帰りたくても帰れなかった......決意の上京を支えた音楽達。半崎美子、初のカヴァーアルバム『うた弁COVER』インタビュー
December 8, 2020 19:00
半崎美子
ー だって1959年に水原弘さんのオリジナルとしてリリースされた「黄昏のビギン」は、昭和のスタンダードナンバーとして数多くのアーティストがカヴァーされていますが、半崎さんが生まれるずっとずっと前ですからね。
確かに(笑)。この曲はちあきなおみさんのカヴァーで初めて知って好きになった曲なんです。
ー 私も実はずっと、ちあきなおみさんの曲だと思っていました。
やっぱり?
ー ええ。でもこの曲での半崎さんの歌声の艶っぽさにドキドキしちゃいました(笑)。
えー(笑)。でも確かにこの曲はオリジナル曲とは違う、何ていうんだろう……分泌物?(笑)そういうものが出ている自覚は歌っていてありましたね。
ー やっぱり。だって普段とは違う半崎さんを感じましたもん。
分かります!例えば「ホームにて」とか「メロディー」とかは、普段私が歌っている声質なんですよね。でもこの「黄昏のビギン」や「さくらんぼの実る頃」や「紅い花」は声に別の色が加わっているんですよね。
ー でもその表現力や声のバリエーションに半崎さんの歌力を感じました。
それってすごく嬉しいです!オリジナルだけを歌っている時はそこまでのバリエーションが出てこないので、他の人の曲を歌うことで滲み出てくるのかもしれませんし、今回このカヴァーアルバムを作るにあたって自分自身が発見出来た部分でもあります。
ー ちあきなおみさんと言えば今回、ちあきさんの「紅い花」も収録されていますね。
はい。ちあきさんに関しては他にも好きな曲が沢山あるので、どの曲をいれようか本当に悩んじゃいました(笑)。
ー 私は個人的に「メロディー」はすごく心に沁みました。玉置浩二さんのオリジナルも勿論好きですが、半崎さんが歌うこの曲は、もしかしたらこのアルバムで一番聴いているかも……。
本当ですか!?実は今日もコンサートツアーのスタッフさんが、やはり私の歌う「メロディー」を何度も聴いていると言っていたばかりだったので(笑)。
ー そうでしたか(笑)。だってすごく合っていますもん。
ありがとうございます!上京してからノスタルジックな気分になれるこの曲を何度も何度も聴いていました。勿論他の曲もみんな素晴らしいんですが、特にこの曲は玉置浩二さんのオリジナルが素晴らしすぎて、単純に好きだという理由だけで歌っちゃいけない気がしていたんです。でも今回は青春時代や故郷がテーマなので、同郷でありシンガーソングライターの大先輩として尊敬する玉置浩二さんのこの曲をどうしても入れたかったんです。だからそう言ってもらえて安心しました。
ー それと武部聡志さんによるアレンジも聴きどころですよね。「いい日旅立ち」のジャズアレンジも新鮮でしたが、「異邦人」のタンゴアレンジはピアソラっぽくて好きです。
まさに今言っていただいた2曲は、まだ私がインディーズで活動していた頃に【SAPPORO CITY JAZZ】出演時にジャズアレンジで歌って、結構反響があった曲なんです。それで今回武部さんにそれをお伝えして、当時の音源も聴いてもらいながら更にブラッシュアップしてもらいました。
ー この曲に限らず、武部さんとはアレンジでどういうお話を?
武部さんは普段から私のオリジナル曲のアレンジや、コンサートの音楽監督をしてくださっているので、常に私の声や歌をいかに届けるかに重きをおいてくれているんです。だからそれがすごくありがたくて。今回のアルバムもまさにそういう部分が出ていますが、作品の世界を更に彩ってくれるその調和が素晴らしくて。最初、デモの段階では武部さんのピアノに合わせて歌うだけなんですが、そこで私の歌を聴いている武部さんがすぐに「あ、この曲はサックスかな。」とか「こっちの曲は二胡かな。」とか、楽器の編成もどんどんアイデアが出てくるんですよ。もう恐れ入りましたとしか言いようがないくらい凄い方ですね。
ー 私も「紅い花」を聴いた時、二胡を使われているアレンジに驚きました!
ねー!だからこの12曲のバリエーションというのも、入る楽器によって色合いが変わるので面白いですよね。
ー ええ。それに、半崎さんの歌をメインで考えられているせいか、音で埋め尽くしていないですよね。
そう!それもまさに先日、武部さんとのファンクラブ対談の時に「この作品はあまり音を詰め込まないで、あえて“隙”を作りました。」とおっしゃっていたんです。お客さんが聴いた時に初めて完成するイメージで作っていると。
ー だから半崎さんの声の表情や歌の表現力がダイレクトに感じられました。
ありがとうございます。そういうことまで考え尽くしてアレンジしてもらっているってありがたいですね。だから今回すごく楽しくて。選曲段階から武部さんに色々と相談させていただきましたし、曲が形になっていく過程も横でみていてすごく勉強になりました。
ー 歌う上で大切にした部分はどういうところでしょう。
どれも思い出の曲なので気持ちや表現が自分の中から出てくるよう、レコーディング前はあまりオリジナルを聴きすぎないようにしました。そのせいか、レコーディングして改めてその歌に対峙出来た気がします。
ー 今回はカヴァーだけでなくインディーズ時代からのオリジナル曲「永遠の絆」も収録。ご両親への気持ちを綴ったこの曲はやはり半崎さん自身にとっても思い入れの強い曲ですか。
そうですね。この曲を書いたのは15年くらい前だったと思うんですが、当時はだいたいコンサートの最後に歌っていたんです。父に猛反対されたまま上京しましたが、この曲を作ってから少しずつ父が私の活動を気にかけてくれるようになったというか。そういう意味でも大切な曲ですし、当時の自分ではなく今の自分で改めてこの曲をセルフカヴァーしてみたい、表現してみたいと思って収録しました。
ー 当時とは伝え方や感情の部分で変わりましたか?
変わりましたね。この曲は人肌みたいな感覚で書いたはずなんですが、当時は結構ヒリヒリ……というか、叫びみたいな気持ちで歌っていることが多かったんです。それはライブでも言えることで、両親やお客さんに伝える気持ちで声を張り上げて歌っていたんです。でも今は歌詞をそのまま心の中で語るみたいに……ひとり呟くみたいな感じで歌うようになりました。
ー いいですね。より深くなった感じで。
そうなんですよね。「大空と大地の中で」があって「永遠の絆」があって「故郷」で締めくくるアルバムとしての流れも、すごく良い着地点だったなと感じています。
ー 半崎さんの歌声を生で聴くのが一番ですが、配信でも嬉しいので「特別な日常」や『うた弁COVER』の曲たちを早く聴きたいです!
嬉しいです!本当ならこの『うた弁COVER』を色々なところで直接歌って皆さんに届けたいんですが、色々考えていますので、楽しみにしてください。
ー ありがとうございました。
インタビュアー:秋山雅美(@ps_masayan)
■ 半崎美子 オフィシャルHP
https://hanzakiyoshiko.com/
Information
■「うた弁 COVER」発売記念 オンラインリリースイベント情報
日時:2020年12月21日(月)20:00~
内容:ミニライブ+トーク
購入期間:2020年12月4日(金)18:00~12月14日(月)正午まで
□ イベント詳細
https://tower.jp/article/feature_item/2020/12/04/0701
■「うた弁 COVER」発売記念パネル展 情報
開催店舗: タワーレコード新宿店、コーチャンフォー美しが丘店
パネル展示期間:2020年12月8日(火)~2020年12月21日(月)
□ パネル展詳細
http://www.crownrecord.co.jp/artist/hanzaki/whats.html
Songs for Tomorrow 〜半﨑美子 Birthday Premium Concert〜
12月13日(日)
出演:半崎美子×武部聡志
会場:ザ・プリンスパークタワー東京 コンベンションホール
【昼公演】開場14:00 / 開演14:30
【夜公演】開場17:30 / 開演18:00
料金:全自由 ¥6,000 ※整理番号付き(未就学児童はご入場いただけません)
生配信チケット ¥2,000 ※夜公演のみ
■ 詳細
https://www.hanzakiyoshiko.com/live/index.html
Release
半崎美子 カバーアルバム
「うた弁 COVER」
2020年12月9日発売
-収録曲-
一、ホームにて(作詞:中島 みゆき / 作曲:中島 みゆき)
二、黄昏のビギン(作詞:永 六輔 / 作曲:中村八大)
三、さくらんぼの実る頃(作詞:J.B.Clement / 訳詞:加藤登紀子 / 作曲:A.Renard)
四、いい日旅立ち(作詞:谷村新司 / 作曲:谷村新司)
五、SWEET MEMORIES(作詞:松本隆 / 作曲:大村雅朗)
六、メロディー(作詞:玉置浩二 / 作曲:玉置浩二)
七、異邦人(作詞:久保田 早紀 / 作曲:久保田 早紀)
八、紅い花(作詞:松原史明 / 作曲:杉本真人)
九、あの日にかえりたい(作詞:荒井由実 / 作曲:荒井由実)
十、大空と大地の中で(作詞:松山千春 / 作曲:松山千春)
十一、永遠の絆(作詞:半﨑美子 / 作曲:半﨑美子)
十二、故郷(作詞:髙野辰之 / 作曲:岡野貞一)
選曲監修 / 富澤一誠氏
全編曲:武部聡志
