ー 勿論、個人個人受け取り方は違うと思うんですが、「ここの入りが最高に気持ちいい!」とか、その逆とか感じることは多いです。
そうですよね。例えば同じ音でディレイをかけたとします。それは同じ音で鳴っているんだけど、AメロとBメロ、サビで同じものが鳴っていても全然聴こえ方が違うんです。サビになれば勿論音量も上がっている分、残留していくディレイの音が聴こえづらいので、後ろがもっと上がってほしいとか。そういうレベルとかもどんどん変えていきます。
ー 例えばサビで歌詞が変わる時、言葉が違えば発音も変わるので、それによって音の調整をしたりもするんですか?
しますね。母音子音によって抜けの良い言葉とかもありますし、逆にちょっと聴こえづらい部分もあるので、そこは何度も聴きながら調整していきます。それはヴォーカルだけでなくエレキギターも同じで、印象的なフレーズやギターソロで少しボリュームを上げたり、静かな部分では音も下げたりとボリューム自体も変えていきますし、エフェクティブで小さくなった時にリバーブ感が強すぎちゃっている場合は、その調整もしますし。
ー これはボリュームではないんですが、長澤くんの”死神コール”(『JUNKLIFE』収録)ではテンポもすごく細かく変わっていますよね。
変わりますね。
ー それも本当に細かいことなのかもしれませんが、そういうことで物語性や世界観の変化を感じられます。
ああやってテンポが切り替わっていく時に音を変えていくのは結構苦労します。あの曲もドラムセットがパターンごとに違うので、同じような音圧で調整して録っていくのは、結構時間がかかりました。
ー アーティストの方へのインタビューの際、サウンドの部分で色々と気になることはあるんですが、こうやってお話を伺うと楽曲の力だけでなく、エンジニアの方の力が大きいということが分かりました。
良かったです。
ー ありがとうございました!
こちらこそありがとうございました。
取材・文・写真/秋山昌未
□ 【コラム】オフィス オーガスタ特集 最終章 佐藤洋介篇 前編:エンジニアとは。
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佐藤洋介 プロフィール
岡本定義とのユニット、COILとして1998年「天才ヴァガボンド」デビュー。エンジニアとしてサウンド面の中核を担い、COILのみならず外部アー ティストからもそのサウンドメインキングのクオリティは高く評価されてきた。また、ソロユニットPropo名義で2002年にはアルバムをリリース。 2005年にRCサクセションのライブ盤「ラプソディーネイキッド」のミックスではその臨場感溢れる音作りで高い評価を得る。2006年はCOILとして 初めて映画『初恋』(主演:宮﨑あおい)のサウンドトラックを担当。元ちとせ、杏子、福耳、長澤知之、竹原ピストル他への楽曲提供やエンジニアリング、プ ロデュースも手がける。2013年COILはデビュー15周年を迎え、ニューアルバム「15」をリリース。2014年4月にCOILを脱退。脱退後は幅広 い視点からサウンドプロデュースができるエンジニアとして、活動の場を広げている。
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