握りしめ、丁寧に歌う大橋の歌声が響き渡る。

「本当にありがとうございました。本当に楽しかった。」大橋は改めて挨拶すると、8月19日にセレクションアルバム『スキマノハナタバ ~Smile Song Selection~』のリリースを発表。『2分の1の魔法』のエンディングテーマ「全力少年 Remastered」の他、新曲も収録される。

常田は再びタブレットを取り出し、「せっかくなので。」とお客さんの顔を観るようにチャットを繋いだ。大橋はライブが出来ないストレスを痛感し、歌えることの幸せを感じながら「ステージに立ってる時が一番生きた心地がしますね。」としみじみ言う。【スキマスイッチ『Streaming LIVE "a la carte 2020" ~実際にやってみた!~』】の最後を飾るのは「リアライズ」。モノトーンの映像は徐々に色を取り戻し、常田やメンバーのコーラスがエモーショナルに心へ届く。大橋はいつもどおり「みんなもよかったら歌ってください。Singing!」と、同じ場所にはいないけれど、同じ想いを共有しているファンとシンガロングした。

これからも、無観客での有料配信ライブというのは続くだろう。しかし、その中でもこの【スキマスイッチ『Streaming LIVE "a la carte 2020" ~実際にやってみた!~』】で二人が見せたプロフェッショナルなステージは絶対に忘れない。

Photo:岩佐篤樹
Text:秋山雅美(@ps_masayan


※このライブは7月5日(日)23:59までアーカイブあり。


■ セットリスト
1. 時間の止め方(Opening)
2. Ah Yeah!!
3. アーセンの憂鬱
4. 僕と傘と日曜日
5. 藍
6. デザイナーズマンション
7. ミスターカイト
8. 奏(かなで)
9. ゴールデンタイムラバー
10. SL9
11. ガラナ
12.トラベラーズ・ハイ
13. 全力少年
14. 時間の止め方(Ending)

EN1. Revival
EN2. 未来花(ミライカ)for Anniversary
EN3. リアライズ


■ スキマスイッチ Official HP
http://www.office-augusta.com/sukimaswitch/


スキマスイッチ「Streaming LIVE "a la carte 2020" ~実際にやってみた!~」
□ 配信日時
2020年6月27日(土)19:00〜生配信スタート
※7月5日(日)23:59までアーカイブあり

□ チケット料金
4,000円(税込)

□ 申し込みURL
https://eplus.jp/sukimaswitch627/

□ 申し込み期間
2020年6月6日(土)12:00~7月5日(日)18:00

□ 視聴・配信に関するお問合せ
https://eplus.jp/streamingplus-userguide/

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Information

Release

スキマスイッチ
「スキマノハナタバ ~Smile Song Selection~」

2020年8月19日発売

-収録曲-

□ CD
1. 全力少年 Remastered
2. 夏のコスモナウト
3. 青春
4. ガラナ
5. ミスターカイト
6. 星のうつわ
7. かけら ほのか
8. Hello Especially
9. LとR
10. トラベラーズ・ハイ
11. Ah Yeah!!
12. ゴールデンタイムラバー
13. 晴ときどき曇
14. 新曲

□ 初回限定盤DVD
「新曲」Recording Making
「スキマノハナタバ~Smile Song Selection~」Special Interview

スキマノハナタバ ~Smile Song Selection~

初回限定盤(CD+DVD)

UMCA-19062 / ¥4,000(税別)

スキマノハナタバ ~Smile Song Selection~

通常盤(CD)

UMCA-19062 / ¥2,800(税別)