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松室政哉が目指した「映像が浮かぶ音楽」とは?コンセプトミニアルバム『Touch』インタビュー

松室政哉が目指した「映像が浮かぶ音楽」とは?コンセプトミニアルバム『Touch』インタビュー

April 1, 2021 00:00

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「ポップスに選ばれた男」。これはシンガーソングライター松室政哉のプロフィールに記されたキャッチコピー。アッパーなサウンドであろうがバラードだろうが高いポピュラリティで愛される松室の楽曲は、ボーイズユニット「CUBERS」への楽曲提供や、ひかりTVオリジナルドラマ「ボーダレス」の劇中音楽、FM802「802 RADIO MASTERS」内“Happy Hour!”の番組ジングルなど活躍の場を広げている。そんな松室は無類の映画フリークとしても有名だが、楽曲世界を視覚的にも更に広げるために新たに立ち上げたのはMusicalize Project。実に松室らしい。その第一弾はコンセプトミニアルバム『Touch』。一本の映画を途中だけ観ないのと同じように、是非このミニアルバムは全曲通して聴いて欲しい。何故ならそこにあるストーリーを感じることが出来るから。今回はそのMusicalize Projectと『Touch』への想いを語ってもらった。


ー 今回、楽曲世界を視覚的にも更に広げるためにMusicalize Projectを立ち上げたんですよね。

そうです。その第一弾が3月31日リリースのコンセプトミニアルバム『Touch』です。僕、今までEPはあったんですが、ミニアルバムって初めてなんですよ。例えばEPなら「ハジマリノ鐘」や「きっと愛は不公平」のようなキーポイントとなる曲を中心にしながら、色々なタイプの曲を作れるじゃないですか。


ー ええ。

それはある種<おもちゃ箱>のようなもので。でも今回ミニアルバムを作るにあたり、今まで以上にコンセプトやテーマが必要だと思って。頭の中で映像を思い浮かべながら音楽を作るという手法は今までもずっとやってきたことだけど、今回は更にその上をいくようなものが作りたかったんです。例えば実際の映像としてのミュージックビデオ(以下:MV)もそうですが、6曲聴いた時に今までより更に鮮明なストーリーが浮かぶようなものが作りたい。それがこのMusicalize Projectの発端です。だから今までより深く、より広がりを持った作品作りを目指しました。


ー『Touch』を全曲通して聴いた時に、このミニアルバムが映画そのもので、一人の主人公の状況や感情を6曲で表現してるのかなと感じました。

まさにそのとおりです。群像劇がコンセプトのアルバム『シティ・ライツ』では、1曲ごとにそれぞれのストーリーを描く俯瞰的な作り方をしました。でも今回6曲通して1本のストーリーにするなら全然違う描き方が良いし、主人公の目線で歌った方が6曲通して1本の映画みたいになると思ったんです。


ー イメージの流れとしてはどういう感じでしたか?

どういうストーリーなのか、ジャンルは何なのかって、1本の映画を作る感覚で考えてみたんです。そこでまず決まったのがラブストーリー。だからこそ「ai」が1曲目にあることが重要で。いわばこの曲は恋愛映画の幕開けで、時間軸も一番最初。でも、ただ「大好き、愛してる!」というだけでなく、どこか不安を抱えている主人公と、この相手がこの後どうなっていくのか。それが気になる出だしにしたかったんです。


ー そのせいか、「ai」は今作の中でも特に主人公と好きな人の距離感にリアルさを感じました。例えば歌詞の、“いつだって回りくどい話を嫌がるくせに 肝心な事は言わないで 「察して」なんて拗ねるよね”とか。こういうこと、実際松室くんも言われて、“どうしたら良いんだろう”とか、“面倒くさいなぁ”とか思ったことはある?

あります、あります!さすがに“面倒くさいなぁ”とは思わないですけど(笑)。


ー そっかそっか(笑)。

どちらかというと、この主人公に近いんですよね。“どうしたら良いんだろう…何をしてあげられるんだろう”って一人で考え込んじゃうタイプかも。


ー 優しいね。今作を制作して自分自身感じたことは?

このアルバムの曲は全部昨年作ったんですが、皆さん同様、僕の中でもコロナ禍という状況は曲を作る上ですごく大きなものでした。だから、ただ恋愛映画を作るというより、もう少し今の状況に置かれた僕らの感覚みたいなものが自然と盛り込まれていくような恋愛映画になるのかなと思いながら作っていたんです。でも決して、そうしたいと思ってたわけじゃないんですよ。


ー 自然とそうなっていった感じ?

そう!今作の最後に収録した「Touch」という曲がアルバム・タイトルにもなりましたけど、今は<触れる>というそれまで当たり前にしていた行為が突然遮断された気がして……。「Touch」はラブストーリーですが、それが恋愛であろうが家族であろうが、兄弟であろうが、友人であろうが、全てを包括している言葉だと思うんです。”Touch(触れる)”って。だからやっぱり今の世の中のこういう状況が歌詞にもサウンドにも入っているんですよね。


ー このアルバムタイトルでふと思い浮かんだのが、「Augusta HAND × HAND」(所属アーティストがコラボレーション楽曲を収録したCDと、その楽曲を披露する配信番組)。あのプロジェクトテーマは「ともに未来を、つながる手と手」でしたよね。

そうですね。まさに「Augusta HAND × HAND」もコロナがなければ生まれていなかったプロジェクトですし、こういうテーマってやっぱりミュージシャンだけでなく世の中の人すべてが肌で感じていた部分でもあるんです。ただミュージシャンとして考えた時に、やはり山崎まさよしさんや浜端ヨウヘイさんと一緒にコラボレーション出来たのは良い経験でした。今まで楽曲提供はあったけど、コラボをそんなにやってこなかったのですべてが新鮮で。ヨウヘイさんもそうですが、やはり山崎まさよしさんと一緒に曲を作って一緒に歌うなんて、学生時代の松室少年は想像もしなかったことですし(笑)。それだけで光栄なことですよ。ただ、山さんとは先輩後輩の仲ですが、僕に対してきちんとミュージシャンとして接してくれるので、意見の交わし合いもすごく楽しかったです。それと、このコロナ禍なので制作をギリギリまでリモートで進めていたことも、ある意味新鮮でした。実際レコーディングするために山さんと会って、スタジオでやりとりする生の会話はこんなにもスムーズなんだってびっくりしましたけど。今でこそ、僕も含めみんなリモート慣れしてきたけど、まだこの0.0何秒かのディレイがこんなにもコミュニケーションに隔たりを生むんだなって。


ー ああ、なるほど。

それを実際会った時に感じたんです。会うことでこんなにも違うんだって。それにコラボをしたことがない分、人のレコーディング現場を観ることもないから、“ああ、山さんはこうやって進めていくんだ”、“ヨウヘイさんはこうやってるのか”って肌で感じることが出来たのも楽しかったです。


ー そういう意味でも気づきが多かったと。

本当にそうです。


ー 配信番組「Augusta HAND × HAND Online」含め、最近はオーガスタの中でMC的な役回りも多いですよね。わちゃわちゃ騒いでる先輩たちをまとめるみたいな(笑)。

そうそう(笑)。そういう役回りでも呼んでもらえるのはありがたいですけど、この間も『Augusta HAND × HAND(Winter Gift Box)』の購入者特典オンライン・トークイベントで完全なMCやりましたよ。MCとは聞いていたけど、台本を読んだらめちゃくちゃMCだった(笑)。


ー アハハ!やっぱりそういうのを仕切れるのは松室くんだけなんじゃない?

好きなんですよね、そういうことが。元々喋ることが好きだし。


ー なるほど。「ai」の話に戻りますが、2月に先行配信リリースしたこの曲は昨年のオーガスタキャンプで初披露されましたよね。

あの時は何も告知せず突然やったので「この曲は何?」って反応もありましたけど(笑)。


ー それにオーガスタさんには色々な<あい>があるという反応も。

そうですね。スキマスイッチさんは「藍」、秦 基博さんは「アイ」。表記は違えど同じタイトルの曲が2曲あって、しかもその2曲とも名曲なのでなかなか勇気がいることではありました。でもそこは自信を持って皆さんにお届けしたいと思っています。「ai」は辞書に載っている発音記号じゃないけど、小文字にすることでこの歌詞に出てくる色々な<ai>に繋がっていくと思ったんです。まぁ大文字にしたりどういうのが良いか色々書いてみたりもしましたけどね。でもやっぱりこの「ai」が一番しっくりきました。



ー 先行配信の第二弾「PUZZLE」は松室くんらしいメロディだけど、楽器それぞれのエモさも際立っていた気がします。関係がルーティーン化してる、いわゆる倦怠期で別れの匂いもする頃のこの物語に楽器の役割をどう落とし込みましたか?

こういうのも結構映画的発想なんですけど、例えばすごく怖い殺人シーンで優雅なクラシックが流れると怖さが際立つし、キラキラとした楽しいシーンなのに悲しい曲が流れてると、楽しいことが悲しく感じるじゃないですか。例えば『時計じかけのオレンジ』。主人公は犯罪者だけど、「雨に唄えば」を歌いながら犯罪を犯す。感情や行動と反比例した音楽の使い方としては有名な映画だけど、いわゆるスイカに塩をかけると甘く感じるアレと一緒ですよね。


ー あ、一気にハードルが下がった(笑)。

アハハ!でもこの曲もそれなんです。二人の関係性に陰りが見え始めている歌詞にノリの良いバンドサウンドを合わせることで、より不安定な状態が際立つというか。この曲が一連のストーリーの起承転結で「転」の役割を担うことは最初から決めていたんですが、具体的には「ai」の出だしの歌詞が出来てから、このストーリーの中で「PUZZLE」はこうなるタイミングの歌詞にしようって具体的に決まったんです。

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