堂珍嘉邦インタビュー!表現者としての想いと、向き合うことで見えてくる真実。
November 15, 2023 17:00
堂珍嘉邦
堂珍嘉邦が、グレブ役として出演したミュージカル『アナスタシア』も無事大千穐楽を迎え、自身の誕生日付近に開催している “Now What Can I see ? ~Drunk Garden~”が今年も11月18日(土)・19日(日)、東京・日本橋三井ホールにて開催される。更に昨年開催された『堂珍嘉邦 LIVE 2022 “Now What Can I see ? ~Drunk Garden~』は、2枚組CD+ブルーレイ盤として11月17日(金)にリリース。この“Now What Can I see ? ~Drunk Garden~”は2020年からコロナ禍を無観客配信で実施していた。しかしCHEMISTRYデビュー20周年の一連の活動が終わり、ソロデビュー10周年を迎えた昨年に初の有観客となった。ポップシーンでは前回、ミュージカル『アナスタシア』を通じて俳優としての、堂珍嘉邦にスポットを当てたが、今回は昨年の “Now What Can I see ? ~Drunk Garden~”を通じて、アーティストとしての堂珍嘉邦にスポットを当ててみた。
ー 昨年開催された『堂珍嘉邦 LIVE 2022 “Now What Can I see ? ~Drunk Garden~』(以下:『Now What Can I see ? ~Drunk Garden~』)は同名ライブとしては三回目でしたが、初の有観客。声出しはOKでしたっけ?
残念ながら声出しはまだ出来なかったんですよ。
ー そうでしたか。無観客配信とはいえ、アーティストやその音楽と繋がれるのはありがたいですが、目の前にオーディエンスの姿があることは、やはり嬉しいですよね。
そうなんですよね。ファンのみんなが目の前で元気な姿を見せてくれたのはやっぱり嬉しかったです。特に昨年はソロ活動をさせていただく中でアルバムもリリースし、試行錯誤や実験を重ねブラッシュアップしてきた10年目だったので、ひとつの節目として実際に観てもらえることも嬉しかったし、僕自身とても楽しかったです。
Photo by 柴田恵理(@shiva_eri)
ー このライブで大切にした点を教えてください。
僕自身の歌の表現や音楽の方向性など、あらゆる面から必要なものを取り入れ、逆にちょっと今はお口に合わないかなと思うものは削ぎ落とす。カバーも、自分の気持ちが乗せやすい曲を選びました。そういう点を大切した10年分の最新版をお届けしたライブとなりました。
ー ずっとカバーされている「LILAC WINE」は『愛の待ちぼうけ/My Angel』(2021年4月7日発売)のc/wとしても収録されましたね。ファンの方はご存知だと思いますが、改めて堂珍さんにとってのこの曲の魅力というか、カバーし続ける理由を教えていただけますか?
元々、ジェフ・バックリィのカバーがこの曲との出会いだったんです。
ー ニーナ・シモンが歌っているのは知っていましたが。
そう、ニーナ・シモンが60年代に収録した劇中歌らしいんですよ。
ー 劇中歌ということは知らなかったです!
自分が好きなアーティストや憧れているアーティストがカバーしている曲って、自分も好きになるんですよね。やっぱり好みがあるから。
ー その感覚はわかります。それに「LILAC WINE」って魅力的な曲ですよね。
お酒を飲んで時が止まっている、あの朗々とした感じでとても美しくロマンチックで……。でもハッピーなロマンチシズムではなく、大人ならではのほろ苦いロマンチシズム。僕はその質感がすごく好きなんですよ。
ー 2020年の『Now What Can I see ? ~Drunk Garden~』でこの曲をカバーしたバージョンは、ニーナ・シモンの世界観のようなというか、まさに古い酒場の匂いがしそうな憂いを感じましたが、昨年はジェフ・バックリィへのリスペクトを感じました。
ありがとうございます。ただ歌い手としては未だに難しいんですよ、あの曲って。声の伸びも必要だし、勿論表現する気持ちも必要だし。
ー でもすでに堂珍さんの血肉になっていて、まるでオリジナルのように感じていました。良い意味でカバー感がないというか。
いやぁ、そう言ってもらえると嬉しいです。
ー 勿論アレンジや演奏にもよっても違うと思うのですが。
そうなんです!曲って演奏者によって本当に変わるんです。2020年と2022年の『Now What Can I see ? ~Drunk Garden~』ではバンドメンバーが違うので、受ける印象の違いは、アレンジだけでなくそういうところにもあると思います。それと2020年の時はすごい台数のカメラに撮られながら歌ったのに対して、昨年はお客さんを前にして1音目を鳴らす緊張感。その差もあるかもしれません。
ー 歌う環境の差ということですね。
ええ。でも何にせよこの曲が好きであり大切なことは変わりませんし、自分が何歳まで歌えるかは分からないですが、僕なりの「LILAC WINE」の完成形を追い求めてずっと歌っていく気がします。
ー 昨年の『Now What Can I see ? ~Drunk Garden~』では、定番となっているフィッシュマンズの「いかれたBABY」をはじめ、スガ シカオさんの「黄金の月」やSpiral Lifeの「CHEEKY」など、決して流行りや奇をてらった選曲でないことがわかります。
2時間弱のライブの中で必要な曲なんですよね。起承転結や喜怒哀楽って、1曲の中にもあるし、ライブ全体にもあるじゃないですか。
Photo by 柴田恵理(@shiva_eri)
ー ええ、確かに。
リハーサルをしながら全体の流れやセットリストを決めていくのは大変ですが、上手くハマれば僕自身も気持ち良いし、何より皆さんに楽しんでもらえるライブが作れるので、難しい反面、面白いなと思いますね。
ー 今回リリースされるにあたり映像を観させていただいたんですが、個人的に「黄金の月」から「LOVE POTION」への流れと、「My Angel」から「Euphoria」への流れは、まるで自分がこのライブを生で観たかのような感覚になりました。
生の空気を感じてくれてもらえるのは嬉しいです。流れや曲順って緩急が大切な気がするんです。例えば怒って散々文句を言った後にちょっと優しくしてみるような(笑)。
ー アメとムチ的な(笑)。
ええ(笑)。まぁライブの場合は、怒りをぶつけるならこの曲のリズムがぴったりくるとか、喜びを感じたいのならこの曲の歌詞が良いとか。特にカバー曲を取り入れる意味はそこにあると考えています。それに先程言われた、流行りや意外性などフットワークの軽さを見せるのであれば、また違う場所かなとは思いますね。
ー なるほど。それとCHEMISTRYの「星たちの距離」は個人的にも大好きな曲で、ケイコ・リーさんとのオリジナルも素晴らしかったんですが、堂珍さんと真城めぐみさんとの掛け合いが最高でした。
真城さんは元々、CHEMISTRYのツアーで初期に回っていただいていたんです。ただ時代も変われば人も変わっていくし携わるミュージシャンも変わっていくので、長く疎遠になっていたんです。でも僕の中で真城さんのコーラスってめちゃめちゃ懐かしくもあり、素敵な歌手という想いはずっと変わらずあって。
ー それで真城さんにオファーを?
ええ。ソロ活動を続ける中で、そろそろ自分以外のボーカルがいてくれたらすごく広がりが出そうだと思って声を掛けさせていただきました。