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松室政哉 × 坂内拓『映画と音楽とイラストレーション』トークショー&インストアライブ、イベントレポート

August 5, 2019 18:30

松室政哉

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松室政哉 × 坂内拓『映画と音楽とイラストレーション』トークショー&インストアライブ、イベントレポート

6月26日に2ndシングル『僕は僕で僕じゃない』をリリースしたシンガーソングライターの松室政哉と、松室のメジャーデビュー作『毎秒、君に恋してる』からジャケットイラストを手がけ続けているイラストレーターの坂内拓が、7月31日(水)東京・ TSUTAYA TOKYO ROPPONGIで、自身のクリエイティブに影響を与えた映画について語るトークショーと、『僕は僕で僕じゃない』発売記念インストアライブを開催した。

今イベントは、この日司会・進行を務めた本釜菜津子さんが週替りでパーソナリティを務めるコミュニティーラジオ『渋谷のラジオ』の「渋谷でわくわくラジオインターン」(毎週日曜 朝8:00〜10:00)で、坂内がゲスト出演した際、「松室さんと坂内さんのトークイベントやライブが出来たら面白い」という本釜氏の発想によって生まれた企画。なんと告知から2日間でトークショーのチケットは完売した。

大きな拍手を受け、松室政哉と坂内拓が登場。
松室は自身もTSUTAYAでアルバイトしていたことに触れつつ、TSUTAYA TOKYO ROPPONGIの商品陳列に関心しきりな上、この店舗独自のアプローチやDEVIALETの期間限定POPUPに興味津々。松室の映画好きはかなり有名だが、それもTSUTAYAでのアルバイト経験がきっかけらしく、今回のイベントは嬉しいと語る。一方、松室の映画愛を知っている坂内は少々不安気味に「松室くんと同じ舞台で話すほど、そんなアレ(知識)はないので、3年くらい欲しいなと思いました(笑)。」と笑いを交えながら答えた。

松室が最初に紹介したのは、アメリカの恋愛映画『ブルーバレンタイン』(2010年)。時間軸をバラバラに見せるこの映画。観る側は主人公の出会いより先に別れを知ることで、主人公たちが出会った頃の煌めきをより切なく感じる。また、物語を印象づけるカットバックにもグッときたと語り、自身の楽曲「きっと愛は不公平」の歌詞や、自身が監督も務めた同曲MVの描き方などもこの映画に影響を受けたと続けた。松室はこの映画について「映画館で一人で観て声を出して泣いてましたからね。20歳くらいの時。」と告白。会場からは驚きの声も上がった。

『ブルーバレンタイン』は自身のラジオやSNSでも何度か紹介するほど内面にこびりついていると言う松室に坂内が「もう一度観る時はどんなタイミングで?」と質問。松室は「“こういう気持ちになりたい”というのがまずあって…。ちょっと悲しい気持ちになって曲の作業に入りたいなとか、そういうことかもしれません。」と回答。一方坂内も「僕も音楽や映画をきっかけに絵を描いたりするので。」と両名、自身のクリエイティビティに映画は不可欠であることを明かした。

この話題の最中で「自分が映画の主人公になるとしたら?」と問われると松室は「それは勿論、アイアンマンですよ。アイアンマンかキャプテン・アメリカ。映画に出るなら僕は“アベンジャーズ”に入りたいです。それは間違いない!」と力強く断言している。

次に坂内が選ぶ映画は、ジム・ジャームッシュ監督・脚本のアメリカ映画「ストレンジャーザンパラダイス」(1984年)。学生時代にレイトショーで観たというこの映画。「僕が映画を観る時は娯楽性とかドラマチックなものを期待して観に行くんですけど、この映画はストーリー的にも、ただただ日常というか……淡々と繰り返されている映画で、逆にそれが刺激的だった。観終わった時に地味に興奮したというか。」 加えて坂内は、ハンドカメラで捉えた画角や構図も自分の感覚に合ったとコメントし「それまでは人と違った面白いアングルを狙ったりもしてたんですけど、こういう世界観もあるんだということで惹かれる映画でした。」と自身の絵にも影響を及ぼしていることを語った。坂内が描く柔らかいイラストの世界観とは裏腹に、実はロック好きな一面はこういう部分と繋がっていると松室は分析。

20190805DSC_7454.jpgその他、松室はアイルランドの音楽映画『シング・ストリート 未来へのうた』(2016年)に関して、音楽を始めた頃の気持ちに立ち返ることが出来た映画だと語った。年始には自身で一年の映画上映カレンダーを作っているほどの松室。これには会場からも驚きの声があがった。更に自分で観た映画をアプリで管理。自身で賞もつけているらしい。(ちなみに『ブルーバレンタイン』は第三回松室・作品賞)

続いて坂内はイギリス映画『ケス』(1969年)を紹介。映画を観て学生時代にイギリスへ行った坂内は現地で、服や持ち物を直しながら大切に使って次に伝えている姿を目にしたと言う。「街角を歩いている若者もあまり着飾るのではなく、しかも彼らはしょうがなくそれしかないからを着ているみたいな感じなんですけど、それが妙に格好良く見えて。」とコメント。そういうシーンが自分の絵の中の服装や、イギリスの空気感として出ていると語った。

続いて「松室政哉さんがあなたの悩みに映画で答えます」コーナー。

来場者が、事前に渡された質問カードに悩み事や質問などを書いてBOXに入れ、松室がランダムにチョイス。コーナーの冒頭、坂内から松室へ「映画の中に出てくる魅力的な女性像とは?」と質問されると「強い人が良いですね。」と回答。映画タイトルにもなっている女性が、大手企業を相手取り勝利した実在のストーリー『エリン・ブロコビッチ』(2000年)の主人公や、『アベンジャーズ』のブラック・ウィドウの名前をあげ、そういう女性に対して「ついていきます!」と言うと、会場も爆笑に。
「充実した夏休みを過ごすには?」というお悩みに松室はいきなり脱線。冒険映画を勧めようとするも「こんないきなりですけど、ズレていいですか?」と、松室が現在ハマっているアメリカのドラマシリーズ「ストレンジャー・シングス」の話題に。最終的にこのドラマを紹介することとなり再び会場は爆笑。更に「多幸感に包まれたまま安眠出来る睡眠アプリのような映画はないでしょうか?」という相談には、アメリカ映画『ツリー・オブ・ライフ』(2011年)を、「心が楽になる映画は?」という質問にはフランス映画『奇人たちの晩餐会』を紹介した。『奇人たちの晩餐会』に関しては「今まで観たコメディ映画で一番好きです。」ともコメントしている。脱線しながらも笑い溢れるお悩み解決コーナーとなった。

続いて、メジャーデビュー後から松室のジャケットイラストを手がける坂内と松室の繋がりや、アートワークについての話に。2017年のデビュー時、漠然とジャケットはイラストが良いと思っていた松室。自身やスタッフの繋がりから様々なイラストレーターの名前があがり、決定期限もあと1日に迫る中で松室が坂内の絵と出会った経緯を説明。松室の音楽に対して坂内は「今の若い人にもうけるだろうし、僕とかもっと年配の人が聴いても聴きやすいというか。僕の場合は本当に懐かしいなぁという感情が湧きました。」と印象を語った。

懐かしさという点で松室も、特に「毎秒、君に恋してる」は“トレンディー感”を意識した作品だと振り返る。松室は「主人公は今、何を考えてるのかなとか、この街はどんな街なのかなとか、この人はどこから来たのかなとか考えさせる余白があるんです。」と、坂内作品が持つ余白やちょうどよい情報量がCDジャケットに合っているとコメント。松室の音楽と坂内の絵が融合されることにより「新たなもうひとつ上のメッセージみたいなものが生まれる気がしてお願いしました。」と語った。

また2ndシングル『僕は僕で僕じゃない』の印象的な赤と青について訊かれると坂内は、理想と現実の二面性を表現したとコメント。一方、昨年リリースしたアルバム『シティ・ライツ』で一連の流れが完結出来た気がすると語る松室。今作では楽曲でも違った一面を出せた気がするので、ジャケットの仕上がりにも「素晴らしい!なるほどと思いました。」とコメントした。

イベントもいよいよ終盤。『僕は僕で僕じゃない』発売記念のインストアライブへ。

20190805DSC_7462.jpgMVの映像の美しさも話題の泣き歌「海月」で会場を魅了すると、「毎秒、君に恋してる」ではクラップが広がる。改めて挨拶をしながら「僕自身歌いながら坂内さんのジャケットが浮かんで歌っていました。」と言うと「今夜もHi-Fi」へ。

20190805DSC_7491.jpg「平日の夜から皆さんこんな集まって頂いて、そしてこんな素敵な場所で喋らせて頂いてありがとうございました。機会があればまた次回もやりたいなと思います。」と改めて挨拶。 「主人公たちを俯瞰から撮ってるカメラを、もっと心の方に向けた視点の変化が僕の中であって…。今そういう気持ちになってて、そういうのでいっぱい曲を作っていきたいなと思っていて。」と語ると最後は新曲「僕は僕で僕じゃない」でライヴを終了。松室政哉×坂内拓『映画と音楽とイラストレーション』トークショー&松室政哉『僕は僕で僕じゃない』発売記念インストアライブは幕を閉じた。

坂内は8月11日(日)まで台湾でグループ展を開催中。 松室は9月15日(日)に「Augusta Camp 2019」へ出演が決定している。

Text&Photo:秋山雅美(@ps_masayan


■ 坂内拓 オフィシャルサイト
https://www.bannaitaku.jp

■ 松室政哉Office Augusta
http://matsumuroseiya.com/

■ 松室政哉AUGUSTA RECORDS
https://www.universal-music.co.jp/matsumuro-seiya/


※このイベントでの密着記事は後日掲載予定です。

Information

Release

松室政哉 2nd Single
「僕は僕で僕じゃない」

2019年6月26日発売

-収録曲-

M1. 僕は僕で僕じゃない
M2. Hello innocence

□ DVD収録内容
Documentary of Matsumuro Seiya Tour 2019 “City Lights”

僕は僕で僕じゃない

CD+DVD

UMCA-50056 / 1,600円(税抜)