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長澤知之「Nagasawa Tomoyuki Acoustic Live」ライヴレポート

長澤知之「Nagasawa Tomoyuki Acoustic Live」ライヴレポート

July 22, 2016 19:00

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まだ梅雨は明けていないが、蝉の声が聞こえ始めていた東京の夏の夕暮れ。今年は「AL」としての活動がメインだった長澤知之が、「長澤知之」名義でアコースティックライヴを行うのは約2年ぶり。2014年、この青山・月見ル君想フにて半年間マンスリー開催していた自主企画ライブ【長澤知之LIVE“IN MY ROOM”】は、長澤の部屋に遊びに来たような演出が普段のライヴとも違い、人気が高かった。
この日7月16日(土)、【Nagasawa Tomoyuki Acoustic Live 2016】と銘打ったライヴはどんな「長澤知之」を見せてくれるのだろう。この日を待ちこがれていたのファンは多く、チケットはSOLDOUT。

フラッと入ってくるスタイルは2年前と同じ。
「こんにちは。」簡単に挨拶すると“けやき並木道”でライヴはスタート。続く“GOODBYE, HELLO”、イントロで何か考えているような表情は冷静にも見えるが、感情を吐き出すシャウトは懐かしかった。

「久しぶりにワンマンライヴをやっております。」ライヴ前は緊張し、ライヴ後は虚脱感に襲われると言う長澤は、ライヴ中が一番リラックスしていると笑い、オーディエンスを和ませた。
長澤のファンはきっと色々な面を持つ彼のことが好きだし、許せるし、笑い合えるのだと思う。(補足すれば、筆者同じく)「人生は芸術だという歌を歌いたいと思います。」そういうと、新曲の“アーティスト”を披露。伸び上がる歌声はどこか清々しい。続く“バニラ”でふとフロアに目を落とすと、真剣な表情で長澤のリズムを体内に取り込もうとする若いオーディエンスの姿があった。それは音楽が神聖なものだと感じさせてくれるほんの数分感の出来事。

“マンドラゴラの花”の説得力は凄い。うなずく人、涙する人、まばたきを忘れて聴き入る人、それらをThe Beatlesの“A Day In The Life”が如き狂気を秘めたアウトロで包み込む。

B030637.jpg更にALからは“あのウミネコ”も披露。
「今、携帯が止まっていて。」どうやらこの梅雨らしい雨に携帯を水没させてしまった長澤。これを機に、ガラケーからスマートフォンに変えようかとも考えたらしいが、益子樹氏(ROVO、DUB SQUAD)と、ずっとガラケーの方が良いと話をしていた手前、迷っているなんて話を淡々とするものだから、フロアからは笑いも起きる。穏やかなムードだ。

“24時のランドリー”の拍手を巻き込むように“スリーフィンガー”へ。長澤のギターは軽快なリズムを刻み、歌声も心地よい。MC中、譜面台で長澤の顔が見えないと前列のオーディエンスが言えば、躊躇なく譜面台を移動。しかし今度は移動した先のオーディエンスから見えないと言われ、譜面台をどこに置くか悩みながら「絶世のハンサムやったらいいけど。」と笑う。(結局、譜面台の位置を低くすることで解決)

今回は「IN MY ROOM」とは違うも、やはり好きなようにリラックスして欲しいと言う。去年の夏、骨髄炎を発症した長澤は故郷福岡で治療に専念していた。その時、病院内に展示してある彫刻「神の手」( カール・ミレス作)に刺激を受けたと語る。
「考え方とか自分の中でこっそり変わっていました。音楽以外のものでも影響を受けるのって、すごい楽しいと思いました。ひとつに凝り固まらずに色々なものを知れたら良いですね。」
そこから生まれた“無題”の歌詞は、自分を罵るわけでも冷笑するわけでもなく、ただ「許して」いるような気がした。優しく、強い歌。きっとこの後も長澤がこの曲を歌い続ける限り、オーディエンスへ愛されるだろう。そこからギターの旋律は“風鈴の音色”へ。それぞれに持っている心象風景に浸るように、オーディエンスは耳を傾けた。

B030734.jpg世の中で起こる色々な暗いニュースや不安なニュース。しかし「あまり暗く、深く考えないように、自分は自分でありつつ、あまり周りに流されず…ピースという感じでやっていければ良いと思います。」自分の着ている紫色のTシャツに書かれた「PEACE」の文字を広げて見せながら小さな笑顔を浮かべる。

ライヴも後半。普段からそうだが、この日の長澤のステージには特に予定調和や華美な演出がなく、「音楽」だけが存在していた。それは却って心地良く、“回送”の途中で切れてしまった三弦も構わず響かせる力強い歌声には美しささえ感じた。
「今日はありがとうございました。最後に一曲。」そう言うと「結構めちゃくちゃ落ち込んだりする人もいるんじゃないですか?僕のライヴに来ているくらいだから(笑)。」そんな言葉に会場は思わず笑い出す。長澤は自分も落ち込んだりすると言いながら「そういうのが良くなるといいなという願いを込めて。」と、本編最後を“ねえ、アリス”で締めくくった。

「アンコールありがとうございます。」そう言うと、両手いっぱいに譜面を持ったまま、どの曲を演ろうか考えていた。少しして「カヴァーを。」と言いながら弾き出したのは The Beatlesの“Blackbird”。いきなり個人ごとになるが、筆者が世界一好きな曲を、久しぶりの長澤のステージで聴くことが出来たのは、一瞬呼吸が止まるくらいに嬉しかった。長澤らしい手癖のアレンジは、彼がThe Beatlesに影響を受けたことが分かる。黒人解放運動について書かれた歌詞が素敵だと言いながら「最後に一曲。」と、やはり歌詞が素敵な“カスミソウ”で【Nagasawa Tomoyuki Acoustic Live 2016】東京公演の幕は閉じた。

8月5日(金)、6日(土)には福岡・Live & 喫茶 照和にて【Nagasawa Tomoyuki Acoustic Live 2016】福岡公演も開催される。


photo:杉田 真
text:秋山昌未

<セットリスト>
01.けやき並木道
02.GOODBYE, HELLO
03.どうせ陽炎
04.アーティスト(新曲)
05.バニラ
06.黄金の在処
07.マンドラゴラの花
08.あのウミネコ(AL)
09.24時のランドリー
10.スリーフィンガー
11.いつものところで待ってるわ
12.あんまり素敵じゃない世界
13.無題(新曲)
14.風鈴の音色
15.回送
16.狼青年
17.ねえ、アリス

Encore
En1.Blackbird(The Beatles カヴァー)
En2.カスミソウ

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