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海蔵亮太が考える主人公像とは?ニューシングル「誰そ彼」インタビュー!

海蔵亮太が考える主人公像とは?ニューシングル「誰そ彼」インタビュー!

August 24, 2021 18:00

海蔵亮太

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「この人ってサイコパスっぽいよね。」今年にわかにネットで騒がれ始めた海蔵亮太のサイコパス疑惑(笑)。そんなネットの書き込みを歌詞にした「サイコパスのうた」を5月に配信リリース。こういう形でのアンサーソングは初めて知ったので筆者もいささか面食らったが、そこから約3ヶ月後の8月25日に今作「誰そ彼(たそがれ)」をリリース。離れ離れになってしまっても彼女のことを想う一途な男性心を、ある意味での海蔵亮太らしさを全面に美しい歌声を惜しげもなく響かせ歌い上げている。更にDick Lee氏作曲の「繋がってる...」と、キリンジ永遠の名曲「エイリアンズ」のカヴァーをTYPE-AとTYPE-Bに分け収録。今回は、TYPE-AにDVD収録される【海蔵亮太LIVE 2021「僕が歌う理由(わけ)」】を振り返ってもらいつつ、今作への想いや聴きどころを伺ってみた。


ー 6月に大手町三井ホールで開催された久しぶりの有観客ライブ【海蔵亮太LIVE 2021「僕が歌う理由(わけ)」】ですが、私自身も有観客ライブが久しぶりだったし、海蔵くんの歌を生で聴けた時はちょっと泣きそうになっちゃいました。

え、でも泣かなかったんですか(笑)。


ー いや、でもウルっと来たよ!

アハハ。急に意地悪なこと言っちゃいましたね(笑)。でも皆さんの顔を見ながらライブが出来るって良いですね、やっぱり。1曲目が「紫陽花」だったので本当はしっとりと格好良く入場しようと思ったんです。でも久しぶりに皆さんと会えることもあったし生バンドで歌えることもあって、何だかニヤニヤしながらステージに上がったのを覚えています(笑)。本当にあっという間でしたね。


ー 聴いてる方も本当にあっという間でした。それだけライブ自体が良いものだった証拠だと思うんですが。

ありがとうございます。もし今回がツアーだったら、初日っぽいワクワク感が詰まったライブだったと思います。


ー 今回のニューシングル「誰そ彼」Type-AのDVDにはそのライブの模様が収録されていますが、そこでこの曲を初披露。久しぶりの有観客で新曲を歌うってどういう心境でしたか?

多少の緊張もありましたけど、ライブの最後に歌うということもあったので、また会えるのを楽しみにというか、会えることを祈りながら歌っていました。


ー なるほど。今回の「誰そ彼」(たそがれ)の表記ですが、いわゆる“黄昏”ではないんですね。万葉集的な感じというか。

そうですね。実は最初は違うタイトルだったんです。でもCメロに出てくる“誰そ彼”という歌詞の言葉がとても印象的で頭に残っていたし、黄昏時の情景を感じさせる歌の世界観を更に引き立てるんじゃないかと思って、スタッフとも色々話し合いながらこのタイトルに変えました。


ー 今お話に出たCメロは、メロディとしてもとても印象的で個人的にも好きな部分です。

ありがとうございます。実際印象的ですよね。曲の中の引っ掛かりとなって。


ー ええ。そしてこの曲の主人公は、離れ離れになってしまった彼女のことをずっと一途に思い続けているじゃないですか。

はい。


ー 勿論別れたとしても愛しい人の幸せを願うのは当たり前だけど、みっともないぐらい取り乱すとか、そういう感じではないんですよね。

僕のイメージだと、この主人公の男性はシティ派ではない気がするんです。町中で青春時代を捧げた人ではなくて、ちょっと人里離れた緑が豊かなところで生まれて、隣近所も家族ぐるみの付き合いみたいなところで育って、大人になって上京したんじゃないかなって思っているんです。相手も小さい頃から一緒にいて、最初は友達みたいな感じでいたけど成長するにつれて「あれ?もしかして好きかも……」みたいな。


ー あー!恋愛ドラマであるやつ!

そうそう(笑)。それで彼は上京して、お互い社会の荒波に揉まれながら色々なことを覚えていく中で、だんだん意見も合わなくなってきて心の距離が出来ちゃって……。都会で生まれ育った人って、この歌詞にあるようなことを言えないんじゃないかなと思うんです。自然豊かな場所で育った、何ていうかな……素朴というかピュアな気持ちを持った人だからこそそうやって言える人なのかなって。僕はすごくそんなイメージを持って歌ってました。


ー 歌う時はそうやって、例えば生い立ちや性格など主人公像を自分の中である程度考えていますか?

そうですね。5分間ぐらいの曲の中でその人のバックボーンみたいなものを想像してから歌うようにはしています。この曲って一番のサビが終わった瞬間に物語が始まるみたいな部分があって、その瞬間に入るバンドネオンの音色が、一番を序章のように感じさせる。そこから始まった物語がどんどん進んで最後に流れていく感じで、そこからのCメロはやっぱり曲の中のフックになっていると思います。


ー すごくエモーショナルな気持ちになるし。

そうそう。気持ちが盛り上がるというか、Cメロはやっぱり聴きどころであり皆さんが歌う時にもポイントになると思います。


ー今回、ジャケット写真もアーティスト写真も今までとは違う感じですよね。個人的にもとても好きです。憂いがあって。

ありがとうございます!今までこんなに影を使ったことがなかったので(笑)自分としても新鮮でした。


ー とても注射が苦手な31歳には見えな……

失礼な!

<全員爆笑>

ー c/w(TYPE-A)の「繋がってる...」ですが、作曲がDick Leeさんなんですね。Dick Leeさんのお名前を目にして、思わずDickさんの『マッド・チャイナマン』のジャケットが頭に浮かびました(笑)。

そうなんです。実はこの曲はかなり前から出来ていたんです。うちの音楽チームの一人がDick Leeさんと繋がりがあってお願いすることが出来ました。この曲って、今の日本の音楽シーンにはないぐらい、ビックリするくらいゆったりした曲なんですよね。その分「何やっても良いよ」と言われたので、自分が思うまま自由に歌ってみようと思えました。この曲はタイトルどおり、離れていても誰かと繋がっている。そういうことを忘れずにいたいと感じさせてくれる曲だと思います。相手のことを慮るというか、相手を思いやる気持ちで優しさに溢れた曲ですよね。Dick Leeさんだからってことじゃないんですけど、僕のイメージでは英語で歌った曲を日本語訳にしたらこんな歌詞になるんだろうなって。


ー そう言われると腑に落ちる感じがしました。

日本人が書く歌詞というより、洋楽の歌詞の内容を日本語に落とし込んだ時に使われるような言葉選びだし、メロディー自体もすごくゆったりとした感じで。だからオリジナルなんだけど、海外で流行っていた曲をカヴァーしているようなイメージでした。


ー そしてTYPE-Bのc/wはキリンジの「エイリアンズ」のカヴァー。この曲は本当に好き過ぎて何百万回聴いたか(笑)。

何百万回!?シビれますね(笑)。


ー でしょ(笑)。この曲ってヒトカラ(海蔵さんの公式YouTubeチャンネルで公開しているカヴァー動画)で歌ってたっけ?

いえ、歌っていませんね。この曲は知人から「海蔵くんに合うと思うよ」と教えてもらったんです。勿論自分が好きな曲を歌うのは大好きだけど、人から勧められた曲を歌うのも結構好きで。知らないことを沢山知れるじゃないですか。こういう曲も合うんだと思ってくれてるんだと思うとすごい嬉しくて。でもこの曲ってエグいですよね。


ー エグい?

あ、勿論最高級の褒め言葉としてですよ。僕にとってこの曲って理想なんです。何て言うのかな……日本語を日本語として歌ってるんだけど、ワールドワイド的な世界観も匂わせてるような。そのバランス感覚がたまんないですね。何げなくハマっちゃう感じがすごくしますね。


ー だから本当に沢山のアーティストがカヴァーしていますよね。

そうなんですよね。この曲はすごいと思います。僕、何かビビりましたもん。勿論曲としては知っていたんですが、ガッツリ聴き込んで歌うみたいなことはしてこなかった曲ですから。