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村上佳佑、「会いたい人に会いに行きたいし、正しく生きて正しいものを残したい。」デビュー5周年と新曲「なんのために」への想い。

村上佳佑、「会いたい人に会いに行きたいし、正しく生きて正しいものを残したい。」デビュー5周年と新曲「なんのために」への想い。

June 22, 2022 20:00

Murakami Keisuke

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ミニアルバム『まもりたい』でメジャーデビューした村上佳佑。“NIVEAブランド”2016-2017年のCMソングに起用されたタイトル曲の「まもりたい〜この両手の中〜」。CMでの類まれな歌声を覚えている人も多いはず。もしくは彼が在籍したアカペラグループ「A-Z(アズ)」がフジテレビ「ハモネプリーグ」でハモネプ史上最高の99点で優勝したことを覚えている人もいるだろう。村上はA-Z解散後、ソロに転じて本格的に作曲を始め、2016年にクリス・ハート氏の日本武道館LIVEのオープニングアクトに抜擢され、同年10月からは47都道府県ツアーにコーラスとして参加。そんな村上佳佑は今年6月14日(火)でメジャーデビュー5周年を迎え、4月からスタートした【クリス・ハート 全国ホールツアー2022「LOVE IS MUSIC」】に参加し、6月15日(水)には配信シングル「なんのために」をリリース。この曲は前作「Alright」同様、親交のあるシンガーソングライター松室政哉がアレンジを担当。今回は村上にデビューして5年の想いや、新曲「なんのために」の話、更にはプライベートについても伺ってみた。


― 現在参加されているクリス・ハートさんのツアーも残すところ2公演ですが(取材時)、いかがですか?

僕、5年前も半年以上クリス・ハートさんのツアーを回らせて頂いたんですが、今の方が全然楽しいですね。というのも、その当時は僕自身右も左も分からなかったのでそういう点でも、今の方が求めてもらえたことに対してちゃんと応えることも出来ている気がするんです。自分の裁量で出来る自由さがあるというか、色々なことをコントロールして自分が届けたいように届けられるのはやはりシンプルに楽しいですね。それにクリスさんともめちゃくちゃ仲良いですしメンバーさんとのリレーションも築けたので、そこも楽しい要因のひとつだと思います。


ー クリスさんのファンの方からしても、村上さんはもうファミリーみたいなものじゃないですか?

そう思ってもらえていたら嬉しいですね!


ー そして今年6月14日でメジャーデビュー5周年。おめでとうございます!

ありがとうございます!


ー ベタな質問で恐縮ですが、この5年間は村上さんにとってどういう5年間でしたか?

なかなか一言でまとめられないですが、音楽を人に届けて生きていく人間という一連のプロセスというか、そういうものが根付くまでに5年かかったかなと思っています。曲を書く作業ひとつとってもそうなんですが、僕は基本的に歌うことだけが好きで歌ってきました。しかも音楽家庭でもないですし、身の回りに音楽をやっている人がほぼいないような田舎で育ったので(笑)、身の回りに音楽がある人と比べるとどうしても2、3テンポ遅くなっている部分もあったと思うんです。それでも時には人に習いながら、基本的には独学で自分なりの音楽をアウトプット出来る土俵にやっと立てたという言い方が正しいかもしれません。曲が書けなかったことは全然なかったですし、納得いかなかったわけでもないんですが……何て言うんだろう……少しだけ痒いところに手が届かないというか。でも今はもっとシンプルに自分の書いた曲を人に聴いてもらって生きていく。そこにぴしっと1本筋が通った気がしています。


ー 今まで筋が通らなかった理由はなんでしょう。

今、参加させて頂いているクリス・ハートさんのツアーの空き時間に、僕の好きな音楽……例えばヴィクター・ウッテンやスティーリー・ダンの話をするとクリスさんに「村上君はシンガーソングライターだけど演奏家サイドのマインドもあるんだね。」って言われたんです。実際そうなんですが、かといってめちゃくちゃそっちに傾倒する人間でもないし、シンガーソングライターとして生きてきた人間でもない。そういうどっちつかず感が今以上にあったんですよね、この5年間。勿論そういうつもりは全然ないですが、もしかしたら見え方として、どこか“やらされてる感”はあったんじゃないかと思っているんです。それ故に説得力のなさだったり、どこか整合性の取れない感じがあるのかなって。別に誰かにそう言われたわけではないけど、少し離れた距離にいるミュージシャンやシンガーソングライターの方からしたら、僕がやっていることや音楽はよく分からないって見えているんじゃないかなと思っていたこともあったので、そういったものの整合性が最近やっと取れ始めたのかな……みたいな感じは何となくしているんです。


ー 確かにヴィクター・ウッテンやスティーリー・ダンってなかなか深いですね。

でもよく聴いていくと一貫性があるんですよね。僕、ジョン・メイヤーも大好きなんですが、ジョン・メイヤーもスティーリー・ダンも、あとエリカ・バドゥとかも紐解いていくと多分同じタイム感でグルーヴを出してる人だと思うんです。(フィンガースナップをしながらリズムを刻み歌う)


ー おーー!

いや、もしかしたら違うかもしれないし(笑)コンマ何秒違いはありますが、意外にみんな同じようなフィールドが好きな気がするし、僕自身もやはりそこが好きなので根底の共通点を感じています。


ー シンガーソングライターだと秦 基博さんとか?

秦 基博さんは大好きですね!それと森山直太朗さん。海外ならアレン・ストーンも大好きです。


ー 確かに村上さんの好きなアーティストや影響を受けたアーティストを伺うと、インプットとアウトプットのバランスが難しそうです。

そうなんですよ!自分の好きなものだけで表現しようとすると、しっちゃかめっちゃかにになるんですよね(笑)。違うタイプの良さを好きになっちゃっているので、それを自分に落とし込めてなかったというか。それに自分で書いていない曲を歌うこともあったのでもうあれもこれもという感じで(笑)。でもそういうガチャガチャしたものが、“村上佳佑”という軸を元にまとまりつつあるのかなって。スティーリー・ダンの昔の音源を聴くと、晩年とやっていることが全然違ったりするから、そういうものなんだろうなと思いながら自分もやっています。


ー トッド・ラングレンみたくアルバムごとに違う表現するアーティストもいますしね

そうそう。なので割り切りながら、自分が今出来ることとやりたいこと+村上佳佑を客観的に見た人の印象など色々なバランスが取れてきたと思うし、これからも取っていきたいと思っています。僕はボーカリストだと思ってやってきたので、ある程度歌えちゃうんですよね。ゴリゴリのパンクやロックは大好きだけど残念ながら歌えないので歌いませんが(笑)。でも例えばディズニーぽく歌うことも出来るし、シンガーソングライターぽく歌うことも出来る。裏を返せば、だからこそまとまらなかったんですよね。いわゆる生粋のシンガーソングライターみたく、自分の曲を自分の歌い方だけで歌うなら迷わずに済むでしょうが、そうでもなかったので……。


ー 逆に聴いてる側から人の面白みでもありますが。

面白みと感じてもらえるようにきちんとまとまった形になれば、弱点ぽく見えたものは強みに転じれるのかなと思います。ただ決して器用貧乏になってはいけないから、そういう部分はこれからも気にかけて活動していきたいです。


ー その5周年記念日の翌日6月15日(水)に「なんのために」を配信リリースされましたね。歌声は勿論素晴らしいですが、イントロの感じやオルガンの音が心地よかったです。歌詞からは生きる意味や不安みたいなものを感じられましたが、決して重くて苦しいというよりは、優しさや温かさみたいなものを感じました。

僕自身、ネガティブなことを言葉に乗せて言いたくない人間なので、あまりしないように意識しています。この曲はステイホーム中に書いたので、すごく内に入ってある種ネガティブにも聞こえるような言葉やメッセージが出てきちゃってるなと思ったんですが、それが当時の僕のリアルではあったんです。ただやっぱりそのままの形で世に出したら聴いてくれた誰も救われないと思ったし、僕自身も救われないから着地点としてはちょっと違うなと感じたんです。だから歌詞も5、6回書き直しました。決して大幅に変わったわけでもないしBメロは結構そのままですが、自分自身を投影しつつも僕だけでなく、聴いてくれた人が、“あぁ、こういうことって自分も思うことあるなぁ”って思ってもらえればきっとそれは悲しい曲ではなく共感によって生まれる孤独感から解放になるかなと考えたし、目指す着地点もそこにあったので、最終的にはこういう言葉選びになりました。悲しい曲ではなく、僕も一緒だから大丈夫だよみたいな優しい曲なのかもしれない。


ー その「一緒だよ」という想いはやはり大きいですよね。特にステイホームというみんなが共通して経験した状況下だと尚更。

そうですね。一緒であることが決して良いことばかりではないかもしれませんが、特に孤独感を感じやすい時期に「自分だけじゃないんだ」と思えることって大切だと思うんです。ラジオの深夜放送とかもそうですよね。


ー そうですよね。あの特別な一体感って気持ちを救ってくれるところがあります。あと、“母がくれたこの名前も 教えてくれた言葉も 全部忘れていくのかな ひとりぼっちで”という歌詞は寂しくもありますが、村上さんのお母様への愛情を感じました。

全部事実です。丁寧で綺麗な言葉で話しなさいと母から教わっていたし、僕の名前には母の名前の漢字が1文字入っているんです。この曲ではリアルを歌いたかったし、人は死ぬんだということを言いたかったんです。それって悲しいことですが、逃げちゃうことの方がよくないと思って。死ぬからこそ今を大切にして生きたいというか、そうなる前に会いたい人に会いに行きたいし、正しく生きて正しいものを残したい。みんなにまず一度俯瞰して見て欲しかったんです、人生というものを。“人って死ぬんだ”とふとした瞬間に思ったら、急に生まれてきてから死ぬまでを何となく想像するじゃないですか。


ー ええ。

あのマクロな感じでの俯瞰の景色というか、そういうものを感じた上で戻ってきた時は、物の見え方が少し変わる気がするんです。そういう感じを曲の中で表現したかったので、少しセンシティブな言葉を使いました。最後の「今は早くあなたに会いたいよ」は俯瞰の景色から戻ってきたリアルです。誰かに会いたい、こういうことをやりたいって誰しもが持っている願望だと思うんですよ。もしかしたら会いたい人はもうこの世にはいないかもしれないけど、そう願うリアルな心を曲の最後に入れました。