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小坂忠 インタビュー「僕の生き様と自分の表現とはひとつであって欲しいと思うんです。」

小坂忠 インタビュー「僕の生き様と自分の表現とはひとつであって欲しいと思うんです。」

April 2, 2020 20:00

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── 2006年に『まだ夢の続き』という自伝も出版されていますよね。

そうそう。そうやって色々なところに<夢>が出てくるんだけど、人間が夢を失っちゃったら何のために生きているんだろうと思うんです。大げさかもしれないけど、夢を失った時は死ぬ時かもしれないって。だからこそ、生きている間は夢を見続けられるような人生でありたいんです。


── 小坂さんはアグレッシブですよね。

結構多趣味なんですよ。今、一番凝っている趣味は苔。リタイア組が手を出しそうなことが好きでね(笑)。


── でも苔って良いですよね。実は私も苔が大好きなんです!

あ、そうなの?!良いよね、苔。2018年に国際フォーラムで開催したコンサート(新日本製薬 presents SONGS & FRIENDS 小坂忠「ほうろう」)の打ち合わせでマンタ(松任谷正隆)の事務所に行ったんだけど、その時、屋上でマンタと武部(聡志)くんと僕の三人で撮影していたら良い苔を見つけちゃってね。ちょっと見せてあげるよ。(自身のスマホから写真を探す)


── それはこっそり(笑)採取しなかったんですか?

いやぁ…だって人の事務所の屋上だからね(笑)。ほら、これ。(筆者に写真を見せる)


── ああ、これは見事な苔!きちんと木も植えてあるし、確かに採取し辛いですね。

でしょ(笑)。僕は山が好きだから、自然に触れたり日本庭園を見るのも趣味なんですよ。岡山に小堀遠州作の東湖園という素晴らしい庭園があったんだけど、維持管理の問題で残念ながら7年前に閉園しちゃってね。でもそこから陶芸ににハマっているし、やることいっぱいありすぎて困っちゃうんだよね(笑)。


── 小坂さんは、良い意味で音楽一辺倒なのかと思っていました。

そうか。72年頃に京都の友人が「河井寬次郎記念館」に連れていってくれたことがあったんだけど、そこはもともと河井寬次郎のアトリエだったこともあって美術館のように作品が展示ケースに飾られているのではなく、生活空間の中に置かれているんですよ。それを見た時、自分の音楽も普段の生活の中にあるものにしたい気持ちが湧いて出てきてね。


── すごく自然なものということですよね。今作然り、小坂さんの作品は内なる感情や感性を飾ることなくそのまま出しているイメージがありました。実は細かく音の戦略を練っておられるのかもしれませんが。

<表現>とは英語で“Expression”。外に押し出すイメージだし、日本語なら表に現すもの。表現は、必ず内側から外側へ一つの方向性を持っているものだと僕は思うんです。つまり表現として出てきた作品というのは元々内側にあったものなので、表現を通してその人の内側を覗き見ることが出来るんじゃないかな。だから自分の音楽が自分の内側から出てきたものなら音楽以外の活動だって繋がっているし、僕の生き様と自分の表現とはひとつであって欲しいと思うんです。


── 全く自分の中にないものを無理に出そうとするのではなく?

そうそう、そういうこと。


── 今、生き様というお話がありましたが、小坂さんは76年にクリスチャンとなり、ゴスペルレーベル「ミクタムレコード」を設立。2000年に通常の音楽活動を復活されますが、復活するきっかけは何だったのでしょうか?

僕はクリスチャンになってから、それまで知らなかった世界に出会ったわけですよ。その世界の中には当然知らなかった音楽もあって。初めてそういう音楽に触れて、刑務所や少年院での慰問ライヴもしました。そこに僕のファンがいるわけではないけれど、音楽を通してそういう人たちとコミュニケーションをとって、励ましたり希望を与えたり、何か力を与えることが出来たらと思って。音楽って励ましたり癒やす力があるじゃないですか。


── ええ。

クリスチャンとなってしばらくはそういう意味合いでの音楽活動をしていたんだけどそれは今までの僕の音楽活動とは全く違っていたんですよ。そうやってせっかく音楽に新しい可能性を見つけて得られたのだから、元々の僕の音楽世界の中に加えられたらなと良いなと思ったんです。


──「まだ夢の途中」は配信リリースですが、そうやってずっと音楽に携わってこられた小坂さんは、音楽を取り巻くコンテンツの変化をどうご覧になっていますか?

僕ね、実はあんまり知らないんですよ(笑)。気にならないし、聴く音楽も変わらない。だって音楽は音楽だから。どんなに表現する形態が変わっても、音楽自体は変わらないと思っているんです。とは言え、配信で音楽を聴くことはないしアナログが好きだから、家内からはギャートルズって言われているけど(笑)。


──(笑)。

(スマホを持ちながら)だからこういうのも使いこなせないんだよ(笑)。便利なのは良いんだけど、便利さで失うものって沢山あるから僕はあえて不便な状況に自分を置いてみる、そういう天の邪鬼なところがあるんです(笑)。だからと言って時代に取り残されて死ぬわけではないし、不便な方が人間が本来持っている感覚も研ぎ澄まされると思うんです。そういう感覚を持っている方がよっぽど豊かだしね。


── 自分も便利なものに囲まれながらも、そう感じる時はあります。そういえばレコーディングメンバーの小原さん繋がりというわけではないですが、以前尾崎亜美さんにインタビューをさせて頂いた時に小坂さんのお話も出て。

ほう。どんな?


── 尾崎さんのコラボレーションアルバムで、小坂さんがレコーディングされた時のお話です。病後で体調も全快というわけでない小坂さんがご参加されたことに感動されていました。レコーディングメンバーの佐橋佳幸さんも、小坂さんのレコーディングを見学するために早くスタジオ入しては、その様子に目を潤ませていたと。

あの時は退院して間もない頃だし、あのレコーディングが一番最初の仕事だったからね。僕、2ヶ月半入院していたんだけど50日間は絶食だったの。


── うわ、想像しただけできついです…。

きついでしょ(笑)。その絶食中は夢を見たもん。“退院したら何食べようか”って。


── 何を食べられたんですか?

鰻!退院したその日に食べましたよ。


── え?それって大丈夫なんですか?(笑)

後から先生に言ったら「そんなに硬いものじゃないから、まぁいいでしょう。」って若干苦笑いしてたけど(笑)。ただそういうの気持ちというか、モチベーションってすごく大切だと思うんです。入院中かなり辛い時期があってね。自分で身動きが取れなくてベッドに寝たきり。おまけにすごい痛みで、痛み止めを投与してもらうと意識は朦朧としてくる。追い打ちをかけるように肺に水が溜まって呼吸が苦しくなり酸素マスクをつけた時は、“あぁ…これで終わりなのかな、僕の人生は”とさえ考えちゃってね。でもその時に思ったんです。“まだ歌いたい”って。沢山の人が僕のために祈ってくれたことも嬉しかったんだけど、自分自身が夢を見ることを諦めてしまったら、そこで終わってしまうんじゃないかな。そう気付いた時に “まだ歌いたい”、“早く歌いたい”って考えられるようになって。そうやって僕自身が夢を見ることの大切さを味わったからこそ、多くの人々が諦めず、夢を持ち続けて欲しいし、「まだ夢の途中」という曲が励ましになれば嬉しいですね。この曲は本当に少しでも多くの人に聴いて欲しいです。


インタビュアー / 秋山雅美(@ps_masayan


■ 日本コロムビア「茂忠」オフィシャルサイト
https://columbia.jp/shigechu/

■ 小坂 忠 オフィシャルサイト
http://www.chu-kosaka.com

■ 鈴木 茂 オフィシャルサイト
http://suzuki-shigeru.jp/

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