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長澤知之「Nagasawa Tomoyuki Acoustic Live 2018」ライヴレポート

長澤知之「Nagasawa Tomoyuki Acoustic Live 2018」ライヴレポート

June 4, 2018 19:30

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今年の3月はALとしてのツアー、その後は2マンや3マン、「つばきPresents 正夢になったフェス2018」など勢力的にライヴイベント出演を重ねた長澤知之。それらのステージ熱が冷めきっていなかったせいだろうか。スペシャルゲストに松江潤を迎え、大阪と京都をまわり、5月31日(木)東京・南青山マンダラにてファイナルを迎えた【Nagasawa Tomoyuki Acoustic Live 2018】のステージは実に熱かった。

「何飲んでます?オレンジジュース?…テキーラでも良いですよ(笑)。」軽く会場を和ませると“左巻きのゼンマイ”からライヴはスタート。松江とのハーモニーは心地良く、しょっぱなから長澤の表情は楽しそうに見えた。“そのキスひとつで”のイントロは踊るように軽やかで、サビの突き抜ける歌声は決意のような強ささえ感じる。

「途中までギターを持つのを忘れてました。(長澤)」「サボったなと思って。いつまで弾かないつもりなのかなと。(松江)」 “そのキスひとつで”が終わり、一旦ギターを置いた長澤は“赤い薔薇”でエッグシェーカーを振りながら歌っていると、途中から再びギターを弾き始めた。てっきりそういう演出なのかと思ったくらい自然だった。多分オーディエンスもそう思っていただろう。長澤の発言に、皆少し驚いた顔をした後、笑顔になった。念入りなチューニングが終わると長澤はTシャツの袖を捲り上げる。ピュアでありながらアンニュイな“バニラ”のメロディは、松江の浮遊するようなギターの音色を纏うことで、 ため息が出る程美しく響く。カポタストを付け、曲が“静かな生活”へ変わってもその美しさは変わらない。松江の非現実的で波打つような音色を長澤のアコギが掻い潜り、歌詞は恋人の気取らない些細な日常を切り取る。未発表曲の“笑う”だ。最近ライヴで演っているらしいが、実は筆者も初めて耳にする。長澤がよく歌詞にする哲学的世界ではないが、シンプルなこの曲を秒速で気に入った。“ずっとプロポーズ”では表情豊かな歌声を聴かせてくれ、松江のゆったりと響くラップ・スティールはこの曲のストーリーに色彩を与えた。

「今日はMCをせずに飛ばしますね。」松江の言葉に「何か話して頂けませんか。」と長澤。すがるような声に思わず松江も「何だ、その展開!」とツッコむが、長澤がよく履いているニューバランスの話で会場も楽しげに笑った。

“蜘蛛の糸”の後半、長澤はすっかり汗をかき頬を紅潮させながら力強く歌う。それなのになぜか心は穏やかになる。気になりオーディエンスに目をやると、皆同じように穏やかな表情で長澤の歌を聴いていた。

今回のアコースティックライヴで先に公演した大阪、京都では散歩をしたりおばんざいを食べたりと、その土地々々で楽しく過ごしたいう長澤。「面白いのはさ…(笑)」本当に面白かったのだろう。笑いながらふと思い出したように、以前ファンから酒好きの長澤を気遣う手紙を添えたテキーラのプレゼントがあった話を始めた。酔わせたいのか休肝させたいのか分からないファンの想いが嬉しかったのか、笑いながらも小さい声で「良い仲間です。」と呟いた。松江がMCでどこまで喋ってよいか分からないというと、「僕も分かんないっすよ!」と本音がこぼれた長澤。決して饒舌にMCを熟すミュージシャンでないのは、ファンが一番知っている。そして皆はそんな長澤と、長澤の音楽を愛している。この時会場から起こった笑いにはそんな愛情が感じられた。

公園遊具の目線で書かれた“長い長い五時の公園”。松江のトレモロは、歌詞と共に幼少期に感じた懐かしい夕暮れのグラデーションや風の匂いを思い起こさせる。

20180531MANDALA0426.jpg長澤の声の存在感を最大限強調した “P.S.S.O.S.”は2コーラス前であの特徴的なギターリフが入った。詰まるような掠れた声からファルセット、伸びやかに響く中低音、シャウトと、実に表情豊かだ。“無題”と“アーティスト”は長澤自身にも新たな気付きを生んだ曲ではないだろうか。気がつけば、歌に没頭する長澤の姿に誰しもが引き込まれており、真剣な眼差しをステージに傾向け、聴き入っていたオーディエンスは我に返ったように大きな拍手を注いだ。まるで最後みたいな挨拶をした長澤にまたも松江からツッコミが入ると会場も笑い出すが、そのやりとり全部の空気感が柔らかく、少し笑った長澤が改めて「“ベテルギウス”という曲を聴いてください。」と言うと、恥じらいながらも歓声を上げるオーディエンスの姿が見えた。本編最後の“茜ヶ空”、長澤は立ち上がり一緒に歌うオーディエンスへマイクを向ける。一体となった空気はオーディエンスも長澤も松江も笑顔にした。

アンコール、一人で登場した長澤は何枚かの譜面を手に、どの曲を演ろうか少し考えた後、“風を待つカーテン”を歌いだした。ザッザッとミュートしたギターの音が印象的に耳に残る。「今日イチ盛大な拍手でお迎えください。」大きな拍手を受け松江も再び登場。

20180531MAIN.jpgデビュー曲“僕らの輝き”に続き“狼青年”でアンコールを終えた。しかし彼らが退場しても、客電がついても、SEが流れてもWアンコールを求める拍手は鳴り止まなかった。スタッフの慌ただしい動きが目の端に映る。本当にかなり長い時間だったと思う。それでも止むことない拍手を受け、三度長澤は登場した。

「ありがとうございます…。」

アンコールの最後、マイクを持って立ち上がった時にコードも抜けていた為、何もないスタンドで挨拶してしまった長澤は少し照れたように笑い、セッティングをし直すと改めて挨拶し“三月の空”を歌う。この日のライヴで長澤は歌いながらよく小さな微笑みを浮かべていた。この曲でもそうだった。数年前、ライヴをするのが怖かった時期もあるようだが、多分この日出た笑顔たちは楽しさから来るものだろう。老婆心ながらそうであればと願う。

「簡単なコードなんだけど、ちょっと忘れちゃったので良かったら皆さん、弾いてくださいとは言わないけど(笑)、歌ってください。“ブライト”という曲です。」

長澤が福耳へ提供した曲のセルフカバーをオーディエンスと一緒に歌う。ステージを指さし、「今 ここにいて」と想いを込め歌う。会場のコールアンドレスポンスを楽しむように繰り返しながら。なんとかけがえなのない時間だろう。割れんばかりの大きな拍手で【Nagasawa Tomoyuki Acoustic Live 2018】の幕は降りた。

Photo:岩佐篤樹
Text:秋山雅美(@ps_masayan



■「Nagasawa Tomoyuki Acoustic Live 2018」@ 南青山MANDALA
セットリスト

M1. 左巻きのゼンマイ
M2. スリーフィンガー
M3. そのキスひとつで
M4. もう赤い薔薇
M5. はぐれ雲 けもの道 ひとり旅
M6. バニラ
M7. 静かな生活
M8. 笑う(未発表曲)
M9. ずっとプロポーズ
M10. スーパーマーケット・ブルース
M11. 蜘蛛の糸
M12. カスミソウ
M13. 長い長い五時の公園
M14. P.S.S.O.S.
M15. 無題
M16. アーティスト
M17. ベテルギウス
M18. 幸せへの片思い
M19. 茜ヶ空

アンコール
M1. 風を待つカーテン
M2. 僕らの輝き
M3. 狼青年

ダブルアンコール
M1. 三月の空(未発表曲)
M2. ブライト(福耳提供曲:カバー)


■ 長澤知之 オフィシャルサイト
http://www.office-augusta.com/nagasawa/

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