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サカグチアミ、「自分の恋愛傾向がすごく表れていて、リリースするまで正直かなり照れくさかったです(「絆創膏」エピソードより)EP『Hush』インタビュー

サカグチアミ、「自分の恋愛傾向がすごく表れていて、リリースするまで正直かなり照れくさかったです(「絆創膏」エピソードより)EP『Hush』インタビュー

April 15, 2026 18:00

サカグチアミ

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ー この曲はいつ頃作りましたか?

かなり最近です。まだEPとしてのタイトルも決まっていなくて、最初は『秘密』という仮タイトルをつけていたんです。そこに収録するM1、M3、M4が決まっていたんですが、秘密をテーマにした曲を是非リード曲にしたいと思って。実は既にそれっぽい曲は上がってたんですが、「ちょっとここからもう1曲、私書いてみます」って言って、最後の最後に作ったのが「Hush」でした。だから本当にめっちゃ最近です。


ー もうお名前がカタカナ表記になってから?

そうです。そう考えると今作の中で唯一カタカナ表記になってから作った曲ですね。『秘密』というタイトルにしたかったのは、ラブソングのEPであることをオブラートに包んで伝えたくて出したキーワードだったんですが、Hushって“静かに”という意味なのでそこで代弁できてるし、「秘密」はもしかしたらこれからどこかでまた使えるかもしれないからっていうので『Hush』にしました。


ー サカグチさんの公式YouTubeの、ファンの方々からの質問に答える回で「改名したことで曲の雰囲気は大きく変わりますか?」という質問がありましたが、「自分から生み出されるものはずっと変わらず 切り取り方やどういう部分を押していくかなど、パッケージの変化はある」ということをおっしゃっていましたが、この「Hush」は?

名前がカタカナ表記になって、ライブも弾き語りから同世代のバンドメンバーとがっつり演っていくスタイルへとシフトしました。曲の内容はもしかしたら今までの延長かもしれませんが、ライブで欲しいのは、やはりバンドサウンドを基調とした曲だなと思って「Hush」も書きました。逆にあまり弾き語りのイメージが思い浮かばないっていうのは、自分的には結構違う部分だと思っています。


ー 確かにこの曲はバンドで活きる曲かもしれませんね。

そうなんです。そういうのは結構大きな違いかもしれないですね。


ー 名前の流れで気になったのは、アーティスト名としてはカタカナ表記になりましたが、作詞作曲のクレジットは(漢字の)「坂口有望」なんですね。

カタカナに変えたきっかけのひとつとして、“サカグチアミ”は“坂口有望”のソロプロジェクトという意図も実は込められています。これからもバンドサウンドが多くなると思うんですが、みんなで“サカグチアミ”というソロプロジェクトを支えるイメージだったので。歌ってる人間は“サカグチアミ”だけど、そこを構成してるのは“坂口有望”という風に使い分けたくて、漢字のままにしてますね。


ー サカグチさんの歌詞を見ていると、言葉のチョイスに遊び心を感じるし、響きを大切にしているようにも感じます。

昔から言葉自体がすごく好きな子供だったので、そもそも自分が何も考えずに書いても、私節だねって言ってもらうことがあって。”オブラートに包む”という表現を生み出した人って、こんなに世の中に浸透するとは思っていなかったんじゃないかと思うんです。私はみんながしっくりきすぎて、もはやそういう慣用句として通用するくらいの言い回し、表現を作りたい思いがあるので、自分だけの切り口で世に溢れてるそういう表現を変えたい気持ちは昔からありますね。


ー アーティストだから当たり前ではなく、本当に言葉が好きなんですね。

そうだと思います。


ー 言葉同様、時折出てくる数字も気になります。例えば前作の「名前」では“9000回目のmoonlight”という歌詞があったり、「3341」には“さみしい”という想いが込められていたり。今作でもそれぞれの曲で数字が出てきて。例えば「サニーサンデー」は3、「Hush」は50、「絆創膏」は7、「長さ」は2……

(紙資料をめくりながら)あれ、そうか……恥ずかしい。ホンマや、出てきますね(笑)それもただリアルにしたくて入れているんじゃないかな。


ー 数字ってリアルになりますよね。

みんなが持っている物差しですからね。でも意識はしていなかったと思うんですが、次回から意識的に入れちゃうかも(笑)。


ー 「絆創膏」ですが、この曲の初収録にファンの方も楽しみにしていたようですね。

ライブでも結構歌ってきた曲なので、みんなが喜んでくれていたのが嬉しいですね。2021年に作った曲なんですが、絆創膏って絆を創るって書くじゃないですか。


ー ええ。

これまで、絆創膏をもらうとその人を好きになってしまうことが多くて(笑)、男女問わず、傷ついている時にかけてもらう労わりの言葉や行動が小さい頃からすごく嬉しかったんです。それは褒められるよりも嬉しいくらいで。そのせいか恋愛でも「どうしたらこの人に好かれるだろう」と考えて、とにかく相手を労うタイプで、これまでずっとそんな恋愛をしてきました。だから「絆創膏」も、好きだからこそ相手を気遣い続けて、気づけばそれが最後になってしまう……そんな自分の恋愛傾向がすごく表れていて、リリースするまで正直かなり照れくさかったです(笑)。


ー なるほど。そう考えると「サニーサンデー」のAメロに出てくる我慢している気持ちや、傷というワードなど、相手を労うからこそなんだとすべてが結びつきますね。

ね!恥ずかしいわぁ〜、もう(笑)。歌詞見られたくないーーー!みんなにバレる!


ー アハハ!でも、“イヤホンもコップも私も 君の置いていったものだった”は、号泣でした。

ライブに見に来てくれた人も、その部分の歌詞を取り上げてくれることが多くて。自分としては上手く書けた表現とは思っておらず、本当に自然とそうやって思ったから書いたことだったので、みんながその部分を取り上げてくれることが結構興味深かったですね。みんなもそう思うんだなって。


ー 先ほど「自分の恋愛傾向が表れてる」と言われていましたが、歌詞はご自身、もしくは友人知人の経験、創造、どれが一番多いですか?

ライフソングや普遍的な歌詞は友達に聞いた話から作れたりするんですが、ラブソングに限っては絶対に自分の経験した欠片がないと書けないですね。先ほどラブソングを書くの苦手という話になりましたが、他のアーティストの方も失恋や好きという想いなど、同じテーマを自分だけのフィルターで書いてるわけじゃないですか。そのフィルターがやっぱり偽物だと自分は言葉を繋げないので、全部ではありませんが実体験が元になっています。そういう欠片がないとラブソングは書けないので、そういう照れくささもあるんですよね。あまりラブソング推しのシンガーソングライターではないし。

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ー では今回振り切って、サカグチアミが全く入っている感じですね。

そうですね。恥ずかしいです。だから私のことを攻略したい男性がいたら今回のEPが参考資料になっちゃっていますね(笑)。


ー 参考資料って面白いですね(笑)。今作最後の曲「長さ」も切ないですね。価値観や思い違いで生じるズレって、うまく行っている恋人同士でさえあることですし。

この曲は「絆創膏」を書き終えた後に出来たので、やはり結構前に書いた曲なんですが、一つの恋愛を終えて、なんで人って恋愛するんだろうと考えた時に、自分が好きでいる間って「好きになりました」とか「好きではなくなりました」と思うことは決してコインをひっくり返すように同じタイミングで感じることではないのに、なんでこの人と同じだけ同じように愛せると勘違いしちゃうんだろうって思って……。それを私自身忘れないでおこうと思って、自分に言い聞かせるつもりでも書いた曲ですね。


ー 何か誰しもが陥りやすい勘違いというか思い込みですよね。

ね!「長さ」というタイトルは自分の中では珍しいんですが、そこがテーマなのですごくしっくりきていて。あ、この曲はあえて数字は使っていますね。2万Kmとか2mmとか。例えばそれを、“君が地球の裏側に行っても”と表現していたらあまり想像はつかないけど、“例えば2万Km離れても”と言われたらめっちゃ遠いんだっていうことが絶対伝わると思ったので。


ー 確かに。先程「絆創膏」のアレンジで野村さんが、エモーショナルさは「長さ」で表現出来ているというお話がありましたが、サウンドについて教えてください。

この曲は、バンドサウンドをエモーショナルな方向性で固めて作って欲しいとお願いしました。単調ではなく膨らんだり凹んだりを繰り返す曲なので、今のアレンジに決まった後でドラマーの方や陽さんにも「海を感じてほしいです」というニュアンスのことを伝えました。すごく大きな景色を想像しながらこのバンドサウンドを作ると、自分の歌も大きな膨らみを持って生きるような気がしたんです。


ー 確かに頭サビなどはアコースティックで歌声も囁くわけではないですが、すごく生々しく感じて、その後のエレキギターの歪みやバスドラの響きなどのエモーショナルさが際立ち、曲としての層の厚みを感じます。

先に歌以外のオケが仕上がっていて、それがとても良かったんです!だから最初は、歌い上げるイメージで録ろうと思っていたのですが、陽さんから「きちんと拍に合わせて歌った方が、うねっているリズムに対して言葉がしっかり入ってくる」とアドバイスをいただいて。この曲はライブでも演っていたんですが、その引き出しが自分にはなかったので、かなり苦戦しました。手でリズムを取りながら、拍を意識して歌っていましたね。ライブではエモーショナルな歌い方がパワフルに見えるんですが、音源になるとリズムと言葉が一緒に流れてしまう印象があって。だから今回は、拍を守る歌い方を意識しました。


ー ドラムの音もサカグチさんの声にすごく合っている気がして気になっていました。

良いですよね!「Hush」と「長さ」が、よっちさん(河村吉宏)で、「サニーサンデー」と「絆創膏」が堀正輝さんでなんですが、お二人とも陽さんと仲良しだったので、今回お願いしました。


ー 5月からツアー【Mitsuke I tour】もスタート。1月のduo MUSIC EXCHANGEでこのツアーについても話されていましたが、早いですね!

もう来月ですよ!カタカナの“サカグチアミ”になってからのワンマンがまだ東京で一回しか出来てないので、全国に私が新体制になりましたとお披露目するツアーにはなると思います。その上で【Mitsuke I tour】というタイトルの「I」の中には色々な意味を込めました。ラブソングの愛(LOVE)でもあるし、見つけ“合い”という意味のもありますし、自分を表現する「I」もあり、私らしさを見つけるみたいな意味もあり。それに今回久々のバンドツアーなので、もちろん“サカグチアミ”ってこうですよってみんなに打ち出しに行くんですが、その中できっと私自身もう一度「私らしさって何だろう?」という気持ちを探りながら、これからの制作にも繋げていくんだろうと思っています。なのでツアー自体の演目は、ライフソングとラブソングを対として両方楽しんでくれたら嬉しいですし、バンドメンバーとも今回初めてツアーを回るので自分のバンドリーダーっぽさというか、引っ張っていくぞみたいな姿も改めて全国のみんなにお届けできるんじゃないかなと思ってます。


ー ありがとうございました!


Interview&Photo:秋山雅美(@ps_masayan


■ サカグチアミ オフィシャルサイト
https://www.sakaguchiami.com/

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