NakamuraEmi NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.6 ~Release Tour 2019~ 2019.6.18 Zepp DiverCity ライヴレポート
June 25, 2019 20:00
NakamuraEmi
「小さな巨人」。 6月18日(火)東京・Zepp DiverCityで行われた【NakamuraEmi NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.6 ~Release Tour 2019~】のツアーファイナル、 カワムラヒロシ(Gt)はNakamuraEmiを最後にそう紹介した。言い得て妙とはこのことだ。3月にAcoustic公演からスタートした今ツアー。20箇所をNakamuraEmiとカワムラヒロシ(Gt)、カサリンチュのコウスケこと朝光介(Human Beat Box)で回り、6月からのBand公演はカワムラヒロシ(Gt)、中西道彦(Ba/From Yasei Collective)、TOMO KANNO(Dr)、大塚雄士(Per)で4箇所を回った。小さな巨人は歌もパフォーマンスも格段な進化を遂げていた。
ジョン・カビラ氏によるツアーファイナル幕開けのアナウンス。名前を呼ばれ、手を振りながら真っ赤なつなぎ姿で登場したNakamuraEmiに歓声が上がり「Don’t」でライヴスタート!
「Tokyo Zepp DiverCityにお集まりの皆様、NakamuraEmiと申します。ありがとう!」イントロで挨拶するNakamuraの声はハッとさせられる程に力強く、濁りも迷いもない。「大人の言うことを聞け」では、相変わらず沢山の楽器に囲まれた大塚のパーカッションがアグレッシブなリズムを刻み、「バカか私は」では中西の低いうねりとNakamuraがサビで響かせる高い声が絶妙なコントラストを生んでいる。梅雨のこの季節、湿気の匂いを強く感じるのは会場のボルテージが上がっている証。
「雨女の私は、数々の夏フェスで雨を降らしてきました。」その言葉に会場からは笑いと歓声。Nakamuraは、ずぶ濡れになりながら笑ったり泣いたりして自分の歌を聴いてくれたことが本当に嬉しいと語る。デチューン調整されたイントロが特徴的な「雨のように泣いてやれ」。普段なかなか泣くことが出来ない人へ向けたこの曲の開放感はフロアを熱くした。以前、『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST』のインタビューで、自身に対してリズム感がなさすぎると話していたが、小さな身体全体で歌詞の世界をダンサブルに表現するあたりはなかなか堂に行っている。
「みなさーん…みなさーん、見えてます。たくさんいるよ〜。」手でひさしを作り、今にも泣き出しそうな声で会場を見回す。23箇所を無事に回りきり、この日が最後の1公演。「今日はその23箇所分のパワーを東京の皆様に全部撒き散らしていきたいと思いますので、お時間許す限り楽しんでいってもらえたらと思います。」と挨拶。メンバー紹介も交えつつ今ツアーで職務質問されたこと、移動中にずっと運転していたマネージャーに対して誰も交代してあげなかったこと、苦手なコールアンドレスポンスで勢いあまってマイクが客席まで飛んでしまったことなど、次々と笑い溢れる思い出話が飛び出した。
Nakamuraは自身の体験や感情を歌にすることが多い。この「おむかい」も初めての一人暮らしをした時のエピソードが様々な声や音と共にそのまま曲になった温かいナンバー。続く「いつかお母さんになれたら」にはNakamuraが保育士をしていた頃の園児が登場する。パーカッションの深く穏やかな響きは、誰もが生を受けた母親の持つ包容力。昨今、親によるやるせない事件が世間を騒がせる中、もし自分が母親になったらという想像を可愛らしい声でセリフに乗せる。自身の家族を歌った「めしあがれ」はどうしたってオーディエンスの目頭を熱くさせた。
ネガティブで、自身の悪いところを沢山挙げられると言うNakamura。だから今まで頑張れ、頑張れと自分を奮い立たせる曲を作り続けてきたと。だが昨年のツアー【NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5 〜Release Tour 2018〜】で気持ちにも変化があったようだ。
「駄目な自分なんだけど、こんなに沢山の人が自分の為にライヴに来てくれたり、お手紙書いてくれたりって考えると、こうやって自分にいっぱいパワーを与えてくれる皆さんに自分が何か返せるとしたら、みんなが応援してくれている自分をちゃんとまず大事にすること」と語る。「皆さんにとって、頑張る毎日に少しでも寄り添える言葉が入ってたら嬉しいなと思います。」と続け「甘っちょろい私が目に染みて」へ。
大人は日々頑張ることに夢中だ。この曲を聴き歌詞をなぞると、自身がボロボロなことに気付かされる。美しく繊細で女性らしいNakamuraの歌声を聴くと涙が出そうになる。それはまるで浄化だ。Nakamuraの叩くグロッケンの澄んだ音色は優しく、オーディエンスはじっとその音色や歌声にそっと耳を傾けた。
続く「痛ぇ」は同事務所の竹原ピストル氏へのリスペクト。30歳過ぎて歌で食べていこうとは思っていなかったNakamuraは、オフィスオーガスタの現マネージャーからの誘いも断り続けていた。だがある日、そのマネージャーに誘われた竹原氏のライヴで衝撃を受け、オフィスオーガスタに所属することを決意。TOMOのバスドラは決して単調なリズムを刻まない。 アグレッシブなNakamuraのフロウやリズムの良さが前提として、多分この曲を最高にクールにしている立役者は彼だと言っても過言ではないだろう。エンディングの潔さも格好良い。熱狂の歓声が湧き上がる。
「新しい曲です。ばけものー!」「痛ぇ」の歓声は、新曲「ばけもの」のイントロで新たな歓声へと変わった。ダークさとアグレッシブさを巧みにミックスしたサウンド。ふと大塚に目をやると、ギターやキーボードまで弾いている。曲によっては中西もキーボードを弾いたり、Nakamura自身もシェーカーやグロッケンの他、タンバリン、鍵盤ハモニカなど色々な楽器を使っていた。そんな音の厚みは、年々Nakamuraの新たな世界を引き出していく。「東京、かかってこいよ!」ライヴだからという物理的意味ではなく、音源より格段にライヴ感が上乗せされた「かかってこいよ」でのNakamuraの骨太な煽りはそれまで聴いたことのないものだった。
「Wah Wah」オーディエンスも歌声を響かせフロアを揺らす。サルサのリズムが特徴的な「女の友情」。再びメンバー紹介しながら「皆さん、楽しんでもらっていますかー?!」力強くそう問うたと思えば「あぁ…嬉しいよぉ…。」と急に弱々しい声になる。Nakamuraのそんな愛らしさは筆者も含むファンに愛されている。男性(女の友情ハムより薄い)、女性(そーでもねーよ 捨てたもんじゃねーよー)に分かれてコールアンドレスポンス。その声の大きさに「やばーい!」と笑顔がこぼしながら“Zepp DiverCityの乱”と名付けて盛り上げた。本編最後は「YAMABIKO」。エッジの効いたカワムラ独特のギターに乗せながら「初めての東京Zepp DiverCityでのワンマン。皆さんこのステージに私を連れてきてくれてありがとうございます!」とお礼を言い、オーディエンスと声を重ね力強く歌った。
あっという間にアンコールを求めるクラップが広がり、Nakamuraとメンバーが再び登場。『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.6』ではリハーサルをせず、Nakamuraが曲のイメージを絵に描き、その絵を見てレコーディングに臨む珍しい挑戦をしている。そしてその絵はポストカードとしてグッズになったが、商品会議で事務所の先輩、秦 基博氏に見られ「トチ狂ってるなぁ…。」と言われたエピソードを明かすと会場は大爆笑。更に「全部の枚数にお手紙つけて秦先輩に送ろうと思っています(笑)。」と後輩の反撃を見せるとまた爆笑。更にこの日、8月29日(木)に、ものんくるとの2マンライヴ「モン・ジャポニスモ vol.1」@渋谷WWWの開催と、QUATTRO MIRAGE presents「TOUR MIRAGE 2019」で安藤裕子氏と東名阪を巡ることを発表。
今こうやって様々なスタッフや関係者に囲まれていることや、お客さんがライヴに来て盛り上がってくれることに対して「慣れちゃいけないなと改めて思わせてもらうツアーです。」と語る。この日はNakamuraの母親も来ていたため、心配かけたが今日の風景を見て応援して良かったと感じているだろうと、少しだけ娘の声になってそう言った。これからも色々な経験をして、自分に対しての歌ばっかりにはなっちゃうと思うんですけど、その言葉が皆さんの頑張る生活の傍にいれるように、相棒のようになれるようにこれからも頑張って参りますので、もし良かったらまた応援しに来てやってください。今日は本当にお忙しい中、お集まり頂きありがとうございました。」と感謝を述べた。
「明日もお仕事の方、沢山いらっしゃると思います。今週も笑顔になれますように!」そう言うと「モチベーション」へ。ファンキーなベースとユニークにコロコロと変える声の表情。パーカッションとドラム、ベースとギターの対決に否応なくフロアのテンションは上がりまくる!クラップが広がる「相棒」は、まるでこのツアーを一緒に成し遂げたバンドメンバーやスタッフ、それぞれの会場に来てくれたオーディエンスの顔を思い浮かべて歌っているように感じた。オーディエンスの歌声が会場を埋め尽くすと、それを見ていたNakamuraが何とフロアへ!小さいNakamuraはあっという間に姿が見えなくなり、コードが届くギリギリのところまでいくとステージへ戻った。「素晴らしい歌声をありがとう!」そう言うと、このツアーに関わった沢山の人たちに感謝を述べ、Nakamuraの清々しい笑顔で【NakamuraEmi NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.6 ~Release Tour 2019~】は幕を閉じた。
Photo by Daisuke Miyashita
Text by:Masami Akiyama(@ps_masayan)
□ セットリスト
M1. Don’t
M2. 大人の言うことを聞け
M3. バカか私は
M4. 雨のように泣いてやれ
M5. おむかい
M6. いつかお母さんになれたら
M7. めしあがれ
M8. 甘っちょろい私が目に染みて
M9. 痛ぇ
M10. ばけもの
M11. かかってこいよ
M12. 女の友情
M13. YAMABIKO
Encore
En1. モチベーション
En2. 相棒
■ NakamuraEmi オフィシャルサイト
http://www.office-augusta.com/nakamuraemi/