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高橋 優、ニューシングル『ありがとう』& ニューアルバム『STARTING OVER』インタビュー

高橋 優、ニューシングル『ありがとう』& ニューアルバム『STARTING OVER』インタビュー

October 23, 2018 18:30

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9月19日に高橋 優のニューシングル『ありがとう』がリリースされ、10月24日、ニューアルバム『STARTING OVER』がリリース。まだ酷暑の8月某日、インタビューは行われた。アルバムの音源が手元に届いたのはこの2日前。だが、まだ全曲ではなかったしMIXも終わっていなかった。つまり仮音源だ。【秋田CARAVAN MUSIC FES 2018】も間近に控えていたこの日の高橋が、筆者の目にはまだ自分の中のクリエイティブと戦っているように思えた。ラフな雑談や冗談めかした会話もなく、口数も少ない。いつもとは高橋を取り巻く空気が確実に違った。だが、映画「パパはわるものチャンピオン」主題歌の“ありがとう”が実に感動を覚えたこと、仮音源だとしてもアルバムから感じられる息吹、それは真実でありいかに高橋が魂を込めたかがわかった。今回はそんなニューシングルとニューアルバムについて想いを聞いてみた。


ー 9月19日に発売された20枚目のシングル『ありがとう』はタイトル曲が、映画「パパはわるものチャンピオン」主題歌ですね。トレーラーを観させて頂きましたが、それだけで映画と音楽がぴったりなのが分かります。映画を観に行きたくなりましたもん。

おー、嬉しい。本当にあの映画は良いですよ。泣けます。お父さんがヒールレスラー「ゴキブリマスク」で、それを知ってしまった息子の戸惑いというか、お父さんは格好良くないといところからストーリーは展開していくんです。僕自身はお父さんになったことないけれど、例えば小さい頃の自分がここに居るとして、今の僕を見た時に理想通りになっているかなとか、思い描いた通りの大人になれているかなという部分に通じるような気がしたんです。映画の中でも棚橋弘至さん演じられている主人公が、自分が今やりたいことをやれているのか息子のリアクションを見て思い悩むシーンがあって、それがすごく共感出来ました。実際自分も子供の頃、父親に向かってそういうこと言ったこともあるし。


ー どういうことで?

うちの親父、民謡を歌っているんだけど一時やめていた時期もあって「もうやめちゃうのかよ」って結構強く言ったりしたんです。今はまたやっているんですけどね。


ー 日本武道館もお父さんが先に出ちゃったしね(笑)。

そうそう(笑)。でも小さい頃や反抗期の頃って何も分からず親に色々言うじゃないですか。ピュアだからこそ残酷なこととか。


ー ええ。

そういう部分を含めて共感出来ることが多かったので、そこから言葉を紡いだんです。でもかなり難産でした。全然歌詞が出てこなくて、朝までファストフード店の隅っこでずっと歌詞を書いていたり。


ー ファストフードで?!

そうそう(笑)。


ー 歌詞がなかなか出来なかったというのは、どういうことを曲のメインに持ってくるかが見えなかったということ?

書きたいことはあったんだけど、それをひとつの曲の中にまとめるのがすごく大変だったんです。最初何回かフルコーラスで書いたんだけど、自分でも言いたいことが多くなりすぎちゃってまとまらなかったり。でもブラッシュアップしていく中で、1曲の中で届けられることってそんなに大それたことじゃない方が良いと思い始めて、今回はすごく素朴なテーマに落とし込んでいきました。「ありがとう」という言葉も歌詞を書いている後半で自然にでてきましたし、その分歌詞とメロディラインで届けられる楽曲が出来たかなと思っています。そういう時はあんまりバンドサウンドで変わったことをすると、そっちに耳がいっちゃうから、自分の歌詞が浮き出てくるような曲にしたかったんです。だからサウンドは池窪(浩一)くんに結構任せました。ちょっと角が立つようなギターが聴こえてきたら逆に落としてもらって歌が聴こえるようなアレンジにしてもらったり。


ー 優くんの曲はいつも歌詞が耳に届きやすいと感じているけれど、今回はそのメッセージが更にはっきりしていました。だから映画を見ていない今でさえ、この曲が流れたら泣いてしまいそうという予感がします。

今回はエンドロールでこの曲が流れることを意識したんです。その作業は難しいんだけど楽しかったですね。映画のメッセージを主題歌でみなまで言ってしまうのは良くないと思うし、でもだからって映画が言わんとしていることと全然関係ないことを歌っているエンディングも冷めちゃうっていうか。それこそ最後まで曲を聴かなくても良いなっていう気持ちになってエンドロールの途中で劇場を後にしかねないので、作品として一緒にうまく化学変化が起こるような楽曲を作ろう……って、ちょっとおこがまし考えにも思えるけど、でもそれが楽しくて。それと今回はありがたいことに先にラフ映像を観させて頂いたのでメロディのイメージは作りやすかったです。でもラフの段階なのに結構泣いちゃいました(笑)。


ー いやでも、そうなるよね。

ピークの時は大人気のプロレスラーだったけど、時間が経ってヒールレスラーしか出来なくなっているみたいな人でも、応援してくれる人や過去を知っている人はいるから、決して一人ではない感じがしていて。それが息子さんや奥さんの存在なんですが、やっぱり少なからずこういう仕事をやらせてもらっていると、ストーリーの描写に共感する部分がありますね。本当に良い映画だったので是非観てください。


ー 是非観に行きます。ジャケットは映画原作の絵本イラストを手がけた吉田尚令さんが担当。期間生産限定盤は優くんゆかりの地「溝の口」を描いたのに、気づいてもらえなかったようで。

わざわざ「NOCTY」を描いてくれたのにね。スタッフは大いに反省して欲しいですよ(笑)。でもあの絵、良いですよね。僕は吉田さんの絵が元々好きだったので嬉しいです。案外僕、アートワークに対して細かく言う方で。


ー あ、そうなんだ。

ミュージックビデオ然り、ジャケット然り。「これは何を意図しているのかよく分からない」とか、結構言っちゃう時もあって(笑)。でも今回は原画を見せてもらった時から「これ、いいね!」ってすぐに思えたんですよ。曲調と映画の雰囲気のどちらにもマッチしすぎているくらいマッチしていて。だから何も心配していませんでした。それに裏を見たら映画を思わせる家族の人たちの絵もあって。だからスタッフもそこに満足して溝の口であることを見逃していたんでしょうね(笑)。


ー なるほど(笑)。c/wの“高野豆腐~どこか遠くへ~”はまた疑問符を投げかけるタイトルで(笑)。

そうですね(笑)。


ー 何もかも放り投げてどこかへ行きたいっていう想いや切ない現状、サウンドはすごく格好良いのに、タイトルと最後に出てくる「高野豆腐」というワードがとても気になって。

最初はタイトルのことは考えていなかったんです。東京に来て僕自身、実際10年経つんですが、この曲を書いた頃ってアルバム『STARTING OVER』のアートワークの撮影のときと重なっていて、スタッフの中でも「<東京に来て10年>が感じられる写真を撮りたいね!」という話になっていて。それで、東京に来て10年、何か変わったことあったかなというところから曲を書き始めたんです。わりと夜遅かったりすると、どこか飯食いに行くわけでもなく、スーパーに寄って帰ることも結構多くて…と考えながら書いてたら、自然と歌詞がこうなっていって(笑)。


ー そうなんだ(笑)。それと歌詞にもあるように、頑張ってお酒飲みにいこうって誘ったのに「なんでですか」とか言われたら、かなり凍りつくね。

でしょ(笑)。その後に「麗しき平成でした」と続けましたが、平成ってどういう時代だったろうって振り返っている自分もいて、多分「飲みに行こうぜ」っていう言葉が定着して<とりあえずビール>みたいな雰囲気も平成最初の方にあるパリピ感というか、バブルの残り感みたいだった気がしていて。でもその平成も終わりに近づいている今のタイミングで「飲みに行こうぜ」という言葉がどんどん廃れていると思うんです。お酒飲めない人も増えてきたし、コミュニケーションを「飲みニケーション」なんて言ってたじゃないですか。

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