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高橋優インタビュー「僕には"優"という名前がつけられ、多分僕自身優しさについてずっと考えていくと思うんです。」シングル「ever since」から紐解く優しさとは。

高橋優インタビュー「僕には"優"という名前がつけられ、多分僕自身優しさについてずっと考えていくと思うんです。」シングル「ever since」から紐解く優しさとは。

May 7, 2021 18:30

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昨年、メジャーデビュー10周年を迎えた高橋優。同年に「one stroke」、「room」、「自由が丘」の配信シングルをリリース後、アルバム『PERSONALITY』をリリース。10年という岐路に立った高橋優は、更に自身の音世界を広げるべく数多くのプロデューサーと作品を作り、「自由が丘」では初めてピアノに挑戦した。「まだこれから」高橋優はよくそんなことを言う。その飽くなき探究心は今年配信シングル「ever since」へとアウトプットされた。ジェーン・スー氏原作の、テレビ東京系ドラマ24『生きるとか死ぬとか父親とか』のオープニングテーマとして書き下ろされた楽曲への想いとは?高橋優が考える“優しさ”とは?


ー「ever since」をテレビ東京系ドラマ24『生きるとか死ぬとか父親とか』のオープニングテーマとして書き下ろすにあたり、一番大切にした部分は?

このドラマはジェーン・スーさんのエッセイが原作なんですが、ジェーン・スーさん役の吉田羊さんが担当しているラジオ番組内でお悩み相談を受けているシーンから始まることと、そこで流れるイメージだということは曲を作る前に伺っていたんです。だから一番耳に入ってくるのはメロディかなと考えて、イントロのギターリフから作り始めました。その部分が印象的に聴こえると良いなと思って。でも(取材時の最新)第二話を観ていたらサビが大きく使われていて(笑)。


ー 私もあのドラマを観ていますが、確かにそうでしたね。

それはそれで勿論嬉しいんですよ!サビは大切だし。ただ、もしこの曲をダウンロードしたりMVで観たりする方がいれば、是非ギターリフにも注目して聴いてもらえれば嬉しいです。ドラマの監督は「高橋さんの、“頑張っている人を僕はそっと近くで見ているよ”という視点で書かれた楽曲にシンパシーを感じた」というニュアンスのことを言ってくださったんです。特に「非凡の花束」や「BEAUTIFUL」の歌詞の世界観に何か感じるものがあると。だから監督のイメージするような、そっと傍で寄り添ってくれる人や大切な人を思い起こせるような歌詞を描こうと思ったんです。でもあまり綺麗にまとめるのではなく、良くも悪くも傍にそういう人がいる。そういう風に聴こえると良いなと思いました。


ー ジェーン・スーさんとはお会いになりましたか?

はい。僕、あのドラマのモデルになっているジェーン・スーさんのラジオ番組に出させて頂いたことがあって、実際リスナーからのお悩み相談に答えたりもしたんです。僕もラジオ番組をやっているので、ジェーン・スーさんとお互いの見地からあれこれ話して。


ー そうだったんですね!

ええ。でも吉田羊さんってジェーン・スーさんと似てると思いませんか?


ー ああ、そう言われると確かに。

顔の作りとか、表情とか。だからドラマを観ていたら、実際ラジオでジェーン・スーさんがこういう表情しながら答えているだろうなって思っちゃいました。で、この曲って3拍子なんですが、曲が出来た後に聴いてくださったジェーン・スーさんがご自身のTwitterで「3拍子が3人家族に聴こえる名曲」って呟いてくれたんです。お母さんはもう亡くなって過去のシーンとしてしか出てこないけど、今いる自分と父親、そして母親の3人って。


ー そういう観点が素敵ですよね、ジェーン・スーさんって。

ね!僕もそう思います。


ー もう亡くなった私の実父が、ドラマの國村隼さん演じるお父さんの100倍破天荒な人で、ドラマを観ててちょっと気持ちがモヤモヤしちゃいました(苦笑)。

えー、それ凄いなぁ(笑)。でも誰にも迷惑かけない人ほど淋しいものはないとも思うんです。生まれた時から立派な人なんていないし、立派になろうと頑張って空回りして失敗するのは、子どもも親も案外一緒なのかなって。まぁ色々な迷惑を受けた娘としては大変だったと思うけど(笑)。


ー ええ(笑)。

うちは今でも両親とも健在だけど、手伝いが必要だろうと思って親に「手伝いに行くよ」って言った時に「手伝いは必要ない」って言われるとムカついちゃうんですよね(笑)。「いや、絶対必要だろうって!」って。親としては息子に迷惑かけないようにそう言っているんだろうけど、僕が何より迷惑だと思うのは気を遣われることなんです。家族もそうだし、友達や恋人でも以外とそういうところってありません?


ー あると思います!

関係がぎくしゃくする時って変な気を遣い過ぎてすれ違っている時なんですよね。迷惑かけるのが当たり前って思いすぎても問題だけど(笑)、変な気を遣わずちゃんと頼ったりわがまま言ってくれた時の方が、思い返すと良い思い出になっていたりするんですよね。


ー 逆に迷惑かけて欲しい。というか、そのくらい迷惑なんて思ってないし、変な気を遣われると心の距離を感じてかえって悲しくなったりしますね。

そうそうそう!自分だって知らず知らず誰かに迷惑をかけているかもしれないし、そういうことに綺麗事だけで収まることってあまりない気がしたんです。でも「だから人間関係って素敵よね」という話ではないし、とは言え人間関係が終わっているわけでもない。僕も両親に迷惑をかけたことがあれば、両親のことで僕の時間を割いていることもある。その関係性を綺麗なところじゃない部分で歌いたいんですよ。


ー 綺麗事ではないというのが、ワードセンスに出ていますよね。特に「些細な言葉の一個 足りなくて 多くって」とか「色んな人に出会うたび鏡のようさ ぼくのなにもかもがあなたを写している」とか。

曲全体通して、割と鏡のニュアンスというか自分のことを歌っているようで、親とか自分とずっと一緒にいてくれた誰かを歌っているようでもあって……という部分を書きたかったんです。ただこれが「自分のことを歌っています」と言い切っちゃうと曲の世界が少し狭まってしまう気もするんだけど。


ー 確かにそうですね。それと「強い言葉を選んでちゃんと傷がつくように罵ってから部屋を出た」って、なんて秀逸な歌詞だろうと思いました。

ありますよね、そういうこと。本当にカチンと来て、悪口を言う時やその人が傷つく言葉を探す時、少し気持ちが良い状態になっている気がするんですよ。


ー 変なアドレナリンが出るよね。

そうそうそう。変なアドレナリンが出ているから傷つくことを言っちゃうんだけど、絶対に後悔するんですよね。長く一緒にいる関係性の人であればあるほどその後味の悪さも強くて……。でも悪い後味の“味”も知っているから色々な味が分かるようにもなるのかな。「ever since」って<あれから>とか<あの時から>というニュアンスの言葉なんですが、“色々あったけどね”っていう話が出来る相手のことを思い浮かべて欲しいです。


ー「優しい人だけど 優しさが下手な人」という歌詞も気になりましたが、優さん自身は?

この間、親から初めて聞いたんですけど、父親がまだ20代の頃に母親と出会って一番最初に、“この人、良いな”って感じた理由が「優しい人」だったことらしいんです。でも優しい人と思ったきっかけがなければ、父と母は結婚していなかったし僕も生まれていなかった。で、僕には“優”という名前がつけられ、多分僕自身優しさについてずっと考えていくと思うんです。今までも考えてきたつもりだったけど。ただ僕が優しいかどうかは受け取る人によると思うんですよ。例えば僕が優しさだと思ってやったことが相手はそうでないこともあるし。だから優しさってすごく難しくて。まあ多分、優しくしてあげようと思っている時点でそれは優しさじゃないんでしょうけどね。


ー 自己満足だったりすることもあるし。

そうそう。それで言えば僕は自己満足な人間な気がします。「僕は優しくしようと思っているんじゃなくて、あなたが笑ってくれるのを観たいだけの人だから。笑ってもらわないと幸せじゃないから、無理くりでも笑わせようとしている」みたいなことを曲のメッセージやライヴのMCでも言っていますが。


ー ええ、ライヴで聞いたことがあります。

だから僕はろくなもんじゃないんですよ(笑)。あくまでも自己満足のためにあなたに笑ってもらわなきゃ困るって言ってるんだから。それは親に対してもそうだし。人はそれを優しさと呼ぶこともあるし、偽善や自己満足と呼ぶこともある。まあ歌を歌っているくらいだから自己顕示欲だってそれなりに強いだろうし、裏方にまわるよりやっぱりステージに立っていたい。そんな人が優しいかどうか、自分自身分からないですね。


ー そう言い切れちゃうところが優しさな気がはするけど。

そうなんですかね。ただ、“僕って優しいでしょ”って言う自己顕示欲からは案外早く卒業したかもしれません。それと、どう相手に伝えるかで優しいかどうかって変わると思うんです。何でもかんでも思ったことを言っちゃうのは優しさではないと思うけど、ここでどうしてあげるのが本人の為になるんだろうって一瞬でも考えることは、もしかして優しさに近いことかもしれないとか。例えば「しょっぱいものばかり食べて一度体を壊してるんだから薄味にしなよ」って何回言ってもしょっぱいものを好んで食べて、結果また体を壊して落ち込んだりしている人を見ると「自業自得じゃん!」って言いたくなりませんか?


ー なりますね(笑)。

でもそう言ってしまうと壊れるものもあるのかなって思うから「美味しいお塩を買ってきたよ」って言って減塩のお塩をそっと置いておくみたいな。そういうのはひとつの優しさなのかな。こと親とかに対してはね。


ー 確かにそれは優しい。親といえば、最近フィルムカメラを初めたそうですね。Twitterでお父様が使っていたカメラがUPされていたけど。

そうなんです。実は父も20歳前後の頃にカメラにハマっていたことを、ついこの間知って。当時は最新鋭の機器みたいな感覚でカメラブームになったらしくて、当時流行っていたカメラを父親が持っていたんです。で、僕はそこから50年経ってスマホでもデジカメでも簡単に撮れる時代に逆行するようにフィルムカメラにハマっています(笑)。それで「父さんも持ってるんでしょ?」って聞いたら「あるよ」って持ってきてくれたんだけど、本当に50年眠ったままだったからカメラの中に虫とか入ってて最悪で(笑)。でも今ってYou Tubeで使い方のチュートリアルを出している人もいるから、そういう動画を観てひとつひとつ復活させていくのが面白かったです。父とお互い童心に帰れるっていう感じで。

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